働く者にとって農協というのは、農業に関係していなければあまり関心を持たない存在です。私も今回の事件の前までは、不良債権処理で銀行とならんで問題になったなあ、銀行と同じで合併して名前が変わったなあ、ということくらいの認識でした。
しかし、侮ってはいけません。農協は92年からJAという名称になり、また今でも全国に900万人以上の組合員(労働組合員と間違えそうですが、農業協同組合なので組合員となります)も組織しており、日本の農家の生活を守り、よりよい地域社会を築くという大きな目的を掲げた組織です。ただし、株式会社ではないので、出資をした農家組合員さんに配当というのはありませんし、組合員さんは一人一票が原則となっています。これは、農協が協同と相互扶助の精神を原理にしていると説明されます。
その実態は、農業生産に関する営農指導、貯金や貸付等の信用事業、保険などの共済事業、農作物を販売する経済事業、その他いろいろな事業(ガソリンスタンド等)を展開している地域経済の一つの中心的存在です。全体的にみると、地域の一大独占企業と言えなくはないのですが,個々の事業を見ると、銀行、保険会社、スーパー等の企業との競争ではかなり厳しいのが実情です。そのため赤字経営を続け、各農協の合併によって何とか救済されているというような状況です。
兵庫県では、10年前には60あった農協は合併を重ねて現在15になっています。今回登場する「みのり農協」も、4つの農協の合併で出来たもので、三木市・西脇市と美嚢郡、加東郡、多可郡の8町をカバーする農協で、本店は社町にあります。農協の組合員数は3万人以上です。職員は、正職員約650名、パートが200名以上もいます。
ここには,労働組合が2つあります。しかし、そのうちの管理職労働組合について農協は否認しています。
もともと合併前には、一つの農協にしか労働組合はなかったのですが、合併を機会に労組は組織拡大を続け約300名を組織するまでになりました。しかし、その後農協側の攻撃で脱退が続き約200名まで減少してしまいました。
労働組合は、4つの農協の合併により従前の労使協定や労使慣行を承継しているとしてきましたが、農協側はこれを否定して、労使紛争が始まっています。合併後の始めての春闘(01年)では、労組の賃上げ要求に対しては、「経営が厳しい。原資が無い。」などの一点張りで、具体的な回答をしようとしませんでした。そこで、労組側が合併時の資産査定に問題があるのではないかと追求したところ、農協側は経営内容に口出しすべきではないと反発をしてきました。
労組側はそれでもねばり強く団交を重ね、また経営問題についても要求を重視して、その後発展的に「コンプライアンス闘争」を位置づけ、農協に対して法律などのルール遵守を求め、労組が経営者のチェックをするという運動をしてきました。
これに対して農協側は一層の嫌悪感を持つようになり、労組に対する攻撃を強めてきました。例えば、協定書の一方的破棄、団交での農協役員の出席拒否を実行してきました。さらに、労使間では労働条件の変更に関しては、労使で協議するという協定があるにもかかわらず、営業職種の従業員の勤務時間を一方的に変更してきました。労組がこれを指摘すると、「就業規則に書いてあるから変更には当たらない」などと詭弁を弄して、団交に応じませんでした。また、労組側の出した文書やニュースに対して、内容について干渉してくるようになりました。ついには、水面下で様々な脱退工作を行うようになり、昨年の労働組合の大会前後には40人以上もの脱退者を出すまでになりました。
このような事情から、今回ついに地労委への申立を行ったのです。
地労委の第1回の調査期日は、まもなく始まります。現在の地労委は、手続の進行が早いですので、ひょっとすると今年中でも結論が出る可能性があります。労組としては、早急に運動を作り上げています。
民法協ニュースの読者の皆さんには、初お目見えですが、今後ともみのり農協労組へのご支援をよろしくお願いします。
なお、弁護団は、西田と白子弁護士です。
このページのトップへ全日検第2次訴訟で、神戸地裁は、被告協会に対し、原告が申し立てた「文書提出命令申立」を全面的に認め、原告が要求した文書(税務申告書添付の「所得の金額の計算に関する明細書」、「退職給与引当金の損金算入に関する明細書」、「役員報酬手当等及び人件費の内訳書」)の提出を命じた。
なお、被告協会は本命令に対し即時抗告を申立て、第1次訴訟の際と同様一貫して不誠実な対応に終始している。
神戸地裁の決定(文書提出命令)は、被告協会のご都合主義、即ち一方で経営危機なるものを喧伝して労働者に過酷な不利益を加えつつ、他方で赤字経営の実態は秘密として保護すべきであるという使い分けを、「失当である」と厳しく批判した。
原告が提出を求めた文書(税務申告書等)は、課税対象からの除外が認められない「不要不急」の支出、バランスを欠く支出等を記載したものであり、就業規則の不利益変更の合理性を争点とする以上、裁判所から見ても、これらの文書の取調べが必要であると判断するのは至極当然のことであった。
また、裁判所は、本件において、真実発見と裁判の公正が、資料公表による協会のいう不利益や役員のプライバシーなるもの等にも優越することをも指摘した。
このように、労働者に犠牲を求めるのであれば、その実態を進んで明らかにすることは、(協会以外の)誰の目から見ても、当然の義務なのであった。
協会は、昨年5月の提訴から半年以上たって「財務諸表」(国土交通省提出分)を出してきたが、そもそもこれらは全くの第三者からの公文書等公開請求の対象ともなるものである。ましてや労働者に開示することに何の差し障りもないはずこれらの文書すら秘匿し、今回、税務申告書等の文書提出命令を回避する方便としてようやく提出してきたところに協会の不誠実さがあらわれている。
被告が自ら引用する最高裁判例(第四銀行事件)は「不利益を労働者に法的に受忍させることを許容することができるだけの高度の必要性」を要求している。この指摘を真摯に受け止めない限り問題解決があり得ないことを、被告協会は知るべきである。
このページのトップへ首相の諮問機関である「総合規制改革会議」(議長オリックスの宮内義彦氏)は、昨年12月23日規制改革推進の方向をまとめた最終答申書を小泉首相に提出しました。そこでは、薬販売の「規制緩和」などとあわせて労災保険の民営化を求める提言が含まれていました。
この労災保険の民営化問題は、労働者国民への悪影響が懸念されるので、改革会議の一部の委員も反対したほか、労働組合や日本医師会なども反対表明をしています。労災保険の問題をもう少し見てみましょう(日本労働弁護団の反対意見書12月10日がコンパクトにまとまっています)。
労災保険制度は、被災した労働者に対し迅速かつ公正な保護をするため、全事業主の強制保険制度として設けられた制度です。したがって、事業主による加入手続や保険料納付の有無に拘らず、保険給付が行われることになっています。このあたりは、自動車事故の自賠責保険と似ています。
労災保険の具体的内容は労働基準法や労災保険法によって定められていますが、何よりも忘れてはならないのは、労災保険の基本理念が憲法の生存権(憲法25条)、労働基本権(憲法27条)の保障に由来すると言うことです。したがって、利潤追求の民間営利企業でなく、当然に国家が責任を持つべきものと考えられます。
具体的に、民間営利企業が参入するとどうなるでしょうか
(1) 未加入企業の発生と保障されない労働者の発生民間企業が利益を前提とする以上、保険料は産業、職種、さらには事業場毎に区々になることが予想されます。その場合、保険料が高くなる企業が契約しないことが考えられ、さらには保険会社から契約を拒否される企業が出てくることも考えられます。
そうすると、労働者が入社した企業によって労災保険制度があるかないかが分かれてしまい、保険給付を受けられない労働者が多数存在するおそれが高くなります。
これは、自賠責保険ではなく、自動車の任意保険のことを考えてみればわかりやすいと思います。
現行の労災保険制度では、国家は未納企業から保険料を強制聴取することが出来、また仮に未納のままでも被災労働者への保険金支払いには何の影響もありません。
しかし、民間企業が運営主体となった場合、未納企業から保険料を徴収するには面倒な裁判をしなくてはならず、それをするくらいなら保険契約を解除する方がラクだと言えます。したがって、保険料未納企業は保険契約を解除され、その結果保険給付を受けえない労働者が増大するおそれがあります。
国家一律の事業でなくなった場合、保険会社毎に給付認定が区々になることが考えられます。また、仮に基準自体を同一にしても、実際の運用において、会社において差が生じ支払のよい会社、悪い会社が生じることは必至でしょう。
とくに、民間営利企業である以上、利潤優先で保険金支払を渋りがちなりうるのは、任意の自動車保険でも同じことが言えるのではないでしょうか。
また、保険会社が倒産すれば、全く補償を受けられなくなるのです。
もちろん、現行の労災保険制度にも、労災不認定の問題など欠陥があります。特に過労死・過労自殺の場合の認定が厳しく裁判まで争うような事例も後を絶ちません。
いま労災保険に求められているのは、こうした欠陥を是正して憲法および労基法の理念を十全に保障することであって、民間企業の自由にさせることではないはずです。はじめに述べたように、各界からの反対は根強いものがあり、私たちも大きな反対の声を挙げていきましょう。
このページのトップへ本件は、職務怠慢などを理由に大阪市の化学プラント会社(以下「本件会社」といいます。)を懲戒解雇された男性が、就業規則に基づく解雇手続の効力を争い、違法な懲戒解雇の決定に関与したとして、当時の会社代表者に損害賠償請求をした事件です。
本件会社は、労働者代表の同意を得た上で、旧就業規則を作成し、昭和61年10月30日、労基署に届け出ました。その後、本件会社は、労働者代表の同意を得た上で、新就業規則を作成し、平成6年6月2日、労基署に届け出ました。両就業規則には、同様の内容の懲戒解雇規定がありました。
そして、本件会社は、平成6年6月15日、職場の秩序を乱したとして、新就業規則の懲戒解雇規定を適用して、男性を懲戒解雇しました。
男性は、本件懲戒解雇以前に、会社側に対して、適用される就業規則について質問しましたが、この際には、旧就業規則は備え付けられていませんでした。
控訴審は、本件懲戒解雇を有効とし、男性の請求を棄却しました。
まず、本件会社が新就業規則について労働者代表の同意を得たのは、平成6年6月2日であり、それまでには新就業規則は労働者らに周知されていないから、男性の同日以前の行為については、旧就業規則の懲戒解雇事由を検討すべきであるが、男性には旧就業規則所定の懲戒解雇事由があり、新就業規則の懲戒解雇事由と実質的な違いはないから、本件懲戒解雇は有効である、と判断しました。その前提として、旧就業規則の効力について、旧就業規則が備え付けられていなかったとしても、有効であると判断しました。
最高裁判所は、「就業規則が法的規範の性質を有するものとして、拘束力を生ずるためには、その内容を適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていることを要する」と判断しました。そして、控訴審は本件会社が労働者代表の同意を得て旧就業規則を制定し、これを労基署に届け出た事実を確定したのみで、その内容を労働者に周知させる手続が採られていることを認定しないまま、旧就業規則に法的規範としての効力を肯定し、本件懲戒解雇が有効であると判断しているが、これは審理不尽の違法があるとして、控訴審判決を破棄しました。
最高裁は、秋北バス事件(昭和43年12月25日判決)において、「就業規則は、一種の社会的規範としての性質を有するだけでなく、それが合理的な労働条件を定めているものである限り、経営主体と労働者との間の労働条件はその就業規則によるという事実たる慣習が成立しているものとして、その法的規範性が認められるに至っているものということができ…、当該事業場の労働者は、就業規則の存在及び内容を現実に知っていると否とにかかわらず、また、これに対して個別的に同意を与えたかどうかを問わず、当然にその適用を受けるものというべきである」と判示し、就業規則の法的規範性を肯定しました。
本判決は、このように法的規範性を有する就業規則の効力発生要件として、労働者への周知(労基法106条)が要件の1つとなることを初めて明示したものです。就業規則に労働者を一律に拘束する効力が認められるか否かを判断するに当たって、労働者への周知という要件について慎重に検討することが、労使ともに要請されるということができます。
このページのトップへ長引く不況下でのリストラと、必要なときに必要な数だけの労働者を低賃金で効率よく使いたいという企業側の欲望を満足させるための労働市場の流動化が、ここ数年急速に進んでいる。しかしそれは何も民間だけのことではなくて、公務員も例外ではないらしい。国や自治体の財政赤字問題、またどういうわけかマスコミで執拗に繰り返される歪んだ公務員バッシングとそれに煽られた住民の公務員へのねたみ感などに基づいて、行政改革という美名の下に、民間と同様の公務員リストラが着々と進められてきている。そして、公務員労働者の雇用や労働条件が危機に瀕しているのだが、それだけでなく結局は、民間労働者との労働条件等を巡る足の引っ張り合いや住民サービスの低下にもつながりかねない。
このような問題意識から、民法協では、これまでほとんど取り組めていなかった公務員問題について、まずは連続学習会を行っていくことにした。今回は、04年1月20日の「地方独立行政法人について」学習会概要を報告する。
住民の生活等の公共上の見地から必要な事務・事業であるが、行政が主体となって直接実施する必要はなく、かといって民間に委ねては採算性に乏しいために実施されないおそれがあるか、または一つの主体に独占して行わせる必要がある事務・事業を行うことを目的として、行政から切り離して独立したものとして設立された法人をいう。地方行政だけでなく、国の行政についても先行して制度化され、既に実施されている。
なお特定独立行政法人のうち、その業務の停滞が住民の生活、地域社会もしくは地域経済の安定に直接かつ著しい支障を及ぼすため、またはその業務運営における中立性及び公正性を特に確保する必要があるものについては、「特定」独立行政法人として、その職員に公務員の身分を与えるとされている。もっとも、公務員型の特定独立行政法人と非公務員型の一般独立行政法人とは、このように職員の身分関係その他に重大な相違があるにも関わらず、両者の区分は極めて曖昧である。
ことの発端は、97年12月の行政改革会議最終報告において、行政機能の減量、効率化等の基本的考え方として、「官から民へ」という基本的視点に基づく事務・事業の徹底的な見直しと、民営化・民間委譲をあげ、それが困難な事務・事業について独立行政法人制度の活用を図る、とされたことから始まる。企画立案機能(官に残す)と実施機能(民へ)を分離するというコンセプトに基づいて、実施機能はできるだけ民営化して行政をできるだけ身軽にすべきだが、それができない場合に次善の策として独立行政法人を使うというもので、要は、分社化リストラの自治体版というべきものである。
対象業務は、試験研究、大学の設置管理、水道、交通、病院、社会福祉、公共的施設管理など多岐にわたっている。
国の行政については既に相当先行しており、98年6月、中央省庁等改革基本法で独立行政法人を法律上の制度として認知、99年7月、独立行政法人通則法成立、99年11月、国立病院・療養所などを除く86の機関・業務を59の独立行政法人に移行するための独立行政法人個別法成立、01年4月、上記移行実施(03年4月には62法人に)、04年4月1日にはさらに国立病院機構(全国1法人)と国立大学法人(89法人)の設立が予定されている。
そして遅れて地方行政についても、03年7月、地方独立行政法人法が成立し、04年4月1日には同法が施行されることになっている。
自治体リストラのツールとしては、この地方独立行政法人以外にも、従前からの@地方公営企業、A第3セクター、B民間委託があり、またC公の施設の管理委託制度というものも03年3月の地方自治法改正により、同法244条〜244条の4で創設されている。これまでは地方公共団体の管理権限の下で、公的な性格のある管理受託者が具体的な管理業務を執行するものとされていたが、法改正により、公的団体に限らず地方公共団体の指定を受けた「指定管理者」が、単に業務執行だけでなく管理そのものを代行できることになったものである。例えば、地方公共団体が設置する文化センターについて、株式会社等の民間事業者が利用料金制も含めて管理できるようになった。
第3セクターは新たな事業を行う場合、民間委託は実施主体は自治体に残しながら、実働は民間に丸投げする場合であるのに対して、独立行政法人は既存の行政事務を実施主体ごと行政から切り離していく場合に使われることになる。総務省が対都道府県及び政令市に行ったアンケートでは、地方独立行政法人の設立検討対象は、大学、試験研究機関、病院の順に多い。
兵庫県、神戸市では、神戸市立外国語大学の法人化が決まっている外は、病院等を含めて法人化の具体的な予定はされていないようである。但し、神戸市交通労働組合の話では、都市バスの場合、方向としては法人化ではなく、さらに進んだ完全民営化が考えられており、札幌市営バスは既に民営化が決定されており、横浜市バスもその方向で計画が進められているとのことである。
設立団体となる自治体が定款を定めて議会の議決を経て設立され、さらに総務大臣(都道府県・政令市が設立する場合)または都道府県知事(市町村)の認可を受けて発効する。
法人の理事長・監事は自治体首長が、その他の役員は理事長が任命する。
当該業務に従事する自治体職員は当然に法人の職員となり、民間における労働契約承継法とは異なり異議申立はできない。特定法人の場合は公務員の身分が継続するが、一般法人の場合はその身分を喪失することになる。この点は、分限・懲戒によらない限り身分を保障するとされている地方公務員法との整合性が問題になる。
ところが労働条件については、任用関係から労働契約関係に変わるため、労働契約の承継は考えられないとされ、同一条件が維持される保障は何もない。むしろ、法人では経営状態や業務成績が考慮されるので、大幅引き下げされる危険性が極めて高い。
目標管理の手法に基づいて運営される。まず首長が期間3〜5年の中期目標を作成して議会の議決を受け、その中期目標を達成するための中期計画を法人が作成して首長の認可を受け、さらに法人がその中期計画に基づいて各年度計画を作成して首長に届け出る。
そして、議会に代わって設立団体(自治体)に設置される評価委員会が、中期目標及び各年度計画に対応する実績について主に企業経営の見地から評価し、勧告等を行う。
法人の赤字は地方財政によって補填されることになるが、法人の経営が改善せず地方財政への圧迫が続けば、議会の議決及び総務大臣または都道府県知事の認可により法人解散となる。その場合、職員の身分は、特定法人・一般法人を問わず失われることになる。
設立された法人に自治体労働者が移籍する場合、次のような影響が考えられる。
プラス面としては、当然のこととは言え、労働基本権の回復がある。一般法人(非公務員型)では争議権を含めて全面回復し、特定法人(公務員型)でも争議権以外の基本権を回復する。
マイナス面は、これまでに述べたことを整理すると、
@設立時、諾否の自由はなく当然移籍するものとされており、殊に非公務員型では公務員の身分を喪失するとされている点が極めて問題である。また臨時非常勤職員については、法人設立を機に任用止め(解雇)のおそれがある。
A設立時、賃金等労働条件が承継されるとは限らない。
B設立後も、法人の業績によって賃下げ等不利益変更のおそれがある。
Cさらには不採算が継続して法人解散となると、全員解雇のおそれもある。
もともと行政を身軽にするための制度であるから、最大のコストである人員や人件費が圧縮される方向で制度化や運営がされるのは、いわば当然であろう。
独立行政法人化が先行した国の関係機関では、丸3年を経た現状でも、特定法人から一般法人への変更、法人同士の合併のほか、解散の可能性が言われているものもあり、本年4月からの法人化が予定されている国立病院では法人への移行に伴って、賃金等労働条件の不利益変更が言われているとのことである。また賃金等についての団体交渉では、財務省からの締め付けを口実にした限界があるとのことであり、法人化に伴う労働基本権の回復といっても十分機能しているかは問題がある。
@ 法人では経営判断が全てに優先されるから、収益性が悪い業務については公共的責任が放棄され、利益を生まない住民サービスが低廃されるおそれが高い。法人設立当初は、当該業務の実施主体が行政から法人に変わるだけで、住民が接する職員の変動もないから、住民にとっては法人化による悪影響を理解しづらい。しかし、一旦法人化されてしまえば、「経営難」を理由に解散することは容易であり、その時になって解散反対や法人化反対を訴えても「時、既に遅し」である。
A 首長・理事長の裁量が大きいため、ワンマン経営に陥りやすく、議会による民主的コントロールが及びにくい。結局、無責任な運営や新たな利権団体化のおそれがある。
B 法人は行政そのものとは異なるから、原則として情報公開条例、住民監査・住民訴訟の対象外となる。そのため、行政として行われている現状では、様々な手法をとりうる住民参加が極めて限定的なものにならざるを得ない。
このページのトップへこのたび兵庫県民主法律協会に入会させていただいた阪田健夫です。どうぞ、よろしくお願いします。
修習は42期で、昨年5月に大阪弁護士会から登録換し、阪神尼崎駅前の事務所で1人で執務しています。
大阪の民法協では、1992年と93年の2年間、宮地光子事務局長時代に5〜6人いた事務局員の1人として、ヨーロッパ労働裁判制度調査団(この時はドイツとイギリスの2カ国でした)に参加するなどして勉強させてもらいましたが、労働事件・労災事件の件数は多くなく、両手で数えられるぐらいしか経験していません。
その中で特に印象に残っているのは、三和銀行事件(昇級昇格差別の是正を求めた地労委事件と銀行を批判する出版物に寄稿したことに対する戒告処分の無効確認を求めた訴訟を並行して行い、地裁での勝訴を梃子に地労委での勝利的和解を勝ち取りました。)と向井腰痛裁判(養護学校教諭の非災害性腰痛について公務外とした地方公務員災害補償基金大阪府支部の処分に対する取消訴訟で、95年に地裁で勝訴し確定しました。)、それに今年1月30日に大阪高裁で逆転勝訴し確定した堺市の小学校教諭の過労死事件(過重な公務により36歳の若さで脳梗塞を発症し急死した鈴木均さんの死亡を公務外とした地方公務員災害補償基金大阪府支部の処分に対する取消訴訟。)です。いずれの事件も長く厳しいたたかいでしたが、弁護団の一員として勝利を味わうことができたことはたいへん幸せな経験であり、良い勉強をさせてもらったと思っています。
このほか、現在係属中の事件では、今年2月3日に提訴したばかりの、大阪市立盲学校・聾学校・貝塚養護学校の3校の寄宿舎指導員38名が給与支払義務者である大阪府を被告として、過去2年分の宿直勤務は労働基準監督署長の許可を得ていない違法なものであり、宿直勤務として労働基準法の労働時間に関する定めの適用除外を受けることができないので、深夜の時間外労働として5割増しの割増賃金及び付加金の支払を求めている訴訟と、住友海上火災を定年退職した女性が、現在もなお苦しめられている全身の疼痛について、全損保の役員であったために組合分裂以降受けた過酷な人権侵害により発症した持続的身体表現性疼痛障害及び10年間の邦文タイピストとしての過重労働による頸肩腕障害によるものであるとして損害賠償を求めている訴訟(大阪地裁)があります。
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