《第465号あらまし》
 須磨浦学園教員解雇事件1審判決
 春闘学習会報告(07年2月16日)
     @格差社会と労働組合
     A花園大学社会福祉学部吉永助教授の講演を受けて
 労働法連続講座(第3回)レポート
     今こそ派遣労働者の組織化を…!


須磨浦学園教員解雇事件1審判決

弁護士 本 知子


本件は無謀な解雇の典型例であり、地位保全仮処分事件で報告したものであるが、本訴についても2007年2月16日に解雇を無効とする判決が出たので報告する。

1 事案の概要

被告は学校法人須磨浦学園(以下「学園」)であり、原告は平成3年4月1日に小学校教師として学園に採用され、学園が設置する須磨浦小学校の教師として十数年にわたって勤務してきた男性である。学園は「100年以上の歴史のある兵庫県下最古の私立学校」で幼稚園と小学校を設置し、裕福な家庭の子ども達が学んでいる。各学年は一クラス(クラスの児童数は30数名程度)であり、教職員数10名程度と小規模、教師間や教師児童間の関係は密接であり家族的な雰囲気で子どもの個性に合わせ個別指導により高度な教育を行っているらしい。

卒業生の多くが有名私立中学に進学する(被告は小規模で保護者が富裕層であることを強調し特殊であるから解雇に合理性があると主張したのでやや詳しく説明)。

平成17年3月22日、須磨浦小学校長(公立学校の校長を経て平成15年4月に須磨浦小学校長に招聘された人)が原告に口頭で解雇を通告した。この時点での解雇理由は@原告が通院のため半休をとる際に大声を出した、A児童同士のいじめトラブルは原告に責任がある、B平成5年・平成12年に児童の頬をたたいた、であった。およそ解雇理由になるとは思えないが、原告としては@は覚えがなく、Aは児童らの言い分が異なり対処困難な問題であり、Bは古い話で既に注意を受け児童と保護者に謝罪して終わったはずであった。そこで原告は解雇理由書の交付を求め、兵庫県私立学校教職員組合連合(以下「組合」)に加入した。しかし学園は、原告は須磨浦小学校教師として不適格で普通解雇したとし、就業規則の条文を示すのみで、具体的な理由は示さず、裁判所で明らかにするという態度であった。

平成17年5月18日、原告は地位保全の仮処分を申し立て、同年11月28日に保全を認める決定を得た。そして、平成17年9月30日、原告は本訴を提起した。


2 本訴提起後

裁判になるや被告は解雇の理由として、解雇通告時に口頭で校長が述べた@からBに加え、原告を採用した平成3年当時から毎年のように原告に問題があったと主張し始めた。例を挙げれば、クラスを計画的に運営できない、保護者や児童から苦情が来てクラス担任をもたせられない、非常勤講師にストーカーのようなことをした、数々の不祥事を起こして名誉毀損した(過去の体罰のことらしい)、通知表のコピーを紛失した等々。ただし、証拠は、平成3年以後の歴代校長の陳述書と現在の教頭の陳述書、そして解雇した校長の証言しかなかった。陳述書は一様に原告の悪口が書かれているが具体的内容に乏しかった(原告を解雇するために就業規則の改正をしようとしたと堂々と書く校長もおり、これが教育現場のトップのすることかと絶句してしまった。)。保護者からの苦情聴取メモや苦情リストのような客観的な証拠は全く出てこなかった。「児童や保護者に迷惑がかかる」から出せないと被告は言い訳した。

原告は、過去にわずかなミスがあるとしても処理済みであり、その他に教員不適格とされる行為はなく、むしろ児童から慕われ、熱意をもって教育指導にあたってきたことを主張した。その最も重要な証拠は被告のHPであった。被告は、原告を解雇した後であり仮処分手続中である平成17年夏ごろまで、そのHPに原告の授業風景を掲載し「記憶に残る熱血指導」と評価して宣伝に使っていた。それでも被告の校長は陳述書で「須磨浦小学校の教師として不適格と判断して解雇している以上、裁判所がどのような判断をされようと」原告の職場復帰は受け入れられない」と言い放ち、最終準備書面では「保護者は裕福な家庭が多くこのような争議行為を好まない」と要は露骨な組合嫌悪の主張をした。


3 判決

裁判所は、教員不適格とする被告の主張のうち、平成15年以前の出来事とされるものについてほとんど無視し(つまり歴代校長の書いた陳述書は役に立たず)、かえってHPの記載から、「原告は須磨浦小学校において熱意を持って教育にあたる教員として積極的な評価を得ていた」と正しく指摘した。また、被告の主張のうち最近の出来事とされるものについても、校長・教頭の陳述書、校長の証言の信用性を否定し、被告の主張事実を認めず、また、その他の被告の主張事実は「教員としての適性や能力に疑問を投げかける事実として取り上げることが適切ではないもの」だと正しく指摘した。さらに裁判所は、被告が解雇理由書交義義務に違反したことを何度も指摘し被告を非難した。被告が強く主張した「須磨浦小学校の特殊性」は無視。解雇について慰謝料も50万円であるが認められた。原告が熱意をもって真面目に働いてきたことの現れである。


4 判決後

被告は控訴した。被告の校長は裁判所がどのような判断をしようと原告の職場復帰を受け入れないと陳述書で宣言したとおり、原告の職場復帰を頑なに拒否する態度である。学園の理事会は、判決を無視すると宣言して憚らない人を学校のトップに据えていても恥ずかしくないのだろうか?原告は金銭解決ではなく、あくまでも須磨浦小学校の子ども達のために教師として復帰を強く望んでいる。職場復帰が実現しなければ原告にとっては真の解決にならない。今後も原告の職場復帰のためご協力頂きたい。

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春闘学習会報告(07年2月16日)
@格差社会と労働組合

弁護士 瀬川 嘉章

1 非正規、低賃金の労働者が劇的に増えるにつれて、セーフティネットとしての生活保護の果たす役割が以前にも増して大きくなるはずです。しかし、労働者の権利が切り捨てられ今後も切り捨てられようとしているのと同様、生活保護も切り捨てられようとしています。

そこで今回は、京都市の職員として24年間福祉の現場で活動してこられ、今全国で提起されている生存権裁判において理論・実践のいずれの面でも支柱となって活躍されておられる吉永純先生(花園大学社会福祉学部助教授)に、主に、現在の格差社会の実情分析と格差社会における生活保護制度の果たすべき役割についてご講演いただきました。以下、講演録形式でお伝えします。


2 貧困の広がり(格差社会(2006年)から貧困(2007年)へ)

今は、いざなぎ景気を超える好景気などといわれますが、大企業は空前の利益をあげる一方で一般市民には実感が伴わない。このような世相をあらわしているのが、今年度のサラリーマン川柳である。現在候補に残っている100の川柳のうち10が格差社会に関するものである。例えば、「この景気 回って来ないぞ 給与には」、「犬はいい がけっぷちでも助けられ」、「残業代 欲しくはないです 帰らして」、「『無理するな』 本心だったら 休暇くれ」、「やっと出た 年金さえも この格差」などなど。昨年末にNHKが特集して以来、「ワーキングプア」という言葉はもはやトレンドになってきている。昨今の新聞、雑誌、放送の多くで、格差社会がテーマになっている。NHKの「ワーキングプア2」(平成18年12月10日放送)では、70万円の貯金を守るために生活保護は受けず空き缶拾いをして生計をたてる高齢者夫婦の生活が放映された。今日は、昨年11月27日にNHKで放映された「福祉ネットワーク」の一部を見てみましょう。

(以下、筆者が番組の概要を紹介します。)

○景気拡大の一方、生活保護世代は100万世帯となった。増えているのは、働いているのに生活が立ち行かない人々(ワーキングプア)である。

○政府が生活保護の抑制をうちだしたことにより、制度からはじかれている人も多くいる。生活保護受給世帯は、@母子世帯、A高齢者世帯、そしてBワーキングプアであるが、Bについてはなかなか受給できない実態がある。

○飯田橋に事務所を構えるNPO法人「もやい」によれば、20〜30代の若い世代から低賃金のため生活が立ち行かないという相談が増えたとのこと。

○(「もやい」を訪れたある31歳の男性の紹介)高校中退後フリーターとなり23歳でパン工場の正社員となった。収入が低いため転職したがその後は思うようにいかず臨時契約の仕事しか見つけられなかった。生活に困り始めたのは平成18年6月。当時派遣社員として働いていたが自動車工場で腰を痛めた。当初は父の援助を受けたがそのうち父からの援助も途絶えた。やむを得ず家財道具を売りながら生活をしていたが所持金が底をついた。20社以上をまわり就職活動をしたが職を得られなかった。とうとう、食べることさえ困難となり福祉事務所へ行ったが、福祉事務所の職員は、「ハローワークへ行って就職活動の実績を作りなさい」との回答を繰り返すのみであった。ハローワークへいったが、電話がなく保証人もいないので会社を紹介してもらえなかった。このことを福祉事務所に伝えたが、回答は以前と変わらなかった。依然として申請書すら渡されなかった。男性は、山谷(さんや)へ。そこでホームレスを支援する団体に相談したが、声が小さく手配師への「顔付け」ができず、仕事を得ることはできなかった。そのとき「もやい」を偶然知った。この時既に1日1食しか食べられず、水を飲んでも体が受け付けない、お腹がすいてつらい、というような状況であった。相談の上、生活保護の申請をした。申請書を持参すると、福祉事務所はすんなり受け付けた。役所は申請がなされれば受け付けなければならない。しかし、「働けないし食べるものがない」といくら言っても、申請の意思があるとは考えないのが役所の対応である。

○厚生労働省は、能力活用の確かめ審査を徹底するよう「適正運営の手引き」を全国自治体に通知している。

現実がリアルに映像で流れました。行政の違法行為が行われているといってもいいような状況です。

朝日新聞では「ロストジェネレーション」というテーマで連載がなされています。ロストジェネレーションとは、就職が厳しい時代に社会に出ることとなった現在25歳から35歳の世代のこと。今年の1月6日の記事には、先ほどの若者と似通った状況に置かれている若者が紹介されている。ある若者について、4回職を失った後「フリーターにすらなれなかった。昨年8月コンビニエンスストアの夜勤に応募した。時給800円のアルバイトが、倍率10倍。」「この3か月間は16社で面接したがすべて落ちた」とある。派遣先の同僚を自殺(工場の環境が心身をむしばんだ)でなくした別の若者は、「請負や派遣で働く若者を見ると、声をかけたくなる。『いくら頑張っても、将来があるわけじゃない。死なない程度に仕事をしろよ』」。

ある福祉事務所内では次のように議論されている。40歳のタクシー運転手が、月20日以上勤務しても月給が10万円に届かないとのことで生活保護の申請にきた。事務所では、きちんと乗務しているのであるから稼働能力は活用しているのであろうという判断となった。職員の間では、月20日以上働いても生活保護の対象となるとはどういうことかと話題となった。そして、最低生活費に届かない賃金しか支払わなくてもよい賃金制度の方が問題だ、一生懸命働いても税金(生活保護)で填補しなければならなくなる結果をもたらす規制緩和はおかしい、一人前に働く従業員に生活保護を受けなければならない賃金しか出さない経営者は雇用主としての責任を果たしていない、派遣労働者、ニート、フリーターなど不安定労働者が多数いるが、病気などになればたちまち保護受給者が増えてしまう、個々の企業にすれば低賃金労働者を雇ってコスト削減しているのであろうが社会全体のコストは増えている、などと議論がなされた。

2006年は「格差」が問題となったが、2007年は「貧困」である。2005年の完全失業者は294万人、2004年の若年失業者は213万、1998年から2005年までの間に正規雇用は461万減少し非正規雇用は417万人増加した。若者の2分の1は非正規である。平成14年の時点で、所得上位の4分の1が、全所得の4分の3を得ている。所得格差は実に9倍である。2005年の時点で、貯蓄0世帯は23.8%に達する。日本学生支援機構(旧日本育英会)利用者で3か月以上返済を滞納する者が、2005年から急増した。滞納理由は無職・失業。就学援助制度利用世帯は、全国平均12.8%、東京、大阪は20%を超える。足立区は実に42%。30代、40代といった働き盛りの親の収入の低下が原因である。自殺数は、8年連続で3万人を超える。経済・生活を理由とした自殺は24%と、健康に次いで2番目に多い。


3 社会保障は役割を果たしているか

雇用保険についていえば、完全失業者のうち失業給付受給者は3分の1程度にすぎない。年金は2003年に水準が切り下げられ、他方で2004年以降は14年連続の引き上げがなされる。医療保険は、サラリーマンなどの自己負担率があがり、高齢者医療費についても自己負担が増加している。国民健康保険の保険料は高額となり、2005年において滞納世帯が18.9%となっている。障害者自立支援法は、応益負担を導入し、障害の重い人ほど負担が多いという状況となりサービスの利用が困難となっている。また、公的年金控除の縮小、老年者控除の廃止など、高齢者への課税強化も始まっている。このように、社会保障はいずれも厳しい状況であり、十分に保障機能を果たしているとはいえない。


4 生活保護の仕組み

そうだとすれば、生活保護が最後のセーフティネットとなるはず。国が最後に助けることは、ちゃんと憲法で書いてある。その議論に入る前に、生活保護の仕組みについて概説します。

社会保障は、まず社会保険により対応することになっている。しかし、期間の問題や、給付額の問題で限界があるので、その時に登場するのが生活保護である。ここで重要なのは、生活保護は、困窮原因を問うことなく救う最後のセーフティネットという点である。

生活保護の受給のきっかけは、失業、病気(傷病手当金1年6月が限度)、離婚、多重債務(年金が担保に入れられ生活できないなど)などである。保障される生活水準は、例えば33歳、29歳、4歳の3人世帯であれば16万180円(大都市部)(このほか家賃(東京の場合6万9800円が上限)、単身の若者であれば8万3700円(このほか家賃(神戸であれば4万2500円が上限))である。

生活保護の受給を受けるには、資産調査がなされる。居住している家屋や宅地については保有が可能である(ただし、来年からは高齢者については、家屋・土地を担保に入れて借り入れ(リバースモゲージ)をしたあとでなければならない)。自動車については、身体障害者用など一部を除き保有はできない。通勤、保育所への送り迎えには、車があるのとないのでは大違いがある。車の保有が極めて限定的にしか認められないことは、制度の大きな欠陥といえよう。耐久消費財は、当該地域で70%普及しているものであれば保有可能である(現在はあまり問題となっていない)。貯金は、「最低生活費」の2分の1が上限。しかし、お年寄りは葬式代等を保有したいのが普通であり、多いに問題である。最低生活費の3か月分までは認めるべきではないかという議論があったが国と自治体は消極的であった。学資保険は、中島学資保険訴訟を受けて、解約金50万円程度までであれば保有が可能となった。生命保険は、保険料は最低生活費の1割、解約返戻金は最低生活費の3倍までという基準がある。ひどい福祉事務所は生命保険を全部解約させるが、それは誤り。住居の有無は関係ない。就労の努力や、余力のある扶養義務者からの援助が求められるが、実務上これらの点が拡大解釈されている。就労については、@働く意思、A働く能力、B働く努力をしたが仕事の場がないことが必要である。Aについては、軽い仕事だったらできるという医者の意見を理由に断ることがあるが、軽い仕事だったら殆どの人ができるのは当たり前で軽い仕事だけで賃金を得ることは難しい。Bについては、50歳くらいの人については、「もう1回仕事を探して来い」というのが普通である。扶養義務者からの援助については、例の北九州市で起きた死亡事例では、コンビニでバイトをしている次男が援助をしていたところ援助の継続が困難であることからやむを得ず役所へ相談にいったにもかかわらず、「援助を検討しなさい」と言って追い返したという経緯がある。扶養について注意しなければならないのは、扶養を受けられないことが保護開始の条件であるというわけではなく、現実に扶養を受けた場合に収入として認定されるにすぎないということである。

申請は、本来は口頭で足りるはずであるが判例は明確な意思表明が必要とする。役所は明確に申請する旨述べないと対応しない。申請書は、役所が準備する雛形でなくとも全く問題はない。内容証明郵便で送れば即座に受理されたことになる。役所に、申請を拒否する権限はない。申請受理後、調査して要否判定を2週間以内にしなければならない。厚労省は「申請権の侵害を疑われる行為も慎むべき」としているが、自治体は全く別のことをやっている。ある事務所では、課長が申請用紙を管理していて、1か月5枚までと決めているようなこともあるようである。問題となった北九州の生活保護行政について250人が参加して調査した。弁護士も20人ほど集まった。申請を受け付けられていなかった25人について申請行為をしたところ、20人受給決定が出た。余談となるが、北九州市の職員は弁護士の同席について、「第三者の同席はダメ。北九州市がそういう」と言って拒否した。弁護士が、その場で厚生労働省の保護課に電話をして同席を拒む法的根拠を問い合わせたところ、厚生労働省は法的根拠はないと回答したのでそのことを告げると、今後は「庁舎管理がある」「リラックスして話せない」と言い出した。職員は、そのうちひっこんでしまって全く出てこなくなった。

利用中の指導指示について触れると、指示指導には、社会的妥当性がなければならない。例えば、3か月以内に自立できる仕事に就けなど(就けなかったら保護をとめる)といったような指導はできない。


5 生活保護に求められている役割…まさに出番

生活保護受給世帯は増加してきている。1995年の88万2000人(0.7%)を底にして、以後増大し、2006年9月現在152万人(1.2%)、107万世帯(50世帯に1世帯)となっている。

しかし、保護率自体は、@1984年のレベル(第二次オイルショックのあと)に戻っただけであるし、A国際的に比較すると非常には低い。ドイツでは、700万人(8.8%)が受けている(高齢者は年金で暮らすことができるから稼働年齢層が殆ど)。また、Bまだまだ捕捉率が低いという問題がある。研究者の共通の認識によれば、捕捉率は20〜30%である。

今の生活保護には、既に述べているように、申請の事実上の拒否という好ましからざる運用の実態がある。また、18歳から64歳までは稼働年齢だからということで一律に保護から排除しようとする運用が、ワーキングプアを増大させ低賃金労働力を温存し供給しているという問題もある。そして制度としても、預貯金を殆ど認めない、自動車の保有を認めない、といった問題がある。

さらに、毎年毎年生活保護削減に向けた動きがある。昨年3月には「生活保護行政を適正に運営するための手引き」(就労能力の活用)、7月の「骨太方針」(母子加算廃止、リバースモゲージ)、10月には知事会・市長会の報告書(通算で5年の有期保護とする)、有期保護導入のために必要な法改正への着手、など着々とすすめられている。なお、私は、有期保護とするには憲法の改正も必要ではないかと思う。

他方で、日弁連が生活保護110番を行なったり、報道で生活保護行政の違法な状況がクローズアップされたりするという流れもある。法テラスが生活保護申請について援助をしようと検討しているという話も聞いている。また、不服申立が急増し、老齢加算の廃止に対する裁判も全国的規模で起こっている。多重債務に取り組んでいたグループが貧困問題に取り組もうとしている。労働分野同様、生活保護も今が正念場である。何としても改悪を防がなければならない。

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春闘学習会報告(07年2月16日)
A花園大学社会福祉学部吉永助教授の講演を受けて

全日本建設交運一般労働組合 津村 訓孝


このところ「いじめ」「格差社会」「ワーキングプアー」という響きを目に耳にする機会が多くなってきました。不安定雇用の増大、年収300万円以下の労働者、更に100万円台の働きながらにして生活保護水準以下の労働者と8年連続で3万人もの尊い命が自ら絶たれている現状をこの講演を通して再確認し、本来国が保障しなければならない憲法25条・生存権などの権利は声を出して主張しなければ、ないがしろにされ葬り去られることへの憤りと、改めて労働組合として何ができるのか何をしなければならないのかまさに真価が問われていることを自覚し、運動を強めなければならないと実感しました。

「権利」を正しく身につけて行使していくこと。これが肝心であり最も難題なのかも知れないそんな気がします。全労連傘下の単産単組や建交労が取り組む07春闘を闘う前段の「春闘アンケート」を通じて若者と対話をした内容での特徴点は、「労働組合って何?」「残業って何?」「うちは有休なんかないよ」など、私たちが思っている以上に憲法28条で保障されているはずの労働組合が認知されていない、まして最低の基準であるはずの労働基準法が知られていない深刻な現状があります。地域によれば労働組合そのものが「悪いことをする団体」と思われていること、全労働者の内20%を割り込む組織率、更に全労連など闘う労働組合が3%を割り込む組織率に低迷していること、更に団塊の世代の労働者の大量退職に伴う組織減は予期できたことであって、私たち労働組合の組合役員が真摯に受け止める必要があります。私たち組合役員が労働者に本来あたりまえに受けられるはずのさまざまな権利を誰にでも一目でわかる宣伝物などで知らしていくことが大事なことだと思っています。特に昨年あたりから今年も「連合」がベアアップ要求を大々的に掲げマスコミ各社もこぞって春闘大宣伝を流すなどは、「労働組合」という組織を押し出す絶好の機会であり、攻勢的に広範な未組織労働者の組織化に打って出る必要があります。今春闘を通じて「労働組合」そのものを「ダサイ」「暗い」「悪いこと」という存在から本来働くものがあたりまえに受けられるはずの「権利」について、その権利を受けるために声がだせない膨大な正規・非正規労働者の命と生活を守るうえで「必用不可欠な存在」になるよう奮闘しなければならない思いです。

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労働法連続講座(第3回)レポート
今こそ派遣労働者の組織化を…!

神戸地域労働組合 鳥越 健次


私は10数年間を派遣労働者として働いてきました。その過程でさまざまなことを体験し、また、その実態を目のあたりにしてきました。そこには、およそ人間らしく生きる権利などというものは存在せず、労働者は法律で保証された権利の存在すら知らないというのが実情であり、また、会社側はその権利の存在を労働者に知らせようとしない、派遣法によると一定期間を経過すれば派遣先は労働者に対し直接雇用の申し込みをしなければならないとなっています。ここで、派遣労働者は派遣先での直接雇用の機会を得ることができるわけですが、しかし現状はそのようなことはほとんど無いに等しいといってもいいでしょう。その背景は、実態は派遣でありながら契約は請負という派遣と請負を組み合わせ、巧みに使い分けた偽装請負であることはいうまでもありません。

偽装請負についても学習会で更に詳しく学ぶことができました。

しかし、雇用先に法を遵守させるということは簡単なことではありません。個人で雇用先に要求を出せば簡単に処分される、解雇される、そのような攻撃に対し、労働者はなすすべが無いというのが現状でしょう。そのような攻撃を打ち破るには職場に労働組合を結成し、組合のちからで立ち向かっていくしかありません。組合の存在こそが労働者を守る唯一の手段であるとおもいます。ただ、現状は大半の派遣労働者が未組織のままであり闘う態勢が整っているとはいえません。また、私たち自身もまだまだ難解な派遣法等、労働法全般について熟知しているわけではありません。

私も昨年7月、解雇通知を受け闘いを進めてきたのですが、当初、会社の攻撃に対し、どのように闘っていいのか、その突破口が見えない時期がありました。

やはり、まずは学習からではないでしょうか。

少なくとも派遣先、派遣元において一定の義務と責任が明記された派遣法を厳格に適用することによりかなりの労働者が救われることになるのではないでしょうか。私の闘いは12月27日、終結しました。

結果は和解という形となりましたが、それは会社側がその非を認めた結果であり、そのことは勝利を意味します。しかし、私の闘いはこれからも続きます。更に学習し、非正規労働者の組織化を進めていきたいと考えています。

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