はじめに兵庫県民主法律協会創立50周年を迎えられ、大変おめでとうございます。労働者・労働組合の権利を守って頂きましたことにお礼を申し上げます。
兵庫県民主法律協会創立50周年記念式典に東熱労働組合からは執行委員長を初め、組合4役で出席させて頂きました。
式典が始まり、野田弁護士と羽柴弁護士による対談・リレートークでこれまでの兵庫県民主法律協会、労働闘争の話をお聞きすることができました。昨今の労働闘争と違い、労働環境に不満がある→労働組合を作る→組合活動を行う→労働環境が改善する→労働組合にみんなが結集するという上昇気流のスパイラルができ、日本の成長といっしょに労働者の環境が良くなっていったことがわかり、熱い時代があったことを感じられました。私を初め東熱労働組合の4役が生まれた頃の話をお聞きすることができ、有意義な時間となりました。
その後、来賓の皆様方の楽しい・素晴らしい挨拶をお聞きして、乾杯、宴会と移りましたが、スライドによる組合・グループの紹介に移りました。このスライドで私が想像しているよりも多くの組合・グループがあり、元気に活動されていることが写し出されていました。スライドが終わる頃になると、宴も盛り上がり、さくらんぼ合唱団+トーフレンズの皆様の歌、最後は『がんばろう』を肩組み、歌い、幸せの時間が流れました。
創立50周年の節目の式典に出席させて頂きましたことに感謝し、兵庫県民主法律協会と共に東熱労働組合も労働者のために頑張っていく力を頂きました。
このページのトップへ連日テレビでオリンピック中継が行われています。日本選手がメダルを取ればポールに日の丸が掲揚されます。日の丸を掲揚することにそんなに目くじらを立てる必要はないのでは、と思われる方もいるかもしれません。
私も、日の丸に敬意を表したいと思うのは各人の自由であると考えます。しかし、国家や地方公共団体が、日の丸を掲揚することをもって市民に愛国心を高揚するように仕向けるとするならば、話しは全く違ってきます。
尼崎市で成立した日の丸掲揚条例は、そのような危険性をはらんだ条例です。
尼崎市で日の丸掲揚条例が本年6月26日市議会本会議で可決されました。
本年2月に市議会内会派「新政会」の市議らが提案していた「日の丸掲揚条例」は、市民らの強力な反対運動があって6月18日に委員会で否決されました。しかし、公明党が本会議に条例修正案を提出し、新政会や公明党などの賛成多数で「日の丸掲揚条例」修正案が可決されたのです。
日の丸掲揚条例案に対しては、自由法曹団兵庫県支部も、市民の思想・良心の自由を侵害するものであることなどを理由に反対の意見書を提出していました。日の丸を掲揚する学校行事を入学式と卒業式に限定するなど一部が修正されたとはいえ、団意見書でもっとも問題とした愛国心を高揚させることを目的として日の丸を掲揚させるという目的条項は何ら変更されておらず、その内容が市民の思想・良心の自由を脅かすものである点では何も変わりません。
この条例を巡っては、これに反対する市民も大変熱心に街頭宣伝などの反対運動を展開されました。ただ、運動中に「非国民」というような言葉が浴びせられたとも聞きました。本会議の議場でも反対討論をする議員や反対派の市民に対して一部の傍聴者から口汚いやじが飛び交い、騒然としたという情報もあります。
日の丸掲揚条例が成立すれば、次は大阪府などと同様に教師に君が代斉唱時の起立を義務づける条例など更に内容がエスカレートしていく危険性があります。
市主催の式典に参加した市民が登壇する際に日の丸へ敬意を表することを事実上強制されるなどの運用が行われることのないよう、運用に対して引き続き注視していかなければならないと思います。
修正前の日の丸掲揚条例案では、日の丸の掲揚を義務づける施設として、市教委の所管する学校、市の所管する全ての施設、議場とし、市が主催する式典及び行事の全てに日の丸掲揚を義務づける内容でした。
成立した修正案では、掲揚する市の施設は、市役所本庁舎、各支所、各消防署とし、学校主催の式典については、学習指導要領で国旗の掲揚が必要とされている式典(すなわち入学式、卒業式)に限る、として一定の絞りをしていますが、これも事実上全ての施設で毎日執務時間中掲揚するのには職員の確保の問題があるなどで絞り込みが図られただけで、市民や生徒、親の思想・良心の自由に配慮した結果ではありません。
そして、一番問題なのは成立した条例第1条、目的として「本市の施設、本市が主催する式典及び行事並びに尼崎市議会の議場における国旗の掲揚等について定めることにより、市民が伝統と文化を尊重し、それらを育んできたわが国と郷土を愛する意識の高揚に資するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うことを目的とする」とあることです。
修正前の条例案では、「市民が」とある部分が、「市民、とりわけ次代を担う子どもが」となっていましたが、「とりわけ次代を担う子ども」とあるのが削除されただけで、日の丸を尼崎市の施設、尼崎市が主催する式典や行事などに掲揚することによって、市民にわが国と郷土を愛する意識をもたせ、これを高揚させることなどを目的とする旨を明記している点は変わりません。すなわち、同条例は、ひろく市民一般を対象にして、国旗の掲揚によって「わが国と郷土を愛する意識」、いわゆる「愛国心」を高揚させることを目的としている点で、日の丸の掲揚とそれによる日の丸へ敬意を表することと愛国心とを一体のものである捉えている点に特徴があるのです。
私も、各市民個人が「日の丸」を掲揚し、これに敬意を表することをもって、自らの愛国心の内容であると考える自由は、基本的人権として保障されなければならないと考えます。
しかし、同じように「日の丸」に対して否定的な価値観をもち、愛国心と「日の丸」の掲揚や「日の丸」への敬意の表明は相容れないと考える市民の思想信条の自由も基本的人権として保障されなければなりません。
「日の丸」は,第二次世界大戦において日本軍国主義によるアジア諸国に対する侵略戦争のシンボルとして使用され、戦前の天皇主権の象徴として国民統制の手段として使用されたものであるとする歴史観、世界観を有する市民は一定数存在します。このような人々にとっては「日の丸」を掲揚し、これに対して敬意を表明すること自体が自らの思想・良心に抵触し,抵抗があると考えるのは当然です。
日本国憲法は、個人の尊厳を最高の基本的価値として(13条)、各人がいかなる価値観を有するのかを各人の判断に委ね、国や地方公共団体など権力が、特定の価値観をもつことを国民に強制することを禁止しています。特に日本国憲法は、戦前の大日本帝国憲法下において,特定の思想を弾圧し,天皇主権の国家に絶対的忠誠を誓わせ,戦争遂行に導いたという歴史的教訓を踏まえて、思想・信条の自由の保障に関する規定を,精神的自由に関する諸規定の冒頭におき、これら内心の自由が基本的人権のなかでも優越的な地位を有する人権として保障しています。
したがって、「愛国心」などのように、本来各人の歴史観、世界観、人生観などに基づいて多様であって当然である内心について、国や地方公共団体など権力者が、一定の内容をもって「愛国心」であると決めつけ、権力者が定めた内容の愛国心をひろく一般の市民に持たせるように法律や条例で定めることは、個人の尊厳を否定し、各人の思想信条の自由をないがしろにして、これを否定することになります。
特に注意しなければならないことは、たとえ市民に日の丸に敬意を表することを直接の強制するような条例ではなかったとしても、国や地方公共団体が「愛国心」のような本来、個人の内心にかかわる問題、本来個人がそれぞれ自由にその内容を考えるべきことがらについて、一定の内容を定めること自体を日本国憲法は否定していることです。
日の丸条例は、「日の丸」を掲揚することが市民の愛国心の高揚に資するという一定の価値観に基づき、わが国への愛国心と「日の丸」の掲揚と敬意の表明が同一のものであることを尼崎市として定める点で、市民の思想・良心の自由を脅かすものであると考えます。
今回の条例案をめぐる討議を見てみると、賛成派の議員が、憲法からの視点を全く欠いた議論に終始していること、議員個人が日の丸を掲揚し、日の丸に敬意を表することと、それを条例で定めることの重大な違いを全く検討していないことは、憲法改正論議でも常に問題となる点、すなわち立憲主義という点をことさらに無視した議論をする一部の改憲の立場の議員と共通点があるように思いました。
日の丸掲揚条例案を提案した市議らは、国旗及び国歌に関する法律、教育基本法及び学習指導要領の趣旨からも、日の丸を掲揚することは問題ないはずであると考えていたようです。
しかし、ここでも、国旗の掲揚をもって、愛国心を高揚させようとする発想の問題点は置き去りにされています。
国旗・国歌法制定時においても法制化にあたって国旗掲揚などに関して義務づけを行うことは考えていない旨の政府答弁が国会でなされ,同法に国旗・国歌の尊重を義務づける規定が盛り込まれませんでした。まして、同法の内容及び趣旨として、国旗の掲揚をもって愛国心の高揚に資するなどの内容は一切含まれていません。
教育基本法2条には、教育の目標が規定されており、同条5号には、「伝統と文化を尊重し、それを育んできたわが国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養う」と本条例1条に似た表現はありますが、そこには国旗の掲揚を義務づける趣旨など一切なく、国旗の掲揚によって「わが国と郷土を愛する」意識を高揚させるなどという意味は一切含まれていません。
学習指導要領の特別活動の章には、入学式や卒業式などにおいて、その意義を踏まえて、国旗を掲揚するとともに、国歌を斉唱するように指導する、とありますが、児童、生徒に国旗の掲揚や国歌の斉唱を義務づけるものではありませんし、まして、愛国心の高揚を目標として国旗の掲揚や国歌の斉唱の指導をするのではありません。
5 ご承知のとおり大阪府、大阪市では、まるでレッド・パージが行われた占領下の日本のように「超憲法的な」条例が次々と制定されています。
今回、尼崎市の日の丸掲揚条例案の制定過程で、危惧するのは、市民の中に、日の丸を掲揚するぐらいなら別に構わないではないか、掲揚自体は既に広く行われているからいいのではないか、サッカーなどスポーツ競技でも普通に行われていることだし、という意見が多かったのではないかという点です。
少数者の権利を尊重する、という憲法の基本的な価値観を共有した上で、その上に立った議論ができないと、次は国旗国歌起立斉唱条例、市民への国旗掲揚義務づけ条例へと発展していく危険性があるように思えてなりません。
今回の尼崎市日の丸掲揚条例の成立をうけて、改憲の問題だけではなく、各地域の9条の会や法律家団体などが中心となって憲法を日常生活に引きつけて考えるような多様な取り組みが一層重要だと実感しました。
このページのトップへこれまで3回に亘り就活学生と新人社員を取り巻く環境について、所謂ブラック企業Aを中心にその実態と問題点を指摘してきたが、本稿の最後に、労働現場をこの様な奴隷的状態に陥らせた原因を探りながら、どうしたら職場で人間性(人間の尊厳)を回復できるのかを考えてみたい。
職場を悲惨な状態にした原因の第一は、恰も自然界において天敵が減少すれば、それに伴って害虫が大量発生するが如く、あらゆる職場で資本の天敵=労働者の団結活動が弱体化してしまった事にある。
もともと資本主義社会においては、資本家は少しでも多くの利益を得る為、絶えずあらゆる手練手管を用いて労働者の搾取にかかるものである。にも拘らず、労働者が職場で辛うじて人間性を守れてきたのは、資本による「憐れみ」や「譲歩」からではなく、職場に労働者の団結を通した抵抗力があったからであるB。現に、かっての職場では、絶えず組合主催の各種集会や青年婦人部活動があり、帰路で仲間同士の《ちょっと一杯》から、職場外での勤労者音楽協議会(労音)や演劇協議会(労演)、更には勤労者学習協議会(学習協)への参加など、労働者はこうした集会を通して互いに意思疎通を図り、権利意識の向上を図ったりする機会を持ってきた。即ち、こうした同僚間の各種寄り合いや「舫いC(もやい)」が、団結活動の基礎にあったのである。ところが、労働者の中に個人優先主義が忍び込んで来た所為もあるが、職務の分解や労働時間の弾力化などにより、職場に長時間労働がはびこり、各人の終業時間もばらばらになってしまった事が、労働者間の日常的接触「舫い」の機会を激減させてしまった大きな原因である。しかも日頃、企業から「もの判りのよい労働組合」と賞賛されてきた企業別労働組合D(Company Union)が、労使協調を旨とする「連合(日本労働組合総連合)」E傘下にあり、「生産性の向上こそが賃上げの大前提」と叫んで、長時間労働に協力する姿勢を取ってきた為、「舫い」が自然消滅し、資本の横暴を許してしまったのである。とすれば、先ずは労働者が日常的に意思疎通を図れる時間的・場所的機会を職場内に再生させる事、即ち職場に組合活動の基盤である「舫い」を復活させる事が、職場で人間性を復活させる第一歩である。
ところで、正社員の週平均実働時間は週50.3時間(男性だけでは52.5時間)と言われ、特に組合活動の中核となるべき30代前後の男子正規労働者の実働時間は、週60時間を超える者が同年代労働者の37%にも達する有様であるF。これでは、とても終業後の「舫い」を持つ時間的余裕など生れて来ない。しかも、この実働時間の中には、違法な隠れ残業や弾力的労働時間に関する労使協定に違反した労働など、労基法違反の就労や8時間を遥かに越えた労働が、かなりの割合で含まれているのである。従って、職場に「舫い」を作る第一歩は、少なくとも、こうした労基法違反を職場から完全に消し去る事であるが、残念ながら職場の労働組合には、こうした方向へ動こうとする意欲がない。とすれば、昔、国鉄(JR)の労働者が行っていた「順法闘争」に倣って、労働者有志による「労基法順法闘争」、即ち、労基署に基準法違反を申告(摘発)する運動を起こす必要がある(労基法104条)。その結果、労基署に改善命令を出させる事が出来たなら、これによって職場に「舫い」を創り上げる条件が整ってくる。尤も、労働者有志によるこうした活動に対し、会社による締め付けが懸念されるが、その場合には労基法104条2項や104条の2を活用Gして会社をけん制しつつ、数名づつ地域のローカルユニオン(コミュニティユニオン)Hに加盟して職場の同志を募り、これを元に職場内にローカルユニオンの支部を(匿名組合として)作って行くのが良いのではないかと思う。この「労基法順法闘争」は、職場のあらゆる世代の労働者にとって緊要な課題であるだけに、絶えず弁護士やオルグ、研究者を交えた対策会議を開いて慎重に運動方法を作り上げ(これぞ民法協の出番である)、これに沿って運動を展開して行くならば、必ず大多数の支持が得られる筈である。問題は、摘発を受けた労働基準監督署側の体制である。
周知のごとく、労働基準監督署は労基法97〜105条に基づき、法が定める最低労働基準が使用者等によって遵守されているか否かを監督し、違反があった場合には是正勧告などの行政処分や刑事起訴などの刑事処分を行う機関である。これを現実に執行(監督、臨検、調査、尋問)する労働基準監督官は、全国で2941人(労働者10,000人あたり監督官は0.53人)Iが343か所の監督署等に配置され業務に当っている。然し、全労働者5200万人が働く事業所は日本全国に410万ヶ所もある為、例年、監督官が定期監督と申告監督を行う事業所数は年間14〜5万ヶ所に過ぎない(実施率3%)。それでも年間摘発される基準法違反は90,000件(65%程)にも及びJ、2012年では労働時間違反が30,000件、サービス残業Kについては15,500箇所(対象労働者20万人、支払総額は257億円≪1人平均13万円))に達している。然し、こうした基準法違反の申告は、平成元年から比べ40%も増加し、その後も毎年増えているにも拘わらず、監督実施件数は22%も減少しているL(犯罪が増えているのに警察官が減っている様なもの)。
ところで、我国が1953年に批准したILO第81号条約によれば「事業場に対しては関係法規の実効的な適用の確保に必要な限り頻繁かつ完全に監督を実施し、労働監督官によって実施を確保されるべき法規の違反とその任務の遂行の妨害については、相当な刑罰を国内の法令によって規定し、実効的に実施するものと定める」とされM、2006年11月のILO理事会でも「先進工業市場経済国では労働監督官1人当り最大10,000人とすべきと考える」と決議されている。ところが我国では、上記の如く労基法違反を摘発する体制としては極めて不十分である。我々としては、早急に監督官を倍増させなければならず、我国がILO第81号条約を批准している事を最大の武器にして、あらゆる団体がこの1点に集中し、各地の労働局に対しその実行を迫って行くべきである。N
私は、以上の記述を通して、職場の労働組合を眠りから覚めさせ、職場での人間性回復を実行させるには、まず何よりも、労基署を利用しながら職場に時間的余裕を作らせ、「舫い」を再生させる必要がある、と主張してきた。問題は、そこから先をどうするのかである。そこで、「殆ど何もしない」とか「名ばかり労組」などと陰口を叩かれている企業別労働組合が、何故、職場にいつまでものさばり続ける事ができるのかを考えてみると、そこには大きくユニオンショップ協定Oが横たわっている事を発見する。
現在、ユニオンショップ協定を有する労働組合は72%(連合系では90.5%)なのに対し、全労連系の66.7%が持っていない組合であると言われるがP、ここから判る様に、大企業の労働組合では殆どがユニオンショップ協定を締結しており、これに唯一交渉約款を絡ませ、更にチェックオフ協定が交わされている(三位一体協定という)。これによって、組合は企業の生産計画を積極的に受け入れて資本に協力する一方、企業も従業員を積極的に組合に加入させて、組合費を給料から天引きして組合に渡してやる事で組合に協力する、更に労使とも協定組合以外の団体とは一切、団体交渉などを持たない、という巨大な労使癒着構造が完成する。その結果、大企業の組合幹部は、資本に取り込まれて「だら幹」、「労働貴族」になり、やがては民主党国会議員Qとして労働者階級の為?(本音は企業の為)に活躍する事になる。こうした構図は、欧米諸国の労働組合運動では、とても想像できない正にCompany Unionの真骨頂が、我国では労働組合として大手を振って歩いているのである。私達が職場に人間性を回復させて行く上で、この三位一体協定に穴を開けなければ、とても根本的な解決には至らない。これについて私は、当面は、先ず職場に「舫い」を復活させ、ローカルユニオンを通してユニオンショップ協定に穴を開けて行く戦術しか思いつかないが、韓国における労働運動が、最近、産業の国際化・グローバル化を背景に、企業別組合から産業別組合へと大きく組織変更しつつある流れから見てR、我国でも現状の労使癒着構造がいつまでも続くとは思っていない。私達は、こうした韓国の運動がどの様にして起ってきたかを、じっくり研究すれば、おのずと闘いの方向や道筋、展望は開けてくるに違いない。私も当面、これを追及してみたいと思っている。
A | ブラック企業と言う呼称につき、アメリカでは黒人経営の企業がイメージされ人種差別用語となる(河添誠「労働法律旬報1759号47頁」)ので、以降はダーティ企業と呼ぶ。 |
B | 萬井隆令教授が「労働組合の存在といった要因がない限り、アメリカ的経営やIT産業などは体質的にブラック企業になっていく必然性をもっている」(労働法律旬報1759号9頁)と述べているのも同じ意味であろう。 |
C | 舫い(もやい)」とは、船と船とを繋ぎ合わせて荒波に対処すること。 |
D | 日本の労働組合は、外国からはイエロー労組(名ばかり労組・御用組合)と言われている。ILO事務局の日本人職員も「ILOから見て、日本の労使関係はやはり特殊です。日本では従業員組合が主ですが、西欧では資本家階級に対抗して労働者階級を守るのが労働組合の行動規範になっていて、日本の組合は神秘的と言うか正体のわからないところがある感じです。文化的特殊性といわれると反論の余地はありませんが、ILO職員としては仕事上はやりにくいですね」と述べている(「国際労働基準で日本を変える」大月書店28頁)。 |
E | かって総評は、資本側の提案をいつも「結構、結構、コケコッコウ」と鳴いて肯定する労働組合「鶏組合」と呼ばれていたが、1950年代には「鶏からアヒル(いつもガーガーと文句を言う組合)へ」と変身した。連合は・・・?。 |
F | 森岡孝二「就職とは何か」(岩波新書1338)117〜120頁。私が近所のサラリ−マン家庭を見ていると、19時前後に子どもと妻が、20〜21時頃に夫が夕食をとっているのが多いが、多分、夫は19〜20時頃まで労働しているのだろう(拘束時間は10時間を越える)。 |
G | 労基法104条2項「使用者は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱をしてはならない」、労基法104条の2「労働基準監督官は、・・・使用者又は労働者に対し、必要な事項を報告させ、又は出頭を命ずることができる」。違反は6ケ月以下の懲役又は30万円以下の罰金(労基法119条)。 |
H | 地域で組織された労働組合(合同労組)の現状は、連合系で総評地区労の発展形態である「地域ユニオン」と全労連系の「ローカルユニオン」、中立の「コミュニティユニオン」が主な組織であるが、何れも中小零細企業の従業員や非正規労働者など1〜2万人の組織で、傘下ユニオンは各組織平均200〜300人ほどである。労働相談を契機に加入する者が多い所為か、労働紛争が解決するや組織を抜けるという傾向が強く、安定的な活動が出来ずにいる。然し、企業の枠を超えて結集する本来の労働組合性を持ち、組合員の増加に伴い安定した組合活動が期待できる。また、企業内組合がユニオンショップを締結しており、有志の活動が分派活動とされて組合統制処分を受け、その結果、会社から解雇される恐れがある場合、これを防ぐ必要からも合同労組に加入する意義は大きい。その他、独自の団体交渉権を有するので、これを活用して企業を社外に引きずり出す効果(不当労働行為審査)も大きい。脚注O参照 |
I | 国際比較では、米3,878人(0.28人)、英2,742人(0.93人)、仏1,706人(0.74人)、独6,336人(1.89人)、スウェーデン500人(1.22人)となっている。尤も、警察官は全国で257,400人(平成23年度警察白書)、人口1万人当り20人である。 |
J | 厚労省平成21年度省内仕分け作業資料によれば、平成21年の定期監督数は100,535件、申告監督数は48,448件で、うち是正勧告が91,615件、司法処理(刑事罰)が1,110件となっている。同年6月の1ヶ月に限り東京・大阪・愛知を見てみると、定期監督した事業所は1,474箇所で、うち987箇所に是正勧告がなされている(勧告率67%)。定期監督件数は毎年減少している。 |
K | 「名ばかり管理職」は管理監督者には該当しない、として残業手当支払の是正勧告を受けた企業は371企業中369企業、是正金額は29億円にも達した(厚労省平成21年度省内仕分け作業資料) |
L | 厚労省労働基準局は、従来の監督官複数による臨検を単独臨検にする事で実施件数を増やそうとしているが、監督官側からは、1人臨検は警察官が犯罪者宅に1人で捜査に出向く様なもので、調査先から脅迫や暴行を受ける危険が大きいと言う(現実に被害に遭った例が多く在る)。 |
M | ILO「労働監督の手引き」(1955年)によれば、「監督の対象となる事業場については、例えば年に少なくとも1回臨検するという様な年度型で基準を定めるか、関係法規の実効的な適用の確保に必要である限り頻繁に監督を実施する」としているが、我国では20〜30年に1回程度である。 |
N | 民法協でもこの問題を取上げ、日本労働弁護団や自由法曹団、日弁連などに働きかけ、厚労省交渉を持つべきである。 |
O | 甲会社とその乙労組が、Aら従業員は全て乙に加入しなければならず、もしAが脱退・除名などされて乙を離れた時には、甲はAを解雇する旨を約束した労働協約。尤も、Aが丙労組に加入もしくは丙を結成する場合には解雇できない。 |
P | 日本労働年間2001年版。厚労省の平成22年調査によればユニオンショップ協定を持つ組合は71.6%である。 |
Q | ユニオンショップを持つ大企業労働組合の幹部が、民主党国会議員となっている代表例は、電力総連では小林正夫(東電)、加賀谷健(東電)、藤原正司(関電)など、基幹労連では高木義明(三菱重工)、轟木利治(鉄鋼)、UIゼンセン同盟では川端達夫(東レ)、柳沢光美(イトヨーカドー)など、自動車総連では直嶋正行(トヨタ)、古本伸一郎(トヨタ)、池口修次(ホンダ)、電機連合では平野博文(パナソニック)、大畠章宏(日立)、加藤敏幸(三菱電機)、情報労連では内藤正光(NTT)、吉川沙織(NTT)など、JAMでは津田弥太郎(ゼンキン同盟本部)、田中慶秋(小糸工業)、その他では城島光力(味の素)などがいる。最近の「週間現代」12年6月16日号によれば、福島原発災害後の動きとして、電力総連と電機連合が盛んに早期再開を政府に働きかけていると言う。 |
R | 「民法協」ニュース528号の「商店法と閉店法」脚注Nを参照されたい。 |
転載:最高裁上告不受理の不当決定に対する声明 | |
(1)2012年7月13日、最高裁第二小法廷は日本トムソン地位確認等請求事件について、上告審として受理しないとの不当な決定を下した。 (2)本件は、日本トムソン姫路工場において「派遣切り」された労働者がJMIU日本トムソン支部に加入し、労働局の是正指導を得て直接雇用を勝ち取ったものの期間限定の雇用でしかなかったため、9名が正社員としての地位確認などを求め2009年4月提訴したものである。 (3)2011年2月23日の一審・神戸地裁姫路支部判決は、日本トムソンの雇用責任は否定したものの、日本トムソンが製造業派遣が解禁されていない時代に偽装出向という形態で社外労働者の受け入れを開始し、以降、5年以上の長期にわたって、偽装請負、違法派遣と一貫して違法状態のもとで就労させてきたことが、三者間労働関係の適正利用義務に違反するとして不法行為責任を認め、原告全員に1人50万円の慰謝料を認めた。この判断は、兵庫労働局が日本トムソンの労働者受け入れが偽装出向で職業安定法44条違反を構成すると判断したことにも合致するものであったが、2011年9月30日の控訴審・大阪高裁判決は、出向の実態は派遣に過ぎず、本件で職業安定法違反を認めることはできない、労働者派遣法違反は認められるが、労働者派遣法は取締法規に過ぎないとして、不法行為の成立を認めた一審・神戸地裁姫路支部判決を取り消し、最高裁の判断は、それを是認した。 裁判所に求められていることは、違法行為を行った企業の責任を認め、違法状態のもとで働くことを余儀なくされている労働者を根絶することであり、企業の利益を擁護することではない。 出向とは、出向元と出向先の双方に労働契約が成立するものであり、私たちは最高裁第二小法廷が、弁論も開くことなく、また何の理由も示すことなく、事実を捻じ曲げて出向の実態は派遣であるなどという前提を作り出し、その前提にむりやり松下PDP事件・最高裁第二小法廷判決を当てはめて、原告らの請求をすべて否定した控訴審・大阪高裁判決を是認し、裁判所として果たすべき役割を果たさなかったことについて怒りを込めて抗議する。 (4)3年数か月、厳しい生活状況のなかたたかってきた原告らは最高裁の上告不受理決定を受け 「納得のできる最高裁の判断理由がもらいたかった」、「このまま、企業の横暴を許してしまわないよう一矢を報いたい」、「これは、私たちの子どもの時代につけを回すことになる。つけを回さないようにトムソンと交渉していきたい」と憤りと怒りの気持ちを述べている。 (5)この間の正社員化を求めた私たちのたたかいに対し、多くの皆様にご支援・ご協力いただいたことに改めて感謝申し上げるとともに、私たちは、引き続き日本トムソンに対し労働組合と協議をおこない、争議の解決を図るよう求めるたたかいを強めていくものである。控訴審・大阪高裁判決でさえ、日本トムソンに労働者派遣法違反があったことは否定できなかったのであり、最高裁第二小法廷決定によっても、派遣先企業である日本トムソンの5年超にわたる違法行為の事実が正当化されたわけではない。首切りの不安のない、安心して働くことのできる職場・社会の実現、非正規裁判闘争の前進めざすとともに、労働者派遣法抜本改正、実効ある有期雇用規制の確立など、労働法制の改正めざして、全国の仲間と連帯し全力でたたかうことをあらためて決意するものである |
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2012年7月24日 |
全日本金属情報機器労働組合(JMIU) 兵庫県労働組合総連合 日本トムソン正社員化裁判弁護団 日本トムソン正社員化裁判原告団 JMIU兵庫地方本部 同 日本トムソン支部 |