《第469号あらまし》
 ようやく勝ち取った仮処分決定
 兵庫「生存権裁判」訴訟
 《連載》労働事件随想録C
 第45回定期総会
     報告@ 増大するワーキングプアと違法の3点セット
     報告A 楽しく組合活動、広がる青年の輪
     議案討議報告

ようやく勝ち取った仮処分決定

全国福祉保育労 リバティ神戸分会 井門美恵子


私たちはリバティ神戸という身体障害者療護施設の職員です。理事長が大阪の医療法人と提携して六甲アイランドに老人向けのケア付きマンションを建築して分譲するという事業に進出するという計画を提案したことに反対した理事を解任し、同じく反対を表明していた三宅施設長を解雇しました。その大阪の医療法人は医療法違反を理由に大阪府から指導を受けており、そのような問題のある法人と組んで、多額の負債を抱えることに職員や入所者が不安を感じるのは当然です。職員や入所者の家族会の三宅施設長を解雇しないで欲しいという声を無視して解雇が強行されました。のみならず施設長の解雇に反対した私を含む3人の職員も解雇されたのです。解雇されたのは主任指導員、主任ケアワーカー、事務主任といずれも現場で責任ある立場にあり、施設開設以来一生懸命施設を支えてきたメンバーです。

この間、仮処分の審理の終盤で4名の内、2名については解雇を撤回し原職に復帰する旨の和解が成立して職場復帰を果たしましたが、施設側は三宅施設長と主任指導員であった私の2名についてはあくまで争うという態度を曲げませんでした。ようやく2007年6月19日、私たちの主張を全面的に認める仮処分決定を勝ち取る事が出来ました。

思い起こせば、昨年6月21日に突然の出勤停止処分を受け、それまでの施設側の言動からある程度、何らかの働きかけをしてくるであろうということは予期してはいたものの大変なショックを受けました。私より先に出勤停止を受けていた2名の人たち、一緒に処分を受けた計4名で全国福祉保育労兵庫地本に6月中旬に加入、分会を結成し、6月27日に公然化し施設側との交渉を行いました。交渉は平行線をたどり、組合・弁護士の先生とも相談し昨年8月25日に神戸地裁に仮処分の申し立てを行いました。それからの10ヶ月余り、幾度となくくじけそうになりましたが、各組合・地域の支援連絡会の方々から「今度〇月〇日に集会があるから、是非参加して訴えをした方がいいよ」と暖かい言葉をかけて頂いたり、地域への宣伝行動(16回延べ153名)、裁判傍聴や支援行動(7回延べ103名)、神戸地裁への団体署名333筆、個人署名2156筆と暖かいご支援頂き本当に勇気付けられました。「こんな不当な処分は許せない」という強い思いと、何よりも多くの方々に支えて頂いたからこそここまでこれたと思っています。組合も、裁判も、訴えも私にとっては全てが初めての経験であり、何回となく訴えをさせて頂いた時の自然に溢れてくる涙は、私が生まれて今日まで又この先の人生でもたぶん流さないであろうと思われる程のものでした。この涙を忘れる事なく、それを糧として、職場に復帰しても頑張っていけると確信しています。本当に有難うございました。

仮処分決定の後に残る2名の内、私は団体交渉で原職復帰を果たすことができ、これで4名中3名について争議は解決しました。しかし、施設側は三宅施設長の復帰は頑と認めようとしません。このような施設側の態度からも今回の解雇のねらいがどこにあったのかは明らかです。ケア付きマンション計画は土地の取得ができなかったために頓挫してしまいましたが、今も施設の建物・敷地には3億数千万円の負債のための担保が設定されたままです。

やむなく三宅施設長については神戸地裁に解雇無効・地位保全の本訴を提起しました。闘いはまだしばらく続きますが、職場に戻った仲間と共に三宅施設長が1日も早く復職を果たせるよう頑張りたいと思います。みなさん引き続きご支援を宜しくお願い致します。

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兵庫「生存権裁判」訴訟

弁護士 吉田 維一


1 全国各地で広がる訴訟

「生存権裁判」は、現在、全国で109名の原告が、本当の「健康で文化的な最低限度の生活」と生活保護の老齢加算廃止の取消を求めている裁判で、青森・京都・秋田・新潟・東京・北九州・広島・兵庫の8地裁で提訴し、全国的な運動となりつつあります。

2 「生存権裁判」に至る経緯

(1) ところで、憲法25条1項では、「全て国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とされ、同条2項では、「国は、全ての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」とされています。

これを受けて、生活保護法1条では、「日本国憲法第25条に規定する理念に基づき、国が生活に困窮する全ての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする」とし、同法3条では、「この法律によって保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない」と定めています。

(2) 本件で問題となっている生活保護の老齢加算は、同法9条の「必要即応の原則」に基づいて、1960年4月から継続されてきた高齢者(原則として70歳以上)に対して支給されていた特別基準枠です。この基準枠が設けられたのは、高齢者には、一般よりも、一定の扶助(観劇、雑誌、通信費、下衣、毛布、老眼鏡、被服、見廻り品、炭、ゆたんぽ、入浴料、茶、菓子、果物)が必要であるとされたためです。

そして、その後も40年以上にわたり、高齢という身体的制約からくる特別の食料費・光熱費・被服費・保健衛生費等の支出財源として定着し、生活保護を受給する高齢者の「健康で文化的な最低限度の生活」を支えてきました。

(3) しかし、2003年12月の中央社会福祉審議会福祉部会・生活保護制度の在り方に関する専門委員会(以下、「在り方委員会」と言います。)の「生活保護制度の在り方についての中間とりまとめ」において、突如、「加算そのものについては廃止の方向で見直すべきである」とされ、2004年から2006年にかけて段階的に廃止されてしまいました。

兵庫県の原告についてみれば、それまで9万3850円あった支給が、7万5770円となるなど、軒並み、ほぼ20%の支給減となってしまいました。老齢加算廃止を決めた「在り方委員会」が挙げた理由は、@(生活保護基準は)一般国民の生活水準との関連において捉えられるべき相対的なものであり、年間収入階級第T/10分位の消費水準が適当であること、A単身無職の一般低所得高齢者世帯の消費支出額について、70歳以上の者と60歳〜69歳との間で比較すると前者の消費支出額の方が少ないことが認められるということでした。

3 生存権裁判の概要

(1) ア この点、生活保護法56条は、「被保護者は、正当な理由がなければ、既に決定された保護を、不利益に変更されることがない。」として、不利益変更の禁止の原則を掲げています。すなわち、被保護者は、生活保護の受給に関連するような事情の変更があり、かつ、当該変更の手続を正規にとった場合でなければ、保護費の変更はされません。

そこで、先ほどの、「在り方委員会」の廃止理由が合理的であるかを検証する必要があります。

イ まず、「年間収入階級第T/10分位(全収入階級を10分割した中の最も低収入の集団)の消費水準が適当」であるという点ですが、仮に、この水準が適当であるとしても、この収入階級に含まれる人の中には、いわゆる「水際作戦」等によって、本当は生活保護が受給できるにもかかわらず、生活保護を受給できていない人が多く存在しています。具体的には、毎月の平均収入が約4万7000円で、平均消費支出額が約9万2500円の生活をしている人たちを指して、この人たちよりも生活保護受給者は多くの収入を得ていると言うわけです。しかし、本当に検討されるべきは、この生活保護を受給していない人たちが、「健康で文化的な最低限度の生活」を行っているかではないかと思います。

しかも、経常的な個人の需要に充てられる食費・被服費等(「T類費」と言います。)については、生活保護費がこれらの人の支出額を下回っていますが(T類費に係る生活扶助費は2万9588円であるのに対し、これらの人のT類費相当支出額は3万4003円です)、こうした点には触れられていません。

ウ また、単身無職の低所得高齢者世帯の消費支出額において、60歳〜69歳の者よりも、70歳以上の者の消費支出額の方が少ないとされていますが、そもそも、60〜69歳の年齢層は、各年齢別で見ても、生活に必要な基礎的支出以外の支出(「選択的支出」と言います。)が最も多い層です。その理由は、退職から時間が経過しておらず、無収入とはいえ、無職者の中では、最も貯蓄があり、かつ、住宅や子どもの教育費用等もいらないため、比較的自由に貯蓄を取り崩しながら使えるからであると見られています。

しかし、こうした60〜69歳の層に消費余力がある点については全く考慮されず、単純な比較しかされていません。

エ したがって、いずれにしても、両方の廃止理由ともに、より慎重な議論がされるべきであったと言えます。

(2) また、本件は、憲法25条で定める「健康で文化的な最低限度の生活」を正面から問う裁判となります。

朝日訴訟では、最高裁は、「最低生活の決め方は厚生大臣に広い裁量がある」と判示していますが、本件は朝日訴訟と異なり、これまでの生活保護の基準の切り下げを許さないという裁判であり、いわゆる「ナショナルミニマム」の基準をどこにとるのかを争う点でも重要であると言えます。

(3) 兵庫県の原告8名(さらに、1名が追加提訴の予定)は、上述の老齢加算の廃止は、事情の変更もないにもかかわらず、不利益に保護費を変更するものであり、「健康で文化的な最低限度の生活」を侵害するものであるとして、今年の5月16日、神戸地裁へ提訴しました。その際、神戸地裁まで原告団・弁護団に加え、支援者の方々の約150名ほどがデモ行進をしました。

また、提訴後の集会でも、会場には立ち見でも入りきらないほどの多くの方々が出席するなど、兵庫県の各方面からの注目を集めている裁判である様子が当日のマスコミの報道でも紹介されました。

このような「生活保護を受給している一部の人たちだけの問題ではない」という関心の高さの要因は、先の「構造改革」によって、社会保障費の抑制や労働コストの削減された結果、貯蓄残高ゼロ世帯が23.8%、国民保険料の滞納世帯18.87%、非正規労働者が32.6%に上ると言われるなど、おそらく、終戦直後を除いて、戦後初めて、高齢者・年金生活者・要介護者・失業者だけではなく家計の中心となっている多くの労働者も貧困に直面しながら生活している現在の状況にあると思います。

社会保障の切り下げと諸々の負担増、そして不安定雇用の増加の中において、圧倒的多数の国民の最後の砦となる生活保護を守る裁判の意義は非常に高いと思います。また、「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する生活保護基準以上の最低賃金や年金を獲得し、よりよい生活を送ることを目指す意味でも、多くの国民にとって意味のある裁判であると思います。

4 最後に

第1回期日は、9月7日1時45分からです。弁護団は、弁護団長の藤原精吾弁護士、副団長の阪田健夫弁護士、幹事長の松山秀樹弁護士、事務局次長の瀬川嘉章弁護士、曽我智史弁護士、木曽加奈子弁護士、事務局長の私です。ご支援の程宜しくお願いいたします(なお、現在でも、引き続き、弁護団を募集しております。)。

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《連載》労働事件随想録C

弁護士 野田 底吾


ネスカフェといえばコーヒー党でなくても知っているブランドだ。そのメーカーであるネスレジャパンの本社ビルを、私が初めて訪れたのは1975年頃だったと思う。そのころ私は、時々、民法協の案内ビラを持っては、主に港湾とか市外にある工場を訪問し、現場労働者に民法協加入のオルグをかけていたが、神戸の中心街にあるオフィスビルを訪問するのは珍しいことであった。丁度、昼休憩の時間であったせいか、エレベーターや廊下で目にする外資系会社の社員は、汚れた作業着の現場労働者とは違い、何となくインテリっぽくて、お化粧のほのかな臭いも漂わせている。当時、ネスレでは組合が婦人労働者を中心に頸肩腕の職業病認定を取り組んでいたので、その後の打合せ等でしばしば組合を訪れた際に知ったのが、青婦部長として活躍していたOLの山本輝理さんだった。当時は、まさか彼女が、その後の会社が仕掛けてきた凄まじい組合「赤攻撃」に耐え、労働者魂を守って会社と対決する等とは思ってもみなかった。

会社は1980年頃から組合を嫌い始め、外資系会社で組合潰しの経験を持つ労務屋を雇い入れ、民法協など外部組織と連携を持ち始めたネッスル労組に、「共産党が指導する赤組合」等と猛烈な反共宣伝を浴びせ始めた。そして、会社方針に盲従する管理職を先頭に組合内に御用派(インフォーマル組織)を結成させ、組合員の大半を切り崩していった。こうした不当労働行為攻撃に、法廷闘争で反撃していた私や宗藤、藤原ら組合弁護団に対してさえも、会社は弁護士の経歴を内部資料で流したり、暴言を浴びせるなどして攻撃を加えた。弁護士に対してでさえ、かような状態であっただけに、社員同士にあっては、上司が組合員を脅し上げ、御用派への鞍替えを強要する日々が続いた。それは、恰もレッドパージ時代を想起させる程の酷さであった。そんな嵐の中でも、山本さんら少数の組合員は、「赤虫!お前らが会社をつぶすのだ!」等と罵られながらも良心の灯火を守った為、会社は組合を丸ごと乗っ取る事に失敗し、1983年、組合を分裂させ御用派に第二組合を結成させた。と同時に、第一組合に残った本社の組合員9名全員につき仕事を干し上げ、個室に軟禁するなど職場八分の見せしめを行い、特に体調不良の池末さんを外回りに、唯一の女性組合員山本さんを男しかいない明石出張所へ転勤を命じ、これに抵抗する両名には仕事を与えない、電話を取り次がない、絶えず嫌味を言うなど陰湿な嫌がらせ攻撃を加えた。山本さんは「会社を辞めたいと思ったことはなかったが、今日は会社に行きたくないという日は何日もありました。その中で一番大変だったのは心配する両親の説得でした」と言っている。両名に対する配転命令差止めの裁判は、その後、12年もかけて闘われた結果、会社の嫌がらせを断罪する裁判は勝利し、損害賠償を支払わせるのに成功したものの、配転命令を撤回させる迄には至らず敗訴し、両名は止む無く配転先に移った。然し、その後も第一組合はその正統性を掲げ、一方では御用組合である第二組合と、他方では会社と熾烈に争い、1995年には最高裁で組合を公認させる迄に成長した。残念ながら、私は99年に大病を患って一線を引いた為、その後のネスレの闘いに参加できずにいるが、組合は組合員を増やしつつ全面勝訴に向け今も頑張っている。

シクラメンを別名、篝火(かがりび)花とも呼ぶ。私はこの花を見ると、いつも、暗闇の中で人を導く篝火と、篝火花(シクラメン)の爽やかさが山本輝理(かがり)さんの名前に表れていると思う。配転裁判の冒頭で、彼女が原告5名を代表して意見陳述を行った際、その目にキラリと光るのを見たのは、つい昨日のことの様であり、と同時に、共に戦った池末真行さんの悔し涙も忘れない。山本さん、池末さん、元気に頑張ってますか。

「燃えつきし 焔の形 シクラメン」(田川飛旅子)

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第45回定期総会
報告@ 増大するワーキングプアと違法の3点セット

神戸交通労働組合 藤ア 眞二


民法協第45回定期総会は2007年7月7日シ14:00から神戸市勤労会館308号室で、開催されました。

増田事務局長の司会で始まり、代表幹事の鳥居氏(全港湾)による主催者を代表しての挨拶があった後、首都圏青年ユニオン書記長の河添誠氏による、『<貧困>と<労働基準法以下の労働条件の拡大>と対抗する運動を』と題した記念講演が行われました。首都圏青年ユニオンは組合員数約300名のアルバイトをはじめ、雇用形態に関係なく、誰でも、一人でも入れる若者のための労働組合とのことで、まずはテレビで放映されたメーデーの取り組みについて、VTRでの紹介がありました。その後、河添氏により、若者の労働現場の実態や、これまでの活動等についての話があり、その中で「ワーキング・プア(働く貧困層)は急速に増大している。違法の3点セットと呼ばれている<残業代未払い><有給休暇なし><社会保険・雇用保険未加入>がまかり通り、賃金、制度での格差だけでなく、実体的に違法状態が放置されている点での格差が大きくなっている」と訴えました。また、「牛丼チェーン店のすき家のたたかいでは、店舗のリニューアル(改装)を理由にアルバイトを解雇された組合員の職場復帰を成し遂げ、すき家で働く全国1万人以上のアルバイトに残業代が支払われるようになった。このすき家のたたかいにより、首都圏青年ユニオンの名前も少しは知られるようになった」との話もありました。その他、ネットカフェ難民の実態についての話や、メーリングリストを使い組合員全員に団体交渉の参加を呼びかける手法の紹介などの話があり、予定の時間より若干遅れて講演は終了しました。参加者からは多くの質問が出されましたが、講師の河添氏によってひとつ一つ的確に回答がありました。いくつかを抜粋して、ご紹介いたします。

質問:ネットカフェ難民の話では、寝るところも確保できないとの事だが、月収が10万円以下の場合、生活保護を受けられるのではないか。また、残業代未払いや有給休暇なしの問題など、経営者側に違法性の認識があるのか。無知によるものもあるのではないのか。

回答:生活保護の条件よりは上である場合が多いが、敷金の問題等でアパートも借りられない。毎日を生きるための日銭を稼ぐのが精一杯である。残業代未払い等の問題では、言われるとおり、経営者の知識が乏しく、違法であるとの認識がない場合もある。これが大きな問題となっている。

質問:首都圏青年ユニオンを結成するに当たり、一番苦労したことは何か。また、スタートの時点での基盤はあったのか。

回答:さほど苦労はしていないと思う。当初は30名程度であった。日立製作所の田中さんを支援するネットワークと自分がアルバイトをしていた病院で作った組合が同時に基盤となったように思う。

質問:地域ユニオンは駆け込み寺的な存在だと思うが、組合員の継続性に問題は無いのか。労働条件向上のための取り組みが必要となってくるのではないか。

回答:約7割は定着している。理由としては、安定した職場ではないので次に備えて残留すると考えられる。また、仲間意識が芽生えて、何よりも楽しんでいる組合員が多い。労働条件の向上についての相談はゼロではないが、我々の運動は一人の加入から組織拡大を目指し、法律に基づいた最低条件の確保を優先している。

質問:団交の申し入れを拒否されることはないのか。

回答:拒否されることは少ないが、先ほども言ったように無知な経営者もいるので、時には拒否されることもある。その場合は労働審判にまわす。

質問:職場で思想の違いなどによる差別は無いのか。

回答:そのような事例は聞いたことがない。

他にも多くの質問等がありましたが、質疑を含めて16:00頃に記念講演は終了しました。

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第45回定期総会
報告A 楽しく組合活動、広がる青年の輪

全日本建設交運一般労働組合兵庫合同支部 津村 訓孝


T.首都圏青年ユニオン・河添書記長の記念講演を受けて

今回の記念講演は、情勢を象徴したリアルな内容でマスコミ報道では伝わらない現場の生々しい実態が報告され、若年貧困層の増大にどう立ち向かい改善をはかるかを考えさせられました。また改めて基本原則を追求する運動が大切であることを再認識させられ、労働組合としての具体的運動・真価が問われた感想を受けました。

日本国憲法25条生存権、国の社会的使命では、@すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。A国はすべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。と明記しています。この国には存在してはならないはずのホームレスが実際は存在し、しかも増加しています。いまこそ憲法を守らせる国民的権利闘争を追及しなければなりません。

首都圏青年ユニオンは、労働基準法以下で働かされている若年層を中心に「社会運動としての労働基準法遵守」の運動を広げていることが報告されました。いま、医療・介護難民、ネットカフェ難民更にバーガー難民という貧困化が進んでいます。若者の多くは働きたくても正規雇用が縮小され、非正規、更に「日雇派遣」なる不安定雇用が拡大されていることに驚きを隠せません。仕事があれば1時間100円程度のネットカフェに寝泊りできるものの仕事がなければ24時間のバーガーショップに1杯の飲み物で、そこの店員に追い出されるまで体を休める。お金が尽きると公園や路上で一夜を明かすことが多々あるそうです。このような労働者の犠牲のもと大企業は史上空前の利益をあげ「コンプライアンス」「法令順守」を題目のように唱えていることの虚しさと矛盾が益々拡大しています。

政府に生存権(憲法)を守らせ、財界・大企業には真の「コンプライアンス」「法令順守」を求めなければなりません。

首都圏青年ユニオンでは、圧倒的大多数の不安定雇用の若者を組織しており、財政的に困難ななか手間隙がかかるにも関わらず専従者も置けない状況の中、色々な工夫がされています。特に印象に残った内容は@労働相談は、できるだけ電話で対応し、直接面談するときは加入するときであること、A団体交渉は、できるだけ多くの組合員が参加できるよう携帯メールで呼びかけ開催時間も仕事を配慮して午後7時から開始できる手配をする。そして路上での事前の打ち合わせと団交後の総括を行うなどお金がなくても参加できるように配慮をしていること、B会議の時には、数百円を各自が出し合って炊きだしをする。その内容も携帯メールで「食事つき」などと全組合員へ配信していること。

首都圏青年ユニオン・河添書記長は言います。「楽しくなければ…」そんな一言に象徴されるように若者の輪が広がっています。今年の5月20日に東京・明治公園で開催された「全国青年大集会2007」では全国各地から若者が3,000人以上も結集したことは、マスコミでも大きく報道されました。多くの若者が底辺から立ち上がろうとしています。

私たちも知恵と工夫で身近に存在する底辺から立ち上がろうともがいている若者に手を差し延べ「人間らしく生き生きと働ける環境」をつくる為にいっそう奮闘しなければなりません。

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第45回定期総会
議案討議報告


総会議案書の討議について以下に報告します。

午後4時より、野口氏(JMIU甲南電機支部)と鈴木氏(東熱労組)の2名を議長に選出し総会の議案に入りました。

(1) 会則一部改正案(萩田弁護士)

昨年、全面改正した会則であるが、追加の改正提案がなされた。長期の会費滞納の場合に、現在は幹事会の決定で、権利停止等の措置を個別にとっていたが、これは会則で明記すべき事項である。そこで、「1年間会費を納入しない会員に対しては、会から納入を催告し、それに応じない場合は6ヶ月間の権利停止し、さらに会費が納入されない場合は退会扱いとする旨を規約第7条として追加する」ことが提案された。

(2) 情勢(白子弁護士)

昨年から今年にかけ、教育基本法の改正、国民投票法案(改憲手続法)の制定と憲法施行60年目にして重大な局面を迎えた。また、労働基準法改正案、労働契約法案、最低賃金法改定案については、今秋にも再度国会で審議をされるであろうことなどの報告があった。

(3) 活動報告(増田弁護士)

組織活動として、ニュースの発行が毎年10回程度にとどまっていたが、今年は月1回の定期発行(年12回)ができた。和田邦夫さんの連載に続き、野田底吾弁護士の貴重なご経験と思いを「労働事件随想録」と題して執筆していただいている。

学習活動は、例年どおり行事は行っているものの、出前講座が活発に利用されず、行事や学習会への出席者も徐々に減っている。活動がマンネリ化しているのではないかと危惧をしている。地労委問題は、第39期労働者委員選任訴訟が今年3月に神戸地裁で敗訴し、直ちに控訴した。この間の訴訟を通じて少しずつ労働者委員の選任の実態が明らかになり、裁判所も「連合」の枠組に沿って選任がなされていることについては否定できなくなっている。あと一歩が突破できないのが現状である。

(4) 活動方針(増田弁護士)

学習活動の強化、未組織労働者への働きかけ、労働審判制度を定着させる取り組み、地労委問題、憲法問題にも今回も取り組む。

とくに未組織労働者への働きかけの一方策として個人会員の拡大の取組を検討したい。

(5) 特別報告(吉田竜一弁護士)

ネスレ不当配転事件

05年5月9日に神戸地裁判決、06年4月14日に大阪高裁においても配転不当の勝利判決が維持され、現在、会社が上告中で今のところ動きがない。重要なのは2人の労働者を姫路工場の職場に復帰させること。引き続きご支援をお願いします。

(6) 会計報告、新役員体制案の提案後、以上の報告について原案どおり承認された。

最後に、代表幹事の長渕満男甲南大学教授から閉会の挨拶が行われ、総会は終了した。


         【会員名簿の訂正のお願い】
<個人会員>
前野育三(関学大)→(関学大名誉教授)に訂正をお願いします。