《第411号あらまし》
 年頭あいさつ
 大和運送事件 高裁で逆転勝利
 営業譲渡による新会社の設立について
 須磨学園団交拒否救済命令申立
 全国一斉リストラ110番結果報告


年頭あいさつ

弁護士 増田正幸


新年明けましておめでとうございます。

不況、リストラ、倒産、テロ、戦争……。「おめでとう」と言っても周囲には不吉な文字ばかりが目立ちます。楽しみと言えば、新生星野タイガースぐらいなものでしょうか。昨年は一度も行かなかった甲子園に今年は行くぞ!!

さて、最近、NHKのプロジェクトXという番組が人気だそうです。高度成長期に数々の苦難を乗り越えて見事に先端技術の開発に成功した労働者たちのドキュメンタリーです。どこにでもいるような若者たちが、寝食を忘れて奮闘する中で、自分の技術や能力が磨かれることの充実感や仲間と切磋琢磨することの喜び、そして、その技術の開発によって社会に貢献できるという実感をものにしていく姿が描かれています。今の時代にはなくなってしまったからこそ、そのような姿が郷愁や羨望をもって受け入れられるのでしょう。

その後、会社は労働者に対して、「安定した生活」を約束する代わりに、会社への忠誠を誓わせ,労働者から自立や働きがいを奪いました。そして、今や、「安定した生活」の約束さえ反故にし、労働者を限りない競争に駆り立てています。たった30年ほどの間に会社がいかに労働者やその家族を翻弄してきたかということを改めて感じました。

さて、これから何を大事にして生きていったらよいのか。我が身のことを含めて、しばらく混迷が続きそうです。本年も民法協をどうぞよろしくお願いいたします。

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大和運送事件 高裁で逆転勝利

弁護士 西田雅年


1.はじめに

本件は大和運送株式会社に勤める矢野さんが解雇された事件で、1審の神戸地裁では会社側の主張を全面的に認めて解雇は有効であるとして敗訴したのですが、今回大阪高裁では一転して矢野さんの主張を認めて解雇は無効であるとした判決が出されたので、報告します。


2.事案の概要

矢野さんは、大和運送株式会社の神戸営業所(神戸市西区)において、トラック運転手として働いていた。同社の敷地内には、事実上の親会社である大和紙器株式会社の工場があり、ここで生産された製品を運搬する仕事をしていた。また、解雇前から大和運送の労働組合の分会長をしていた。

会社は、矢野さんを平成11年(1999年)7月15日付けで解雇した。解雇の理由は、同年6月29日午後5時30分頃、矢野さんが大和紙器の女子更衣室に「侵入」したということと、侵入の事実については「目撃者」がいること、事情聴取をしたが矢野さんは「侵入」の事実を否認したことから、虚偽の事実を主張したとして、会社の大和紙器に対する「信用失墜」を増幅させたことから、本来なら懲戒解雇とすべきところ、「温情」によって普通解雇したと主張していた。

このような会社の主張に対して、矢野さんは一貫して、女子更衣室のドアをノックして開けたことは認めていたが、更衣室の中に入ったことはなかったと主張していた。

そこで、本件の争点は、矢野さんが当日女子更衣室に侵入したかどうかが最大の争点となった。


3.裁判の経過

(1) 仮処分決定

矢野さんは解雇された直後、地位保全と賃金の仮払いを求めて仮処分の申立をした。仮処分の決定では、解雇の有効性については会社側に立証責任があるとし、提出された証拠からでは矢野さんが女子更衣室に侵入したか決することはできないとした。また、仮に会社側の主張が正しいとしても、会社側が違法な目的(例えば、窃盗やわいせつ目的等)で侵入したと主張しているわけではないことからすると、女子更衣室に立ち入ったとしても解雇することは余りにも重い処分で不当である、と判断した。

なお、この仮処分事件においては通常の事件とは違った異常なことがあった。それは、事実上の親会社である大和紙器との関係から、保全処分の結果によって会社(大和運送)が倒産するかもしれないこと、また賃金の仮払いが認められれば他の社員の給与や一時金に影響を及ぼすという理由から、大和運送のほとんどの社員(100名以上)が仮処分の裁判に補助参加の申立をしてきた。ここで、「補助参加」とは、会社と矢野さん以外の者(他の社員)が、会社の味方となって、この仮処分で「不当な」判断をしないように、事件に自ら参加して独自に訴訟活動をすることができるという程度の意味である。この訴訟参加が認められると、100名以上もの人たちについて主張や立証が必要となってしまい事件が大幅に遅れてしまうこと、会社の従業員のほとんどが会社側になっているから裁判所に対する不当なプレッシャーになること(矢野さん1人のために他の社員を犠牲にして良いのか)が予想された。さらに、会社側は、会社は「使用者」でないことまで主張し(得体の知れない「大和運送事業」なるものを作り上げてきた)、そのなりふり構わない異常な態度が目に付いた。結局、裁判所は他の社員の補助参加は認めず、会社の使用者性も認めるという極めて当然の判断をした。

以上の結果、賃金の仮払いは認めた(但し、第1審判決までという期限付き)ものの、地位の保全までは認めなかった。これは最近の主流(?)と思われる。労働者側の言い分は認めて賃金の仮払いまでは認めるけれど、労働者としての地位については、必要性が無いので認めない、すなわち「お金があれば十分でしょう」という考え方に基づくように思われる。

(2) 本訴(第1審)

仮処分で取りあえず勝ったことから、こちらはほっと一息ついて、解雇無効の本訴を提起へ。本訴は、神戸地裁の民事4部の合議で行われた。なお、会社側は代理人を交替させた。

ここでの最大の争点は、矢野さんが「女子更衣室に立ち入った」のかどうか、であった。

会社側は、大和紙器のパートである目撃者を証人として呼んで、矢野さんが女子更衣室に「侵入」したことを立証しようとした。しかし、その証言内容は極めて曖昧であり、しかもこちらの反対尋問では更衣室の図面を出して、矢野さんを発見した自分の位置やそのときの矢野さんの位置をそれぞれ図面に書いて下さいと質問したところ、到底発見できないような位置関係を書いていた。また、矢野さんが「侵入」後、その目撃者は何事もなく着替えをして、会社には何の連絡もせず、そのまま帰宅したという、目撃が事実とすれば到底考えられないような行動をとっていたことも明らかとなった。

他方矢野さんは、当日、退職したパート労働者の電話番号を教えてもらおうとして、知り合いのパートさんを探しに女子更衣室に立ち寄ったという弁解をしていたので、その点の立証に力を注いだ。

1審の判決が出される前の時点での我々弁護団としては、結論は非常に微妙であると考えていた。というのも、我々の感触としては、最大の争点については、目撃者の証言の信用性は大きく崩れたため「侵入」の事実を認定することはかなり無理があると判断していたが、目撃者がウソの証言をするような動機がないこと(証拠上はということ)と、矢野さんの弁解にしても合理的な説明ができたとは言いにくいことなどから、裁判官の心証はどちらでもあり得るのではないかと考えた。特に、労働事件では労働者に厳しい見方をする判断が多いことから、この点には不安が残った。

さらに、仮に「侵入」の点で負けても、何の目的もなく、また当然実害もないにもかかわらず、解雇という極めて重い処分(労働者にとっては死刑にも相当する)が認められるのかという争点もあった。昨今のセクハラ問題に注目が集まる中、仮に「女子更衣室への侵入」が認められた場合には、かなり厳しい判断をすることもありうるのではないか。しかし、矢野さんは、もともと解雇になる前に会社から無期限の出勤停止処分を受けていたこと(もちろん期間中無給)、社長に対して直接始末書をもって謝罪をしていたが社長は始末書の受け取りを拒否していたこと、職場の同僚も寛大な処分を求めていたことなどから、いくらなんでも解雇は重すぎるという主張も付け加えていた。

第1審判決は、会社側の主張を全面的に認めて、解雇を有効であると判断した。すなわち、一方で目撃者の証言はほとんど根拠なく信用できるとし(不自然な点は見当たらないというのみ)、他方で矢野さんの弁解は不自然で疑問が多いとして採用しなかったため、「侵入」の事実を認定した。その上で、矢野さんが虚偽の弁解をしたことは懲戒解雇事由に当たるとまで言い切った。その結果、解雇は認められるとした。

この判決は、完敗と言ってよいほどの内容であり、矢野さん側の主張は全く容れられていない。

(3) 控訴審

これに対して、矢野さんは直ちに控訴した。しかし、通常事件では控訴しても証拠調べをすることはほとんどなく、そうであれば逆転で勝つというのは圧倒的に数が少ないのは事実であり、しかも労働事件であるというから控訴審での予想は悲観的にならざるを得なかった。

控訴審では、最大の争点である女子更衣室への「侵入」の有無に絞って、正面から突破することを目指した。そのため、大和紙器の退職者を中心に事情を調査して、当時の状況を明らかにするように努力していった。すなわち、周辺の事情を明らかにすることにより、間接的に目撃者の証言が信用できないものであることを明らかにした。結局2回の期日で結審した。

やるだけのことをやり尽くしたけれども、判決は相当厳しいものになるかもしれないと、ある程度覚悟していた。

判決当日、逆転で勝訴したとしたとの知らせを聞いて、一瞬耳を疑った。

控訴審判決は、結果的には目撃者の証言は信用できるとし、逆に1審判決よりも信用性を高めているかのような記載もある。しかし、信用失墜行為は認められないとして、さらに本件事件で解雇というのは苛酷に過ぎるので、解雇権の濫用として無効と判断した。

この判決結果は、事前の予想とは違っていた。勝つのであれば、「侵入」の事実を否定するであろうと思っていたが、そこではなく解雇権の濫用で勝つとは。結果が良ければそれで良いのか、という疑問はあるが。


4.勝利判決以後

会社は、一方で高裁の判決を尊重するとして矢野さんの就業を認めながら(既に職場復帰して今まで通り働いている)、他方で上告の手続をとり、しかも取り下げをしないと明言するなど極めて矛盾した態度を取り続けている。さらに、解雇後の賃金の精算についても、月例賃金は精算して払ってきているが(但し、細かい計算の問題は残っている)、今までの夏期及び冬期の一時金については支払わないとの態度を依然取っている。会社は、もともとの解雇が無効であったことを認めず、高裁判決後に解雇を撤回したとの判断をしているのである。しかし、極めて恣意的であり、また会社側の弁護士が付いていながら、このような判決の理解をすることは到底信じがたい。

また、会社側は不況のため合理化方針を打ち出しているが、矢野さんの問題が解決しない限り、労使の正常な関係を維持発展させることはできないと認識しているにもかかわらず、以上のような不当な態度を取り続けていることも、全く理解しがたい。

そこで、矢野さん側は、労働組合とともに今後も交渉を続けて、最終的な解決を目指している。

なお、本件の弁護団は、本上弁護士と西田でした。

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営業譲渡による新会社の設立について

全倉運日東物流労働組合 特別中央執行委員 三宅 肇


昨年10月、日東物流の親会社である川崎汽船が、グループの物流事業の集約・効率化に向け、全額出資の純粋持ち株会社「鰍jライン物流ホールディングス」を設立しました。川崎汽船は京浜地区をカバーする「ダイトーコーポレーション」と阪神地区の日東物流2社の全発行株式を取得し、100%子会社にした上で傘下に置きました。これは連結経営の時代を迎え、日東・ダイトー両社の各部門収益の分析検証など、経営戦略の一端として川崎汽船が物流事業の再編成を行う第一歩としたものです。

そして、第一ステージとして日東・ダイトーの海貨事業部門(輸出入海運貨物取扱事業)の分離統合による、新会社潟Pイロジスティックスが「業容拡大と体力強化で連結経営への貢献を図る」を設立趣旨として今年の10月1日に設立されました。

日東物流は、川崎汽船の港運部門の関西地区担当会社として、神戸港・大阪港を中心に港湾運送事業を行っています。 港湾を取り巻く状況は、昨年11月「港湾運送事業法」が規制緩和され、不況と同時にさらに厳しい状況に置かれています。特に日東物流の海貨事業部門は荷主・メーカーの料金ダンピングの影響をもろに受ける部門であり、営業収支はさらに悪化している状況にあります。

私たち労働組合は不況と業績の悪化で、新会社の設立が普段できない合理化をやろうとする手段とさせないため、職場を中心に様々討議を行い労働条件の低下、人員の削減などリストラという言葉を使えばなんでもできる風潮に歯止めをかける運動を方針としています。過去、川崎汽船の子会社である日東物流では、いくつかの親会社主導によるプロジェクトが実行され、失敗のツケは日東に働く労働者に転嫁されてきた経緯が多々あります。

新会社の立ち上げに関し、企画立案はどこから発信されたのか、経営責任の所在を明確にするため、労働組合は次のような問題点を掲げ協議をおこなっています。

(1) 会社分割から営業譲渡会社への安易な方向修正はなぜか。

海運貨物取扱事業は港湾運送事業法による免許事業であり、新会社設立については新規に事業免許が必要であり、関東運輸局、近畿運輸局、神戸海運管理部の所管する夫々三つの免許取得がいる。本当の意味での営業拡大であれば、そのことが大きな壁であることを理由とする変更はあまりにも、親会社が私達の職場である港湾運送事業に無知であり、安易な経営方針ではないのか。

(2) 新会社は

日東物流とダイトーからの在籍出向者(日東から38名)で業務をおこなうが、少なくとも組合員の範囲においては本人の意思を尊重し、現行労使協定を尊重し、具体的な新会社での労働条件について協議決定すること。

現行労使協定において出向期間を2年と規程しているが、出向期間満了後の復職保証の具体的な協定の締結、組合活動の保障などを明確にすること。

(3) 具体的にどのような営業活動を行うのか。

新会社が成功するか否かは、川崎汽船を含めた経営的責任である。当然個人的資質が加味されることがあったとしても、派遣された従業員の頑張り次第ということにはならない。

失敗が働くものにだけ「しわ寄せ」されることは絶対許されないことであり、責任の所在を労働組合として明確にしておきたい。

以上のようなことを柱として、労使協議を積み重ねています。働く条件と共に安易な経営姿勢を追及する、知識と理論を今以上に強化し運動を進めます。

分裂した組合を再結成して、まだ5年目の若くなった労働組合です。今後とも宜しくご高配頂きますようお願い申し上げます。

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須磨学園団交拒否救済命令申立

兵庫私教連書記長 和田邦夫


機関紙「民法協」第406号(5月20日付)に、「電脳のサムライたち」と呼ばれた民間人の校長が、一方的に不適格教員と決めつけて、15年の実績ある教員のクビを切ってきた(学校法人須磨学園)という報告をしました。

依藤先生は数学の教員で、15年間須磨学園の教壇にたってきました。今年3月21日に新しく着任した西和彦校長から、3月30日に突然、「来年3月末で解雇する、それまでは自宅待機せよ」との通告を受けました。事実上の解雇通告です。

すでに相談を受けていた兵庫私学労働組合(個人加盟で執行委員長は田村哲夫仁川学院教諭)は、4月2日夕刻、ただちに「解雇予告と自宅待機の業務命令撤回」を求めて、団体交渉を申し入れました。

4月6日に、第1回の交渉を行いました。この日組合は、「なぜ依藤先生が解雇予告を受けるのか」まったく分からん状況でしたので、学園の言い分を「よく聞いてみる」ことに主眼を置きました。学園側は解雇予告理由と自宅待機命令の理由について「メモ」を読み上げ(「民法協」第406号記載)、「結論的にいうと変更の予知はない」と述べました。「メモ」の呈示を求めましたが拒否されました。再考を求めて交渉を終えました。

再度交渉を申し入れ、5月25日に第2回の交渉を行い、前回述べられた「理由」について、事実誤認や背景事情をただし、就業規則上の根拠と理由を文書で出すよう要求しました。「理由書」がFAX送信されてきた直後の6月14日に第3回交渉を行いました。学園側は、組合からの要求をまったく無視し続け、組合からの問いにもまともに答えず、15年間須磨学園で教壇に立ってきた依藤先生を、教科指導力不足、服務中の態度が悪いなどと一方的に決めつけました。

この間に、学園の就業規則がほぼ全面的に改定され、その中には「一年単位の変形労働時間制の採用」など、労働条件の改悪も含まれていました。また、依藤先生の給与明細を見ると、他の私学に比べて著しく低いことなどもあり、学園の財政状況の公開も求めました。

交渉では、事実の誤認を指摘すると「あとで聞いてみる」「事前に聞いておれば答えられる」、また、理由も述べずに「経理は公開しません」など、きわめて不誠実な態度に終始しました。

組合は夏休み中に、3回の交渉を総括し、9月に改めて団体交渉の申し入れ、あわせて依藤先生の「解雇予告・自宅待機理由」について、質問事項を7項目にまとめて回答を求めました。

しかし、学園は交渉に応じない理由は何も書かず、ただ「9月13日付団体交渉には応じません」「依藤教諭の解雇予告及び自宅待機は撤回しません」「質問書には回答しません」とだけ記された「回答書」が送付されてきました。明らかな交渉拒否です。

11月1日に、兵庫地方労働委員会に対し、「誠実に交渉に応じよ」の一点で、不当労働行為救済の申し立てを行い、11月7日に「平成13年(不)第8号、須磨学園事件」として受理され、12月10日には第2回の調査が行われました。

調査の席上で組合は

@ 具体的事実についての「認否」がない。

A 従って、交渉経過・具体的事実について争いがあるのかどうか不明で、学園の主張が分からない。

B 3回の交渉は、双方同意の上録音テープを取っているから、証書として提出することができる。

C 事実関係に争いがなければ、「判断」だけの問題なので、早期の結審を求める。

D 委員会から「誠実に交渉することの意味」を学園側に分からせて欲しいと述べました。

地労委が示した被申立人学園への「求釈明」事項は、次の4点(要旨)でした。

@ 申立書「不当労働行為を構成する具体的事実」について、順序にしたがって認否のうえ、反論すべき事実があれば具体的に述べられたい。

A 依藤教諭の解雇予告・自宅待機命令に関する事項について、組合にたいする説明の具体的内容、交渉経過、交渉権限を有するものを明らかにされたい。

B 組合からの「質問書」について、各質問事項に対する説明の日時、場所、説明の具体的内容を明らかにされたい。

C 就業規則等、解雇自由や解雇手続きなどを定めた規程を提出されたい。

第3回の調査期日は、1月30日となり、その一週間前までに、学園からの「釈明書」が出されることになっています。

なお、依藤先生の解雇予告と自宅待機命令の撤回については、いま、訴訟を行う準備をすすめています。


あらためて、解雇予告の不当さを問う

依藤 薫

学校での教育は、生徒の人格の完成をめざすものです。教師による教科の指導も、ほとんどは短期間のうちに直接的に成果が現れるものではありません。生徒の成績評価も1年間のカリキュラムを通してどこまで到達したかを判断して、節ごとに評価し学年末で評定します。1回の中間考査が全てではありません。

教師も人間です。決して完全無欠ではありません。

私の教育信条「生徒には丁寧に、しかも粘り強く」で23年間教育してきました。

それぞれの学年には、自分なりに学年の特徴を考えて、段階を経て指導に当ってきました。

本学園の最上級生である3年生には、実社会での厳しい試練が待ち受けています。言い換えれば、後がない。そのためにも、例えば1学期は、厳しいとされる評価をつけ、その後のフォローの結果、個々の生徒が発奮してくれたので、良い結果が出たと思っています。また2年生は、まだあと1年の余裕があり、全体として数学という教科に逃避的傾向が顕著でした。従って、あるときは面白く、あるときは叱り・おだて・励まし、粘り強く指導し、生徒たちが難しいと思っている教科書をやり終え、数学コンプレックスがなくなり、一人一人に自信を持たせることができたと思っています。仮にある教師に「不適格」というレッテルを貼るにしても、1回だけの生徒アンケート結果で判断したり、模擬授業(当初予定されていたビデオ取り)もやらずに、しかも、何の指導助言も行わず「もう再教育の見込みなし」と結論ずけて、教師にとって死刑宣告にも等しい「不適格」という理由で解雇するのは、とうてい許せません。

(2001年10月記)

会員・組合員の皆さん。依藤先生の教壇復帰のたたかいが、須磨学園が教職員にとって働きやすい職場、そして、生徒・父母にとって、通ってよかったと思える学校になるために、今後とものご支援をお願いします。

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全国一斉リストラ110番結果報告

弁護士 増田正幸


2001年12月1日、日本労働弁護団の全国一斉リストラ110番が実施され、兵庫県では民法協が取り組んだ。この日全国23カ所で110番が実施され、全国で合計626件の相談があった。

最近は6月と12月に110番が実施されているが,前回も前々回も全国で500件を超える相談が寄せられている。

兵庫では今回は弁護士8名が対応し、合計19件の相談があったが、その内,8件が解雇あるいは退職強要に関するもの、賃金不払いや労働条件の切り下げに関するものが5件あり、いずれも深刻な相談であった。

労働組合員は2名で他は組合が存在しないか、所属していない人であった。

(主な相談例)

・給与を全額歩合制に変更し、「それが嫌だったら辞めろ」と承諾しがたい条件をつきつけて退職を迫られている(電話工事会社)。

・過酷なノルマを設定され成績不良を理由に退職を強要された(大手スーパー)。

・業務上負傷して休んだら、自主退職を迫られ、自主退職しないのであれば懲戒解雇すると脅された(酒類卸売業)。

・退職勧奨を拒否したら「能なし」等、中傷されて退職を迫られている(道路工事会社)。

・残業手当の不払い(ホテル)、一方的な賃金カット(コンピュータ部品製造)。

・具体的な理由の不明な解雇(パソコン部品メーカー、家電修理・運送会社)。

・期間雇用なのに労働密度の高い職場に配転された(医薬品メーカー)。

・期間雇用で断れないのをよいことに次期更新時には労働時間を短縮すると予告された(製造業)。

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