《第422号あらまし》
 須磨学園・依藤先生解雇事件で、神戸地裁が原告勝訴判決
  一審判決を勝ち取って
 西神戸レミコン運輸鰍フ偽装閉鎖をやめろ
 2003年労基法「改正」について
 春闘学習会報告

須磨学園・依藤先生解雇事件で、神戸地裁が原告勝訴判決

弁護士 萩田 満


1、勝訴判決言い渡される。

須磨学園・依藤事件は、本年3月24日に神戸地裁判決(水野有子裁判官)が言い渡された。判決は、学園によるの原告解雇が無効であると認定し労働者たる地位を確認した上で、解雇時点の賃金相当額を本案判決確定まで支払え、とした。

2001年3月下旬に着任したばかりの西和彦校長の命令によって、原告依藤先生は、1年間の自宅待機の末2002年3月31日付で普通解雇された。そこで、原告は昨年4月に本訴を提起するとともに、仮処分を申し立てた。

2、訴訟の争点と裁判所の判断

被告須磨学園は、当初、原告の解雇理由として、@数学科の教科指導力不足、Aクラス担任能力不足、B業務非協力等を主張していたのに加えて、訴訟になるとC経歴詐称、を挙げてきた。

3、裁判所の判断

* 経歴詐称の点について

裁判所は、経歴詐称(虚偽の記載)が就業規則上の解雇事由に該当するためには、「その効果があまりに重大であることに鑑みると、『虚偽』に該当するためには、単に事実と異なるという点だけでなく、事実と異なる事情によって、積極的に被告を欺罔し、その欺罔によって被告が採用を決めたという事情が必要」との判断枠組みを示した上で、原告の場合、確かにR大学理工学部に在籍したことがないのに履歴書には在籍した旨の記載をしている(事実は聴講生として単位取得。)点で事実と異なるものの、一緒に提出した教員免許状には単位を取得したT大学の記載があることなど積極的に欺罔したとはいえないと認定して、被告の主張を退けた。

* 被告の主張・立証について

裁判所は、職務不適格が就業規則上の解雇事由に該当するかという点についても、「適格性が比較的低いと言うことでは足りず、適格性を欠くことを裏付ける具体的な事実があることが必要」との判断枠組みを示した。

そして判決は、被告が原告をあれこれ非難している点について「被告が主張するところは、抽象的で、かつ評価を交えた部分が多々あるので、原告が数学教員としての適格性を欠くことを裏付ける事実の主張とは言い難い」と断定した上で、「仮に被告の主張が全て認められた場合に原告が数学教員としての適格性を欠くと認められるとの見解を採用するとしても、被告の主張する点を具体的に検討すると、事実認定ないしその評価の点について、被告の主張するところとは異なる点が多く」と、仮定で考えたとしても原告の適格性を欠くとまではいえないと判断している。

上記判決は、証人尋問などを通じて裁判所が得た証拠によっては解雇の正当性を裏付けることができないとの判決をする前に、そもそも被告の主張が具体的証拠に基づいたものでないと門前払い的な評価を下している点が注目される。被告は、原告の職務適格性について、風が吹けば桶屋が儲かる式の議論を度々繰り返していた。いくつか紹介すると、先ほどの「経歴詐称」問題について「学歴を高く詐称してしまった場合に、それが被告や周囲にばれないようにするためには、当然に精神的な負担が大きくなり、精神的に不安定となる。同僚との交際は極力避ける。…(中略)…生徒の教科理解のすすまないことを自己の教科指導の方法や内容で克服しようとするのではなく生徒を怒鳴る。…(中略)…他方、本来的に数学と関係のないことには気分によって積極的となり、生徒に対しては授業中冗談で興味を引こうとしたり、イベントに参加したりする。このように翻ってみれば、解雇事由に関わる原告の勤務に対するマイナス評価は、学歴詐称に結びつくものが多い」(準備書面(2))、などと、およそ論理的とはいえないような裁判主張が延々と繰り返され、被告がそれを裏付ける証拠といえば、せいぜい、理事長や校長の供述(しかもほとんど伝聞)だけであった。被告の主張・立証のまずさが、そのまま裁判所の認定につながったものともいえるのではなかろうか。

* 職務不適格の点について

裁判所は、職歴詐称・心身性格上の問題・クラス担任能力については事実を裏付ける証拠がないので被告主張は認められないとした上で、数学の素養、教科指導力、職務態度については、個々の事例を検討し、「原告にも問題点が認められる、ないし窺われる」が、この程度のことは教師としての適格性を否定すべきものとはいえないと判断している。

およそ人間として完璧な人はいないのであって、それは教師の場合も同様であるから、一つや二つの問題点を針小棒大に持ち上げて人格非難にまで結びつけることを排斥した裁判所の判断は大枠において納得できるものであった。

4、若干の課題点

もちろん裁判所の判断にも疑問が残る。

まず第1点。裁判所は、被告の主張する解雇事由を個々検討して排斥したのであるが、そもそも被告が主張する「経歴詐称」や、教科指導能力不足を裏付ける決定的証拠として持ち出してきた「後期入試問題の解答」は、本訴の過程で主張されたものに過ぎず、解雇通告当時にはその主張を裏付ける証拠は大して存在しなかったことを事実認定から欠落させている点は若干舌足らずのような気がした。西校長が就任して突如解雇したこととあわせて、解雇経過についてもできれば言及してもらいたかったものである。

第2点として、原告は昇給を前提とした金額を請求したにもかかわらず解雇当時の賃金額しか認容しなかった(請求一部棄却)点で問題が残る。判決は、昇給していたことの主張立証が不十分であると指摘しているが、原告は今まで順調に昇給しているという経過があったこと、被告も争ってはいるものの昇給しないことを裏付けるような証拠を提出しているわけではないことから、弁論の全趣旨の斟酌として昇給分も認容してもらいたかったものである。

第3点として、判決がいわゆる「東京地裁方式」を採用し、本案判決確定後の将来賃金の請求を認めなかった(請求却下)点も今度の検討課題である。この東京地裁方式の論拠は、「労務の内容、それに対する賃金の額などの労働条件についても不確定な部分が多い」(大阪証券取引所(仲立証券)事件。大阪地裁H14・2・27)等として将来給付の利益がないというものであり、本件の判決も訴えの利益がないとしている。解雇無効の判決にも従わない経営者がいるとき、裁判所を通じた救済を考えようとすれば再度訴えを提起しなければならない労働者の負担を考えるとき、この東京地裁方式はなんとしてもうち破らなければいけない論理である。

5、今後の見通し

本件は、裁判所の勧告のもと、和解のテーブルは設けられたもののまとまらず、判決に至ったものである。被告は控訴し、控訴審では体勢立て直しも予想されることから、裁判で原告がどのように判決理由を守り抜くか、運動を強めて解決することができるか、がきわめて重要な課題となっている。

このページのトップへ

一審判決を勝ち取って

須麿学園高等学校 依藤 薫

「原告が、被告との間に労働契約上の地位を有することを確認する。(以下略)」で始まる主文を裁判長が読み上げられたその時、『勝ったんや!ホンマに勝ったんや!』と何度も何度も心の中で叫びました。

実は不安で不安でたまりませんでした。今年2月末からの和解交渉において学園側の一方的な打ち切りで、交渉が不調に終わったことや、判決言渡しが20日から24日に変更になったこと、さらには長男の大学受験失敗(二浪決定)、次男のまさかの公立高校不合格(後期入試で私立高校に合格)など続いておりました。

3月24日、朝いつものように私教連に出勤すると、主文の出だしが、「原告が」なら勝つ「原告の」なら負けるとなることが多いとアドバイスを受けました。すると何かモヤモヤしていたものが、急にフッ切れて『どうにでもなれ』というふうに開き直ることが出来ました。自分では不思議なくらい冷静に裁判長の言葉に耳を傾けました。聞き終えてから一礼して満席の傍聴席を見れば、全員がニコニコして何人かに握手を求められ、それまで緊張顔の私もこれで笑顔になれました。

直後の報告集会でも、お世話になった本上、萩田両弁護士のお話し、大私教・兵庫私教連・神戸争議団・国民救援会の方々の祝辞をいただきました。心温まるお話しを聞くうちに、ここまでこれたのも自分一人だけではなく支援する方々が一丸となって支えてくれたお蔭だと思う一方、須磨学園を泣く泣く去っていかれた数多くの先生方のお姿が目の前に浮かびあがってきました。

私は、依藤だけが理不尽な不当解雇されたと訴えてきたのではなく、私と同じような理由で解雇された教職員が須磨学園や他の私学に多くおられたし、これからもでてくることを訴えたかったからです。

闘いは、始まったばかりです。これからが佳境に入ります。私は最後まで戦い抜きます。これからもご支援お願いします。

このページのトップへ

西神戸レミコン運輸鰍フ偽装閉鎖をやめろ!

《建交労ニュースより転載》

* 労働者の生活を奪う

1997年、神戸生コンクリート協同組合(理事長は西神戸レミコン社長・故中司知之)は、「西神戸レミコン社と神戸小野田レミコン社の合併(工場集約)は、理事会の決定事項である」として、労使の同意約款協定(企業経営などの重大な変更を及ぼす事項は、組合と事前に協議し、同意を得る)を無視し、神戸生コンクリート協同組合と西神戸レミコン社社長が結託して西神戸レミコン社の出荷割り当て(仕事)をなくして自社を閉鎖に追い込もうと一方的に強行してきました。

私たち組合は、セメントメーカー・神戸生コンクリート協同組合・大阪兵庫生コン工業組合・生コン経営者会(労務窓口)を相手に、従業員の生活と雇用を守るたたかいを展開してきました。そして、セメントメーカーの責任において、同じセメントメーカー系列であった経営者会の交渉団長・小田要氏が、セメントメーカーの全権委任を受け、この闘争の解決に当たりました。解決方法として西神戸社の社長に就任し、6月30日に、西神戸レミコン社・神戸小野田レミコン社は合併集約され、新会社の西神戸レミコン運輸梶i神戸小野田レミコン社の子会社)として稼働。そのため、神戸小野田レミコン社に専属輸送会社が2社存在し、この間、経営を維持してきました。

* 一方的な合理化の押し付け

集約時から小田要社長は、神戸小野田レミコン社に2つの専属輸送会社が存在することは不合理であると、兜ス尾と西神戸レミコン運輸を3年間で1社にすることを組合に提案してきました。

組合も、2つの輸送会社の一元化については、これまで幾度となく協議を重ねてきました。ところが、これまでの経緯・経過を無視し、セメントメーカーの意向を受け、西神戸レミコン運輸鰍セけに「2人に1人は辞めてください」とした希望退職の「合理化」を一方的に提案し、小田要社長の「合理化」が進まない状況とみたセメントメーカーは、小田社長を解任(神戸小野田レミコン社・西神戸レミコン運輸社)し、神戸小野田レミコン社の常務であった井上和郎氏を西神戸レミコン運輸の専務に就任させ3名の首切りと、3名の希望退職を実施しました。さらに新たな「合理化」として、賃下げ・労働条件改悪など含め、賃金を総額約50%カットする提案を行ってきました。また、会社は協議中に具体的資料も開示せず、2003年1月、「会社清算・全員解雇」を一方的に通告し、強行しようとしています。

* セメント企業の利益第一主義

西神戸レミコン運輸鰍ヘ、西神戸レミコン鰍フ時から、代表取締役、経理などを出向させ、現在は井上和郎氏が代表取締役として業務し、セメントメーカーによる人的な支配従属関係が続いています。このことからいっても、セメントメーカーが西神戸レミコン運輸社の生殺与奪を握っています。また、太平洋セメントの専務は、「直系生コン工場について、これまで整理・再編を進め、126社が79社に減っている。この合理化で期間損益が黒字になったが、さらに合理化が必要だ」としています。この方針の下、労働者の働く権利・生きる権利を無視し、利益を追求することだけを重点におき、西神戸レミコン運輸の「会社清算」も、集約した際の仕事の割り当て(営業権)による利益だけを確保し、労働組合との労使協定を反故にし、そこで働く労働者を切り捨てることを強行しようとしています。

利益だけを追求する太平洋セメント・神戸小野田レミコン社の責任は重大です。

このページのトップへ

2003年労基法「改正」について

弁護士 増田 正幸


1、3月に労基法「改正」案が提出されました。

今回の「改正」は、@正規労働者の解雇を容易にし、非正規労働者に関する規制を緩和して、正規労働者から非正規労働者への置き換えを推進し、不安定雇用の拡大を図ること、A職業紹介、派遣についての規制を緩和して転職を容易にする、というものですが、以下に述べるとおり、極めて重大な影響をもたらすものです。

2、「改正」案の内容


* 有期雇用の限度期間の緩和

もともと有期雇用は1年を限度としていました。それは期間を定めた場合は原則として期間途中の退職が許されないことになるため、長期の期間を定めることを許して労働者を不当に拘束することを防ぐためです。

ところが、1年を超える期間を定めることが許されないとすると、一定の訓練を要する業務などには有期雇用ができないことから、財界は期間の上限延長の要求を出していました。

そこで、1998年の「改正」により、専門的知識、技術又は経験を有する労働者や60歳以上の労働者については、例外的に期間の上限を3年まで延長したのです。

そして、今回の「改正」案では、さらに、専門的知識、技術又は経験を有する労働者や60歳以上の労働者の期間の上限を3年から5年に延長し、それ以外の労働者についても3年まで期間を延長しました。

注意すべきは、有期雇用の限度期間が延長されると言っても、使用者の側の選択肢が拡がったというにすぎず、大半のパート、アルバイト労働者の雇用期間が延長されるということではないことです。すなわち、使用者にとっては、従来だと正規労働者しかできなかった仕事についても非正規労働者に行わせることが可能になるというだけで、既存の非正規労働者の雇用期間が延長されるわけではないのです。

しかも、たとえば5年の期間を定めて雇用された労働者は原則として5年間は退職ができません。思ったとおりの仕事や労働条件ではなかった場合でも5年間は辞められないことになってしまいます。また、若い女性を5年間の期間雇用することが可能になることによって、事実上の結婚退職制が認められることになります。

* 労働者派遣事業の規制緩和

労働者派遣法では、臨時的・一時的業務については派遣期間を1年以内に限り、更新も認めていませんでした。また、厚労大臣が指定する専門的業務(26業種)については派遣期間を1年以内に限り更新が2回を越えた場合は行政指導をすることになっています。

しかし、クと同様の理由で、派遣期間の限度期間を1年から3年に延長し、専門的業務についての更新の制限をしないこととするとしています。

さらに、製造業に関しては派遣が禁止されていましたが、その禁止を解除するとしています。

* 企画業務型裁量労働制の規制緩和

実労働時間とは無関係に一定時間働いたものと「みなす」という裁量労働制は、1日8時間労働制の原則を骨抜きにするものであり、みだりに認められるべきものではありません。かつては、専門的な業務に限って認められていたものが、1998年「改正」の際に労使同数の代表者からなる労使委員会の全員の一致を要件として、本社などの「事業運営上の重要な決定が行われる事業場」における「事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務」について裁量労働制が認められました(企画業務型裁量労働制)。

今回の「改正」ではその要件を緩和し、

@  対象事業場を「事業運営上の重要な決定が行われる事業場」に限定しない。
A  労使委員会の決議要件を「全員一致」から「5分の4以上」の多数決に緩和する。
B  労使委員会の労働者代表委員は過半数を組織する労働組合ないし過半数を代表する者の指名され、かつ労働者の過半数の信任を得た者とされていたのを労働者の信任手続は不要にする。

というものです。「企画、立案、調査及び分析の業務」の範囲は不明確であり、これまで事実上、本社に限られていた企画業務型裁量労働制を本社以外の支社、支店のホワイトカラー全体に拡大することを可能にするもので、サービス残業を合法化するものです。

* 解雇の自由化

従来、解雇に関する一般的な規定はなく、判例上「解雇権濫用法理」が確立していました。「解雇権濫用法理」によれば、正当な理由のない(「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」)解雇は無効であり、解雇に正当な理由があることは使用者が立証しなければならないとされていました。

従来、解雇に関する一般的な規定はなく、判例上「解雇権濫用法理」が確立していました。「解雇権濫用法理」によれば、正当な理由のない(「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない」)解雇は無効であり、解雇に正当な理由があることは使用者が立証しなければならないとされていました。

しかし、使用者からは、解雇の要件が厳しすぎることが雇用を控えさせる原因になっており、そのために若年労働者の失業率が改善されないという意見が出されていました。

今回の「改正」で、「解雇は自由である。但し、正当な理由(客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない)場合は無効である」という条文を新設しようとしています。この条文によると、解雇は原則自由とされ、解雇を争う労働者の側が解雇に正当な理由のないことを立証しないといけないことになってしまいます。解雇を争う裁判で、労働者が「解雇に正当な理由がないこと」の立証をすることは至難のわざであり、結局、不当な解雇を裁判で争うことが困難になってしまいます。

厳格な解雇規制を立法化するのであれば、労働者にとっても意味のあることですが、このような「改正」は労働者の地位を非常に不安定なものにしてしまいます。

このページのトップへ

春闘学習会報告

弁護士 増田 正幸

2003年2月14日、春闘学習会が行われた。どこの会社も業績不振を理由に労働条件の切り下げを迫るが、会社の業績がどのような状況にあるのか、ほんとうに賃上げをする余裕がないのかなど、労働組合がどのようにして見極めるのかについて、税理士の繁内康政先生から「うちの会社は儲かっているのか」というテーマでお話をうかがった。案外、どの組合も会社の経営状況や保有資産について正確な知識をもっていない。会社から「経営資料」を入手して、定期的に税理士などの専門家に分析をしてもらうべきである。

繁内先生のお話の概略は以下のとおりです。

@  全国の法人の過半数は赤字だから、赤字かどうかだけでは会社の経営状態はわからない。
 そこで、会社の経営分析が必要になるが、そのためには会社の「経営資料」を手に入れなければならない。
 また、会社の現状だけではなく今後の見通しを明らかにするためには過去2、3期分の経営資料が必要である。
A  上場企業は一部、二部も含めて有価証券報告書を公開しているので、官報販売所、図書館で入手可能である。有価証券報告書を見ると会社の全容はほぼわかる。
 非上場会社でも帝国データバンクを利用したり、「日経財務分析(全国有力未上場会社6000社)」(日経新聞社)、「日経ビジネス別冊・日本の9万社」などの情報誌から資料を入手することができる。
 中小零細企業で資料が外部に公開されていない場合は団体交渉で会社に提出を求めることになり、どれだけ資料を入手しうるかは力関係によるが、貸借対照表、損益計算書を組合に公開する会社は比較的多い。
B  また、自社の資料だけではなく同業者の数値との比較も重要である。業界の一般的数値や規模類型ごとの平均指数を調べる必要がある。そのためには「わが国企業の経営分析」(通産省)、「企業経営の分析」(三菱総合研究所)、「主要企業経営分析」(日銀)、「中小企業の経営指標」(中小企業庁)、「TKC経営指標」(TKC全国会)、「NCC標準経営指標」(野村コンピューターシステム)等が参考になる。
C  貸借対照表によれば、期末における会社の資産・負債・資本の額,年度末の財務状況を表しているが、各項目の合計金額しかわからない。概略の収入と経費の額はわかるが、どういう収入があるか、経費の明細がわからない。
 損益計算書では収益と費用を算出し、過去1年の会社の経営成績が示される。
 損益計算書附属明細書では費用の内容が明らかになる(たとえば、製造原価報告書では賃金、材料、外注費等が明らかになる)。
D  売上げから固定費(一般給料、賃料、保険料、減価償却費)、変動費(稼働率に比例して増減する材料費、外注加工費、出来高給、残業手当)をまかない収支がトントンとなるところを、赤字から黒字に変わる分かれ目を損益分岐点という。
 会社にとっては、損益分岐点を越える売上げの確保を目指すとともに、固定費の削減と変動費の効率的運用が課題になる。
E  労使間の賃上げをめぐる攻防は、実現した「利益」(付加価値)をどう分配するかという問題である。
 「利益」から人件費として労働者には分配(労働分配率)し、借入金利子として債権者に分配し、賃料として地主・家主に分配し、租税公課として国や地方自治体に分配し、株主に配当するということになる。
 しかし、従来、労働分配率が労使間で正面から問題とされることはなかった。
 それは、率を問題にすると賃上げ幅について労働側も数字に縛られることになるからだと思うが、企業の業績がかならずしもよくない時代には分配率を根拠に交渉を進めるという方法も考えなければならない。



実務研修会・40周年記念式典のご案内
と き 6月21日シ 午後1時〜
ところ 神戸市産業振興センター
記念講演講師として日立武蔵事件の田中秀幸氏をお招きしております。詳しくは後日ご案内させていただきます。


このページのトップへ