本年1月19日、石川島播磨重工業(以下「会社」と言います。)と同社の東京、武蔵、横浜、愛知、兵庫相生、広島呉の6事業所の労働者168名(退職者、故人を含みます)との間で、会社において過去40年間の思想差別を反省し、再発の防止を約束するとともに、現役者44名については職能等級、賃金を見直し、全員に一定の解決金を支払うという画期的和解が成立しました。この和解は、その内容についてはもとより、裁判等の手続を経ることなく労働基準監督署への申告などを背景にした自主的な交渉を通して成立を見たものである点でも画期と思われますので、人権回復を求める石川島播磨連絡会と人権回復・石川島播磨弁護団が作成した「石川島播磨重工業との和解成立」に基づき、その経緯と和解の骨子を報告させて頂きます。
会社は、船舶・海洋・航空・宇宙の各部門を主力に、国内各地はもとより海外でも事業展開する造船重機産業の大手メーカーであり、和解の当事者となった労働者168名(以下「申告者」と言います。)は過去ないし現在まで会社の従業員としての経歴を有する者(ないしその遺族)で、いずれも日本共産党の党組織に所属するか、会社から日本共産党員ないしその支持者と目されていた人たちです。
会社は1960年代から資本からの独立を掲げて積極的に労働組合運動に取り組む申告者らを嫌悪し、「会社派」と呼ばれる職場リーダーや職場グループ(いわゆる「インフォーマル組織」。後にアカをおとすという意味で「へちまの会」を名乗るようになりました)を積極的に育成支援するとともに、申告者らを「反企業分子」と位置づけ徹底ョした差別・迫害を加えてきましたが、こうした会社の反共労務政策は労働組合が全造船を脱退して実質的に会社の労務機構を補完する存在へと変質変容を遂げた1970年までに確立されていき、申告者らに対する差別が強化されてきました。
具体的には、管理職、職長、班長に対し、申告者ら自主的職場活動家について「(処遇に関して)ことごとく差をつけろ」、「昇格させるな」、「仕事を教えるな」、「得意な仕事を取り上げろ」などと指示して、毎年ことさらに低い考課・評定をなし、その結果、申告者らは、同期同学歴の標準的な労働者と比較しても著しく低い職能等級(従って、著しく低い賃金)に据え置かれてきました。
そして、後述する「ZC」すなわち「日本共産党撲滅」を労務管理の根幹に据えるだけでなく、自主的活動家とは、「口をきくな」、「挨拶するな」、「(目が合うと挨拶しなければならなくなるので)目を見るな」、「ビラを受け取るな」などと職場に指示し、極端な「村八分」状態を作り出し、運動会、納涼会などの会社行事、歓送迎会、忘年会、新年会などの職場行事からも職場活動家をことごとく排除してきました。職場活動家の中には従業員が等しく享受できるはずの福利厚生制度(住宅資金借入等)の利用すら妨げられた者も少なくありませんし、1986年の合理化に際しては、一部の職場で活動家に対する「出勤妨害」や「吊るし上げ」といった凶暴な事件すら発生しました。
職場活動家らは会社の反共攻撃に屈することなく、1976年には東京地方労働委員会に昇給昇格差別の是正を求める不当労働行為救済の申立てを、1985年から86年にかけて東京地裁に不当労働行為等を理由にする配転命令無効確認訴訟を、1987年には東京地方労働委員会に懲戒解雇の出向命令と懲戒解雇の撤回を求める不当労働行為救済の申立てを行い、この3事件については地労委での勝利決定を経て1988年9月に中央労働委員会で一括解決の和解が成立しました。
更に、2000年、武蔵地区(田無工場、瑞穂工場)在籍の職場活動家9名が東京地裁に思想差別の是正と賠償等を求める裁判を提起しましたが(後に1人取下げ)、2004年3月22日、東京地裁で、@原告らに対し、遺憾の意を表明し、公正な人事を行うこと、Aコンプライアンス・ガイド教育を実施し、職場で一部従業員が疎外されることがないように働きかけること、B原告らの職能等級を変更し、過去の差額賃金と和解金を支払うことを骨子とする和解が成立しました。
この武蔵和解成立の契機となったのが、会社が作成していた「ZC管理名簿」が明るみに出たことです。「ZC」とは「ゼロコミュニスト」すなわち「共産党員撲滅」の隠語で、従業員をA(共産党員)、B(活動歴がある者)、C(支持者)、D(その他の要注意人物)に分類していますが、名簿搭載者259名中、142名がAに分類されており、これによって会社が反共労務政策を採用していることは裁判所にも動かし難い事実となり、裁判所からの強力な和解勧告となりました。
前記数次にわたる和解の成立にもかかわらず会社における反共労務政策はなお堅持され、会社及び少なからぬ申告者が移籍した関連会社では思想差別の根絶とはほど遠い状況が残存していました。他方、武蔵和解では、会社は差別の訴えがあった場合には和解の精神を踏まえて誠実に対応する旨約していたことから、ZC管理名簿でA級に搭載されていた者たちを中心とする人たちが申告者となって会社と交渉を開始、兵庫の相生工場で働いていた、また現在も相生工場ないし関連会社で働く労働者7名(1名は遺族)も申告者として名乗りをあげたため、私が一昨年秋から相生の労働者代理人として既に代理人として奮闘しておられた東京、武蔵、横浜、愛知の各代理人弁護士とともに人権回復・石川島播磨弁護団に参加するようになり、昨年3月から始まった東京での代理人交渉にも引き続き弁護団の一員として参加、20回を超える代理人交渉の末、本年1月19日の和解成立となったものです。尚、兵庫相生の申告者は全員男性ですが、和解においては男女差別も合わせて解決されています。
和解の第1の特徴は、会社が差別的な人事管理が行われていたことを認め、協定書において明瞭に思想差別についての「反省」の意思を明らかにしたことです。「遺憾」ではなく、「反省」の文字が使われたのは、この手の事件ではおそらく初めてではないでしょうか。また、会社は、不当な人事考課、仕事の取り上げ、および職場行事からの排除など、職場における「やってはならない差別行為」を詳細に明らかにし、これを管理職、職制をはじめすべての労働者に周知徹底することも約束しました。さらに、職場行事についてはすべての職場労働者に声かけをすることを約束し、声かけをしない従業員と団体にはその行事の中止勧告と禁止措置をとることも明らかにしました。
和解の第2の特徴は、差別是正の徹底です。在職者44名の職能等級、基準賃金、退職金本給を抜本的に是正させ、退職者を含めて過去の賃金差別と人権侵害の損害賠償をさせることにより会社にその責任を果たさせることができました(金額については公表しないということになっていますが、同種事件と比較してもかなりのレベルの金額であることは間違いありません)。
そのうえ、和解の履行について疑義が生じた場合は、会社は協議の場を速やかに設け誠実に対応することを約束しました。和解の履行を監視し正常な労使関係を確立する上で大きな力を発揮するものと思われます。
尚、本和解の成立については、交渉中、「個別管理計画」及びこれに関連する社内資料が新たに明らかとなり、会社が「ZC管理名簿」によって共産党員を単にAないしBと格付けしているだけでなく、人事考課・昇進管理に関する個別計画を立てていたことが判明したことが大きな影響を持ちました。ある労働者については平成7年から定年退職となる平成28年まで各年毎の人事考課の内容と定年時に到達する著しく低い「最終職能等級」が示されており、これによって一旦思想差別の対象にされてしまった労働者は、その後どれだけ努力しても常に劣位に処遇されることが宿命付けられていたことが明らかになったわけで、これにより会社は武蔵和解以降、差別は解消されたと正面切って述べることができなくなり、労働者ベースでの和解を受諾せざるを得なくなったと思われます。
弁護士1年目の1990年、石播の賃金差別事件で労働者側が労働委員会に提出した最終陳述書を読む機会があり、会社の人間性を無視した嫌がらせと差別を知って「今時、本当にこんなひどい会社があるのか」と驚いたことを覚えていますが、まさか石播の事件を担当することになるなどとは思ってもいませんでした。もっとも、本件和解の成立は、東京、武蔵、横浜、愛知の労働者、支援者、代理人弁護士の奮闘によるところが大きく、正直、兵庫相生は和解に乗っかったとの側面が強いことは否定できませんし、私自身、代理人としても交渉の末席に座っていた程度でたいしたことは何もしていません。
ただ、兵庫相生からも申告者を出して全事業所を含む解決を果たせたことには大きな意義があると思われ、この点については、相生の申告者の組織に尽力した西播労連の浜下さんと撰梅さんに感謝したいと思います。
また、相生の申告者の中には、私が弁護士になった当時、相生市会議員として奮闘されておられ、生前、個人的にもいろいろとお世話になった、1998年に病気で亡くなられた福井幹廣さんも含まれており、時効の壁を超えて福井さんら故人となられている方々のご遺族を当事者に含めて解決ができたことも本和解の大きな意義だと思います。
兵庫相生の特徴は申告者7名中、5名が現職者という点です。これは他の工場に比しても相当高い比率と思われ、これから会社が約束した再発防止策が職場で徹底されているのかを検証するについては相生でも相当に奮闘していかなければならない、それが西播地方における新たな労働運動を切り開く契機にもなるし和解成立のために奮闘した東京、武蔵、横浜、名古屋の申告者、支援者、代理人に対する恩返しにもなると考えています。
このページのトップへ労働契約法制・労働時間法制改悪の動きについては、そのつどニュースで指摘してきたところですが、前回報告して以降の動きを説明します。
まず、一定条件の労働者について何時間働いても残業代を払わなくてよい「ホワイトカラー・エグゼンプション制度」については、労働団体、法律団体の反対運動の奮闘もあって、ついに安倍首相が「法案の提出は難しい」と表明するに至りました。しかし、財界やアメリカは同制度の導入を念願の課題と位置づけており、首相の前記発言にもかかわらず、厚労相は法案提出に固執し、2月2日には、厚労相の諮問機関である労働政策審議会が、ホワイトカラー・エグゼンプションの法案要綱を了承する答申を出すなど、ごり押しの姿勢を示していました。
その後、反対運動が広がる中で、結局、政府は、2月6日、ホワイトカラー・エグゼンプション制度の今国会への提出を見送ることにし、残業代の割増率の引き上げを先行実施する方針を決めました。
ホワイトカラー・エグゼンプション制度の今国会提出を断念させたのは、民法協も含めた反対運動の成果ですが、厚労省や財界は制度導入をあきらめたわけでなく、参議院選挙後に法案が提出されてくるのは必至です。反対運動を弱めるわけにはいきません。
現行の残業代の割増率は25%〜50%となっていますが、政府は、月80時間を超えた場合には割増率を50%に引き上げる方針です(ただし中小企業には適用猶予)。このこと自体は多少はいいことでしょうが、財界は反対しています。
しかし月80時間を超えるというのは過労死ラインぎりぎりであり、それを割り増ししたところで労働者の健康保持・加重労働防止にどれほど役立つか疑問であり、また割増率25%というのは国際的にも低水準です。残業代割増率の適用範囲の拡大と割増率の引き上げは焦眉です。
また、ホワイトカラー・エグゼンプション制度が導入されてしまえば、残業代そのものがなくなるので今回の割増率引き上げは無意味にもなりかねません。
今まで述べたホワイトカラー・エグゼンプション、残業代割増率引き上げは、大ざっぱに言うと「労働時間法制」の問題で、労働基準法の問題でもあります。
たびたび指摘してきた「労働契約法制」については、これとは別物であり、政府は今国会に法案を提出する予定でいます。2月2日に労働政策審議会で法案要綱は了承されているので、法案の具体化作業の段階となっています。内容が具体化されていないので評価・批判することは容易でありませんが、今までの審議会の議論では、使用者が就業規則によって労働条件を容易に変更できるようにするおそれ、有期労働を使いやすくするおそれ、整理解雇をしやすくするおそれ、解雇の金銭解決制度の導入などが問題となってきました。労働者側が絶賛できる内容にならないことは間違いないので、ホワイトカラー・エグゼンプション制度の法案提出を断念させた力を、労働契約法制に関する運動でも発揮することが求められています。
このページのトップへ1992年(平成4年)10月、拡声機規制条例が制定され、翌年1月1日から施行されています。この条例は、拡声機から10m以上離れた測定地点で85デシベル(db)を超える音量を出すことを禁止し、違反した場合には、警察官によって違反行為の停止を命ずることができ、この停止命令に違反すれば懲役又は罰金という刑罰を科するという内容です。
道路、街頭、駅頭、公園など公共の空間を利用した拡声機を使用した街頭宣伝は、市民団体、労働組合、政治団体などが自分たちの意見を一般の人々に向かって発表し、支持を訴えるための重要な手段となっています。街頭宣伝活動は、通行量が多い街頭で行われることが多いため、拡声機を使用して大きな音量を出さないと宣伝内容が聞こえません。条例制定前に行った調査でも、元町商店街東口の大丸前では、街頭宣伝を行っていない状態での街頭の騒音レベルが85dbありました。このような場所で街頭宣伝を行う場合には、当然これより大きい音量(旧環境庁大気保全局が編集した「拡声機騒音防止の手引き」によれば拡声機の音量は街の騒音レベル+10dbとあります)を出さないと話している内容が通行人に届きません。拡声機から10m地点で85dbというのは、街頭で通常に行っている街頭宣伝の音量程度でも規制対象となりうる音量です。そのため、拡声機規制条例が制定される際には、表現活動への侵害が問題となり、結局条例は制定されましたが、反対運動の成果として、通常の政治活動や労働運動、市民運動に伴う拡声機の使用については、条例の取り締まり対象とならないような運用を図る、という附帯決議がされました。
ところが、現在、この拡声機規制条例の改悪を県警が目論んでおり、本年2月県議会に提案される状況となっています。改悪の内容は、@10m以内の地点で測定して、10mの場所での音量に換算して85デシベルを超えていれば規制対象とする、A違反を繰り返した場合には、地域と24時間以内という時間を指定して拡声機の使用自体を禁止できる(再発防止措置命令)、というものです。右翼の街宣車による大音量での街宣行為など悪質なケースを念頭においているようですが、通常の市民、労働組合による街頭宣伝や政治活動について、適用を除外するという規定は設けられていません。そして、県警の説明では、10m以内での測定について、拡声機から1m地点での測定を考えているようです。
(1)拡声機から1m地点で警察官による音量測定を認めることに仮にこの改悪案が通ると、労働組合や市民団体による通常の街頭宣伝活動についても、条例上は、拡声機から1mの地点で警察官が音量測定することに法的根拠を与えることになります。その結果生じる威嚇効果は、図り知れません。
すなわち、10m未満での警察官による音量測定を認める以上、拡声器の直前に立ちはだかって測定することも警察官の公務として認められることとなります。面前に警察官が立たれることによる街頭宣伝を行う者への威嚇効果は甚大でしょう。しかも、一度でも拡声機から最高値で基準以上の音量を発すれば、現場の警察官が直ちに停止命令を出すことが可能ですから、特定の表現行為への規制のために濫用されれば、それによる表現行為への萎縮効果、威嚇効果は重大です。
更に、街頭宣伝を行う者の周囲で警察官が測定を行えば、周囲の聴衆は奇異に感じ、演説を立ち止まって聞くこともはばかられる状況となり、ビラの受け取りや署名への協力も受けにくくなり、事実上街頭宣伝を行う意味自体を失わせてしまう結果となります。
(2)特定の表現行為をねらい撃ちできることに今回の改悪が認められれば、どんなに周囲の騒音が高い地域でも、拡声機から1m地点で測定した上で、その拡声機から出ている音量を換算して10m地点で85dbを超えていれば、規制が可能となります。その結果、商店街や駅頭など騒音が高い地域で街頭宣伝を行う場合に、たとえ周囲の騒音が85dbに達していても、拡声機から85dbを超える音量を出したら規制されてしまいます。市民団体や労働組合などが一般の人たちに訴えたいと考えて、人通りの多い場所で街頭宣伝しようとしても、実際には出来ないことになってしまいます。警察が特定の表現行為を規制しようと考えて、その拡声機から1mの地点で測定を行って、規制値を超えていれば、どんなに周囲の騒音が高くとも規制できてしまうのです。
(3)24時間の拡声機使用禁止も可能に(再発防止措置命令の新設)今回の条例改悪案には、再発防止措置命令の新設が盛り込まれています。
再発防止命令というのは、「停止命令を受けた者が」「継続・反復して違反行為をした場合(つまり何度か繰り返して85db以上の音量を出した場合に)」を要件として拡声機の使用を24時間の時間内で、地域を指定して一切禁止しようとするものですが、この要件が曖昧であるだけでなく、その要件に該当するか否かは、警察署長の判断に任されており、裁判所による審査も不要です。
これは、24時間という時間制限はありますが、将来の拡声機を使用した表現行為を一切禁止するという点で、表現の自由に対する事前規制となります。これまでの憲法学説や最高裁判例でも、表現に対する事前規制は、表現の自由に対する制限のなかでも最も重大な制限となるため、極めて限られた例外を除いて許されないというのが一般的な考え方ですし、裁判所による審査が必要であると考えられてきました。
再発防止措置命令が、新設されれば、警察署長だけの判断で、拡声機の使用を禁止できるので、これが濫用されれば、集会で拡声機から規制値以上の音量が出たという理由で、拡声機の使用を禁止すれば(この場合の禁止は一切の禁止ですから、再発防止措置命令が出れば、たとえその後、音量を抑えて拡声機を使用しようとしても、使用自体が禁止される可能性があります)、特定の集会を実際上中止に追い込むことも可能となりますし、特定の街頭宣伝行為に狙いを付けて、中止に追い込むことが可能となります。
以上のように、拡声機規制条例の「改正」は重大な問題を有しており、労働組合の街頭宣伝活動にも大きな影響を与えます。この条例「改正」案は、2月県議会に提案される予定ですので、早急な取り組みが必要です。通常の市民団体や労働組合による宣伝活動をも規制対象としうるこのような「改正」案に対して、反対の声を県議会に届けて下さい。
このページのトップへ労働法連続講座第1回 パート・有期契約・定年延長が07年1月18日、第2回 派遣@基礎編が2月1日に開かれました。
1.増田弁護士が、主としてパートタイムの法規制と権利について、および、早期退職優遇制度および定年後の再雇用について約60分講演。
2.瀬川弁護士が、有期契約の機能について約30分講演。
3.最後に若干の質疑
◎感想30年ほど前なら、雇用形態としては、@社員、A主婦パートタイマー、Bアルバイト、の概ね3つでした。
パートタイマーや学生アルバイトの身分に労働法上の権利の意識は薄かったものです。したがって労働組合に組織する動きも少なかったし、働く者に組合の必要性もあまりありませんでした。
それが今日の社会では労働法の改悪が進み大企業が非正規雇用を進めた結果、非正規雇用の割合は1984年2月時点では15.3%であったものが、2006年3月には33.2%と労働者の約1/3が非正規雇用になっていて、交代勤務、深夜勤務、時間外労働、管理の業務などあらゆる職種にまで非正規雇用が就業し、正規社員と仕事の内容ではどこが異なるのかわからないのが実態で、非正規雇用を除いての企業運営は考えられない状況です。
一方、労働組合は組織率20%をきる状況にありますから、この非正規雇用の組織化を抜きにしては組織の拡大はできないし、非正規雇用の要求を取り上げることも出来ない。
非正規雇用にも労働基準法や労働組合法は適用されるが、雇用に関わっては、今日の非正規雇用は、その多くが有期契約であり、契約期間満了による雇い止めで退職する。この雇用に対する課題は、まったくの無権利状態でここに組織化の困難性はありますが、組織化できなければ、結局は低い労働条件の労働者を放置することによって、正規社員の労働条件がどんどん切り下げられていくのにつながっているのが実情と思います。
講師が最初に従来の講座の出席者と今回の講座の出席者では少し異なり、個人加盟の地域労組の組合員の方の出席が目につきます、から始まりましたのが、今私たちに何が求められているのかを改めて考えさせて戴いた講座でした。
地域の労働組合運動に関わるものとして、非正規雇用の組織化に今後も努力したいと思います。
このページのトップへパート・派遣労働者は今や企業活動の主力の状態になっています。ただ単に名称が違うだけで労働条件は正社員と比較して非常に劣悪な状態で一向に改善されていません。このような弱い立場におかれた労働者を企業は情け容赦なく働かせ、労働基準法など法律違反の労働条件を押しつけています、このような事は私たちの周りで見聞きしています。この状態を良くしたいと団結して労働組合を作る事すら困難になっています。
今回講義の中で、労働基準法に明示されている(採用時の労働条件の明示、就業規則、有給休暇、雇用保険など)パート・派遣労働者が経営者に意見を言えば不利益な扱いがされないか不安でなかなか意見が言えないのが現実で、実際に労働組合を作った事で解雇などの報復を受ける事を考えると二の足を踏んでいます。しかし、法律を守れと多くの青年たちが立ち上がり非正規労働者(JMIU光洋シーリングテクノ)の労働組合への結集が進み、今青年の間での労働組合は求められており、私たち組織労働者の働き掛けを待っていると思います。その為に、たたかいの武器になるのが法律です。現在の労基法などは何度も改悪され不十分な法律ですが、それでも講義の中で派遣労働者の派遣元・派遣先の責任(労基法・労働安全衛生法・雇用機会均等法)が明確になり、また契約関係と雇用関係を分けて考える事の重要性の事例(派遣元からの中途解約、派遣労働者の中途退職と損害賠償問題、社会保険{健康保険、厚生年金}を交えての講義だったので理解し易く今後に生かして行く自信を持つ事が出来たのではないかと考えています。
パート・派遣法は企業の立場から立案された法律で、現在の非正規労働者の労働条件を益々引き下げに利用され、そして正規労働者の労働条件が一層引き下げられています。
今後、均等待遇、男女同一賃金の原則などを建前だけにさせない運動と共に現行法律を労働者の利益になるように力を尽くしたいと思います。
このページのトップへ医療の現場においても、事務を中心に派遣労働者が増えています。
正規社員と同じ労働をしながら低い賃金かつ不安定雇用の派遣労働者が常日頃から不安と不満をもっているのは明快で、今後労働相談があった場合にどのような対応をすればいいのか〜そんな思いで講座に参加しました。
基礎編クでは、そもそも派遣労働法の目的は@労働者の就業意識の変化、就業条件の多様化に応じてその能力、環境、意識に応じた就労の機会を与えるA派遣をうけた労働者に対する雇用の安定、就業条件の整備を図るB常用労働者の雇用への配慮をして労働力の需給の適正な調整等を図るとしS60年に制定されました。
しかし現状では、全体の賃金抑制と雇い主の都合のいい中身になっていることが学習で明らかになりました。
基礎編ケでは原則的には労働時間や休憩・休日・生理休暇などが派遣先の責任になり、賃金支払・労働条件などの労使締結などが派遣元の責任になっていることなどが学習できました。
例えば「年休を請求する相手は派遣元か派遣先か」など一瞬考えさせられるような問いなどを交えて(答え派遣元)話があり、労働法の再学習の必要性を感じさせられました。
また、36協定は派遣元がとることになっている点などから、団体交渉等を考えると派遣元での労働組合の結成が求められていると改めて感じました。
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