《第440号あらまし》
 年頭所感
 第一生命パワハラ事件
 〔連載〕思いつくままにB
 ふざけるな!残業代ちょろまかしソフト
 〔新入会員紹介〕入会のご挨拶


年頭所感
憲法問題をより積極的に

代表幹事 長淵 満男


あけましておめでとうございます。外面的には「おめでとう」ですが、内実はそう簡単に「オメデトウ」などとはいえそうもない年明けになりましたネ。

昨年は確かに大変な年でした。自衛隊のイラクへの派遣、相次ぐ台風の襲来と大地震、年金制度の大改悪が3巨悪か? この間、政府や支配層は自衛隊の「活躍」なるものをマスメデイアを使って広報宣伝し、その存在意義を国民へ認識させながら、憲法改悪への道程をドンドン進め、他方年金制度は大改悪、拉致問題への本格的取り組みは無いに等しく、その他、国民の生命・安全と生活の向上の施策はほとんど放りっぱなし、小泉内閣の反国民的な性格が、きわめて鮮明になった年でした。

今年は、社会保障のいっそうの改悪(年金に限らず雇用保険や生活保護など)に加え、税制の大改悪の方向が鮮明にされ、国民へ痛みばかりを押し付ける悪政の連鎖は後を絶ちそうにもない。労働者の生活と健康を破壊する長時間労働・サービス残業と過労死・自殺という企業風土は、何年たっても一向に改善される気配がない。それどころか、賃金その他労働条件の劣悪化は、リストラを行った企業でも、これからしようとしている企業でも着実に進行しており、労働者の生活と権利は形骸化の度合いを強め、労働者に苦難を強いるばかりであり、景気の回復をはるかかなたに押しやっていると思われます。生活と権利の確立・擁護・発展のために協力し合うことを本来の任務とするわが民法協は、体制を整えつつ出番を待っていますが、…残念ですネ。

しかし、今年はナント言っても憲法改悪問題と正面から向き合い対抗する必要に迫られているといわねばなりません。

日本の軍事大国化への歩みは恐ろしくスピードを早めてきました。昨年終盤に公表された新防衛大綱は、日本が戦争を遂行することを前提に組み立てられ、集団的自衛権承認論がおおっぴらに報道され、財界首脳が次々と9条改悪を進言するなど、憲法改悪の目標が9条にあることを露骨に開示してはばからない状況は、異常とも思われます。主力がアメリカ軍であれ、国連軍であれ、集団的自衛権を認めることは、日本と対立・紛争状態にない国家に対しても軍事攻撃を行う権限を承認することを意味するから、侵略国家への道を歩むのと同じことになる。とても許しがたい、大変なこと!

この動きの背景に、「戦闘行為をしない自衛隊」に対するアメリカの不満があり、それが湾岸戦争やイラク攻撃を契機に強い圧力に高まり、小泉内閣はひたすらそれに追従しているというのがひとつ。しかし、それだけでなく日本の「多国籍」巨大企業をはじめ、財界首脳が、強く「軍隊」を求めていることを二つ目に認識する必要があると思います。

アメリカが、「ならず者国家」だの、「大量破壊兵器の保有」だの、「テロへの対抗」だのと勝手な口実を設けてはじめる戦争・爆撃をなんの思慮もなく是認し、ひたすら追随するだけでなく、グローバリズムの流れに乗って、日本企業が外国で展開する企業活動がもたらす摩擦や対立を最終的には軍隊による威嚇、戦争によって突破しようという野蛮な戦略と結びついていることはまちがいない。日本の財界やその首脳達に対する直接間接の{反対プレッシャーは考えられないものか?

軍事大国への道は、必ず、基本的人権の制約、労働者・国民の権利侵害と生活破壊を引き起こす。「非常事態」下の自由・権利剥奪と国民への「戦争協力義務」の負荷だけではない。日常的にも、「たたかう組織」とその活動への圧迫と制限・禁止などが強まることが予想されます。東京でのビラ配布逮捕事件やデモに対する事細かな規制など憲法改悪・軍事大国化への急速な動きと無関係ではないでしょう。それゆえ、労働者・労働組合の権利擁護を本旨とするわが民法協も、今まで以上に視野と対象を広げ、憲法問題との関連を認識した学習・宣伝その他の活動をする必要があるのではないでしょうか。

いよいよ寒さも本格化しそうな状況ですが、皆さんと手を携えてがんばらなければ…と思いを新たにするところです。

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第一生命パワハラ事件

弁護士 吉田 維一


1.はじめに

本件は、同社の支部で保険の営業をしていた女性酒井ともみさんが、上司の女性Aに、過酷なノルマが達成できないことを理由に、いじめられて、いじめ抜かれて、やむなく退職した事件です。

現在は、セクハラ・パワハラ(パワーハラスメント:職場上の地位を利用した嫌がらせ)との言葉がすっかり定着した感がありますが、そんな中でも、改めて、現在の職場環境は、ここまで同じ労働者をおとしめて、追いつめて、競争をあおり、利益追求に走らせるものなのかと、思わずにはいられませんでした。


2.概要

@ 事案の内容

Aの酒井さんへのいじめは、酒井さん(当時は、片岡姓でした。)が、入社して2年あまり経った2001年の秋ころから始まりました。最初は、朝礼・夕礼で、「あんたはちゃんと仕事せな。あんたのとこの旦那は定職に就いてないんやから。あんたが大黒柱になって、やっていかなあかんのに、そんなだらだらやってどうするんや。もっと、身入れてせなあかんやろ。」「チーム員(支部では、3人単位のチームが編成されている。)が仕事せえへんのはあんたのせいや。あんたはみんなをつぶす疫病神や。」「辞めてしまえ。」「今後、片岡のことは名前で呼ぶのではなく、『うそつき』と全員が呼びなさい。」「片岡にしゃべりかけるな。しゃべったら仲間と同じことや。片岡と同じように見られて同じような目に遭うんやで。」「あんたはろくに仕事もせんで飲み歩いて。」「今すぐ出て行け、今日限り会社に来なくていい、あんたはホンマにアホというんや。」などと、ありとあらゆる言葉を尽くして酒井さんを罵倒したり、酒井さんと仲間が会話することを禁止するといったものでしたが、2003年ころになると、「部長、片岡は売春しているんですよ。支部の女の子を営業協力のために、店によく連れて行き、そこで市役所のお客さんや警察官と知り合い、同僚を紹介し、自分もそういう仲になって、それが旦那にばれて旦那が家を出て行ったのは自己責任や。それをみんなにあっせんしてるんですよ。売春婦の親玉なんです。」などと、酒井さんが、営業のために、会社外で、会社仲間を売春させているという全くのデマをAの上司に伝えるなど、明らかに常軌を逸するところまでに及びました。

これに対して、Aの上司らは、「片岡さんは、旦那さん以外の何人もの男性のお客さんと深いお付き合いをしているのか。」「Aの言っている、不特定の男性がいて、その人たちから援助してもらったり、客を紹介してもらったりといったことはしていないんだな。」と発言するなど、Aの荒唐無稽な発言を鵜呑みにするばかりか、最初から特に調査もせず、酒井さんの心情を顧みることなく、酒井さんに対する不注意な発言を繰り返し、その後も、かかる事態に適切に対処することはありませんでした。

もちろん、Aは、組合活動についても「そんなしょうもない飲み会にいって、くだらん話をせずに、今すぐ戻ってきて仕事をしなさい。」「支部の恥さらしが。執行委員会には私が許可しない限り出るな。」「ノルマ未達成のまま執行委員会に出ることは許さない。」「分会の日(注・分会会議の意味)なんか開く時間なんかないやろ。会社が今一番苦しい時に、職員はみな戦場に向かう戦士たちや。そんなぐだぐだ言うてる時間なんかないやろ。そのくらいポートピア支部の子やったら、要領をきかせて報告書を出しておきなさい。」「未実働(「ノルマ不達成」の意)のやつが、会社に意見なんて言う資格はない。みんなどう思う。」などと執拗に妨害し続けました。

A 争点

本件の争点は、言うまでもなく、職場での地位を利用したAによる酒井さんへの嫌がらせがあったか、特に、業務上の部下への叱咤の域を超えていると評価できるかといった点にあります。その点で、酒井さん・Aへの本人尋問が重要であることは当然ですが、それ以外に、当時、支部に在職していた従業員の証人申請が認められるかが大きいと思っています。

B 当方の主張

当方は、酒井さんが、このようなパワーハラスメントにより被った精神的苦痛、そのことにより激減した酒井さんの給与等の経済的損失等を損害として、Aに対する不法行為責任を追及するほか、第一生命に対しては、使用者責任と就業環境配慮義務違反の契約責任を追及しています。会社が、パワーハラスメントのない従業員の働きやすい職場環境を与えることは、契約上の義務であることを認める明確な判決が出れば、他の会社でも就業環境の管理に尽力せざるを得ず、このような露骨で破廉恥な職場でのトラブルの再発防止に、きっと貢献できるものと信じています。


3.現況

現在は、松山弁護士と私が弁護団を組んでいます。記者会見した後、同じような目にあったという方から、同社の就業環境の配慮に欠ける実態を伝える声が寄せられるなど、本件訴訟が氷山の一角であることがわかってきました。

第1回期日は、1月24日の10時から215号法廷で行われます。ご支援宜しくお願いいたします。

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〔連載〕思いつくままにB

元民法協代表幹事 和田 邦夫(元兵庫県私立学校教職員組合連合)


私学の労使関係は、労働問題であるとともに教育問題であると捉えての主張・立証で、兵庫での私学争議は、連戦連勝するようになりました。60年代からの争議も、73年までにはすべて勝利で解決しました。こうした勝利には、労働運動・市民運動など、大衆運動の盛り上がりの時代的背景がありましたが、私学にとっては、私学助成運動・公費助成運動の大きな成果を反映したものでもありました。

第一次ベビーブーム(高校入学の頂点は1964年、高校進学率は73.3%)にむけた公立高校の増設要求を中心とする高校全入運動は、一段落していました。しかし、私立高校に入学を余儀なくされる生徒の学費は大変高く、学費の公私格差是正、憲法・教育基本法の定める機会均等の実質的な保障を求めて、私学の教職員を中心に全国各地で「すべての私立高校生に月1000円の授業料補助を!」のスローガンを掲げて、知事に対する条例制定の直接請求運動が取り組まれていました。兵庫での条例制定運動を準備していた1968年の9月、県当局は「私立高校生徒に、年額1万円の授業料軽減補助(所得制限を設けて)」の助成を補正予算として新たに設けました。当時自治省(現総務省)は、この制度について「家計補助的性格が強く不適切」との通達を出していました(阪神淡路大震災のときの、個人補償はできないというのによく似ています)。しかし全国各地の運動は、その妨害を乗り越え、現在では全都道府県に制度が設けられており、不況下の2000年には国庫補助がつきました。

1969年5月から、県条例制定直接請求署名運動に取り組み、25万名の署名を集めました。9月の県議会で「条例案」は否決されましたが、翌1970年度県予算では、私学での財政支出の最も大きい「人件費」に対する補助が、前年比5倍の5億円に増額され、同時に5ケ年計画で「教職員給与費の50%まで補助」することが決められました。そして1975年には、国でも「私立学校振興助成法」ができ、現在の私学助成制度が形づくられました。経営者にとっても、教職員との摩擦を避けるための財源ができたのです。労働組合を作っていたところでは、極端な低賃金は大きく改善されていきました。兵私協1971年度大会議案には、賃金体系の公開・大幅賃上げの成果を述べた後、「しかし未組織校の多くは、県からの給与費補助があるにもかかわらず、給与の引き上げが十分に行われていないことなどから、たたかいがあってこそ引き上げが可能」との記述があります。ちなみに私のいた職場でも、勤務年数の長い人では、70年代初めの2〜3年の間に、10万円以上の給与引き上げがありました。これでやっと、公立の水準に近づきました。この成果は、若手教職員が各私立高校に定着する条件をつくりました。そして私学運動の大きな課題として、学校づくり・教育づくりのために私学の経営と教育の民主化を求める本格的な模索が始まりました。

この運動は同時に、私立学校の教育・労働条件改善のための財源を、「私学も公教育、公教育は公費で」と、学費・父母負担に依存するのでなく公的財源に求める運動として継続・発展し、現在の「ゆきとどいた教育を求める全国3000万署名運動」の原形を形づくりました。当時、全国私立学校教職員組合連合(当時は日教組私立学校部)は、「国民のための私学づくり」総路線運動として定式化し、全国統一闘争を呼びかけており、兵庫私教協も1973年に日教組私立学校部への加盟を決定しました。1970年には17学園単組であった組織は、1975年に25学園、1978年には30学園へとほぼ倍加しました。

民法協「40年のあゆみ」の1970年代では、私学での解雇事件は1979年の八代学院大学(現神戸国際大学)・光岡教授解雇事件のみです。光岡先生は労働法を研究されており、民法協の代表幹事を務めていただきましたが、大学教員の人事権をめぐって教授会のあり方と権限を問う争いでした。裁判所は、光岡先生の言い分をほぼ全面的に認め、教授会の議を経ずに教員人事を決めるのは大学自治の原則に反すると全面勝利の判決を出し、解雇を撤回させました。民法協事務局長であった野田先生や前田修先生に弁護を担当していただき、単なる労働事件としてだけでなく、学問研究・大学教育、私学運営など広い範囲にわたっての弁護活動で、勝利に導いていただきました。このほか、私学での第3者機関を活用したたたかいは、解雇攻撃から少数部分型組合での組合員いじめなどの不当労働行為に変化していきました。啓明女学院譴責処分・睦学園譴責処分(1971年)、東洋大姫路不誠実団交(73年)、武庫川学院団交拒否(76年)、睦学園担任はずし(77年)、親和女子大事件・八代学院高校事件(78年)があがっています。

70年代前半には、全損保労働者であった宗藤さん(後に司法試験に挑戦、弁護士活動に入られている)の遠隔地配点事件の勝利、吉原製油のたたかい、堀木訴訟など、後半には43号線訴訟・三菱難聴事件や、現在まで闘われているネッスル・川重近藤事件などが引き起こされています。このほか「40年のあゆみ」では、全自運(建交労)・全港湾・タクシー労働者のたたかいや金属労働者のたたかいが大変多くあげられています。裁判官の任官拒否、刑法改悪など司法反動とのたたかいも課題になりました。1972年には確か印刷労働者であったと思いますが、笹倉さんが民法協の事務局専従として着任され、民法協の活動も多岐にわたり、労働学校の開催や実務研修会など、会員相互の交流も充実しました。第15回総会(1977年)には、井藤誉志雄先生が「大衆的裁判闘争の前進のために」として講演されました。後日、記念文集として発行され、その後のたたかいの大きな指針となりました。

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ふざけるな!残業代ちょろまかしソフト

弁護士 本上 博丈


1、賃金不払い残業(いわゆるサービス残業)に関しては、厚労省が、@平成13年4月6日「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」(基発339号通達)、A平成14年2月12日「過重労働による健康障害防止のための総合対策について」(基発第0212001号通達)、B平成15年5月23日「賃金不払い残業の解消を図るために講ずべき措置等に関する指針」(基発第0523004号通達)など一連の指導文書を出し、全国の労働基準監督署の是正指導も強化されていることは、新聞等でもしばしば報道されている(通達は厚労省のホームページから入手できるし、民法協事務局中西さんに求めてもらってもOK)。賃金不払い残業があったとして労基署が事業主に割増賃金の支払を求めた03年の是正指導件数は18,511件で、5年前の2.6倍とのこと。働いた「時間」分だけ賃金が支払われるべきことは、奴隷ではない労働者が、労働契約に基づくギブ・アンド・テイクとして得る当然の権利であり、労働基準法では使用者のその不払いは犯罪として処罰されることになっていることを忘れてはならない。

2、ところが驚くべきことに、このような賃金支払い適正化の社会情勢にあって、それを潜脱すべく、残業代ちょろまかしを「合法化」する給与計算ソフトが売り出されているとの報に接した(04年12月3日朝日新聞)。

からくりは、こうだ。仮に基本給20万円、時間単価1,250円で、月間残業80時間(休日、深夜はなし)の場合、200,000円+1,250円×1.25×80時間=325,000円が正しい月給となるが、残業代が上限5万円の違法な扱いがされていたために、残業代5万円にあたる残業時間は32時間なので、給与明細では、基本給200,000円+時間単価1,250円×割増率1.25×時間外32時間=支給総額250,000円と記載されていたとする。このままでは、残業時間48時間分の残業代75,000円が残業代不払い=労基法違反=刑罰となる。

そこで、残業代ちょろまかしソフトにかかると、現状の支給総額25万円と残業時間80時間ョを前提に合法化した給与明細を作ってくれる。月間所定労働時間160時間は変わらないから、時間単価の元になる基本給を大幅に下げる。具体的には、基本給153,800円+時間単価962円×割増率1.25×時間外80時間=支給総額250,000円という計算になる。支給総額に変わりはないが、こちらでは残業80時間全部について残業代が支払われている計算になり、残業代不払いの労基法違反が解消されている。

3、このソフトを利用した給与計算の意味としては、次の2つの場合が考えられる。

(ア)実際の給与制度は何も変わっていないのに、給与明細だけが書き換えられているという場合。この場合は、給与明細上で辻褄合わせの数字いじりがされているだけなので、残業代不払い=労基法違反であることに変わりはない。そして、給与明細の書き換えは、労基法違反の隠蔽、つまり証拠隠滅にほかならない。このソフトを利用する殆どの場合が、こちらと思われる。

(イ)実際に基本給が20万円から153,800円に下げられ、それに伴って時間単価も減額となった場合。この場合は、労働条件の不利益変更が生じていることになり、その合理性の有無が問題になるが、基本給の大幅な減額は使用者の経営状態がよほど悪化していない限り、合理性ありとは認められない。また既に支払期の到来した賃金について、後から遡って減額変更することはできないから、過去の残業代不払いを正当化することはできない。給与制度は就業規則の必要的記載事項(労基法89条)であり、最高裁判例によれば、就業規則として効力を生ずるためには従業員に現実に周知させることが必要だから、そのような就業規則変更手続がとられたか否かが(ア)の場合か、(イ)の場合かの区別の参考になると思われる。

(ア)の場合、使用者側は「支給総額は変わらないから」と誤魔化すようである。確かに、不審を感じる労働者を納得させる、分かりやすい言い訳ではある。しかし、ボーナスや退職金を基本給を元にして算定する事業所では、月給の辻褄合わせだけでは済まないことに注意する必要がある。また残業時間が月ごとに変動する労働者は、基本給も残業時間数によって毎月変わるのだろうか。もし残業時間数の最も多かった月を基準に辻褄合わせの基本給減額がなされ、その後はその減額後の基本給に基づいて残業代計算されてしまうならば、支給総額が変わらないのは最初の月だけで、翌月以降は支給総額も実際に減額となる。

4、先の新聞報道によれば、このソフトを開発したのは、東京都内の社会保険労務士とのこと。実際に使用されれば、労基法違反の幇助が成立するし、社会保険労務士会においても綱紀などで問題となるだろうから、こんな怪しげなものを作って危ない橋を渡らなくても、と思うが、やはりニーズはあるのだろう。そんなせこい、ちょろまかしをする事業主が、事業に成功するとは思えないが。

よく分からないのが、ある1か月分だけの辻褄合わせなら確かにできてしまうが、毎月毎月このソフトで給与計算すると、残業時間数によって毎月基本給の額が変わり、そのように作られた給与明細書を何枚か併せて見れば、残業代不払いの隠蔽工作であることが一目瞭然となるから、かえって労基法違反の証拠造りを毎月していることになるのではないかと思ってしまう。そうなると、滑稽というほかないが、皆さんも、給与明細書は注意して見てください。

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〔新入会員紹介〕入会のご挨拶

@神戸合同法律事務所 弁護士 吉田 維一

この度、民主法律協会に入会させて頂きました吉田維一と申します。

昨年末より入会していましたのに、このようにご挨拶が遅れてしまいまして申し訳ございません。

私と民法協との出会いは、まだ合格前に、たまたま傍聴していた事件で、本上先生や松山先生が迫力のある尋問をしているのを見たときでした。当時は、『民法協』という名前すら知りませんでしたが、労働者とともに闘う弁護士の姿を見て、何か言い得ぬ興奮を覚えました。

ところで、労働者にまつわる事件は、既に被害が出てしまったものが多く、その中には、不幸にして被害者の方が亡くなってしまった事件もあります。そのような事件に対し、私は、弁護士になる前には、「なぜ、このようなことが起きてしまうのだろう」「なぜ、未然に防げなかったのだろう」と考え、被害者が取り戻せないものが多すぎることから、このような事件を処理することに、ずっとやるせなさを感じていました。

しかし、今、弁護士になって、実際に事件を担当して、ようやく、「既に、起こってしまった事件」の判決は、「同じような事件を二度と起こさないようにする」という予防機能がある、その意味では、このような訴訟は、予防法務の1つになるのではないか、そうしてみれば、このような事件にこそ、気概を持って臨んでいくべきではないか、ということに気づきだしつつあります。

以上のご挨拶のとおり、全くの未熟者ではございますが、今後ともご指導ご鞭撻のほど、どうぞ、宜しくお願い申し上げます。


A神戸合同法律事務所 弁護士 石田 真美

この度、民法協に加入させていただきました石田真美と申します。神戸合同法律事務所に於いて、昨年10月より勤務いたしております。出身地は三重県津市で、大学、大学院と一橋大学で学び、6年前から神戸で生活しております。

過労死、サービス残業、雇い止め等の言葉は聞いたことがあるものの、労働法についてこれまで一度も勉強したことがなく、全く知識がないため、民法協に加入しても何ら役に立てないのではないかと、少々不安に感じております。

ただ、昨年10月から現在までの3カ月間に、女性労働者のセクハラ問題に関連した訴訟や相談に3件関わり、セクハラ問題について考える機会を得、これはおかしいと感じましたので、民法協に加入はさせていただけるのではないかと思っております。

いずれの事件も、女性労働者が、セクハラ問題を会社に訴え改善を求めたにも関わらず、会社は何ら有効な解決策を示さず、それどころか、何ら落ち度のない女性がなぜか会社から解雇され、仕事を失っている一方で、セクハラを行った(と思われる?)男性労働者は仕事を失うことなく、以前と変わらず会社で働き続けているという不条理な結果となっていました。改正均等法が施行されて5年が経過しているにもかかわらず、会社は依然として男性に優しい組織であることを実感させられると共に、セクハラ問題解決のためには何が最も有益な解決策になるのかを真剣に考えさせられています。

社会経験の乏しい未熟者ですが、事件を通じて色々なことを学んでいきたいと思っておりますので、ご指導のほど宜しくお願い致します。

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