神戸弘陵学園で2002年から続いた不当労働行為事件(民法協ニュース420号)は、2005年7月22日、神戸地裁第6民事部合議において、不法行為に基づく損害賠償請求を一部認容する判決がなされた。
当該事件は、続発する経理問題を追及した組合を嫌悪し、組合活動に対する支配介入を繰り返したあげく、組合中心者の4名をねらい打ちにして懲戒解雇処分を強行したというものであった。
こうした不当労働行為に対する組合の反撃は迅速で、校内では組合の正当な主張が圧倒し、また、兵庫県地労委への救済申立て、神戸地裁への仮処分申立て、本訴提起というように法的手段を選択した結果、翌2003年6月には、仮処分事件で完全勝利(被解雇職員の地位保全決定)し、学校側も懲戒解雇処分を撤回せざるを得ず、事件の帰趨は、本案判決の時点ではっきりしていた。
したがって、残された問題は、本案判決で獲得した勝利を今後に生かしつつ、問題点を克服しつつ、最終的に学校を正常化させることになると思われる。
判決当日、報告集会が開かれたが、参加者からの意見は必ずしも勝利を喜ぶものばかりではなかった。代理人弁護士からみても、今までの労働裁判の到達点からみれば逆行している点があり、大変不満が残るものであった。そこで、判決の重要なポイントを押さえておきたい。
(1) 懲戒解雇処分について原告らの損害を認めたこと判決は、懲戒解雇処分によって、4名の原告が、生活の不安におびえるなど多大な負担を被ったことを指摘して、一人あたり慰謝料100万円と弁護士費用20万円の損害賠償請求を認容した。本件では、たしかに、懲戒解雇処分によって退職金が支給されなくなるおそれ、刑事告訴された不安など原告らの精神的損害は大きなものであったが、裁判途中で学校側が懲戒解雇を撤回したことから、損害賠償に影響が及んでしまうのではないかという不安があった。しかし、裁判所は、懲戒解雇撤回によって填補されうるものではないという判断を示して、4人あわせて400万円という慰謝料を認めたので、この点は積極的に評価されるべきである。
(2) 理事長、校長の共同責任を認めたことまた、判決は、不当労働行為の先頭に立ってきた理事長の責任を当然認めるとともに、その影にかくれてしまいがちな校長(組合に対する理事会の嫌悪をあおるとともに自らもいくつかの実行行為に直接関与している)についても、責任を認定している点は、評価できるものであった。
(3)理事の責任、学校自身の自己責任を否定したこと他方、その他の理事については、学校経営に対して無責任であることは認めつつも不当労働行為の共謀を否定し、その責任を免罪した点は見過ごすことができない。判決の理屈で言えば、学校経営に関して無関心で正常な労使関係を図る努力を怠れば怠るほど、その責任を免れることができることになってしまう。こうした私学の無責任体制が、労使紛争の原因であることに目を向けようとしないのである。
また、学校という組織体として団交拒否、懲戒処分を行ったにもかかわらず法人自身の自己責任を認めなかった(理事長らの不当労働行為について法人として責任を負うことは認めている)ことも、法律論として、古典的不法行為論ともいうべきであって、公害事件・労働事件等で企業体そのものの責任を認めるまでに発展してきた不法行為理論の大幅な後退である。
(4) 組合の損害賠償請求を認めなかったことさらに、判決は、組合が弱体化しなかったので損害が発生していないという理屈ではあったが、組合に対する不法行為を否定しており見過ごすことができない。使用者の理不尽な攻撃を必死ではねのけた労働組合としては酷な認定である。従前の裁判例は、組合員個人に対する不利益取り扱いが、個人に対する関係でも組合に対する関係でも不法行為が成立することを認めていた。そうした裁判の本流に背く判決であって、この点は他の労働事件への悪影響が大いに懸念される。
このように、組合員個人原告らの裁判の点では前進しながらも、組合の請求を否定し理事者の一部を免責した点については重大な問題であると認識し、控訴して改めることを確認した次第である。
すでに組合運動としての事件の帰趨は明らかであり、その最後を締めくくる意味でも控訴審においては完全勝利を勝ち取りたいと思っている。
このページのトップへ神戸弘陵学園の懲戒解雇と組合に対する損害賠償事件は、7月22日神戸地裁で4名の被解雇者に対し、処分当時の理事長・校長と学校法人が、連帯して損害賠償をするようにとの勝利判決を勝ちとりました。しかし労働組合に対する賠償は認めず、処分当時の他の理事について賠償責任を負わせていないことにやや不満は残ります。事実関係はほぼ原告の主張どおりに認定し、完全勝利の判決です。M元理事長とK元校長は、控訴したようです。黙って見過ごすことはできません。原告も不満な2点で控訴しました。
私教連では今年3月、私立須磨浦小学校のS先生が、理由を明らかにしないまま解雇され、その撤回の闘いが始まりました。また須磨学園でもY先生に対する「いじめ・パワーハラスメント」が起こっています。一方で、育成学園(神戸国際調理製菓専門学校)では、賃金是正を求めた教員が解雇されたことをきっかけに、組合づくり相談が寄せられ約2ケ月の準備の後、7月25日に結成通告しました。解雇された教員は、私教連には相談なく独自に仮処分を申請し、審尋の中で和解したようですが詳細は不明です。この仮処分事件の審尋に、被解雇者の要請を受け陳述書や若干の資料を提供した組合員が、懲戒処分を通知されています。この懲戒処分の撤回を求めて、7月28日、団体交渉を申し入れました。
* * *1990年代に入って、労働法制は大きく変わります。「連合」の結成と無関係とは思えません。さらに1995年に日経連が発表した「新時代の日本的経営」によって拍車がかけられました。民法協は1996年春闘に当り、労働弁護団の鴨田弁護士を招いて「はねかえせリストラ」をテーマに学習会を開くとともに、マンネリ春闘打破をめざし「地労委集団斡旋申請の呼び掛け」を行いました。本格的な労働委員会の民主化への取り組みの開始でした。民法協ニュースで、シリーズ「地労委へ行こう」が掲載されました。このシリーズは、98年にかけて18回続けられました。そして最終の18回は、労働者委員の任命問題でした。
第37回(99年9月)民法協総会議案は、日限を切って地労委民主化対策会議の立ち上げを方針化しました。以後第37期委員選任に向け、埼玉での取り組みや大阪の労働者委員を招いての学習会・シンポジュウムなど、全国の先進的な取り組みなどに学びながら兵庫での「連合」独占を打ち破るための取り組みが具体的に始まりました。兵庫地労委の第37期委員選任に向け、非連合の労働者委員候補を私(和田)にすることも決め、推薦労組も複数で行いましたが、「総合的に勘案した結果」、連合推薦候補の7名が選任され和田は外れました。私は91年の第32期以来、補充選出も含め7回の推薦にことごとくはずされました。9月28日「労働者委員選任処分取消等請求事件」として行政訴訟を訴え、貝原元知事の証人調べまで行いましたが請求棄却、控訴審でも控訴棄却でした。第38期は、非連合の統一候補を鳥居成吉氏(全港湾阪神支部副委員長)で闘いましたが、またしても選任されず、現在、大阪高裁に控訴審として継続中(判決は10月7日)で、第39期も鳥居氏にお願いしましたが、またもやはずされ訴訟を準備しています。中労委も同様で、国を相手の訴訟も提起され、これまで各都道府県が個別に闘ってきている「連合独占打破」の闘いの弁護団交流が初めて開催されることになり、全国の英知が結集されることにもなりました。来年4月から「労働審判制度」が始まります。労働審判員には、非連合の審判員が選任されることが決まっています。闘い続けること「継続」の力は、かならず闘いを切り開きます。
* * *さて民法協ですが、機関紙で「地労委へ行こうシリーズ」の後に、「労基法を使おうシリーズ」が16回連載されました。是非早急に「パンフ」化して、闘いの武器として活用したいものです。また昨年末から今年2月に連続5回の「労働法基礎講座」が開かれました。こうした啓蒙活動は、労働組合幹部の世帯交代が頻繁な昨今、特に大切になってきているのではないでしょうか。2ケ月に1回の幹事会での「ミニ学習会」も定着してきています。他産業の現場がどのような状況におかれているのか、教育職場では「子どもの中に情勢を見る」ということがよくいわれますが、少なくとも私にとってはたいへん参考になる学習でした。また判例研究会も、報告と弁護士さんや研究者・学者さんのやりとりは、言葉や内容が難しく分かりにくいことも度々でしたが、言葉を厳密に使うことの大切さを実感しました。会員労働組合は「知の力」を貯えるべく、「出前講座」や「無料法律相談」などをもっともっと活用すべきでしょう。
労働組合の「力」は、「数の力」・「継続の力」とともに「正義(大儀)の力」・「知の力」が重要です。民法協が運動の中で、労働者・労働組合に「正義の力」・「知の力」の源として、大きな力を発揮していただいていること、そして近年では「スクラム基金」を創設し、闘いに立ち上がる労働者を財政的にも支援することにまで配慮していただいていること、超多忙な中事務局を担っていただいている弁護士さんと中西さんに感謝しつつ、「ここに民法協あり」が、県下の労働者・労働組合に大きく広がることを願ってやみません。
このページのトップへ8月27日シシーパル須磨で増田弁護士の総合司会で総会が行われました。9条の会などの憲法改正、規制緩和労働法制改正などに労働組合の取組みを訴えた後に、代表幹事の鳥居氏より、38期労働者委員取消訴訟の報告と支援のお礼、39期の労働者委員選任も連合独占となった報告、39期の訴訟支援の要請がありましたのち、今後の民法協の益々の発展を訴えた開会の挨拶がなされました。
記念講演には「新しい憲法のはなし」VTRの上映(30分)がされた後、羽柴弁護士の「9条の心」の講演を、レジメの題「白金も黄金も珠も何せむに、優れる「宝」は9条の心 私が9条にこだわる訳」(山上憶良「白金も黄金も珠も何せむに、優れる宝子にしかめやも」が原典)について行われました。
内容は兵庫県の弁護士9条の会を進めていること。9条を変えられると、今の生活の中での基本的人権を守られない、今の普通の生活がなくなる。9条は大切であり、9条が私達に何を与えて、何を思っているのか、9条の心を訴えて行かなければならないと、また資料にもとづいて、命の大切さ、戦争の放棄、軍事産業、戦争への危険性を訴えた。講演の後の質疑応答では集団的自衛権、自衛隊の活動などに熱心な討論がありました。
総会では、情勢は白子弁護士より今回の郵政問題からの解散総選挙、不安雇用が増えており、20歳代では3人に1人が不正規労働者になっている雇用状況など。また9条、96条の改憲が重要な要素になっているとの、報告がありました。
続いて増田弁護士よりこの一年の活動報告がありました、特に前幹事代表の和田さんがニュースに執筆連載されている兵庫の労働運動の歴史、そしてホームページ利用の紹介、今年は労働法の学習会を継続的に5回行われた等、また地労委問題も従来の任命されてきた労働者委員が所属する労働組合の傾向を1つの考慮要素(連合独占)としたと推認する事が出来るとした判決の報告がされました。
活動方針では労組法改正、未組織労働者への働きかけ、労働審判制度を定着させる取組み、労働時間法制など、そして株式譲渡分社化など労働問題はできるだけ早く弁護士を含めての対策が必要である。今後は新しくホームページを通しての相談活動をも行う、学習会も従来どおり行う、新たに昨年の連続した労働法の学習会も形態を変えて行いたい。県労委(地労委)にも今回も取り組む、神戸は6民事部で担当するが各地の裁判所の判例、労働委員会の命令を集めて解析をしたいとの報告がありました。
労働判例の報告は時間的な関係で議案書を読む事で省略したのち決算報告がありました。
特別報告は、新日鉄広畑争議団の加藤氏より、裁判官への宣伝行動、世界的企業であるからしての国連人権委員会の救済を求めるなどの世界的な宣伝行動、原水禁などでの訴え、そして和解協議へとリストラ18年間の運動とその勝利判決の報告がありました。
川重争議団からは坂本さんよりの解雇事件、賃金差別についての戦い、川重包囲など運動の紹介と全員救済の確定の報告がされました。今問題になっているアスベスト過についても問題提起がされるなど、活発な意見交換がされました。
最後に2005年度新役員体制などの報告があり、議案の承認とされました。
閉会には代表幹事である長渕先生より、労働相談が全国的に増えてきているにもかかわらず、労働組合でも解決されない、困っている人に対して民法協は何とか助けられないか、との閉めの挨拶がありました。
総会終了後懇親会を開き民法協会員の親睦を深めました。
このページのトップへ9・9「9条の心」トーク&ライブを鑑賞して | |
9月9日、兵庫県弁護士9条の会ほか20団体が主催の憲法9条の大切さを訴えるイベント「9条の心」が神戸国際会館こくさいホールにて開催され、約1500人が参加しました。 少し遅れて会場に到着すると、「1階は満席ですので2階席へお願いします」と会場案内があり、うれしい驚きでした(前日に参加状況を心配されていた方々がいたからです)。 席に着くと、イラク取材中に武装勢力に拘束されたフォトジャーナリストの郡山総一郎さんが、自ら撮影した写真をスライドをとおして、カンボジアの貧困や人身売買、エイズ病棟で薬も貰えなく、毎日確実に死が近づいている事を感じながらただ寝ているだけの人々などの実態を報告されました。特に10歳にも満たない子どもたちが5,000円ほどで売春宿に売られ、日本人の売春ツアーの犠牲になっているという話には怒りと恥ずかしさで胸がいっぱいになりました。また、そのような事実が全然知らされていないことにも腹が立ちました。「いつも犠牲になっているのは子どもたちです。住みやすい世界をつくるのが大人なのに、その使命が果たされていないのが残念です」との訴えが強く心に残りました。 次に、広島で軍医として働いていたとき原爆に遭遇された肥田舜太郎さんが、被爆治療の体験を報告されました。88歳とは思えないほどお元気な先生でした。直接に被爆してない人が原因不明の症状で死んでいく。ただ見ている事しかできなかった無力さ悔しさから、二度と戦争をしてはいけない、9条を守らなくてはいけない、一人ひとりが今何ができるかを考えなくてはいけない、まずは家族と一緒に考えて下さいと訴えられました。そして、先生自身も被爆者として長生きをし多くの人に伝えていきますと約束をされました。 私は、被爆者の話を生で聞くのは初めてで、なんともいえない感情がこみ上げてきました。また、子どもたちの若い世代こそ戦争や憲法のことを考えてほしいと痛感しました。 そして、大人から子どもまでが参加する「9」をテーマにしたファッションショーや歌が披露され、とても楽しませていただきました。 このすてきな「9条の心」を企画されたスタッフの方々、陰で支えてこられた皆さん本当にお疲れ様でした。これからも頑張って下さい。 ![]() |