《第467号あらまし》
 被害住民の遺族がクボタと国を提訴
 《連載》労働事件随想録A
 改憲手続法(国民投票法案)を考える緊急学習会に参加して
     「国民投票法」を学び運動の武器に
 幹事団体の2007年春闘状況


被害住民の遺族がクボタと国を提訴

弁護士 八木 和也


1 はじめに

クボタ旧神崎工場の周辺住民で、アスベスト特有の疾患とされる中皮腫が原因で亡くなった男性の遺族が、2007年5月8日、国とクボタを相手取り、約4200万円の損害賠償を求めて神戸地裁へ提訴した。

また、同日、1973年ごろまで尼崎市内においてクボタと同規模のアスベストを使用していたとされる関西スレート本社工場の敷地内社宅に居住し、おなじく中皮腫で死亡した女性の遺族も、国を相手取り、約7300万円の損害賠償を求めて同地裁へ提訴した。

本件訴訟は、いわゆる「環境暴露型」と呼ばれる被害者がアスベストを使用した企業と国を相手取り損害賠償を求める初めての訴訟で、これにより、裁判の場で「アスベスト公害」に対する国と加害企業の責任が問われることとなった。


2 「公害」としてのアスベスト被害

アスベストの人体への危険性は古くから知られており、労働現場においてアスベストによる被害者が発生していることも知られてはいたが、少なくともわが国においては、アスベストの被害が労働者だけではなく工場周辺に居住する住民にまで及ぶことがあることは、あまり知られてはいなかった。

クボタは、2005年6月29日、ここ10年間で51人がアスベスト関連病で死亡しており、周辺の住民も5人が中皮腫に罹患し、うち2人はすでに死亡していると発表した。

ここに初めて、国民は、アスベストの被害が空間的な広がりをもつものであり、「公害」としての要素が含まれていることを知らされた。

この報道をきっかけとして、クボタや尼崎市などに対し、クボタ旧神崎工場周辺に居住した経験をもつ住民たちから「中皮腫の診断を受けたがアスベストを使用した経験がないのだが」との問い合わせが相次ぎ、徐々に「アスベスト公害」の実態が明らかとなる。

奈良県立医大の車谷教授らの調査によると、2006年3月の時点で、この地域で99名もの住民が、仕事でアスベストを使用した経歴がないにもかかわらず、中皮腫に罹患しており、少なくとも72名の方がすでに亡くなられていることが判明した。


3 不十分な救済制度

前述のクボタの発表の後、マスコミがこぞってアスベスト問題を取り上げ、国や企業はアスベスト問題に対して責任をとるべきではないかとの世論が高まっていくなかで、国は異例の早さでいわゆる石綿新法を成立させ、アスベスト公害の被害者に対して、国が一定額の見舞金(月額10万円と医療費自己負担分)又は弔慰金(葬祭料を含め299万9000円)を支給することを決めた。

また、クボタは、当初見舞金又は弔慰金として200万円を支給するのみの対応にとどまっていたが、世論からの厳しい批判を受け、旧神崎工場1キロ件内に居住歴又は勤務歴のあるアスベスト被害者又は遺族に対し、2500万円〜4600万円の救済金を支払うことを決めた。

こうした国とクボタの対応について、特にクボタが提示した金額が裁判での相場からみても被害者の意向をある程度反映したものであったことから、メデイアの中には評価する声もあった。

しかしながら、クボタは、工場周辺住民に多発していた健康被害と自ら使用したアスベストとの因果関係は不明であるとして、これを認めず、法的責任をあいまいにしたままで、道義的責任を理由として救済金の支払いを決めたにすぎず、国にいたっては、時々の知見に応じて適切な対応をしていたなどと言って、なんらの責任も認めなかった。

クボタと国は、この問題の真相究明と責任の所在をあいまいにしたままで、一定の金銭を支払うことにより、この問題の早期な幕引きを図ろうとしたのである。


4 本件訴訟の意義

本件訴訟の意義は、言うまでもなく、「アスベスト公害」の実態解明と責任の所在の明確化にある。

ところで、アスベスト特有の疾患とされる中皮腫は、潜伏期間が20年〜50年と極めて長期であり、クボタの石綿使用が1995年まで続いていたことを考えると、アスベスト公害の被害者数は2030年ころまで増加を続けると予想される。

この問題が、国や企業の思惑通りに進み、このまま幕引きとなってしまった場合、莫大な数に昇ると予想される潜在的なアスベスト被害者が真の救済を受けることなど不可能となる。

弁護団としては、本件訴訟を通じ、国と企業の責任を明確化することを通じ、潜在的な被害者も含め、アスベスト公害の被害者らが完全に救済を受けることのできる制度の確立を目指している。


5 国と企業の責任

最後に国と企業の責任の有無についてであるが、当弁護団としては、以下の理由により、国と企業に責任があったことは明らかであると考えている。

まず、アスベストの人体への危険性については、1940年、旧内務省の研究者がアスベスト工場の従業員を対象にした大規模な調査を行っており、その調査報告書のなかで、「すみやかなる石綿被害の予防と対策の樹立」が謳われていた。

そして、1959年、国際じん肺会議において、南アの医師より、周辺住民にもアスベスト被害が発生することが発表され、その後の調査により、1960年代には、海外において、アスベスト被害が周辺住民にまで及ぶことが半ば常識化していた。

このような状況のなかで、国は、アスベストの対策を放置し続け、1989年の大気汚染防止法改正に至るまで、環境暴露型の被害に対する規制を一切設けなかった。

また、クボタにおいても、1995年に至るまでアスベストの使用を継続し、この間、工場外へ大量のアスベストを排出し続けていたといわれている。

つまり、国とクボタがアスベストの危険性を知りながらなんらの対策を講じなかったことは明らかなのである。

もちろん、他にも乗り越えなければならない論点は数多くあり、今後の裁判の展開は予断を許さないが、弁護団としては、上記の点が明らかである以上、国とクボタの責任は免れないのではないかと考えている。

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《連載》労働事件随想録A

弁護士 野田 底吾


新緑の野原、黄色いたんぽぽ(蒲公英)から白い綿毛をつけた小さな種が風に乗って飛び始める季節です。

1972年(S47年)春、高砂市にあるワンマン経営の運送会社(運転手約30人)では、Y氏が中心となり、2、3名で密かに労働組合の結成準備がなされていた。情報を入手した会社は、組合結成前に芽を摘んでしまおうと、Y氏の追放を画策していた折、偶然にもY氏が軽微な交通事故を起こしてしまった。チャンス到来とばかりに、会社は直ちにY氏の懲戒解雇に打って出た。組合も対抗上すぐに公然化し、兵庫県地労委に不当労働行為救済の申立てを行ったが、情報が漏れない様に準備を進めてきただけに、その事実を会社が知っていた事を立証するのは大変であった(その意味で、いつ公然化するのかの判断は極めて重要である)。しかもワンマン経営者は、ボス的従業員に日頃から餌をまいては手なづけており、従業員が組合を見る目には厳しいものがあった。春闘時、この組合が未明の門前ピケによりトラックの出荷阻止に入る為、徹夜で現場待機していた私も、非組合員に取り囲まれ罵声を浴びせられた事もある。そんな状況だけに、何とか組合員を増やす方法を考えたが、効果はさっぱりで、逆に会社は、ボス従業員を使って第二組合を結成させ、そこに非組合員全員を加盟させて対抗してきた。そこで、組合(第一組合)としては、まず第二組合の中の比較的良心的な組合員を中立化させる事に力を集中する事とし、地労委での会社側証人(専務)の第1回証言を録音して、これを比較的良心的な第二組合員に聞いて貰う事にした。2、3人しかいない組合員は、計画に従ってこれらの従業員宅を訪問し、テープを聞いてもらってはオルグを掛けた。然し彼らは、信頼していた専務が公然と嘘の証言をしていたのに驚いたものの、それでも尚、「会社を信用する」と言う。そこで今度は、その中の有力な一人に、傍聴に来て専務に対する反対尋問を直接聞いてもらう事にした。その結果、彼は第二組合のボス幹部が、裏で会社と馴れ合うゴロツキ派である事を確信し、間もなく第二組合内に反主流派を作るに至った。そして1年後には、この第二組合から別れて独自に第三組合を結成するまでになった。この第三組合は、その後、民法協に加入していた第一組合と一緒に民法協の東播地区権利講座に参加する等し、これらが契機となって両組合の共同行動が進む様になっていった。そして半年後には両組合が合体し、職場の大多数を制するまでになった。こうなっては、会社も第二組合を維持する必要がなくなり(間もなく霧散)、組合要求であるY氏の解雇撤回、解決金の支払い、労働条件の事前協議制を認めるに至り、ここに2年余りつづいたY解雇撤回闘争は組合側の全面的勝利で終った。

裁判傍聴、それはたんぽぽが綿毛の種子を風にのって飛ばす様なものです。

「たんぽぽのわた発つ地球一周へ」(藤本さちこ)

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改憲手続法(国民投票法案)を考える緊急学習会に参加して
「国民投票法」を学び運動の武器に

東園田9条の会 岩田 伸彦


審議が進めば進むほど矛盾点が露呈し、繕いもできない内容の改憲手続法(国民投票法案)が、衆議院憲法調査特別委員会で自民・公明は議員の頭数を頼りに強行採決し、4月13日に衆議院本会議でも強行的に採決を行いました。

この緊迫した情勢を受けて4月16日兵庫県民主法律協会の呼びかけで緊急学習会が開かれましたが、この原稿が日の眼を見る頃には参議院での帰趨もはっきりしているかと思います。

国会の動きがどうであれ、平和憲法を守り、暮らしの隅々まで憲法を活かす立場からすれば、これからがいよいよ憲法論争の本番を迎えることになります。

再び戦争をする国にしてはならない、アジアで2000万人、日本で300万人の犠牲への反省から生まれた九条、平和憲法を守る上から改憲手続法はいらないと運動に取り組んで来ていますが、学習会では私たち一人一人が「国民投票法案」の内容をしっかりと掴んで、より理論的に強くなることが求められていると感じました。

衆議院での採決後に新聞などでも多少「国民投票法案」についての解説記事が掲載されていますが、私たち平和憲法を守る立場の人間を含めて圧倒的多数の国民は「国民投票法案」の内容は知られていないのではないでしょうか。

改憲のために必須の条件として現行憲法に定められている「国民投票で過半数の承認」を、如何にハードルを低くして改憲し易い内容にするか、そのための「ゴマカシ」と国家権力による恣意的な判断要素を多分に含み、国民主権を踏みにじる内容が盛り込まれているのが、自民・公明の「国民投票法案」と言えるようです。

最低投票率の歯止めもない、有権者の20%にも満たない賛成で成立可能になるなど恐ろしい法案です。国の基本法たる憲法の改正是非を問う「国民投票」で、自由な論議を頭から否定する公務員、学校教員などに対する言論、運動などへの厳しい制限、一方で「改憲」のためにテレビ、新聞など金のかかるコマーシャル宣伝は自由放任、衆・参両院の3分の2の賛成条項を踏みにじる両院協議会の設置などなど、知れば知るほど怒りが沸いてくる内容です。

それだけに「改憲」を急ぐ自民・公明の与党は、国民に内容を知らさない、知られない内に強行したのが「国民投票法案」であり、このことは逆に彼らの弱点をさらけ出した事でもあると思います。

この法案の内容が正確に多くの国民に知れ渡ったら、護憲、改憲の立場を超えて多くの国民の怒り、反発を買うことが間違いない内容の代物です。

地方公聴会や参考人質疑などで改憲賛成の立場の意見陳述者からも、慎重審議、拙速を避けよ、違憲の疑いなどの意見が述べられているのが象徴的です。

彼ら自民・公明が基本的人権も国民主権も、現行憲法の精神も踏みにじった「国民投票法案」は、私たちに憲法擁護の運動の新たな武器として提供してくれたものでもあると考えたいと思います。この反動的な内容の「国民投票法案」をよく学び、一人でも多くの国民に知らせること、そして国民世論を結集して行くことが、現行の平和憲法を守る当面の闘いの重要課題と思います。

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幹事団体の2007年春闘状況


全港湾阪神支部 鳥居 成吉

港湾春闘は、全国港湾労働組合と、港運同盟とが日本港運協会との間で制度要求を中心とする中央港湾団交があり、その下で各地区での地区団交を行い、個別賃金では、各単組が中央なり地方及び個別企業を相手に交渉を行い決定される。

今年は、2月14日に中央(東京)団交で要求書を提出し春闘が始まった。交渉の冒頭から日港協(日本港運協会)は「年金問題は産別協定の否定であり、これを放置していては、産別協定が無になり、中央団交の意義もなくなることから例年どうりの協定締結にいたるかどうか疑問である」と主張し年金裁判が産別協定と労使交渉体制に重くのしかかることになった。労働側は「年金裁判と春闘は別問題である」と強く抗議し、3月14日に第2回中央団交が行われたが、回答の前進はみられなかった。今春闘の特徴として、個別賃金交渉を各単組が足並みをそろえて、3月28日を一斉回答指定日として設定し、3月29日に各港での早朝(8:00〜9:00)決起集会を行った。

その間全国港湾は3月1日に中央行動として、各地域からの動員者で「国土交通省、厚生労働省」に申し入れ交渉を行い、3月22日には、港湾の利用者であるユーザー(日本鉄鋼連盟、日本石綿協会、日本貿易協会、外国船舶協会、全国農業協同組合、日本船主協会、日本荷主協会)への、アスベストや料金の問題で申し入れ行動を行った。

4月4日に再度中央団交が開催されたが、前進が見られず労働側より4月8日(日曜)の24時間ストライキを通告し決裂となった。4月8日は、全港で8:00〜9日8:00迄の24時間ストライキを決行した。尚このストライキは全国港湾史上初となる、港運同盟との共同歩調をとることが出来た。その後の闘争委員会で、4月15日カ〜16日キの48時間ストを決定し、日本港運協会に通告したところ4月13日に中央団交の申し入れがあり、当日の10:30より交渉が持たれ、前進した回答が有ったものの満足するものでなく、再考を促した結果、15:40に合意に達しストライキ指令を解除した。

回答内容で最重要課題であった「アスベスト対策基金を1億円でもって設立する」と金額的には大いに不満は残るものの対策基金を設立させたことは評価できるものとなった。その後各単組で賃上げを始めとする個別要求の交渉がおこなわれ、各単組とも昨年を若干上回った内容でほぼ07春闘を決着しています。



東熱労働組合 鈴木 義一

東熱労働組合の07春闘は、昨年末の執行委員会から始まり議案書を作り中央委員会で承認、会社との交渉に入ります。春闘前のイベントとして主になるのは、金属の仲間と共に行う西日本集会、今年は、3月3日神戸サンボーホールで行いました。過去最多の60名の参加となりましたが、第1回から続いていた女性司会が昨年、今年と出来なく女性の参加人数も少なくなっており女性組合員の参加の推進が今後の問題になっています。

会社の収支状況は増収減益という状況で前半は原油高による灯油の値上がり、後半はニッケルの高騰を受けてのステンレス鋼の値上がりで修繕費と治具代が倍増で製造原価が利益を抑えている状況です。

春闘の要求は、次年度の定年者の補充6名、設備増加による増員1名、の計7名、賃上げは定期昇給4,785円+ベースアップ34,527円(アンケートの平均)、夏の一時金2ヶ月+α1,5ヶ月(252,897円+34,527円)×2+431,136円=1,005,984円)で3月19日に第1回団体交渉、内容は人の問題からスタートし会社回答は、定年者の補充正社員4名、設備増設による補充1名、会社回答に対し問題になったのは、大阪工場の定年者の補充がないということ、大阪工場の場合、阪神電車西大阪線が難波まで延伸され近鉄との相互乗り入れが予定されており近隣の環境変化に対応するため大型設備の仕事を高砂2工場、九州工場への移行が進められているところで、今年の段階でバー材設備の人員を各班1名、計3名の人員を減らす計画が予定通り進むのかどうか、計画的に進まなければ人員不足になる、新入社員の半分は1年以内にやめる比率が高く常時人を募集している現状から見れば余裕を持っても問題ないという話をしましたが定年者は全て嘱託で残り全工場では5名の増員、人の問題については定年後嘱託で残られる方が大半で嘱託後もOBパートで残られ新入社員の採用と年齢構成などの問題にもなりかねないので定年者の補充の時期など毎月の定例労使協議会で話し合うことで妥結に至りました。

春闘の賃上げは、3月28日の第2回目の団交からスタートし会社の有額回答はベア500円会社の言い分は春闘の賃上げは世間相場、大企業の回答が出てそれから中小企業、今現在20%ぐらいの企業の回答が出てきていますがその辺は5,700円前後これから出てくるところはまだ低いと思います、私たちの熱処理工業会では3,000円から5,000円ぐらいのところ企業規模から言えば妥当な金額。組合としては賃金カーブの是正を2年前まで行っていたが、ベア500円では賃金カーブの1年差での賃金に届かないので賃金カーブがまたゆがみだす会社も認めて是正したのではないのか、この日は賃金カーブの話になり最後に会社の再回答があり+200円の700円がその日の最終回答で次回に持ち越しました。3回目の団交はISO14001の予備審査の関係で4月12日になりました、団交前に組合内部で話し合っていたのは、金額が低ければ36協定凍結を申し入れることを決めて団交に臨みました。賃上げと夏の一時金同時解決したいと言うことで会社の回答は賃上げ900円、夏の一時金2ヶ月+α12万円の回答、いったん組合内で話し合いたいと言うことで時間を貰い、社長に直接交渉を持ちかけて昨年以上の金額を出す気がなければ今日は帰ろうと言うことで、委員長と書記長2名で交渉して、最終賃上げベア1,100円、夏の一時金2ヶ月+13万円で妥結しました。

年度 春闘・賃上げ 夏の一時金
2005年 定昇4804円+賃金是正1000円
         +ベア469円
550000円+110000円
2006年 定昇4785円+ベア1000円 540000円+118026円
2007年 定昇4785円+ベア1100円 510238円+130000円


神戸交通労働組合 藤崎 眞二

民間組合の闘いが公務員の労働条件を左右するということを踏まえ、公務員連絡会を軸に民間組合の闘いと連帯した取り組みを推進してきました。

公務員連絡会は、2月の政府・人事院に対する統一要求書の提出からスタートし、3月中旬にかけて節々で交渉を展開、官民比較方法の見直し問題を中心に全組合員を対象とした人事院総裁宛の要請はがき行動の取り組みを行うなど、要求実現を目指した結果、3月22日に総務大臣、人事院総裁から春の段階の回答を引き出し、2007年春季生活闘争は終息しています。

回答の内容は、総務省からは、@配置転換等に関わって雇用確保に最大限努力すること、A本年の給与改定に当たって人事院勧告制度を維持・尊重する基本姿勢に変わりがないこと、B第3次試行を含め透明で納得性のある新たな評価システムの構築に向けて引き続き協議していくこと、C地方公務員部会の要求に対して地方税財源の確保に取り組むこと、などを確認しました。

人事院からは、本年の給与改定に向けた基本姿勢に変わりはないことを確認しましたが、企業規模を含む官民比較方法のあり方については、見直された“現行の基準によって給与水準が適切に確保されており、これを変更することは考えていない”との回答となリました。これは、昨年の枠組みを超えて本年さらなる見直しを行うことは考えていないことを明らかにしたものです。

所定内労働時間のあり方についても、本年の民調で民間実態を把握し検討することは約束したものの、人勧期に向けた明確な方向性は示しませんでした。また、非常勤職員の処遇改善については“何が問題でどのように取り組むべきか検討する”と、人事院として問題意識をもって検討する姿勢は明らかにしましたが、春の段階で踏み込んだ回答は示しませんでした。

以上のとおり回答については不満ではありますが、人事院勧告制度が歴史的・制度的に限界を迎えており決定制度の改革が不可避であることを再確認しつつ、春の段階の交渉の到達点として受け止め、諸課題の解決に向けて人勧期闘争を全力で進めていくこととしました。



阪神タクシー労働組合 植田 弘次


<夏季分>平成18年11月16日〜平成19年5月15日

240万円以上は従来どおりとする。
経過処置として200万円以上は、水揚げの4%で支給する。
200万以下は支給がゼロになる。
診断書提出の病欠・厚生の者は従来どおりとする。
6ヶ月間で1ヶ月でも40万超えた場合は6%で支給。
別途支給については支給されませんが、
但し、水揚げ額337万円以上の者に夏季分6,800円は支給する。

  <冬季分>平成19年5月16日〜11月15日とする。
240万円以上は従来どおりとする。
240万円以下は支給がゼロになる。
診断書提出の病欠・厚生の者は従来どおりとする。
6ヶ月間で1ヶ月でも40万超えた場合は6%で支給。
別途支給額は2万〜5万円支給されます。
 @310万円〜320万円未満は20,000円
 A320万円〜330万円未満は30,000円
 B330万円〜340万円未満は40,000円
 C340万円以上の者は50,000円とする

※支給対象期間の水揚げ337万円以上の夏季分は6,800円、冬季分8,200円の別途支給はありません

<臨時乗務員について 平成14年11月27日協定 >

欠勤等減額は現行どおりとする。
 ※これに定めのない事項については、臨時支給細目の定めによる。
 ※臨時給の支給日は、夏季分、冬季分をあわせて支給する。
 ※支給対象期間の水揚げが240万円以上〜299.5千円未満の者の支給率を4%とする。同期間の水揚げが240万円未満の者は2%とする。(夏季分は200万円以下ゼロとなる)。
 ※1当務の水揚額32,000円以上の場合は支給率を54%とする。
 ※1当務の水揚額32,000円未満の場合は52%とする。

平成14年12月16日から実施する。



吉原製油労働組合 綱本  勝

3月14日 団体交渉による要求提出
 @基本給×3% 2
 A高卒 初任給(最低賃金)162,000円
 B非正規雇用の雇用実態の明確化と改善
3月29日 回答団体交渉
 @新人事制度実施(定昇廃止、役手基本給へ繰り入れ) 決算業績と業務目標評価後となる。
 A業界(オイリオG)との賃金格差はある。
 B10社 静岡、横浜、他 3社
   パート 200名 派遣社員 140名  Jサービス 20名
  *課長以上 224名  組合員 751名 
   平均年齢39.5才 勤続平均14.5才 基準内平均 307,633円

※支給対象期間の水揚げ337万円以上の夏季分は6,800円、冬季分8,200円の別途支給はありません

会社は、新人事制度導入により、各人の評価査定に時間がかかる。決算後でないと回答(賃上げ)は提示できないとしている。

組合は、4月から遡っての賃上げ実施を確認している。また、経営統合−合併に至る間に同業他社(日清オイリオグループ)との賃金格差(5,600円)を指摘、会社も認識している。

5月に入って、会社は正従業員の最賃にあたる初任給の設定を示してきた。(大学院卒、学卒、高卒)高卒に関しては、組合の要求どうり5000円アップの162,000円。

5月18日(団体交渉予定)には、一時金に関して(フォーミラ方式)の提案、説明をしていたとしている。

組合は、例年6月10日前後には、夏季一時金要求をしている。

*多数派組合は、労使協議会で確認するスタイルで、要求・交渉を行わずに労働条件が改訂されていくパターンのようである。

*私達組合は、あくまで団体交渉にて、要求で交渉し回答を引き出す事を原則に今後も解決に向けて交渉を継続していく。



神戸市職員労働組合 荒井 保光

1.情勢について

ホワイトカラーエグゼンプションに代表される労働者保護法や社会保障の全面改悪という政府の構造改革路線は、全労働者の働く権利と国民の生存権を根底から脅かしています。本来ならば政府に対するあらゆる階層の怒りとして結集されなければならないのに、その怒りが、マスコミの宣伝の下で自治体と公務員に向けられ、そのことを梃子に、政府は自治体民営化と公務員制度改革を進めています。

この間、政府は、3割自治といわれる脆弱な地方財政制度の上に、「地方財政の三位一体改革」から「歳出歳入改革」として自治体への財政支出を大幅に削減してきています。今年度から横浜、名古屋に国の交付税が廃止されることをはじめ大都市への国庫支出を大幅に削減し、大都市財政に対して壊滅的な打撃をあたえています。震災復旧や復興の公債(借金返し)を減らし赤字再建団体に転落させないために、投資的経費を震災前の4分の1に削減するなど努力をし、財政改善をさせてきた神戸市にとっても、その存立に関わる重大な問題となっています。

さらに、政府の強力な圧力によって、公務員の人件費の削減や成果成績主義制度の導入による、給与制度の見直しが全自治体で実施されることとなりました。

2.神戸市職労の取り組み

(1) 被災自治体としての政府要請行動

神戸市職労は、震災以降、被災自治体の組合として政府の「自立自助」政策の下で、本来震災対策は国の責任で行うべきことであることを主張し、政府に対して直接要請を続けてきました。市民署名や、市会全会派に呼びかけて地方財政危機突破大集会など多様な取り組みを行ってきました。政府要請は、単独を含めて16回に及びます。そして、これまでに「被災者生活再建支援法」の改善、住宅再建制度の実現、災害援護資金貸付金の償還の繰り延べなど国の制度として結実させることもできました。引き続きこの運動を粘り強く取り組んでいきます。被災自治体への制度改善を図ることが、地方自治制度そのものを守ることに通じています。

(2) 職員の生活と安全を守る活動

4月に起きた長崎市長の銃撃事件は、行政対象暴力の典型的な事例として全国に衝撃を与えました。これは、長崎だけの問題ではなく、神戸にとっても重大な問題でした。昨年の村岡市議の汚職問題も含めて、市職労は早い時期からこの問題に取り組んできました。

2004年に、職員に対して暴力的言辞で圧力をかけるなどの事件が多発したことから、市職労独自で「不当要求行為等対策要綱」を策定し、神戸市に対しても条例化も含めて明文化するように要求していました。また、市職労圧力110番を設置して、職員からの相談を受ける体制を確立しました。その後、神戸市として、全市統一の「不当要求行為等対策指針」を策定し、村岡事件を通じて「コンプライアンス条例」が成立しました。そして、今回、法律相談の体制も強化し、行政対象暴力も含めて「市職労110番」を充実しました。いかなる暴力に対しても毅然とすることが、職員を守るとともに行政の公平性を守ることになります。今後もこの活動を強化します。

(3) 被災地支援と連帯、社会貢献活動を労働運動の中心に

阪神淡路大震災以降起こった、世界の全ての災害に対して、市職労は支援を続けてきました。これは、被災自治体の組合としてのライフワークでもあります。これまでに被災地に送った募金は4000万円をはるかに超えています。それだけではなく、被災地との連帯の活動は、トルコや洞爺湖町などの被災自治体職員の交流と激励、被災地物産の販売など大きく広がってきています。また、直接支援も行ってきました。今年では、3月25日の能登半島地震で被災した石川県輪島市と穴水町への支援は現在も続いています。とりわけ穴水町は、被災家屋が約200戸あるにもかかわらず避難所が約50世帯ということから国からも県からも重視されていませんでした。しかし、市職労の現地派遣調査によって実態は地元の人たちは役場や人のお世話になることが申し訳ないという気持ちから、車や親戚の家を回るなど深刻な生活をされていることが明らかになり、全面支援を行っています。5月11日には、仮設住宅45戸を訪問して掃除や健康・心配事相談などを行いました。被災者の方からは、被災地神戸からの直接支援を心から喜んでおられます。

また、労働組合への支援はもちろん、親がリストラを受けた私学高校生の学費支援も行っています。これは、「ひまわり基金」といって神戸新聞厚生事業団と連携して実施しています。その他、毎月一度障害者工房のパンの販売を行う活動もしています。

これらの活動は、労働組合の原点に立った社会運動、政府の攻撃の中で困っている人たちを直接支援すること。これは、人道的であるということだけでなく組合の原点、困った時に助け合うという互助の精神でもあります。この社会運動を労働組合の中心課題として取り組んでいきます。

(4) ホワイトカラーエグゼンプション反対、憲法と平和を守る地域の取り組み

昨年、市職労と地域の労働組合が共同で呼びかけた「憲法改悪反対昼休み集会」や「自治体9条の会」の結成など共同の輪を広げました。今年は、3月23日昼休みに、「ホワイトカラーエグゼンプション反対、憲法9条改悪反対」などを課題として、市高、国労、川重の会、センター神戸、中央区労協と共同で呼びかけて、昼休みデモを行いました。

政府の攻撃が、国民生活全般にかかってきている中で、今後も、憲法の基本権に関わる課題、とりわけ勤労権をはじめ生存権や非核神戸方式を守ることも含めた平和の課題について、共同できる課題での運動を広げていきます。



全日本建設交運一般労働組合 津村 訓孝

さまざまな要求実現のため労働組合が最も力の集中を行わなければならない春闘について、建交労春闘の現状などを報告していきたいと思います。まず組織形態は、1999年に全日自労農林建設一般、全動労、運輸一般が組織合同し建交労となり、失業者、労災職病患者をはじめ他業種にわたり、ありとあらゆる労働者が結集する組織形態となっています。

兵庫合同支部では、運輸、港湾、建設、自治体関連、労働者供給事業をはじめ多種多様な労働者を組織しています。要求は多種にわたり、交渉相手も各経営者のみの交渉では解決しない事案が多々あります。

春闘前段での要求アンケートによる労働者との対話と各業種の実態調査をおこなうところから春闘がはじまるわけですが、最近の強い要求項目の第1に雇用の確保が重要な課題となっています。また組合員が対話を進める中で青年労働者が「残業って何ですか」と訊ねた内容が印象に残っています。

今春闘は、「全組合員参加の春闘で、なくそう格差と貧困、許すな戦争する国づくり、実現しよう多様な共同と組織の拡大・強化!」をスローガンに雇用の確保・命と生活を守る働くルールの確立を追及する春闘と位置づけました。同時に一斉地方選挙に組合員はもちろん、家族・友人・知人に憲法第15条・参政権の行使を訴えました。そして、その他の経済的要求をはじめ、切実な要求実現のため社会的力関係を変える組織拡大を重点に春闘を進めてきました。

自治体関連の職場では、これまでの随意契約が一般競走入札に置き換えられていくことで、仕事そのものがなくなってしまいます。また入札で仕事を確保できても極端に単価を切り下げられ、賃金・労働条件が維持できない場合があります。宝塚では、既存の分会がこのままでは自らの雇用・賃金・労働条件は守れないと全国環境部会(業種別部会の1つ)と支部と連携しながら同業他社・未組織労働者の組織化を旺盛に取り組み新たな分会の結成に至っています。その結果、宝塚の民間業者の過半数以上の労働者を組織することで要求闘争が前進しています。(アルバイト従業員の正規化、格差是正を含む賃上げ1万円は継続交渉中)

主力であるトラック業種では、規制緩和後(物流2法施行後)の新規参入の増大による過当競争の増大、国のNOx・PM法や兵庫県条例による環境コストの増大、原油高騰による燃料コストの増大などの外的要因による経費の増大は、元請・荷主の運賃の買い叩きで転嫁できない状況におかれ、企業そのものの存続が危ぶまれる実態となっています。このしわ寄せは、労働者の賃金・労働条件に転嫁されています。増え続ける事故の背景には、運賃が低下する現状を量でカバーしようとする結果、過積載、長時間過密労働などドライバーの命も保障できない悲惨な実態となっており、もはや限界にきています。

建交労全国トラック部会では、安心で安全な公共輸送を確保できる適正運賃収受運動を、行政機関への要請・告発運動などを実施しながら運動をつよめてきたところです。ここ数年、業界との協力・共同が高まり阪神間の海上コンテナ業界では、コンプライアンスの遵守を共通課題に運動を取り組んでいるところです。現在、兵庫、大阪のトラック協会に加盟する海上コンテナ業者では、社会保険未加入業者の撲滅、違法駐車の撲滅などを主に業界と労働組合で海コン秩序労使委員会として、コンプライアンス遵守運動をおこなっています。こういった運動と春闘を結合させ、今春闘では、非正規労働者を組織拡大し正規社員にしていく運動が前進しています。また他の業種・地域でも運動と結合した春闘にそれぞれ取り組んでいます。

まだ総括に至っていませんが、全体を通して、組織拡大や昨年来からの団塊の世代の組合員の雇用継続、既存の職場の雇用確保と底上げが前進しています。

これから夏の一時金闘争に入っていきますが、当面する国政選挙と結合させながら諸要求実現のため一致する要求での協力・共同と組織化を追求していきます。

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