被災者は、神戸市に本社のあるマーテック株式会社(産業機器卸売商社)に平成3年3月に入社し、平成14年4月14日の午前3時頃に、52歳の若さで急性心不全で亡くなりました。
被災者が亡くなったのは、それまでの稼働状況からして、長時間労働による過労死であることは明らかでした。しかし、会社はタイムカードによる労働時間管理などしておらず、全てサービス残業であり、社長は被災者の妻に、「遅くとも8時には全員帰っている」「ご主人は最近お酒をよく飲んでいましたか」などと述べて長時間の労働を否定しました。
そこで、長時間労働を明らかにすることが最重要課題でした。社長の横暴に耐えられず、被災者の亡くなる前後で何人も退職者がありました。被災者の妻はその人たち一人一人に連絡を取り、この会社の職場環境、仕事のさせ方などを伺いました。そしてこの会社の長時間労働の根拠が判明してきました。社長はワンマンで、個人的な好き嫌いの感情で社員の労働条件を決めたり、売上げ数字をあげることしか考えない人でした。社員に、毎朝、始業時刻より30分早く来させたり(もちろん時間外手当は付きません)、社員にどだい無理な売上目標を立てさせては、目標を達成できないことを叱責し続け、毎日、全社員が残業しているか確認するかのように午後8時頃に社内に突然現れ、「あいつはどこに行った」「なんで帰ったんや」「売上げ達成してへんのになんで帰れるんや」などと怒鳴りし、または、午後8時頃に会社に突然電話をかけてきて、「今は誰がいるか」「何で帰ったんや」と叱責し、社員が定時に退社するのを精神的に抑圧しました。
もちろん土曜日も社員全員が毎週出勤させられました(全てサービス残業です)。土曜日に休もうものなら社長から何をされるか分からないのです。社長は、社員に対し「いやならいつでもやめたらよい。お前らの代わりはいくらでもいる」と言い放ち、社員を人と扱わず、まるで道具として見ています。
被災者は、以前の会社はそうではなかったため、元のようなまともな会社に変えたいと願い、努力し、自らの意見をはっきり社長に述べたようで、その結果、社長から嫌われ、突然の降格、出向を命じられるなど陰湿ないじめを受けました。こうして長時間労働の果てに被災者は倒れました。
被災者の遺族に対する労災補償、損害賠償は当然のことですが、過労ストレス研究会所属の弁護士11名は、同社の現状自体をとうてい放置することはできないものと判断し、在職する社員を被害者として、神戸東労働基準監督署長に、無届残業と休日、時間外賃金不払いにつき告発に踏み切ったものです。
イラク戦争が始まる前は、新聞などで労働基準監督署によるサービス残業の摘発や、従来払われていなかった多額の残業代が労基署の指導や裁判の結果支払われたというニュースがここ数年ちょくちょく出ていたように思う。後記@通達が出された01年4月から02年9月までの1年半に全国の労基署がサービス残業の是正を指導して、1社当たり100万円以上の不払い賃金を払わせた事例は合計613社、対象労働者数約7万1千人、支払われた残業代の合計額は約81億4千万円に上っているとのことである。03年2月3日には全国で初めて、東京都内の特養ホーム経営者(社会福祉法人理事長)が、職員に時間外手当を払わずにサービス残業をさせていたとして逮捕されたとの報道もされていた。
それらはもちろん、労働者や過労死遺家族からの粘り強い声に押されてのものではあるが、違法残業が放置されずきちんと取り締まられるようになってきたことは当然のこととは言え、大変喜ばしいことであるし、重要な意味をもっていると思う。
厚労省は実は、このような取り締まり・監督指導だけではなく、この数年間に次のような過労死対策や労働時間管理に関する極めて重要な通達を相次いで出している。
@【労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準について】 (平成13年4月6日付け基発第339号) |
A【脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について】 (平成13年12月12日付け基発第1063号) |
B【過重労働による健康障害防止のための総合対策について】 (平成14年2月12日付け基発021001号) |
@は、労働時間を適切に管理するために、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認しなければならず、その記録の原則的方法としては自己申告制ではなく使用者による現認またはタイムカード、ICカード等の客観的記録によるべきとし、サービス残業を事実上強いるような事業場内の運用(例えば、1か月の残業代の予算枠を設定するなど)を具体的に指摘して禁じたもので、民法協でも何度も紹介してきた。この通達が遵守され、労基署による監督指導も徹底されれば、サービス残業の撲滅に向けて大きな前進となる。
Aは、脳や心臓の病気などによる過労死の認定基準を改めたもので、それまでは厚労省が一貫して認めていなかった蓄積疲労による過労死を初めて公式に認め、認定基準に取り入れたという画期的なもので、B通達の根拠にもなっている。
Bの内容は後で説明するが、事業主に対して、過労死や過重労働による健康障害を予防するための健康管理を、1か月の残業時間が45時間を超えた場合と80時間を超えた場合とに区分して具体的に定めてその徹底を求めている。
これらを併せれば、@でサービス残業を撲滅し、Bで残業時間が多くなった場合の健康管理を徹底して過労死等を予防し、Aで生じてしまった過労死の救済を比較的広く認めようということになり、それらに加えて、労基署が単なるお題目ではなく、それら通達や法に基づく監督指導や取り締まりを現実に意識的に行い、それら通達等を生かしていけば、時間管理・過労死対策に関して革命的な変化が起きることすらあり得ると言えよう。厚労省は、結構、本気なのだ!
本通達は、通達を発した経緯を説明した前文、厚労省自身が過重労働による健康障害防止のための総合対策として行う内容を定めた別紙
1、事業主が過重労働による健康障害を防止するために講ずべき措置等を定めた別添、及び事業主への指導等について関係団体に協力を要請した別紙2から、構成されている。(ア) | 労働安全衛生法66条関係の年1回の健康診断を確実に実施し、また深夜業を含む業務に常時従事する労働者に対しては労働安全衛生規則45条に基づく6か月以内ごとの定期に特定業務従事者の健康診断を実施しなければならないことに留意し、 |
(イ) | 月45時間を超える時間外労働をさせた場合については、その労働者の労働時間や過去の健康診断結果等に関する情報を産業医に提供して、事業場における健康管理について産業医による助言指導を受けることとし、 |
(ウ) | 月100時間を超える時間外労働又は2か月間ないし6か月間の1か月平均の時間外労働を80時間を超えて行わせた場合については、(イ)の措置に加えて、情報提供のうえ、その労働者に産業医の面接による保健指導を受けさせ、産業医が必要と認める場合は健康診断を受診させ、その結果に基づいて必要な事後措置を行うものとし、 |
(エ) | 過重労働による業務上疾病を発生させた場合には、産業医の助言を受けるなどして、原因の究明及び再発防止の徹底を図る、としている。 |
(あ) | 月45時間を超える時間外労働が行われているおそれがある事業場に対しては、監督指導、集団指導等を実施し、 |
(い) | 月45時間を超える時間外労働が認められた場合は、事業者に上記(イ)の措置を講ずるよう指導し、併せて、過重労働による健康障害防止の観点から、時間外労働の削減等について指導を行い、 |
(う) | 月100時間を超える時間外労働又は2か月間ないし6か月間の1か月平均の時間外労働が80時間を超えると認められた場合は、上記(い)の指導に加えて、事業者に上記(ウ)の措置を速やかに講ずるよう指導し、 |
(え) | 限度基準に適合していない36協定がある場合であって、労働者代表からも事情を聴取した結果、限度基準等に適合していないことに関する労使当事者間の検討が十分尽くされていないとき等は、協定締結当事者に対しても必要な指導を行い、 |
(お) | 事業者が上記(ウ)の措置にかかる指導に従わない場合は、その労働者の労働時間や過去の健康診断結果等を提出させ、それらに基づいて労働衛生指導医の意見を聴き、その意見に基づき、労働安全衛生法66条4項に基づく臨時の健康診断の実施を指示することを含め、厳正な指導を行い、 |
(か) | 過重労働による業務上の疾病を発生させた事業場については、事業者に上記(エ)の措置を行うよう指導、 |
(き) | 過重労働による業務上の疾病を発生させた事業場であって労働基準関係法令違反が認められるものには、司法処分を含めて厳正に対処する、としている。 |
B過労対策通達では、厚労省は、上記の内容をリーフレットにして周知を図るとしており、「過重労働による健康被害を防ぐために」と題する小冊子を作り、労基署・労働局の窓口で配布しています。分かりやすくまとめていますので、組合の学習用はもちろんのこと、使用者との交渉材料にも利用できると思います。また、「労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト」を厚労省のホームページで公開していますので、ダウンロードすれば組合でも簡単に啓発等に利用できると思います。
これまでも繰り返し訴えているように、労働時間の法令厳守・徹底管理は、過労死や健康被害の予防はもちろんですが、残業代をきちんと払わせることによる実質的な賃上げ、さらにはサービス残業などの違法労働を織り込んだリストラの予防・反撃にもなるという“超すぐれもの”です。しかもこの通達3点セットで、国が具体的なルールを示して、司法処分を含む厳正対処をするとまで言明していますから、“御上”の力を利用しない手はありません。
4月15日に開かれた労働委員選任処分取り消し等請求裁判の第9回公判で、裁判長は貝原前兵庫県知事の証人採用を認めました。2001年9月28日に裁判提訴以来1年間は書類のやりとりが続き、2002年10月21日に当時の県労政福祉課長、部長、および県知事を含む5人の証人申請を行いました。
裁判長は、課長の証人尋問を行った上で引き続き証人調べが必要か判断するとして、2003年2月25日に安井県労政福祉課長の証人尋問が行われました。裁判長は課長の尋問結果から部長でなく、任命権者の前知事に直接聞く事が必要と判断したのです。
「貝原俊民氏の証人を採用する」裁判長の声に、一瞬静まりかえった神戸地裁203号法廷。動揺を隠せない被告側弁護団。「尋問事項が不明確」「職を離れたとはいえ多忙な方」「日程変更もありうる」など、何とか回避したいとの思いが発言と態度に現れていました。
前県知事の証人採用が認められたのは、全国でも初めてのことです。弁護団・連絡会議は、万全の準備で臨むために全力をあげる予定です。
県行政が行う施策の中で県知事が任命権者となっているものは数多くあり、前職とはいえ当時の任命権者の証人申請を裁判所が認めたことは、今後の県行政に大きな影響を与えるのは必至です。
労働者委員の公正な選任を実現する兵庫県連絡会議は、4月17日に第2次兵庫県要請行動を行い、「第38期労働者委員の公平・公正な任命を求める申し入れ」(別紙参照)と団体署名第2次分(81団体)の提出を行いました。第1次分(176団体)と合わせて合計257団体となり、前回(109団体)の約2.4倍になりました。対応した県当局は「これまでも公正・公平に行ってきた」との態度をとったため、要請行動参加者から怒りの発言が集中しました。
任期満了に伴う第38期の地労委労働者委員改選のため、4月21日から6月3日の期間で候補者推薦が公示されました。私たちは、県当局、「連合」ともに認めざるを得ない“すばらしい候補者”を推薦し、公平・公正な県行政に戻すため、さらに運動を強化する決意です。皆さんのご協力をよろしくお願い致します。
★第10回公判日程★
日時:7月15日 (火) 13:30〜15:00
場所:神戸地裁203号法廷(予定)
内容:前県知事 貝原俊民氏証人尋問
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大学教授 長渕 満男 |
「大量破壊兵器」等の口実で政府転覆を図る米英の戦争行為は、国連憲章の精神をふみにじる侵略戦争そのものであり、一片の正当性もない。 決して許されない!一日も早く中止べきである。小泉首相は、憲法と国連憲章の精神をふまえ「中止」を進言し、イージス艦を呼びもどすべきである。 |
全港湾阪神支部 鳥居 成吉 |
米、英の石油資源獲得のため、イラクへの横暴な攻撃は断じて許す事のできない蛮行であり、それを支持する日本の小泉内閣も許されるものではない。 しかし、世界の多くの国々で反戦運動が広がり、平和を希求する人々の台頭は、核も戦争も無い世界へ一歩一歩近づいている。私達も今こそ声を出し行動をおこして行こうではありませんか!! |
建交労兵庫県本部 津村 訓孝 |
米英軍は、全世界でわき起こったイラク戦争反対のかつてない大きな反戦世論を無視し、そればかりか国連での議論も踏みにじり、罪のない人々の尊い命を奪いました。戦火に逃げまどう子ども達の姿が目に焼きついて離れません。 一日も早く戦争のない平和な世界になるように、私たち1人1人が大きな声を出し、二度と戦争ができないよう全世界での厳しい法規制などのルール作りが必要だと思います。 |
甲南電機労組 野口 郷志 |
戦場となるイラク国民は兵隊でもない一般市民も兵器での殺戮に合い戦争の悲劇は計り知れないものになる。 国連決議で査察団を送り調査を待って解決を図る方針を、一方的に国連安保理の決議なしに、英米が開戦したのは国連加盟国の意志尊重が損なわれたのではないかとおもわれる。国連の紛争も平和的に解決するという役割も、一国の意志に左右されるということは重大な問題ではないか? また日本国内においても湾岸戦争時には『憲法第9条の戦争の放棄』ということで自衛隊の派遣について国内外で大きく論議されたが、今回大した論議もされずにまた米国の意志により、行われたこと日本の軍備に危機感を感じる。 |
神戸交通労組 須多正裕 |
大量破壊兵器・生物化学兵器等をイラクが所持しているとの一方的な決め付けによりイラク戦争を始めた米国だが、石油利権に裏打ちされた戦争であるのは誰の目にも明らかでしょう。 日米安保を理由に、米国追随の日本政府の姿勢もなさけないが、結果的にそんな政府を選んでしまった?我々国民にも責任の一端はあります。 今我々として何が出来るのかを考え、考えるだけでなく実際に行動していく必要があるのではないでしょうか。 |
東熱労組 鈴木 義一 |
アメリカのイラク攻撃は国連決議を無視してのブッシュ政権の単独行動でこれに追従する小泉政権も国連よりアメリカが大事という態度を示している。攻撃においては米英軍の圧倒的な火力の差により首都バグダッドは陥落しイラクは無政府状態で今後アメリカに都合のいい政府を作り戦争は終結するのだろうが、イラク国民やアラブ諸国には攻撃によって反米感情が根強く残り、テロは無くならないと思う。 |