先日9月1日に、『兵庫青年ユニオン〜波〜』を結成しました。
ユニオン結成時、加盟した組合員は14名です。それぞれ正規労働者、派遣労働者、学生アルバイトなど雇用形態はちがいますが、「偽装請負」「日雇い派遣」など、青年がいつ解雇されて、生活がなり立たなくなるかの不安を抱えて働いている状況を、青年自身の責任とせず社会問題として認識し、みんなで力を合わせて解決しようという熱い思いをもっています。
労働法制の改悪により、私たち青年の雇用問題がますます深刻になるなか、首都圏青年ユニオンが団体交渉で、不当解雇撤回や、サービス残業の未払い賃金を支払わせるなど、次々と問題を解決するめざましい活動をしていました。その影響を受けて、2年ほど前から兵庫県でも青年ユニオンをつくりたいと、仲間と話し合っていました。でも当時は、労働組合って何なのか、自分たちが労働相談を聞けるのかなど、知らないことだらけでしたし、自分たちの問題としてとらえられていませんでした。
そこで、周りの青年はどんな働きかたをしているのか声を聞こうと、昨年の秋からd働く青年の実態・願いアンケートe(10〜30代の県内の青年中心に269名から回答・民青同盟兵庫県委員会調査)を集めはじめて、その結果からワーキングプアと言われる実態がわかってきました。
低賃金の実態では、年収100万円未満が18%、200万円以下は42%で、「こんな給料ではとても結婚できない」「親から独立できない」など将来不安が書き込まれています。ハードなダブルワークの実態でも「賃金が低いため早朝から夕方、夕方から深夜まで働き、わずか1時間の休憩で移動と夕食を済ませる。過労とストレスのため職場で倒れ、2週間休職したこともある。同僚は多忙さと過労で、刺身包丁で誤って腕を刺し、大量出血したこともある。それだけ働いても月収は20万円もなく、休めばそれだけ賃金が少なくなる」と切実な声が寄せられました。
また、回答者のうち、正規雇用は51%にとどまり、非正規が42%にのぼっています。「会社は人件費を削って正社員を取らない。アルバイトはその穴埋めで身を削ってボロボロになって働いている。なかなか正社員の職が見つからず、先が見えない。」など県内で働く青年も、全国と共通に深刻な実態なのだとわかりました。
駅前宣伝にも取り組みましたが、聞きっぱなしにならないように街頭労働相談所として机を置き、兵庫労連に相談員を派遣してもらい、協力して運動することになりました。そして、兵庫でのユニオンづくりにむけて、共同でシンポジウムや集会を開催していくうちに、県内の労働組合からもたくさんの激励をうけ、今年9月に結成することができたのです。
今年5月20日に東京でひらかれた、全国青年大集会に参加しましたが、過去3回の集会を上回る規模で発展していました。参加者は、前回の2倍以上の3300人です。集会の開催前から、雇用集会実行委員がとりくんだ"ネットカフェ調査"が取材され、TVで放送されました。当日も舞台前にTVカメラがずらっと並ぶなど、社会的な注目を実感しました。それだけ青年雇用問題はまん延し、より深刻さを増しています。
集会参加者の壇上発言では、月100時間の残業と休日出勤を強いられ、去年の6月に自殺をはかった男性が、「そんな私を救ってくれたのは、昨年9月の山梨青年ユニオンとの出会いでした」と、駅前で宣伝していたユニオンの働きかけによって救われ、今たたかいに立ちあがっていることや、髪を染めているという理由だけで、クビになった16才の女性が、「納得できず首都圏青年ユニオンに入りました。16人がかけつけてくれて4月に団体交渉をおこない、解雇を撤回することができました」とイキイキ発言しました。
また、低賃金のため家賃が払えず、2年間もネットカフェ暮らしで、「親にも友人にもこの生活を隠しています。正直に話せる生活がほしい。手放した普通の生活をもう一度とりもどしたい」と実行委員会のネットカフェ調査で知り合って、集会に参加した男性の話は身につまされました。
どの話を聞いても、身近に相談できる青年ユニオンが、青年のすぐそばにあることが必要と痛感するとともに、自分たちと同じ若い人が、会社の無法・違法な働かせかたを告発し、解決の道を探ってたたかっている姿に感動しました。
私自身、ユニオン結成に意欲的になった身近な出来事があります。派遣社員の友人が、派遣先の仕事に意見を言ったことで、友人の能力不足とされ解雇されたのです。私では話を聞くだけしかできないので、地域労組に連れて行きました。相談員の方がていねいに相談にのってくれ、それから数日間、団体交渉にむけて、詳細な打ち合わせをしていきました。以前から、派遣先が気に入らなければ解雇され、泣き寝入りする同僚を見てきた友人は、「こんなことおかしい」と立ちあがる決意を固めました。そして団体交渉後、解雇は撤回され、派遣元の会社に正社員として、雇用されることになったのです。この経験で、一人では泣き寝入りしかねない状況でも、話を聞き、いっしょに解決に向けて話し合うことの大切さ。また、会社と対等にわたりあう団体交渉ができる、労働組合の強さを実感しました。
友人はその後、「私だけが良くなってもあかん、同じような人たちの力になりたい」と、青年ユニオンをつくる運動に参加しました。このように、自分の問題で立ちあがった青年が、同じような境遇の青年を救いたいと、さらに力を発揮できるのも、青年ユニオンの魅力です。
職場も職種もちがう青年労働者が、もうけ最優先の資本主義の犠牲となっていることを自覚し、団結して、自分たちの状況を改善する運動に参加していく。青年自身が主体者になってたたかう青年ユニオンは、青年を変え、社会を変える力になるのです。
さて、どうやって兵庫県で青年ユニオンを広げていくかが、これからの課題です。
私たちは運動方針で、組織拡大こそ最大の要求とし、"学びながらたたかい、たたかいながら学ぶ"労働組合をめざしています。青年が労働者としての権利を学習し、自覚を高めてこそ、たたかいに立ちあがる自信につながると思います。これからどんどん活動の場を広げ、私たち自身が信頼される労働者として、学ぶこと・たたかうことを大切に、一人一人が成長できる場にしたいと思います。
雇用問題解決の最先端をゆく、首都圏青年ユニオンは、結成から7年をむかえ、100戦90勝という輝かしい運動を積み重ねてきました。『兵庫青年ユニオン〜波〜』も県内の期待の星として、その目的の「青年と連帯し労働者・青年のさまざまな要求実現と、働く青年の経済的、社会的地位の向上をはかること」を、兵庫労連と協力・共同して、多岐にわたる問題の解決をめざします。
『兵庫青年ユニオン〜波〜』は、一人で悩まないで、すぐそこにある青年ユニオンに相談しようよ、と言われるような、青年労働者の相談相手になりたいです。誰もが人間らしく働き暮らせる兵庫をつくるため、連帯の波を広げていきます。
このページのトップへ明日からゴールデンウィークが始まるという78年(S53)4月28日夜9時、姫路市内の国道2号線で、信州旅行に向かう若い男女4人を乗せた乗用車が信号待ちをしていたところに、9トン積の大型トラックが追突し、ショックで乗用車が炎上、アッと言う間に4人が焼死した。追突したトラックは、佐賀市のS運送鰍フもので、高山運転手(34歳)の居眠りが直接の原因であった。私がこの業務上過失致死事件の国選弁護人となったが、最も注目した点は、居眠りの遠因である。そこで私は、裁判所の許可を得て、当時の運輸一般労組書記長の今村氏を特別弁護人とし、弁護体制を整えた。
S運送は資本金800万円、大型トラック7台、従業員10人程の小さな会社で、高山の家族は妻と3歳女児の3人暮らしであった。連日、長距離運送に従事していた高山は、事件前日は午後10時に帰宅し、翌朝(事件当日)午前4時に起床して自宅を出、宵積しておいた名古屋行きの荷物を満載したトラックを走らせた。当時は未だ中国縦貫高速道もなく、車は佐賀市から名古屋に向け、一般国道をトロトロ走った。途中、倉敷辺りで日が暮れ、身体が鈍くなったが、大型トラックを収容できるドライブインが少なく、しかも翌29日午前10時迄には名古屋に搬入しなければならない為、高山は予定したドライブインの土山まで無理しても走行しなければならなかった。そんな状態でトラックは現場に差し掛かったのである。
実は、1年ほど前、S運送では長距離運送の場合に助手をつけるとか、配送時間に余裕を持たせ、運転時間に歯止めをかける等、労働条件の改善を求めて労働組合結成の準備を密かに進めたところ、ワンマン社長に発覚し中心的な数人が解雇されてしまった。以来、長時間労働や低賃金に苦情を述べる者もなくなり、運転手も転々と入れ替わり、会社の意のままに過酷な長距離運送が増加したのだった。同様の長時間労働による重大事故は、85年(S60)1月の早朝5時、スキーツアーの三重交通バスが居眠り運転で長野県梓川に転落、大学生ら25人が死亡した件がある。この運転手は長距離運転が連日つづき、2週間も自宅に帰っていなかったし、最近でも、今年2月、安曇野観光バスが吹田市でモノレールの橋脚に衝突し、数人が死亡した件も記憶に新しい。こうした過酷な長時間運転を止めさせるには、他社との競争に目を奪われ荷主の言うままになる経営者にこれを期待するのは無理で、先ずは現場労働者が労働組合を結成して要求を組織化し、団交を開かせ、更にこれを同種産業に広げるべく全国組織の産別労組に働きかけねばならない。そして全国的な労働者のうねりの中で、国会に長時間運転を規制する立法措置を取らせなければ解決しない。
さて現行犯逮捕された高山は、神戸拘置所で面会に訪れる人もなく不安を抱いたまま10月の公判を迎えた。佐賀市に残された妻は、事件が地元新聞に大きく報道された事から転居を余儀なくされ、しかも収入も途絶え、幼児をつれてパートにでる始末で、とても神戸まで面会に行ける状態にはなかったからである。私は、早速、裁判所に妻を情状証人として採用させ、公費で妻を法廷に呼び寄せることができた。法廷が始まるや、傍聴席の妻と幼児の前に、突然、高山が手錠姿で現れた。今日まで「パパはお仕事なの」と幼児を騙し騙し過ごして来ただけに、この手錠姿に驚いた妻は、慌てて女児を抱きしめて目を覆った。こうしてやっと半年振りに法廷内で妻と子に再会した高山は、終始、身体を震わせ涙々の連続で、弁護人の私も思わず目頭を熱くしてしまった。
傍聴席には、運送会社が倒産し、その神戸港支店を職場占拠していた三和陸運の組合員が、「明日は我が身?」との思いから、同じ労働者仲間である高山を励まそうと、多数傍聴に来てくれていた。彼らは裁判後、高山の妻と女児を神戸港支店の宿直室に案内し、食事と休息を取らせて励ました。こうして高山の妻と女児は、同じ境遇の交通労働者として連帯する三和陸運組合員の見送りを受け、夜のフェリーで九州に帰って行った。
公判中、高山に長時間運転を強いたS運送が倒産し、被害者4人の遺族は強制賠償保険以外に全く賠償金を受取れなかったが、本件事故の背景を理解し、裁判所に高山の為に嘆願書を提出してくれた。
翌年3月、椿の花を背景に、高山の家族3人が微笑む写真葉書が私の許に届いた。そこに小さく、三和陸運の労働者に感謝する旨の言葉が記されていた。
「日当りて 花新しき 椿かな」(清崎敏郎)
このページのトップへ労働審判学習会に参加して、初めて労働審判制度の存在を知りました。
講義だけではなく、実際にこんな感じだろうと実演していただいて分かりやすい学習会でした。審判自体は裁判と同じ効力を持つとの説明でしたが、実演していただいた内容からは、裁判とはほど遠いイメージで、労働組合の労使交渉と変わらないような感じでした。
そして、これからの労働組合活動への学習にとって十分な課題になると思いました。
しかし、制度を知っていても、労働審判を導入せずに自分たちの労働組合内での解決をする組織も出てくるのではないのか?と思いました。
しかし、労働組合に加入していない労働者には必要な制度です。このような労働審判制度が導入され、働く人の権利が守られていければ良いのですが、どうすれば労働組合や、非組合員への宣伝や審判制度の理解を得られるには時間がかかると思います。
しかし、卑劣な労働条件を行っている会社側の自由にさせていては、我々労働者の権利を守ることはできません。働く人たちに一日でも早く知ってもらい、理解を得て労働者の権利を守る社会になればと思っています。
このページのトップへ2007年9月19日に労働審判シンポジウムを開催し、その中で労働審判サポートセンターの開設について報告を行いました。
労働審判制度が発足して1年余りがたちましたが、まだまだこの制度が知られておらず十分活用されていないのが実情です。
そこで、当協会は「兵庫民法協労働審判サポートセンター」を開設し、トラブルを抱える労働者に対して、弁護士を紹介して労働審判を積極的に活用していただき、紛争の早期解決の支援をしたいと思います。
労使のトラブルでお困りの方は、お気軽に当協会までご連絡ください。
下記にサポートセンターの規則を掲載します。
1 対象事件
神戸地方裁判所または大阪地方裁判所を管轄裁判所とする労働審判事件の労働者側
2 当事者の居住地域を考慮して、登録弁護士の中から当協会が弁護士を紹介します。
3 弁護士費用等については、法テラスの扶助制度を利用することを原則とします。扶助基準を充たされない場合、または本人が法テラスへの扶助申込みを希望しない場合は、以下の基準による個別の委任契約を締結します。
(1) 受任事務の内容は労働審判手続申立書、申立人名義の陳述書の作成、審判期日への出頭とします。
(2) 委任契約時に必要な着手金等
@着手金 105,000円
A実 費 20,000円(労働審判事件終了後、精算必要)
(3) 労働審判手続内で解決した時の報酬金
経済的利益の額の10.5%
なお経済的利益の額は、事件の種類毎に次のとおりとします。
(あ)金銭の支払いを受けた場合 支払を受けた金銭の額
(い)解雇・雇止め事件で復職できた場合 バックペイの金額に今後1年分の年収を加えた額
(う)配転、出向事件で原職場にとどまることができた場合または依頼人が受入可能な職場への配転、出向となった場合 金300万円と見なします。
4 審判に対する異議申立によって本案訴訟に移行した場合、仮処分命令申立事件を別に申し立てる場合等、労働審判申立以外の事件処理を行う場合や上記基準以外の事務を受任する場合は、着手金、費用、報酬金等の委任契約の内容は委任者と受任弁護士との間で別途協議します。
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