神戸市西区にあります身体障害者療護施設に於いて、理事長の法人私物化に反対した施設長と主任クラスの職員3名に対して6月に入って退職強要され、退職を拒否すると無期限、無給の出勤停止が連発される事態となり、「このままでは労働者の雇用も利用者の暮らしも守られない」と福祉保育労働組合に加入し、リバティ神戸分会を結成しました。
6月27日公然化以来、過去6回の団体交渉を行ってきましたが、交渉中にもかかわらず出勤停止から解雇へと変えられ、さらにはその解雇の通告日が1ヶ月遡っており、一般社会においてありえない処分に切り替わりました。これからの団体交渉は当然続けますが、8月25日ついに神戸地方裁判所に「地位保全の仮処分申請」を申し立て、不当解雇した事件は法廷の場にて決着をつけることになりました。
理事長が大阪の医療法人と提携して推し進めた「高齢者ケアハウス」計画に対し、その医療法人が医療法違反・不正請求で大阪府に摘発された事を知った施設長と理事・評議員の有志は理事長に慎重な対応を求めました。5月に入って神戸市からの建設計画が中止になってしまいましたが、その後はその医療法人が8月になって43億円もの負債を抱えて民事再生法を申請した事が新聞各紙で報じられました。結局、施設長と理事・評議員の有志が施設の危機を未然に防いだ事はあきらかです。しかし、理事長に対して異論を唱えた施設長に対する報復として解雇がなされました。また、その施設長の排除に反対した私たち職員も一緒に解雇した事は許せません。
私達は、6回の団体交渉の中で解雇撤回と職場への即日復帰を求めていますが、理事長は4名の排除に固執して解雇撤回に全く応じようとはしません。理事長は福祉施設の私物化を止め4名の解雇撤回と職場復帰を早急に決断すべきです。1日でも早く施設長と職員3名が戻れるように皆様の暖かいご支援、ご協力を宜しくお願いいたします。
このページのトップへサラ金(消費者金融)やクレジット会社・商工ローンあるいは地場の街金まで年率29%近くの高利息で貸付を行っています。金利規制について、利息制限法は10万円以上100万円未満の貸付については年率18%、100万円以上の貸付については年率15%を超える利息の約束は超過部分について無効であると定めています。ところが残念なことにこの利息制限法には罰則がございません。罰則を定めているのは出資法という法律です。出資法は年率29.2%を超える利息の約束をした場合に懲役3年以下の刑罰を定めています。サラ金業界は、罰則がない法律など守らなくて良い、として利息制限法を超える、出資法刑罰金利ギリギリの高金利で営業をして経済的困窮者から莫大の金利収入を得てきました。この利息制限法を超え出資法ギリギリの金利のことが「グレーゾーン金利」と呼ばれるものです。このグレーゾーン金利には返済義務はありませんし、払いすぎた利息部分は元本に充当され、それでも払いすぎがあれば返してもらえます。近時、過払金返還訴訟などが各地の裁判所で行われています。
総務省平成16年度版「家計調査年報」によると、年収350万円から400万円の所得層の家計赤字ラインは5万4088円と算出されます。年収300万円から350万円の所得層では2万6180円、年収250万円から300万円の所得層では1万9728円です。他方、消費者金融白書平成16年版によると消費者金融の平均利用件数は3.3社、平均借入金額は約145万円(1社あたりの平均貸付残高約48万円)、平均貸付利息は年率25.43%とされています。そして消費者金融利用者の56.6%が年収400万円未満です(年収500万円未満では約74.4%に及ぶ)。
仮に負債額150万円を3年で返済をしようとする場合、年率25%の利息では月額5万9567円が返済資金として必要となります。年収400万円未満の所得層では「家計赤字ライン」を超え可処分所得全てを借金の返済に充てても返済をすることはできず、新たな借入をしなければならないことになり自転車操業の状態に陥ることになります。年収350万円未満の所得層では更に破綻は必至とさえ言えます。
現在、経済苦を理由とする自殺者の数は年間約8000人にも昇ります。自己破産件数は約18万件です。消費者金融の利用者は約2000万人にも及ぶに至っていますが、自己破産予備軍・多重債務者は300万人を超えています。自殺・夜逃げ・ホームレスの増加・DV・児童虐待・犯罪などの社会問題・社会不安の背景には多重債務の増大による生活破壊があるとされており、高金利・多重債務被害の解決は急務となっております。非正規雇用の増大など不安定雇用の拡大が多重債務者予備軍を量産している点も指摘されております。
出資法刑罰金利は2007年1月に見直すことが定められておりました。これを受けて金融庁では昨年より有識者懇談会が開かれ、そのとりまとめでは、出資法の刑罰金利(年率29.2%)を利息制限法制限金利(年率15〜20%)まで引き下げるとの意見が多数を占めました。これを受けた本年7月に自民党及び公明党の基本合意においても、出資法の刑罰金利を利息制限法制限金利に引き下げるとの方向性が示されていました。ところが、8月末に金融庁が自民党に示した改正法は、年率28%の特例高金利を9年間認めるという突拍子もないものであったのです。これでは高金利引き下げではなく、高金利恒久化法案となるとして国民的批判が沸き上がったのです。その後、後藤田正純政務官の辞任と世論の批判を受けて、金融庁案は見直しを迫られましたが、9月15日の自民党合同部会では、年率25%の特例高金利を5年間認める、また利息制限法の金利区分を引き上げるという、実質金利引き上げとなる案で合意されたと報じられるに至っております。金利引き下げのための法改正がいつの間にか貸金業者の高金利取得を擁護するための法改正にすり替わってしまったのです。既に大手消費者金融では年率25%程度での貸付を実施していますから、この特例金利は現状追認にすぎないのです。
自民党では、保岡興治・甘利明・西川公也・太田誠一・塩崎恭久など従前より貸金業界側を擁護する主張をしてきたサラ金族議員が金利引き下げに強く抵抗の姿勢を示しました。また貸金業界によるパーティ券購入など政界工作も以前より幅広く行われていました。サラ金を傘下におさめた銀行業界の意向もあるかも知れません。更に、アメリカの業界団体が金利引き下げ反対の書簡を与謝野金融大臣に送付するなど政財官の癒着や外圧に屈した結果、利用者・消費者保護から業界擁護に転換してしまったのです(消費者金融大手のレイクはGEグループですしCFJ(ディックファイナンス)はシティグループです)。
貸金業界の主張は、金利規制を行えば貸し渋りが起こる、その結果借入ができない人が増えて、その人達はヤミ金から借入をせざるを得なくなるというものです。しかし、そもそも高利でしか借入ができない層というのは、貯蓄の無い低所得者層です。低所得者層が高金利で借入をしても返済ができずに生活破綻を招くことは誰の目にも明らかです。このような低所得者層に必要なのは、無利子あるいは低金利の融資であり、低所得者層の生活を保障するために必要なのは公的扶助・公的融資制度などのセーフティネットの拡充です。低所得者層の支援はまさに政府の責務であり、政治の使命です。これを高利貸金業者の高利融資に委ね、多重債務被害を放置することは、政府の怠慢であるし、政治の貧困です。
消費者金融は高金利で明らかに借主の返済能力を超える過剰な融資を行い暴利を得てきました。高金利は貸せば貸すほど儲かる仕組みとなっております(さらに債務者死亡の際には保険金で残金を回収している実態が明るみになりつつあります)。消費者金融は利用者の生活破壊など一顧だにしていません。拝金主義のもっとも典型的な産業です。この高金利貸金業者の暴利行為を規制し、高利貸しに吸い上げられていた「お金」を利用者たる消費者・労働者・中小零細事業に取り戻し、「生きる力」を取り戻す作業が高金利引き下げなのです。労働者がサラ金の高利の支払に追われる日々を送っているようでは、我が国に山積する様々な問題・労働問題・教育問題・平和問題・憲法問題に力を合わせて取り組むことはできません。社会をより良き方向に進めるためには、何よりもまず高利貸しを社会から放逐する必要があるのです。
高利でしか借入ができない人に生活破壊を招く高利で貸し付けることを認めるならば社会の格差は一層拡大していきます。今後我が国が、貧困層が政府ではなく高利貸しにすがり生活を破壊し高利貸しが貧困層を食い物として暴利を得ることのできる社会に突き進むのか、高利貸しのない品格のある成熟した社会を実現することができるのか、この高金利引き下げ問題は日本社会の将来を占う試金石と言っても過言ではありません。
この秋の臨時国会において、金利引き下げ法案が審議入りします。特例無き高金利引き下げを実現するために是非とも厳しい目を注いでいただきたいと思いますし、また、全国各地で毎週のように高金利引き下げ集会やデモが行われていますので御参加いただきたいと思います。
このページのトップへ6月27日の第59回分科会は厚労省「素案」を巡って労使双方が反発し、次回以後の議事が白紙になったという観測記事(めいたもの)もありましたが、8月31日には再開され、その後9月11日、19日と分科会が続くことになりました。法案上程へ向けての厚生労働省の意欲はまったく萎えていません。
12月9日(土)に開催される民法協実務研修会においても、この労働契約法・労働時間法制がテーマとなるので、あらかじめ予習した上で、じっくり学習しましょう。
さて、本稿2回目のテーマは、労働条件を定める就業規則についてです。
就業規則とは何かと聞くと、「労働条件を定めた規則」と回答する人が大半です。ですが、なぜ就業規則で労働条件を定めることができるのでしょうか?就業規則は使用者が一方的に決めたものです。近所のお店でお菓子を100円で買うときは、売買条件について、100円で売る、100円で買う、という売主、買主双方の合意があります。しかし、就業規則は、使用者が一方的に定めただけで労働者側の合意はありません。それなのに、当事者を拘束するというのは不思議な話です。
皆さんには、このことに疑問を持ってほしいと思います。労働者は奴隷でもなければ、農奴でもありません。他人が決めたことを一方的に押しつけられていいはずはないからです。まして、勝手に不利益変更されるのはおかしなことです。
こうした素朴な疑問から裁判が起こされたとき、裁判所も説明に困りました。最終的に裁判所が出した結論は、秋北バス事件最高裁判決で、@合理的な就業規則ならば法的規範と認めてよい、A使用者が就業規則を変更して労働者に不利益な労働条件を一方的に課すことは原則として許されないが、例外的に合理的な場合は仕方がない、というものです。理屈がはっきりしないのと、ここの労使紛争を解決するにはあいまいすぎる判断だったため、その後、就業規則の不利益変更は幾度となく争われてきました。労働者が勝つ場合もあれば負ける場合もある、そういう状況でした。
最高裁判決が法理論として苦しいことを意識したせいか、「素案」ではこうした就業規則の役割を法律として明確化しようとしています。法制化するのはかまいませんが、問題はその中身です。
「素案」では、「労働契約締結の際に、使用者が労働基準法を遵守して定めた就業規則がある場合には、その内容が合理的なものでない場合を除き、個別に労働契約で労働条件を定める部分以外については、当該事業場で就労する個別の労働者とその使用者との間に、就業規則に定める労働条件による旨の合意が成立しているものと推定する。」としています。
最高裁判決は、合理的な就業規則の場合は労働者を拘束すると説明しています。つまり、合理的な内容であることを使用者側が立証しないといけないのです。
しかし、「素案」によると、就業規則の内容で合意したものと推定されてしまうので、就業規則の内容を受け入れられない労働者側が不合理であることの立証責任を負担しなければならなくなるのです。今回の「素案」は、多少労働者の立場も考慮していた最高裁判決を踏みにじって、完全に使用者側の利益になるような形にしているのです。こうしたことから検討会では「労働契約は労働者と使用者の「合意」が基礎であり、就業規則に合理性があればそれを契約内容とする合意があったと推定するルールを中心に法律化するのは許されない。」と反対した労働者側委員もいました。
(2) 不利益変更の場合は、判例理論を一応、踏襲就業規則が不利益に変更された場合はどうなるのでしょうか?
「素案」は、「就業規則の変更等の際に、使用者が労働基準法を遵守して就業規則の変更等を行い、かつ、その変更によって労働者が被る不利益の程度、その変更の必要性、変更後の就業規則の内容、変更に係る協議の状況その他の事情に照らして、その労働条件に係る就業規則の変更が合理的なものであるときは、個別に労働契約で労働条件を定める部分以外については、個別の労働者と使用者との間に、変更後の就業規則に定める労働条件による旨の合意があるものと推定する。」としています。
これは、最高裁判決の判例法理(第四銀行事件など)をおおむね取り入れたものとなっています。もちろん、「契約は当事者双方の合意がなければ変更できないのが原則であり、合理性があるからといって「合意」を推定すべきではない。」(検討会での労働者委員意見)という意見もありました。
さらに、素案の内容も、最高裁判決の明文化といえるか疑問も残ります。たとえば、労働条件といっても、労働者にとって大事なものから些末なものまであります。たとえば賃金の額は大事な問題です。こういった問題について、みちのく銀行事件は、「特に、賃金、退職金など労働者にとって重要な権利、労働条件に関し実質的な不利益を及ぼす就業規則の作成又は変更については、当該条項が、そのような不利益を労働者に法的に受忍させることを許容することができるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものである場合において、その効力を生ずるものというべきである。」とのべ、不利益変更のチェックを厳しくしているのです。しかし、「素案」ではこうした点は具体的に触れていません。
(3) 過半数組合がある場合の合理性推定不利益得変更のルールについては、見過ごすことのできない問題点が「素案」に盛り込まれています。それは、「労働基準法を遵守して就業規則の変更等を行う使用者が『当該事業場の労働者の見解を求めた過半数組合』との間で合意している場合には、上記コの合意があるものと推定する。ただし、労働者がその就業規則の変更が不合理なものであることの反証を行った場合には、この推定は覆されることになるものとする。」というものです。
要するに、過半数組合が就業規則の不利益変更を認めている場合は、個々の労働者が就業規則改悪の合意をしていると推定しているのです。こうした議論を先取りしたのはたしか菅野和夫著「労働法」でしたが、こうした考え方は重大です。つまり、どんなひどい不利益変更をしても、過半数組合が認めた場合は事実上OKということになるのです。使用者にとってはこれほどやりやすいことはありません。
本来労働条件とは、個々の労働者の問題であるはずです。労働者の事情(被る不利益の程度)こそ最優先に考えなければならないファクターです。それを後景に追いやっているのです。
もちろん、今までの裁判所もこうした考え方には立っていませんでした。具体的には、先程述べたみちのく銀行事件は、55歳以上の一部労働者の賃下げにつき多数は組合が合意していた事件でしたが、最高裁は不利益変更は許さないとしました。「素案」は、判例の考え方を後退させているのです。
こうしたあからさまな提案に対する、労使の反応は対照的でした。使用者側は「我が国では就業規則による労働条件の変更が行われるのが実態であり、就業規則の変更によって労働条件を集団的に変更する場合のルールについて、過半数組合等との間で合意している場合には、労働基準法の意見聴取や届出を失念した場合も含め、合理性の推定効を認めるべきである。」とまで言っています。これに対し、労働者側は「使用者が一方的に作成する就業規則を労働契約の変更手段とすることを盛り込むことには反対。」と述べたのです。
(4) まとめこのように、「素案」は、使用者側が定める就業規則を持ち上げ、労働者側から争う余地を狭めようとしているものであり、大変問題があるといえます。
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