《第538号あらまし》
 マツダ正社員化訴訟山口地裁判決
     特報 派遣切りされた13人を正社員と確認
 随想 閑話休題
 安倍政権が進める雇用制度破壊の真相
 「春の全国一斉労働相談ホットライン」報告
 労働判例勉強会に参加してみませんか?


マツダ正社員化訴訟山口地裁判決
特報 派遣切りされた13人を正社員と確認

弁護士 吉田 竜一


大手自動車メーカーであるマツダは、2008年末から2009年3月にかけ、事実上常用扱いしていた派遣労働者を大量に派遣切りしたが、派遣切りされた15名の労働者がマツダに雇用責任等を求めた訴訟で、2013年3月13日、山口地裁は13名の労働者について正社員としての地位を確認する判決を下した。弁護団の一員ではないが、極めて画期的判決であり、非正規労働者の闘いにおいて活用していかなければならない判決と思われるので、その報告と分析をさせていただく。


1 制定以降、数次の改正を経て緩和化が進められ、2004年4月からは製造業派遣も解禁された労働者派遣法ではあるが、それでも2012年改正前の労働者派遣法も、いわゆる専門26業務以外については、派遣可能期間を1年(労働者過半数代表の意見を聴取したうえであらかじめ期間を設定する場合は3年)に限定することによって(労働者派遣法40条の2第1~4項)、派遣を利用できる業務を一時的・臨時的な業務に限定するという、「常用労働代替禁止」の大原則を維持してきた。そして、「常用労働代替禁止」が労働者派遣法の大原則であるが故に、2012年改正前の労働者派遣法も、派遣先が派遣可能期間を超えて派遣労働者の役務の提供を受けることを禁止し(40条の2)、派遣受入期間の制限のある業務について、派遣先が、派遣受入可能期間をこえて、当該派遣労働者を使用しようとする場合、派遣労働者の希望を踏まえた直接雇用の促進を図るために、派遣先は、派遣労働者に対する「雇用契約の申込みをしなければならない」として雇用契約の申込義務を定めていた(同法40条の4)。

2 もっとも多くの企業は、偽装請負等の手法によって脱法的に派遣制限期間の定めを無視し、3年以上、現場において派遣労働者を利用していたのであるが、派遣制限期間の定めを潜脱するためのマツダの手法は特に手が込んでいた。

即ち、派遣期間を3年と制限しても、派遣先が3年経過の段階で派遣労働者の受入れを一旦は止めながら、直ぐに派遣労働者を受け入れることを認めてしまえば派遣期間の制限は骨抜きになってしまう。そこで厚労省の通達は、クーリング期間(派遣先が派遣労働者から役務の提供を受けていた労働者派遣の終了と新たな労働者派遣の受入れ開始の間の期間)が3か月を超えない場合は、継続して労働者派遣を受け入れていたものとみなされること、また、単に3か月を超えても労働者の役務の提供を労働者派遣によって受け入れることは労働者派遣法の趣旨に反するものであるので、この場合は、直接雇用か請負の方法によること、派遣労働者としての再度の受入れが当初から予定されている場合にはクーリング期間が3か月を超えていても、違法な労働者供給事業であり、クーリング期間が適正に3か月を超えているとは判断できないこと等を述べていた。

ところが、マツダは、3年、派遣先で役務を提供した派遣労働者を3か月と1日、サポート社員という名前の期間社員として直接雇用し、3か月と1日が経過すると再び派遣労働者に戻して役務と提供させるという、見せかけだけのクーリング期間を挟むことで派遣制限期間の適用を脱法的に免れ、4年、5年と派遣のまま製造業現場で使い続けていた。

このようなマツダのやり口は、2009年2月4日の衆議院予算委員会で日本共産党の志位和夫委員長によって追及され、当時の舛添要一厚生労働大臣は、「一般的な法解釈」としてという前提をつけながらも、「派遣可能期間の満了後のいわゆる『クーリング期間』中に派遣労働者を派遣先が直接雇用するけれども、『クーリング期間』後に再び派遣労働者として派遣就業させることを予定していると認められる場合には、職業安定法44条で禁止している労働者供給に該当し、違反になります」「適正な『クーリング期間』が設けられたといえないために、最初の派遣開始時から最大3年の派遣可能期間が経過した時点以降は、派遣をおこなうことができないということになっております」と答弁せざるを得ない状況になっていた(志位和夫「人間らしい労働を/たたかいで道を開こう」145~150頁)。

尚、マツダは、サポート社員制度とともに、派遣労働者のランクを4つに格付けするランク制度、派遣元の業績を派遣労働者の出勤率、定着率等の向上に努めたか等の5つの尺度で評価するパフォーマンス制度を導入し、派遣料金は、ランク及びパフォーマンスを反映する仕組みとなっていた。

3 2008年秋以降、リーマンショックの影響もあって数十万人の派遣労働者が派遣切りをされ、派遣切りされた派遣労働者が派遣先に雇用責任、損害賠償責任を求める訴訟が全国各地の裁判所に約60件係属したといわれている。

前述したとおり2012年改正前の労働者派遣法も派遣制限期間を超えた場合に派遣先に派遣労働者に対する直接契約の雇用申込義務を課していたが、この義務が法的義務ではなく努力義務とされていたため、派遣先に雇用責任を認めさせるためには、派遣先と派遣労働者間に黙示の労働契約が成立していることを裁判所に認めさせる必要が生じるところ、大阪高裁が2008年4月25日、松下PDP事件において、派遣先と派遣労働者間に黙示の労働契約の成立を認める画期的判決を下しており(労働判例960号5頁)、この判決に従えば、多くの派遣労働者が法的に救済されるはずであった。

ところが、最高裁は、2009年12月18日、その上告審で上記大阪高裁判決を取り消し、派遣先と派遣労働者間の黙示の労働契約の成立を否定した(労働判例993号5頁)。

この最高裁判決はいろいろな問題を含んでいるが、特に、①派遣労働者は派遣元と労働契約を成立させているが、この労働契約は「特段の事情」のない限り有効であるところ、派遣先と派遣元間の契約が偽装請負というだけでは「特段の事情」に該当しないこと(特段の事情がなく、派遣元との間に労働契約が存する以上、派遣先との間に労働契約が成立する余地はないこと)、②派遣先との間に黙示の労働契約が成立していると言えるためには、派遣労働者の賃金を派遣先が実質的に決めていると言える事情が必要であるところ、派遣料金と派遣元が派遣労働者に支払うが連動しているというだけでは、派遣先が派遣労働者の賃金を実質的に決めているとは言えないこと、以上の2点において、派遣先との間の黙示の労働契約の成立を認めさせるについて、派遣労働者に極めて高いハードルを課すものであり、以降、派遣労働者敗訴の判決が全国各地の裁判所で続くことになった。

4 しかし、山口地裁は、マツダ訴訟において、サポート社員制度等、マツダが実現してきた違法派遣の実態を丁寧に認定した上で、「被告は、サポート社員制度の運用実態において労働者派遣法の規定に違反したというにとどまらず、ランク制度やパフォーマンス評価制度の導入と併せ、常用雇用の代替防止という労働者派遣法の根幹を否定する施策を実施していたものと認められ、この状態においては、すでにこれら制度全体としても労働者派遣法に違反するものとさえ評価することができる。また、派遣元においても、コンサルティング業務の委託料やパフォーマンス評価制度による派遣料金の増額分という金銭的対価を得てそれに協力していたことが認められる。このような法違反の実態にかんがみれば、形式的には労働者派遣の体裁を整えているが、実質はもはや労働者派遣と評価することはできないものと考える」と述べた上で、「被告が派遣労働者のランクの付与に主体としてかかわっていたことも優に認められ、これによれば、被告が派遣労働者の給与等の名目で派遣元から受領する金員の額を実施的に決定する立場にあったことが認められ」、従って、「黙示の労働契約の成立を認めることができる」こと等を考慮すれば、本件では、「派遣労働者と派遣元との間の派遣労働契約を無効であると解すべき特段の事情がある」し、派遣元・派遣労働者間の労働契約が無効である以上、派遣先・派遣元間の労働者派遣契約も「違法な労働者供給契約に該当し、公序良俗に反する無効な契約である」と判示して、サポート社員を経験している13名の原告とマツダとの間に黙示の労働契約(期間の定めのない労働契約)の成立を認めた。

5 黙示の労働契約の成立を否定された2名の原告は5か月~1年9か月で派遣切りされたため、サポート社員の経験がないことを理由に請求を棄却されているのであるが、労働者派遣法においては、本来、派遣制限期間の違反は、人を基準にするのではなく、業務を基準にするものとなっていること、これら2名についてもリーマンショックを影響とする派遣切りがなければ当然にサポート社員を経験することが予定されていたと考えられることを考慮すれば、2名についても黙示の労働契約の成立を認める余地は十分にあるのではないかと考えられる。

もっとも、松下PDP事件・最高裁判決以降、全国の多くの裁判所は、最高裁判決の結論のみにとらわれ、思考停止状態となって、事案の特殊性、松下PDP事件との事案の異同に格段の考慮を払うことなく、労働者に冷たい判決を下し続けてきた。まさに裁判所もまた派遣労働者を物のように扱ってきたといえるが、山口地裁の今般の判決は、そうした判決とは逆に、最高裁判決を絶対視することなく、マツダの行ってきた違法派遣の実態の酷さに目を背けずに、そうした違法派遣を全体として公序良俗に違反するものと断罪し、松下PDP事件・最高裁判決のもとでも労働者を救済するための緻密な論理を組み立てた判決と評価できる。

そのような裁判所の真摯な姿勢は、これまでの下級審判決が、2012年改正前の労働者派遣法が労働者保護法ではなく業法(取締法)に過ぎないとの一言で労働者保護の必要性を一蹴し、偽装請負、偽装出向という手法によって違法派遣を行ってきた企業の違法行為に目を瞑ってきたのに対し、山口地裁判決が、改正前の労働者派遣法も「派遣労働者の保護にも配慮する労働法としての側面を併有していたことは否定できない」と判示し、「労働者派遣法の枠内では自ら組織的かつ大々的な違法状態の創出に積極的に関与した被告の責任を事実上不問に付すことになる」が、そのような結論は許されないとの姿勢を鮮明にしていることにも現れている。また、直接雇用を認めたというに止まらず、期間の定めのない契約(正社員としての直接雇用)を認めたことも極めて画期的である。

6 尚、山口地裁判決は、黙示の労働契約の成立を肯定できる理由として、「同じく労働者派遣法違反であっても、偽装請負のようにそれ自体からは直接雇用の契機が出現しない場合とは異なり、いったんは直接雇用というサポート社員を経験した派遣労働者については、その前後の業務内容、勤務実態、使用従属関係の有無等を併せ考慮することにより、派遣労働期間中についても直接雇用を認め得る契機は高いものと考えられる」と述べている。

この判示は、本件事案が、派遣労働者の請求をことごとく棄却してきた他の裁判の事案とは異なることを浮き立たせ、控訴審で覆されないようにするための判示として一定の理解が可能であるが、しかし、マツダがサポート社員制度を創り直接雇用を挟んできた根本的理由が、派遣制限期間を潜脱して労働者派遣という形態を利用し続けるためであったことは明らかであり、そのような手法が公序良俗に違反するものとして法的にも否定されるのであれば、同じく派遣制限期間を脱法するための偽装請負、偽装出向についても法的な否定的評価が下されなければならないのではなかろうか。

マツダ訴訟においては就労期間が約2年9か月に過ぎない原告もサポート期間が挟まれていることを理由に救済されているのであるが、そのような原告が救済されるのであれば、全国各地で偽装請負、偽装出向という手法によって5年も6年も派遣先に役務を提供させられてきた多くの労働者が救済されるべきも当然のことと思われる。

その意味で、マツダ訴訟を支援し、この判決を確定させることも重要であるが、山口地裁判決を単なる特殊な事例判決としてしまうのではなく、この判決を更に発展させ、判決の理屈を違法派遣一般に妥当させていくための闘いが重要である。

7 弁護団声明も、「本判決は、松下PDP事件最高裁判決以降、おそらく全国で初めて派遣労働者と派遣先との間の黙示の労働契約を正面から認めた画期的な判決である。派遣労働者をはじめとした非正規労働者の置かれた不安定な地位の抜本的な改善へ向けて、山口地方裁判所は大きな一歩を踏み出し、その職責を全うした。本判決は、他の同種裁判や労働者派遣法の抜本的な解決に向けた大きな力となる」と述べている。私たちも、これまでの不当判決に屈することなく、この判決を大きな力として非正規労働者の地位の抜本的な改善を目指す闘いを続けて行かなければならない。

このページのトップへ


随想 閑話休題

元民法協代表幹事 長淵 満男


今月は、執筆者の都合により、内容を変えさせて頂きます。

1)筆者は、昨年秋「反原発首相官邸行動」に参加する機会を得ただけでなく、さる三月下旬「民科法律部会合宿研究会」に参加し、研究活動の一環としてJパワー(日本電源開発株式会社)が建設中の「大間(おおま)原発」現地サイトへ実地調査に行く機会を得た。現地調査では、丘の上から大間原発の中心「原子炉建屋」を俯瞰したほか、亡き母の意志を継いで、主誘致を手放すことなくログハウスを維持し(建てたのは母のあさこさん=故人)、「大間原発に反対し」し、「子どもたちが自然と触れ合う場」の確保を目標に努力を続けておられる「あさこハウス」の所有者小笠原さんと、日本電源(Jパワー)が張り巡らさせた鉄条網に逆包囲された土地の中で交流する機会に恵まれた。安倍自民・公明政権の発足以来、日本社会の停迷を反動的・反国民的方向で打開せんとする動きが「急流」となるかにみえる現況において、「原発問題」についての随想を書かせて貰います。

2)「放射能汚染水約120トンが漏水」(東電福島第一原発)というショッキングなニュースが新聞がトップ記事となってのが4月6日、くわえて「貯水槽の設計ミスかー福島第一原発、移送水漏れ」(毎日新聞4月10日付)。

実態を見ることなく早々と「事故収束宣言」を出し、「世界最高水準の安全確保をめざす」と公言して原発再稼働と新建設を進めようとする動きがやたらと報道されがちな昨今だが、「事故収束」どころか、安全確保措置一つ取っても応急対策としての「仮設措置」の継ぎ接ぎであり、ネズミが動いただけでも装置の不具合が生じるようなありさまだそうである。しかも、事故を起こした原発敷地の中では、放射性物質汚染水を閉じ込めたタンクが次々と満杯になり、底をついた後の処理法などメドはたっていない。

原子力発電は、核燃料を使用して発電したあとも、大量の放射性物質を残す。その処理方法は確立していない。現在政府が採用する方法は、中間処理としてMOXを生産し、高速増殖炉を使った発電に再利用した後、最終処理として汚染物質をコンクリートのタンクみたいなものに閉じ込め地下深く埋めて時の経過を待つというものである。しかし、無害化までには30万年を要するという気が遠くなる話である。

3)青森県大間岬=下北半島の最北端は、同時に本州の最北端でもあり、津軽海峡を挟んで約20Km北西には北海道の函館市がある。本来、ここは本マグロ漁の拠点であり、一本一億円の値がついた本マグロのニュースは記憶に新しい。人口は6000人超と小さいが、経済的には豊かな漁民の住む町で、買い物には函館へ出かける者が多いという。

この小さな町と住民が、原発とその関連施設の脅威にさらされている。3.11事故を機に工事を中断していた大間原発の建設工が昨年10月1日に再開されたからである。この時点で工事進捗率は37.6%。

大間原子力発電所は、完成すれば沸騰水型軽水炉を用いた世界最大級の原発であり、同時に安全確保に関しては重大な欠点があるといわれている。

その一は、内部爆破事故に脆弱な構造になっており、とくに新型の電動式制御棒の採用は使用経験も浅く、誤った運転操作(チェルノブイリ原発事故)、自動落下などの場合には瞬時に多数の制御棒がはずれ、核反応の制御できなくなる恐れがあるそうだ。

その二は、ウラン・プルトニウム混合酸化物であるMOX燃料をすべての炉心に装荷することに起因する。この燃料は、ウラン燃料に比べ①融点が低く、②制御棒の効きが悪いので迅速に炉心停止ができない。③炉心における蒸気の泡が一気につぶれるような事態が起こったとき出力が急上昇し、炉心の暴走事故をも引き起こす危険性があるという。従業員にとっての危険だけでなく、周辺住民にとっても過度の危険性があるため、世界の原発稼働国は軽水炉型を放棄したという経緯がある。それにもかかわらず、政府やJパワーが大間原発に固執するのは、これが使用済み核燃料から生産される「MOX燃料のみを燃やす原発」だからである。政府や事業主体等が描く「核燃料サイクル」を回すために絶対必要という位置付けがなされているのである。

4)住民の居住地が海寄りに集中する大間町奥戸集落。その防災公園が海岸段丘の上段にあるが、そこから大間原発の全貌がよくみえる。原発建屋から海までの距離は近く、建屋の位置は低い。そして驚くことに民家の集落がすぐ近くにある。町役場も近い。約4~5キロか?これでは不測の事態に際して避難所にも対策本部にもならない。漁港も近いが、目前の港に温排水を捨てるパイプが延びている。政府の許可があれば、大間原発は放射性物資に汚染された温排水を太平洋に流すつもりかと疑われる。かって、高レベルの汚染水の貯蔵場所確保のため、低レベルの汚染水を海中に流し、沿岸の魚介類を汚染しまくり、世界中から非難された愚行を繰り返すつもりだろうか。首相官邸前の抗議行動の際、再稼働反対の次に「大間をつくるな!」を繰り返しシュプレヒコールした意味がここにあった!

もっと驚いたことに、Jパワーが買収した土地と土地の間に「あさこハウス」という小さなログハウスがある。原発敷地予定の土地を所有していた176軒のうち、ただひとり売ることを拒否した母あさこさんの遺志を継ぎ、娘の厚子さんがミツバチを飼っている。あさこハウスと炉心は250メートル程度しか離れていない。設計の段階ではこの地が炉心だったそうである。

私たちはJパワーが認めた国道からの通路、鉄条網と鉄条網で逆包囲された曲がりくねった約1キロメートルの道を歩いて「あさこハウス」へ往復した。広大な畑、原野ときれいな水、多くの産物を育む海それに平和があれば人々は暮らして行けるといいながら死んで行った父、その遺志を継いでJパワーの買収を拒否した母、さらにその遺志を継ぐ娘、それぞれに原発のはらむ住民・自然・平和への脅威を強く認識するがゆえに原発とその関連施設の建設に断固闘う(闘った)女性に深く感動したのでした。

ちなみに、彼女はできるだけはやく「あさこハウス」に住み(現在は函館在住とか)、原発建設を中止させ、所有地に子どもたちを呼んで自然と触れ合う機会を提供し、健やかな成長を支援したいそうである。

なお「あさこハウス」は、現状では継続して住むことができない。火、水(トイレ、風呂)、電気等の設備がないからである。見積もりでは、数百万円を要するため昨年10月1日「あさこハウス発展プロジェクト」が始まり、全国からの支援を求めている。

原発建設・再稼働反対の運動が安倍政権登場後活気を失いつつある(?)、という4大新聞の報道と反対に6月の大集会開催のニュースも伝わっている。日本の支配勢力がエネルギー政策としてだけでなく、核兵器開発を可能にする意識をもつものとして重視する原子力発電であるだけに、その変更=原発からの撤退を余儀なくさせるのは容易ではないが、国民の大きな反対運動でぜひ実現したいものである。

このページのトップへ


安倍政権が進める雇用制度破壊の真相

弁護士 本上 博丈


1.安倍政権は2012年12月に発足以来,日本銀行との連携による大胆な金融政策(=投機に向かうお札の大量供給)が耳目を集めているが,アベノミクスにおける「三本の矢」の一つとされている「成長戦略」に関しては,2013年6月の取りまとめに向けて,財界言いなりのとんでもない雇用制度破壊の計画が着々と具体化されつつある。しかも,安倍ヨイショを続ける大手メディアの報道では,労働者の生活破壊を一層進めるその危険性が隠蔽され,安倍政権が進めようとする経済政策はどれもこれもがバラ色の将来につながっているかのような幻想を振りまいている。労働者の目で,真相を見抜くとどう見えるか。

2.安倍内閣は,民主党政権下で休眠していた経済財政諮問会議及び廃止されていた規制改革会議を復活させ,また新設の日本経済再生本部のもとに産業競争力会議を設置して,これら3つの機関で,雇用分野の規制改革を検討させている。それぞれにどのような役割分担があり,どのような違いがあるかは,あまりに似通っていてよく理解できない。

これまでの報道から,それぞれの会議でどのような議論がされているかをざっと拾うと次のようなものとなる。

① 経済財政諮問会議

「経済活性化のため,柔軟で多様な働き方を進めるための規制改革を進める(2月4日)。」多くの労働者は,安定した確実な働き方を求めていると思うが。

② 規制改革会議

「通達や行政指導による規制を原則廃止する措置を6月までに徹底する(2月25日)。」これによれば,厚生労働省関係の,使用者の労働時間管理義務を明確にした通達,36協定の特別条項の適用期間を制限させる通達,管理監督者の範囲を厳格にする通達,偽装請負や違法派遣の境界を明確にした通達など,法解釈を明確にし,労働者保護のために一定の役割を果たしてきた多くの通達が廃止されてしまうおそれがある。

「労使双方が納得する解雇規制のあり方,その具体策としての解雇の金銭解決制度の導入(2月15日)。」わずかなお金で自由に解雇できる解雇自由化法案の復活。

「事務系や研究開発系等の労働者のうち,一定の者については労働時間法制の適用のあり方を見直す(2月15日)。」これも,5年くらい前に一度断念されたホワイトカラー・エグゼンプション(残業代ゼロ法案)の復活。

「「企画業務型裁量労働制」の対象業務・労働者を法律ではなく労使協定で決定できるようにする。(2月15日)」

「労働者派遣法の根幹である「常用代替防止」の考え方を見直す。(2月25日)」これは,派遣労働を例外ではなく,基幹的な雇用形態の一つに位置付けるとするもので,例えば原則1年の派遣可能期間を5年に延長することなどが想定されている。

③-1 日本経済再生本部

安倍首相は厚生労働大臣に当面の雇用制度「改革」について具体化を指示し,そこでは,①失業なき円滑な労働移動(雇用調整助成金を廃止して,成熟産業から成長産業への労働力移動のため民間アウトプレースメント会社(リストラ請負会社)などの費用に税金を使う),②民間人材紹介サービスの最大限活用(ハローワークの持つ求人情報や助成金を民間に開放する),③「多様な正社員」の確立(正社員か非正社員という二極化ではなく,職種や地域,労働時間などを限定した限定正社員の解雇ルールを作る。無限定の正社員には労働時間規制を外し残業代ゼロのホワイトカラー・エグゼンプションを導入する)(4月2日)が考えられている。

③-2 産業競争力会議

「雇用維持型の解雇ルールを労働移動型ルールに転換する。」「解雇自由の原則を法に明記する。」「ホワイトカラー・エグゼンプション制度(事務系や研究開発系の労働者の労働時間規制の適用除外)の新設。」「現在の裁量労働制における深夜・休日割増賃金支払義務の廃止。」「通算5年超の有期契約の無期転換規定の廃止。」「日雇い派遣禁止の廃止。」「50歳代後半~75歳を対象にした早期退職制度の創出(以上,3月15日)」

「成長分野への労働力移転など労働力の流動化促進策。」「解雇が認められる場合の合理性の法律による明確化(以上,4月6日)。」

3.財界にとってだけ都合の良い,雇用制度破壊,しかも税金を使っての民間アウトプレースメント会社の活用など,企業のリストラ・コストまで国に引き受けてもらうという濡れ手に粟の話である。労働者が日々働くことで賃金を得て家族を養い文化的かつ健康に生活していくという,人間としての基本的な生活スタイルは,企業にとっては二の次らしい。

本来,労働分野は,公労使三者で構成する労働政策審議会が厚生労働省設置法第9条に基づき,厚生労働大臣等の諮問に応じて,労働政策に関する重要事項の調査審議を行うとされている。しかし,安倍政権が復活させた規制改革会議等上記3機関は,この仕組みを無視して,首相のトップダウンで思うがままの政策を実行するための目くらましの道具である。メンバーも内容も首相が決める。そのメンバーに労働側代表が指名されたことはなく,財界の代表とそれを擁護する学者に偏った構成だ。先に閣議決定した内容を各会議に確認させて法案化していくという強権的手法が用いられている。ここでの議論の異常さは,この4月1日に施行されたばかりの改正労働契約法18条(無期契約への転換)の廃止が早くも言われていること一つを見ても,明らかである。

このページのトップへ


「春の全国一斉労働相談ホットライン」報告

兵庫県労働組合総連合幹事 土井 直樹


解雇・賃下げ 相談続々と

4月5日、兵庫労連は全労連が実施する全国一斉労働相談ホットラインに呼応し県内5ヶ所(神戸・尼崎・西宮・加古川・姫路)で労働相談を実施しました。

当日は今回も兵庫民法協の先生方の協力を得て万全の相談体制を築くことができました。

相談件数は合計で23件。(面接・3件、電話・20件)ほとんどが本人からでしたが、中には妻による来所での相談や息子のことを心配して電話されたケースもありました。

相談には非正規雇用労働者が半数を占め、雇い止めや残業代未払い、パワハラなど深刻な相談が寄せられました。

深刻な相談も的確なアドバイス

新聞を見て来たという男性は10年以上新聞配達をしているが、「賃金明細」が出なくなり「給料袋」に現金が入っているだけ。金額を計算すると「最賃」以下になっていると相談。相談を受けた弁護士は最賃法違反の可能性があるので労基署に申告することをアドバイスしました。 

また東京へ転勤したが小さな職場で名ばかり管理職であり会社から退職を迫られている男性の妻からや、入社して研修2日目で解雇を言い渡された女性など解雇・退職強要の相談も相次ぎました。

今回の特徴として、パートで5年勤務しているが4月1日から無期契約に転換できるのかと13年度から改正された労働契約法についての質問も寄せられました。また、郵便関係職場の労働者3名からも別々に相談があり、アルバイトの更新時に賃下げされた男性や、下請け会社に勤務する契約社員の女性からは競争入札で別会社が入札しそこに移籍したが労働条件が悪化し合せて郵便局の管理者から暴言を吐かれて困っている実態が寄せられ、大企業のモラルが問われるケースもありました。

解雇自由化を阻んで労働者を守る

このように深刻な相談が次々と寄せられたホットラインですが民法協の先生方の的確なアドバイスにより相談者にとっても一定の解決がなされたと思います。

財界・政府は「労働者の流動化」をめざし、「限定正社員」など新たな労働条件の切り下げや、解決金さえ払えば簡単に解雇できる「解雇自由化」を目論んでいます。すでに、多くの相談があったように労働者は厳しい環境の中に置かれており、これ以上の労働法の改悪は許すことが出来ません。今後も、労働相談で個別の問題を解決しながら、すべての労働者の権利を守り労働環境の改善を求め奮闘する決意を改めて感じたホットラインとなりました。

今回も民法協の先生方に全面協力をいただき、紙面をお借りしお礼を申し上げます。今後とも兵庫労連との協力・共同を進めていただくことを改めてお願いし報告とします。


具体的な取り組み報告・兵庫労連集約
実施日時 4月5日(金)10時~19時
相談会場 兵庫労連労働そうだんセンター含め5会場
相談件数 合計23件(兵庫労連21、東播労協1、西播労連1)
内訳 電話20名、面談3名、
性別:男性14名、女性9名
年代:~30代6名、40代4名、50代7名、60代3名、不明3名
雇用形態 正社員8名、パート・アルバイト10名、派遣・請負3名、その他2名
相談内容 解雇・雇止め4、退職強要・勧奨1、賃金・残業代未払い4、労働契約違反2、
社会・雇用保険2、労働条件切り下2、労働時間・休暇2
相談の契機 マスコミ(新聞、テレビなど)12、ビラ1,団体・知人の紹介4、インターネット2,その他4
相談事例
50代女性、パートで5年勤続。「4月1日から5年勤続者は無期契約に転換できるようになったと聞いていますが、そうなんですか?」(労働契約法20条の摘要の事)

40代女性、契約社員。郵便局の下請け会社に勤務。競争入札で今年四月から別会社が入札。自分はそこに移籍したが、賃金面、休みが取れないなど労働条件が悪くなった。 また、郵便局の課長や課長代理から暴言を吐かれる(パワハラ)
※郵便局関係からは他に2件の相談あり。
50代男性、元タクシー運転手。事故を起こしたら修理費など自己負担させられた。今は退職している。
60代?男性。新聞配達をしている(10年以上)途中で経営者が変わり、それから「賃金明細」が出なくなり「給料袋」に現金が入っているだけ。働いた時間ともらった金額を計算すると「最賃」以下になっている。
50代男性。正社員(管理職のよう)ゴム関係の仕事(本社は関西)。東京港区にある出張所?に転勤。管理職といっても「名ばかり」で全員で3~4名の職場。退職を迫られている。(奥さんからの相談)

このページのトップへ


労働判例勉強会に参加してみませんか?

弁護士 増田 祐一


皆さん、ご存知ないと思われますが、民法協に参加している弁護士数名と一般の労働者の方とで、2週間に1回程度、労働判例の勉強会を行っています。だいたい、午前9時から1時間程度、神戸駅近辺の法律事務所で行っています。弁護士が調整しやすい朝の時間帯になってしまっており、お仕事のある方々は参加が難しいと思いますが、一般の労働者の方々から、夜の開催であれば、参加したいという声がありましたら、不定期ですが、夜に開催することもあります。

労働判例の勉強会ということで、かなり、堅苦しく考えられてしまうかもしれませんが、産労総合研究所というところが2週間に1回出している「労働判例」という雑誌を見ながら、雑談を繰り広げているにすぎません。一般の方々にも参加していただき、気軽に質問等していただいても何の問題もありません。

僕たち、弁護士としましては、この勉強会を通じて、最近の判例情勢を掴み、また、現在自分の担当している事件に生かせる判例を探したり、現在自分が抱えている様々な悩みを相談したりと、色々な意味で活用しています。弁護士ではない一般の方々に参加していただくと、新しい視点から考えられたり、新しい風を感じられたりすることがあり、さらに有意義な会となります。

どうしても、法律家同士の話ですので、一般の人からすれば、「?」な部分も出てきてしまうかもしれませんが、そこは、気軽に質問していただければ、弁護士以外の方々にとっても有意義なものになるだろうと思っております。

参加してみてもよいかなと思われる方は、お気軽に増田祐一(神戸合同法律事務所 078-371-0171)まで、ご連絡ください。  ちなみに、この会が、どれくらい続いているのか、定かではありませんが、少なくとも3年以上は継続しています。細く長く、雨の日も、風の日も、槍が降ろうが、地球が割れようが・・・継続していけたらなと思います。

このページのトップへ