《第525号あらまし》
 郵産労高年法裁判解決報告
 就職戦線,異常ありA(第1回)
     就活と労働運動、労働法
 春闘学習会に参加して
 3.2全国一斉「労働相談ホットライン」報告
 新人弁護士会員の紹介


郵産労高年法裁判解決報告

弁護士 増田 正幸


1 高年法8条が「定年は,60歳を下回ることができない」として,60歳未満の定年制を排除し,高年法9条1項は,65歳未満の定年を定める事業主に対して,次の3つのいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)をとることを義務づけています。①定年の引上げ(1号),②継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは,当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度)の導入(2号),③定年の定めの廃止(3号)ですが,大多数の企業は②の継続雇用(再雇用)制度を採用しています。継続雇用(再雇用)制度を採用する場合は労使協定で雇用するか否かの基準を設けることができます(高年法9条2項)。

2 被告である郵便事業会社では「定年退職者のうち,高齢再雇用を希望する者の中から選考により適格と認めた者を採用する」旨の労働協約が締結されており,身体検査の結果,就業可能と判断される以外に,面接試験及び作文試験の評価が著しく低くないことと退職前2年間の勤務成績が不良でないと判定された者について再雇用が認められていました。

平成21年3月に郵産労の組合員であった原告4名の内,1名は退職前の勤務成績の不良と面接試験の評価が低いこと,3名は面接試験の評価が低いことを理由に再雇用を拒否され,訴訟でその不当性が争われました。

3 平成21年11月に訴訟を提起し,同年12月18日に第1回口頭弁論が開かれました。その後10回の弁論準備期日を経て平成23年6月9日と同月30日に尋問が行われ,平成23年9月から3回の進行協議を経て平成24年1月25日に和解が成立しました。

4 被告において平成21年3月に再雇用の選考を受けた者は全国で1274名,その内不合格者は123名いました。被告近畿支社においては209人に対する面接試験が実施されましたが44名が不合格となりました。近畿支社では郵産労組合員が15名受験しましたが,何とそのうち13名が不合格となりました。採用率は全国平均が90.3%であったのに対して,郵産労の勢力が比較的強い近畿支社のそれは81.7%と低く,郵産労組合員に至っては採用率は約13%であり,組合差別の結果であることは明白でした。

そして,それを可能にしているのが「面接による選考」でした。近畿支社では10組に分かれて,各組2名の面接官が評価をしましたが,たった10〜15分程度の面接で客観的な判定ができるとはとても思えません。

5 被告側証人(面接官)の証言から,被告はあらかじめ質問事項を定め,その中から面接官が質問を選んで行われたことが明らかになりましたが,被告は質問事項の開示を拒みました。評価の方法などについてはマニュアルがあるはずですが,被告はその存在を否定しました。面接のやりとりについては被告側証人と原告らの供述に食い違いが多々ありましたが,共通して,年賀状販売について原告らが積極的な姿勢を示さなかったこと,言葉遣いが馴れ馴れしいこと,ネクタイを着用していなかったことなどを面接官が問題にして,評価を低くする理由にしていることが明らかになりました。

また,人事評価が低いことを不合格の理由とされていた原告については,直属の上司である副課長が行った第1次評価を,後に課長が具体的な理由を示さずに低い評価に書き換えさせたということが明らかになりました。

6 このように訴訟の中で本件の選考には客観性を欠く点があることを明らかにすることができましたが,尋問後の進行協議では裁判所が高年法の私法的効力については消極的な考えをもっていること(地位確認が認められないこと)が示唆され,原告らも早期解決を希望したので,被告が相当額の解決金を支払うことを約する旨の和解が成立しました。

7 残念ながら面接で再雇用の拒否を決することの違法性について裁判所の判断を求めることはできませんでしたが,平成22年度以降,郵産労組合員に対するあからさまな再雇用拒否はなくなっています。また,ようやく,希望者を全員継続雇用する(選考を認めない)ことを義務づける方向で法改正が検討されるようになりましたが,本件訴訟を提起したことには十分意味があったと思います。

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就職戦線,異常ありA(第1回)
就活と労働運動、労働法

弁護士 野田 底吾


1、はじめに

最近、マスコミを賑わす言葉に「婚活」と並んで「就活」(主に大学新卒者の就職活動)がある。4月1日の就職募集解禁日から、黒のリクルートスーツと革靴、黒かばん(就活グッズ)で装った大学4年生のカラス族が街に溢れ始め、テレビには沢山のカラスが大手企業の会社説明会に殺到している様子が映し出される。そして、女子大生の就活整形で整形クリニックまでもが賑わい、書店の就職本コーナーでは「自己分析のやり方」「面接の受け方」「SPI問題集B」「時事・業界トレーニング」など沢山の就活本が売れ始める。「リクナビ」「マイナビ」等のリクルート系情報センターがカラス族にインターネットでの登録を呼びかけている。早速、私の知人が就活ナビに登録してみたところ、それから毎日、数十社から会社案内やら資料がメールで送信されて来るそうな。そんなドタバタした環境の中にある所為か、翌年に就職活動を控えた大学3年生までもが落ち着かず、毎日の授業やゼミはうわの空、勉学にはさっぱり熱が入らないと言う。

そこで、何故、大学生がこんな落ち着きのない状態になってしまったのか、を探ってみたところ、私には、これが単に大学新卒者だけの問題ではなく、我が国の労働運動にも大きなマイナス傾向をもたらす恐れがあると思えてきたので、ここに筆を取る事にした。

2、新卒者と求人倍率

最初に、文部科学省と厚生労働省の資料を基に、最近の学校在学生(学生・生徒)と進学率、就職希望者数を大雑把C に見てみよう。

(1)、中学生は約360万人(1学年120万人)、高校進学率は98%。

(2)、高校生は約335万人(1学年112万人)、大学進学率は60%で65万人、短大・各種学校進学者25万人、就職希望者20万人。

(3)、4年制大学生は約285万人(うち大学院26万人、1学年60万人D )。新卒の就職希望者約45万人、大学院進学約6万人。残りは就職浪人、留年、家事従事など。

次に求人倍率を見ると、高卒は1.3〜1.5倍に対し(就職率は90%)、大卒の求人倍率は1.2倍〜1.3倍である(就職率60〜70%E )。

以上は極めて大雑把な数値であるが、大学新卒者については、ここ10年程のうちに学生数が増加したのに比べ、求人数は大企業を中心に落ち込んでおり(「第二就職氷河期」と言われる)、求人募集を出している企業でも、採用の段階では、即戦力になりそうでない新卒者については採用を厳選している為、就職率は極めて低くなっている。

3、就活の実情

昨今は、こうした就職氷河期にあるだけに、学生の就活は相当厳しくなっている。そして、最近の採用申込書(エントリーシート、ES)F では、経歴、語学力、キャリア(各種資格)、会社選びの基準、大学時代に最も真剣に取り組んできた事柄や、「今後、どの様な社会人になりたいか」「自分はどの様な人間だと思うか」等、かなり人間の内面にまで踏み込んだ内容を詳細に記述させている。勿論、憲法19条(思想良心の自由)や労働基準法3条(均等待遇の原則)との関係で、あからさまに思想調査と思われる様な項目は避けられてはいるが、明らかに企業に対する忠誠心の濃淡が厳しく調査されている。これへの対策本が、「人間力の弱さ」とか「やる気の不足」等という内面の消極性を自己否定させる「自己分析」と題する就活本である。そこでは、かっての旧国鉄「人材活用センター」や「霊感」まがいの意識改革(≪会社いのち≫と熱狂する人間つくり)が、就活本を通して大学新卒者に注ぎ込まれているG

こうした書物に導かれ作成されたESを受け取った企業は、内部のマル秘基準にそって書面審査にかけ、篩い落して行くのであるが、そこにどの様な基準があるのかは判らない。然し、大企業ほど大学間に格差を設けている事は、公然の秘密であってH、その目に適った大学以外の応募学生には、即刻「今後一層のご活躍をお祈り致します」なる三下り半の不採用通知が返送されてくる(いわゆる「お祈りメール」)。

4、就活面接の実態

リクナビHPの「就職ジャーナル(2012.3.1付)」によれば、内定が出た先輩の平均エントリー数は20〜30件と表示されており、平均的な就活学生は、連日、せっせとESを手書きしては企業に発送しているのであるが、面接まで漕ぎ着けるのは並み大抵の事ではない。しかし、こうした状況の中、いとも簡単に3〜4社の内定を取り付けてくる「内定長者」と呼ばれる一流エリート学生も一部にはいるが、殆どの学生は何とか面接を突破して内定を確保する為に、就活グッズを購入し、キャリアを増やす為に数十万円もする講座に参加しI、先輩を頼って夜まで接待に付き合ったり、企業説明会に出席する為に東京まで出向いたりJしている。某調査会社によれば、彼らがこうした就活につぎ込む費用は平均15万円程だとされ、日頃のアルバイト料の多くが、こうした就活費用に廻されていると言う。

こうして、やっと面接まで漕ぎ着けた時でも、就活学生は、その弱みを見透かしたダーティ企業の提示する長時間労働や、残業手当の放棄なる提案を受け入れざるを得ず、自ら人間の尊厳を自己否定する状態に追い込まれてゆく(経済的従属性)。多くのマスコミが報道している如く、就活面接で企業に8時間未満の労働を要求する学生は一部のエリート学生しか居らず、大半は会社の命令ならデートの約束があってもキャンセルして残業をするとか、1日12時間以内の労働ならOKだと言うK

尚、残業手当放棄の関連ではブラック企業の多くが採用している「残業手当定額制」の問題がある。新卒の平均賃金額を大幅に上回る賃金を表示し、もし就活学生から問われれば、これには定額の残業手当が含まれていると説明するL。こうした定額制は、恰も賃金が高額であるかの如く見せかける誇大広告であるにも拘らず、多くの学者や判例(関西ソニー販売事件《大阪地裁《昭和63.10.26》、三好屋商店事件《東京地裁昭和63.5.27》)は、かかる定額制を㈰事前に開示説明されている事や、㈪個別に労働者から了解をとっている事を条件に合法とみなしている。しかし、既述の如く就活の現状を直視するなら、労働契約の締結時点では労働者の経済的従属性が最も強く表れる場面だけに、そこに労働者の「自由意思」を擬制して合法化するのは許せない。8時間労働制はILO第1号条約が謳っている如く労働条件の根幹であるから、例外現象たる残業は出来るだけ制限する方向で考えるべきであるのに、これを包括的に許容する定額制を合法化する誇大広告こそ規制すべきではないか。

5、ノイローゼと自殺

強気の企業の前で平伏す就活学生につき、或る新人の会社員は当時を回顧して「内定が出ない。就活を始めて1年が過ぎようとしていた時、一人で入ったカラオケボックスで泣いた。『もう我慢の限界でした』」と語っている(朝日新聞2012年2月24日付)。こうして見通しの立たない就活に疲れた学生の中には、やがて焦りや将来に対する不安に苛まれ、激しい自己嫌悪と自己責任で自暴自棄になり、やがて正社員への道を諦め、派遣社員などの不安定雇用の道へ進んでゆく者が多い。朝日新聞2011年1月元旦付は、「内定を得られない就活中の大学生らが自信を失ったり、うつ状態に陥ったりして専門家のカウンセリングを受けるケースが増えている」と報じ、警察庁のまとめでは、就職失敗を理由とする自殺は毎年増える傾向にあり、2010年では53人もの学生が命を絶ったと言い、自殺者は07年の3倍にも達すると言っている。

A 15年ほど前のバブル期、売り手市場だった新卒大学生が大はしゃぎする「就職戦線異常なし」という映画があった。当時と状況が逆転し、買い手市場の就職氷河期になった今と対比し、「就職戦線異常あり」と題した。
B 森岡孝二「就活とは何か」岩波新書1338の7頁以下。
C 厳密には年度毎にかなり異なるので、詳細は上記新書13頁以下を参照されたい。
D その結果、同年代2人のうち1人は大学生である(大学の高校化と言われる)。
E 大学生については、時期、地域、業種、企業規模によってかなりの差があるが、毎年、卒業間際の2月になると、就職率が90%台まで急上昇するのは、学生が年明けと同時に、今年度の就職を諦めて就活を放棄する者が増加する為、分母が縮小するのに対し、何が何でも就職を決めたいと焦り、希望しない企業であっても就職する者が増える結果、分子が拡大するからである。正確にはリクルートワークス研究所の資料を検索されたい。
F 就活ナビや企業ホームページから用紙をダウンロードして入手し、これに手書き又は回答項目クリックして送付する。
G こうした意識の新人が大量に入社してくる中で、労働者意識をどう形成して行くのかが労働運動に問われている。
H 朝日新聞2012年2月10日付によれば、サイトを通して万単位で届くESの中から、優秀な人材を見つけるには「学歴でふるいにかけた方が効率的で確実」(大手製造業)と報じられており、大学を特定している企業は48%、その中の82%が指定校を20校以内に限定していると言う。
I 東京都は、2010年3月、「人間力養成講座」と称する悪徳就活ビジネスを開催し、一人10数万円も支払わせていた某コンサルティングに是正勧告をしている。
J 武庫川女子大では、高速夜行バスで上京する者の為に、帝国ホテル9階を借りて東京センターを設置し、そこで着替えや仮眠、休憩を取らせている。
K 企業がかかる加重労働を持ち出す法的根拠として使われるのが、労基法32条の2以下の変形・弾力的労働時間制である。
L 入社4ヶ月の新人が過労死した(株)大庄が経営する日本海庄や事件(京都地裁2010.5.25、大阪高裁2011.5.25判決)では、会社は初任給19万円と表示しながら、これには残業80時間7万円の定額手当が含まれおり(100時間の残業協定あり)、80時間未満の場合には賃金が減額されて行く、と言う。

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春闘学習会に参加して

東熱労働組合 書記長 西山 裕樹


例年の春闘学習会と趣が変わり、年金制度と高齢者雇用安定法についての話となった。年金問題は組合員の関心もあるが、なかなかわかりにくい内容と思われ、いい機会となりました。

社保庁の年金問題から、国の管轄から民間企業に代わり、その中で非正規雇用が進み、全職員のうち3分の2を占めるまでになっているとの実情の話があり、仕事のアウトソーシング化も進み、問題が多く起こっている話であった。

年金制度が大きく変わったのは昭和61年からで、職員の方でもわからないぐらい複雑になっている。今から27年ぐらいの前であるが、ひどい改悪の話であったが、当時は組合運動として盛り上がることはなく、ただ年金がもらえる時期が先の話であることから実感することができなかったとの話を聞いた。

年金、年金というが、3つの制度と3つの種類があって、どこからもらうかというのが、大事であることを時間を取って説明をされ、言葉だけでわかっていたことが理解することができました。

年金は元々戦費調達から入ったものから、憲法の精神に沿って、労働組合活動によって改善された歴史も聞くことができ、今の労働組合活動や市民の声がでてこないことに違いを感じた。

平成15年からボーナスでの保険料を取るようになったことも、解説してもらうことで、将来の保険料に大きな影響があることがわかり、ボーナスへの取り組みも重要だということがわかり、組合活動に入れていく必要性があると思われました。

東熱労働組合としても12年2月11日に春闘に向けて、中央委員会を行いましたが、議事の後、社会保険労務士の方をお招きして、年金の学習会を行いました。こちらは若手から年配の方まで高い関心を持って聞いていました。

はじめに書きましたが、これまでの春闘学習会とは内容が違ったが、今の春闘の活動ひとつひとつが将来の安心につながることがわかり、年金に近い年配の方だけでなく、若手も取り組むべき課題であることが大変勉強になりました。

最後になりますが、このような機会を作って頂きました兵庫民法協、講師の柴田旬子様にはお礼を申し上げます。

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3.2全国一斉「労働相談ホットライン」報告

兵庫県労働組合総連合 事務局長 北川 伸一


「職場での困りごと 何でも相談ホットライン」

3月2日、「なくせ!解雇・雇い止め、賃金・残業代未払い、パワハラ」「いまこそ、入ろう、つくろう労働組合」「人間らしく働き、生きよう」をスローガンに、全労連は「全国一斉労働相談ホットライン」を開催しました。全国47都道府県102ヶ所に262人の相談員を配置、電話146台を設置して取り組まれました。マスコミの取材報道がされたのは、テレビが青森、秋田、静岡、京都、大阪、山口、高知、地元紙・全国紙の報道は、青森、秋田、福井、京都、広島などであったそうです。兵庫ではラジオ関西が前日夕方に番組の中で取り組みを紹介。また、神戸新聞は当日の朝刊で、しんぶん赤旗も前日に取り組みを紹介。その影響もあり当日は18件の相談が寄せられました。また、今回も民法協の先生方からの御協力をいただきました。

止まらない雇用・賃金、労働条件の後退

相談者の内訳は正社員8名、パート・契約・派遣など非正規で働いている人が10名。年齢は30代から50代が多く(各4〜5名)「働き盛り」の人たちからの相談が多かったのが一つの特徴です。相談内容は、労働契約違反、パワハラ・セクハラ、労災・職業病の相談が各3件、解雇・雇い止め、退職強要・勧奨、労働時間・休暇に関するものが各2件賃金・残業代の未払い、社会・雇用保険の相談が各1件、と多岐にわたっていました。

50代・男性、アルバイト

一日8時間×6日、3年間働き先月退職。雇用保険も何も入っていなかったので失業給付もらえない。有給休暇もなかった(ないと言われた)

51歳・男性

OA機器の営業(従業員5名)、1月20日付で「自己都合退職」にされた。社会保険労務士同席で経営者と話し合いの場を持ち会社都合(整理解雇)での退職を、と希望したが…いじめもあり「自己都合退職」に応じた。退職金が欲しい。

20代・女性、正社員

昨年短大を卒業し保育所に勤めだしたが、先月末に呼び出されて「解雇する」と言われた。理由は「仕事の成長がない、退職して欲しい」ということ。言い返せずに辞めると言ってしまったが、無遅刻・無欠勤で働き、その上「サービス残業」も強いられたのに・・


以上解雇・雇い止めに関する相談の3例を上げましたが、いずれも酷いものです。相談員は今考えられる対応策を伝えましたが、もう少し早く相談があったら、と悔やまれます。 兵庫労連は毎月第3金曜日に「ディーセントワーク」(人間らしく働きがいのある仕事)宣伝を続けていますが、日本の労働者の働きかた(働かされかた)はそれとは対極にあり、さらなる運動の強化が必要です。そして、誰にも相談できずに悩んでいる人たちを1人でも多く救済するためにも、私たちの姿をもっと多くの労働者に可視化(見える・聞こえる)できるよう宣伝も強めて行かねば、と改めて感じました。

社会的責任を放棄し続ける日本の大企業、追随する日本政府

この取り組みの5日後、3月7日に民主、自民・公明の3党は衆院厚生労働委員会で、労働者派遣法改定の政府案を骨抜きにする「改悪修正」をした上、審議もせずに賛成多数で可決しました。3党が「改悪修正」した内容は、政府案から製造業と登録型派遣の原則禁止を削除。違法派遣があった場合、派遣先が直接申し込んだとみなす規定を3年後に先送りするというものです。リーマンショックから派生したアメリカ発世界同時不況は日本経済を直撃し、製造業を中心に大企業は、派遣など非正規労働者を大量に解雇・雇い止めにし路頭に迷わせました。これに対し全労連も含め多くの団体は「年越し派遣村」の取り組みに代表される救済を行い、同時に企業の一方的な都合でいつでも首を切ることができる「労働法制」の改正を要求、とりわけ労働者派遣法の抜本改正を強く要求し運動を続けてきました。大企業が難色を示す中、運動と世論に押されて「改正」に舵を切った民主党は翌年の総選挙でこれを公約し、政権交代を果たしました。そういった経過からして、この「骨抜き法案」の強行可決は公約破りであり、国民・労働者への裏切りです。

財界の春闘方針である今年の「経営労働政策委員会報告」には有期雇用や派遣制度の「規制強化」の方向に嫌悪を露わにしています。大量の失業者・生活困難者を生み出した責任を棚上げにし、「国際競争にさらされ、急速に円高が進行する中、労働規制の強化が進めば、産業の空洞化に拍車をかけることになりかねない」と恫喝まがいの方針を出す始末です。

結局政府は(自民・公明も)、この大企業・財界の意向を受けての「骨抜き改正」をしたということでしょう。

人間らしく働ける社会の実現を目差して

今回の取り組みでも感じたことですが、この国は働く者にとって大変過酷な環境になっている、ということです。そんな状況に陥った一つの原因として労働運動の「衰退」があるのではないか、「闘わない労働組合」が主流になっている現状を見るにつけそう思います。

今、そんな一部労働組合の過ちをもって労働組合全体を敵視し、潰そうとする動きが強まっています。典型は橋下大阪市長の言動です。市民的・国民的な支持がなければ労働組合も「存在」できない状況になってきているということだと理解しています。

しかし、圧倒的多数の労働者は労働組合を知らず入れず、その動きもご存じない。当然の事ながら、会社側の攻撃も1人で対応するしかないわけです。そんな人たちを1人でも救いひとりぼっちの労働者をなくすため、今後も相談活動を充実させていきます。あわせて、人間らしく働きがいのある仕事・職場の実現を目差し、その最大の障壁とも言える「労働法制」を改善させるため地域の皆さんと共同して運動を強めていきたいと思います。

最後に、今回の取り組みに対する民法協の先生方の協力に改めて感謝いたします。ありがとうございました。今後ともご協力をよろしくお願いします。

3・2全国一斉労働相談ホットライン・兵庫労連集約(報告)
実施日時 3月2日(金) 10:00〜19:00
実施会場 兵庫労連労働相談センター、東阪神労働相談センター、
東播労協労働相談所、西播労連労働相談所
相談件数 18件(うち1名面談)
内訳 男性11名、女性7名、
年代 ~20代1名、30代4名、40代4名、50代5名、60代2名、不明2
雇用関係 正社員8名、パート・契約・アルバイト6名、派遣・請負2、その他・不明2、
相談内容(項目) 解雇・雇い止め2、退 職強要・勧奨2、賃金・残業代未払い1
労働契約違反3、社会・雇用保険1、労働時間・休暇2、
パワハラ・セクハラ3、労災・職業病3、組合結成・加入1、その他2、
(相談項目は重複しています)
ご協力いただいた先生
(弁護士)方 *敬称略
坂本、増田(正)(神戸あじさい法律事務所)
野上、八田、本上(中神戸法律事務所)
吉田(維)(神戸合同法律事務所)
白子(あいおい法律事務所)
山西(花くま法律事所)
渡部、池田(わたなべ法律事務所)
園田(姫路総合法律事務所)

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新人弁護士会員の紹介

花くま法律事務所 弁護士野田 倫子


はじめまして。私は、修習後、約1年間、大阪で勤務弁護士をした後、本年1月から、神戸の花くま法律事務所で執務させていただいております。

出身地も出身校も大阪で、これまでほとんど大阪を離れたことがありません。この度、神戸という山も海もお洒落な街もある新天地で弁護士として勤務できることを大変嬉しく感じています。趣味は、テニスとクラッシックバレエで、専ら体を動かすことが好きなアウトドア派です。学生時代に児童虐待問題に興味をもち、また、人の悩みを核心から解決できる仕事がしたいと思い、弁護士を目指しました。

弁護士となってわずか1年足らずではありますが、日々の職務を通して、弁護士としての職責の重大さを痛感しますと共に、やりがいも強く感じています。

昨年は、東北大震災と福島原発事故という大災害に、自分の存在価値を問い直す年となりました。今後も、決意を新たにし、従来の方法や価値観にとらわれることなく、よりよい社会の構築に貢献できるよう、日々精進したいと思います。

未熟な身ではありますが、皆様のご指導ご鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

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