2014年7月5日午後2時から,シーパル須磨にて兵庫県民主法律協会第52回総会が行われた。
代表幹事の門泰之・兵庫県医労連書記長は,「秘密保護法と集団的自衛権で振り回された1年だったが,そのどさくさの中で介護保険法の改悪など社会保障の削減法も通されてしまい,弱者切り捨てが進められたことも見落としてはならない。そのような過酷な政治状況の中で2014年5月21日に福井地裁が人格権に基づいて大飯原発の運転差し止めを命じる判決を出したことは,民衆の側からの反撃のヒントと勇気を与えてくれた。」旨挨拶した。
武井寛甲南大学教授(労働法)「安倍政権下における労働法制の行方 パートⅡ」
「世界で一番企業が活動しやすい国」にすると宣言している安倍政権が企み,クーデター的に実現しようとしている労働法制破壊の動きについて,昨年の第51回総会における記念講演に引き続いて,武井教授にご講演いただいた。
(1) 分野ごとの内容と動向は概ね次のとおり。① 労働者派遣法
実質は派遣の恒久化を意味する派遣法改正案は,平成26年の通常国会では廃案となったが,再提出されると思われる。
② 労働時間規制の緩和
厚生労働省が官邸主導になびいてしまい,「裁量労働制の新たな構築」と「『時間ではなく成果で評価できる仕事』に関する労働時間制度の構築」が方針として採用され,労働政策審議会・労働条件分科会で議論が始まっている。いずれも労基法による労働時間規制の緩和・撤廃を目論むものである。
③ ジョブ型正社員論と解雇ルール
「行き過ぎた雇用維持型の政策から労働移動支援型の政策へ」転換を図るとし,「労使双方が納得する雇用終了の在り方」を検討するとして,規制改革会議の中の雇用ワーキンググループにおいて,「勤務地・職務の限定」をした正社員制度による解雇の容易化と解雇の金銭解決制度が関連づけられながら検討されており,平成26年度中に結論を出すことが予定されている。
(2) 動向の特徴① 経済学では破綻が明らかになっている「トリクルダウン(おこぼれ)論」を基礎にしている。
② 規制改革会議の委員(企業家)などは個別的労使関係と集団的労使関係の区別や,現行労基法における有期契約規制の内容など労働法制の現状を理解しないまま,「制度創設」を提唱するなどといった混乱を引き起こしており,厚生労働省がその動きに引きずられている。それが労働政策審議会の軽視にもつながっている。
③ 全てがビジネス中心の発想で,労働者はなめられている。
議案は全て提案どおり可決されたが,野田底吾弁護士から,活動方針について,労働基準監督行政への取り組みを強化すべきとの意見が出された。すなわち,ブラック企業問題が社会問題になり,最近公表された兵庫労働局の定期監督結果でも対象事業場の約80%に労基法・安衛法違反があったという深刻な無法状況にあるが,その原因の一つに労働基準監督官の不足による監督行政の不徹底がある。そこで,監督官の飛躍的増員を要求する運動を,大阪民法協,日弁連,全労連,連合なども巻き込んで拡げていくべきである。この提案に対し萩田満事務局長は,活動方針での記述はないが取り組みを検討したいと答えた。
① 羽柴修弁護士が,NHK受信料徴収者解雇事件において労働者性を認めた神戸地裁平成26年6月5日判決(議案書p49)および賞与減額に関する不誠実団交について県労委で棄却命令を受けた後中労委で和解が成立した関西学院大学教員組合事件(議案書p50)を報告した。
② 私教連永島徳顕副委員長が,百合学院雇い止め事件(議案書p47)について県労委のあっせんにおいて組合が学園理事長との団交を求めていたところ,あっせん案として,組合をはずして本人が直接理事長と話し合いをするという案,あるいは別に裁判所に係属している地位確認等請求訴訟の取り下げを条件に団体交渉を行うという案を出されたことを報告した。県労委が労使関係の正常化ではなく,学院の不誠実団交を公認したものと言える。
③ 建交労兵庫県本部津村書記長が,建築会社の女性組合員に対するパワハラ,解雇事件について県労委のあっせんにおいて組合が決定権を事実上独占している会長出席による誠実団交を求めていたところ,あっせん申請後黙って待っていたら1か月以上放置されることも多々あることから,2,3日おきに県労委事務局に進捗状況の説明を求めたこと,誠実団交を求めるあっせんだったのに紛争内容に立ち入った調査がなされたことなどを報告した。
このページのトップへ防止法成立への取り組みについて報告原稿を頼されました。7月27日ラッセホールにて行われました兵庫の報告集会での経過報告をもって、ご報告にかえさせていただきたいと思います。
ただ、一言付け加えさせていただきたいことは、次のことです。
今後、過労死防止法の実効性ある実施に向けて、過労死防止基本法制定全国実行委員会は発展的に解散し、新たな二つの団体を8月23日に立ち上げようと準備しています。過労死防止研究学会と過労死防止対策推進センターです。全国の組織との連携を持ちながら、兵庫での活動を進めていくことが何より望まれます。
そして、制定活動において、家族の会中心の活動になりがちだった兵庫の弱点を克服し、とりあえず見直しまでの3年間、さらに続く10年以上の取り組みに向けて、今こそ、体制を強化、立て直していくことが必要ではないでしょうか。
兵庫には私たちが取り組めば、大きく前進できる素地が整ってきました。今求められるのは、マンパワーに裏付けられた体制ではないかと真剣に考えます。
弁護士と遺族が協力して、この活動の中心になることができれば何よりうれしいことです。(2014.08.10記)
以下、防止法制定の取り組みを、過労死遺族として、また、兵庫実行委員会の事務局長としてご報告させていただきます。
私の息子は、神戸から神奈川県の大手電機メーカー・システム開発関連子会社に赴任しましたが、即戦力として入社2年目の連続37時間勤務を含む、長時間過重労働と度重なる仕様変更のストレスにより、うつ病を発症し、休職と復職を繰り返しました。治療中にも関わらず、達成不可能なノルマを課され一層の体調不良に陥り、入社4年目の2006年、治療薬を過量服用して亡くなりました。人生これからという27歳でした。
懸命に育てた子を奪われるということは、親の人生をも奪われることと同じで、生きていく望みをなくしかけましたが、多くの方のご支援で裁判による労災認定と労働条件の改善を含む企業との和解が成立しました。
さらに、息子の事件の後も、20代・30代の若者の過労死が後を絶つことはなく、息子のブログに遺された「もっと健康的に生きたい。普通に働いて普通に生活したい」との息子から私への宿題が実現される社会をと、2009年、国会議員に過労死をなくすにはどうすればよいのか相談しました。私の教え子たちの将来も守りたいと思いました。
「個別の労災認定を助けることはできないが、国全体の問題としてなら取り組むことはできる、自殺対策基本法のように過労死防止基本法が必要だ」ただ、「法律は超党派の賛同がなくては作れない」と教えてくださいました。
私のような遺族が全国に3名いました。弁護士さん達も2008年から同じことを考えておられ、その後これらの動きが一つになって、過労死遺族と弁護士が中心になって支援者が集まり、過労死防止基本法制定実行委員会のもとに、過労死防止法制定活動として全国へ広がっていきました。
2010年10月、実行委員会準備会が第1回院内集会として開かれました。
2011年11月の全国実行委員会正式結成を受けて、兵庫実行委員会を、12年5月三宮で立ち上げました。60数名の方が駆けつけてくださいました。
その中に、県会議員と神戸市会議員がおられ、超党派の世話人となってくださいました。実行委員長・副委員長は兵庫の弁護士が、事務局は兵庫家族の会が引き受けました。
それから、①100万人署名 ②超党派の国会議員による議員立法 ③地方自治体の意見書採択の3つの取り組みがこの兵庫で始まりました。
実は、意見書採択が有効と提案してくださったのは、神戸市会議員です(地方自治法99条に基づき)。
さらに、世論に訴えることの大切さも教えてくださいました。初めての意見書採択で迷っている時、「記者会見もするんですよね」と後押ししてくださいました。以後、兵庫実行委員会は、弁護士さんの協力の下、記者会見を重視しながら、意見書採択を進めてきました。また、成立までの長い間、私たちにご協力くださったマスコミの皆さまにもお礼を申し上げたいと思います。
こうして12年10月、神戸市議会において政令指定都市初の意見書が全会一致で採択され、翌13年6月、県段階初の兵庫県議会での意見書採択と続き、兵庫においては今年の6月まで、計8自治体の意見書が採択されました。
また、兵庫県議会での意見書採択では世話人の県会議員が各党に取り次いでくださり、報告集会の準備も手伝ってくださいました。
署名は全国55万筆に対し、兵庫約7万6千筆で全国2位、これには連合・労連等の労組を含む多くの団体個人のご協力がありました。感謝申し上げます。
意見書採択した自治体は、10道府県を含む121自治体に上りました。
また、全国で130名の国会議員が議員連盟にご加入くださり、兵庫出身の国会議員さんも多くご加入くださいました。そして、防止法成立に重要な役割を果たしてくださいました。
超党派議員連盟の各党世話人代表一人目をご推薦くださったのは兵庫の国会議員さんです。(三人目が現世話人代表で、馳浩議員です)
また、この後、説明させていただきますが、自民党の過労死防止に関するWT会議で「過労死の防止のための調査研究の推進に関する法案」(1次案)が提案された時に、「調査は法律がなくてもできる、我々は、立法府の議員として過労死を防ぐ対策を盛り込んだ法律を作るべきだ」と私たちの思いを代弁してくださったのも兵庫の国会議員さんです。
東京の衆議院議員会館では、10年10月から14年5月まで、170人~250人規模の10回にわたる院内集会が開催され、国会議員がご賛同の挨拶をされました。
また、13年4月、家族の会有志が、国連「社会権規約」審査委員会へ訴え、5月に日本政府へ勧告が出ました。これも大きな力になりました。
13年6月超党派議員連盟ができ、議員さんが活発に動き出してくださった10月、議員に働きかける中心は遺族だと東京家族の会中原のり子さんの応援に、遺族の東京常駐の話が出て、家族の会全国代表の寺西笑子さんと私が行くことになりました。12月の臨時国会閉会までは、週末のみ神戸に帰っていました。
また、私が神戸にいない間も兵庫家族の会メンバーと弁護士さんが、12月議会に向けて4市の意見書採択に取り組んでくださり、昨年12月は忙しい月となりました。
しかし、残念ながら、臨時国会では、超党派の意見がまとまらず、12月4日野党共同提案として、とりあえず「過労死防止基本法」が上程されて継続審議となり、翌年の通常国会で超党派案がまとまるのを待つことになりました。
今年の通常国会と平行に開かれた自民党・過労死防止に関するWT会議は、経団連・厚労省・連合等の多くの団体への聞き取りを行い、各団体からは反対の意見はなく、過労死防止法は必要との意見が出されました。そこで提案されたのが先ほどご説明しました2月の「過労死防止のための調査研究に関する法案」でした。この時が私達としては最大のピンチでした。
全国実行委員長の関西大学名誉教授・森岡先生や川人弁護士・岩城弁護士たちが、急きょ、実行委員会の具体的な要望書をまとめてくださり、深夜に資料作成し、寺西さん、中原さんと私の3人で殆ど寝ずにプレゼンを準備し、早朝のWT会議に備えました。結果、議員さんの応援もあり、家族の会・実行委員会の要望は取り入れられることになりました。その後、過労死の定義等で紆余曲折もありましたが、「過労死等防止対策推進法案」としてまとまり、各党に諮り、超党派案として了承されることになりました。
また、衆参厚労委員会では異例の家族の会全国代表の寺西さんの参考人陳述が行われました。衆議院の陳述書はホテルにおいて二人で練り上げたものです。
その間、1月20日頃から6月20日までの5か月間も殆ど毎週上京し、実は日々睡魔と闘いながら、議員さんへ訴えて回りました。
以上が、防止法成立への活動のあらましですが、自民党がWT8回の会議すべてに私達実行委員会を陪席させてくださったばかりでなく、要望を伝える機会を与えてくださったことに感謝するとともに、私たち実行委員会の意向を大切にしながら、超党派のご意見をまとめてくださった超党派議員連盟の皆さま方にも深くお礼を申し上げたいと思います。(議連事務局長は泉健太議員)
法律に素人の私たち過労死遺族が、ただ、自分たちの身の上に起こった不幸な出来事をこれ以上繰り返させてはならないと、立法活動に取り組んできたのですが、遺族や弁護士が動き出してから約5年、全国実行委員会が結成されてから2年7か月、兵庫実行委員会立ち上げから2年1か月、おかげを持ちまして、悲願の「過労死等防止対策推進法」が6月20日、衆・参議院とも、国会議員の全会一致のご賛同で成立に至りました。
過労死という文言が盛り込まれた日本初の法案が成立したのです(karoshiは日本発の国際語)。国民からの要望で新しい労働法ができたのです。「国会は生きていた」と評価される方もいます。
この成果は、ひとえに、防止法制定の為にご協力くださった皆さま方のご支援の賜物と心より感謝いたしております。ありがとうございました。
過労死防止基本法制定をめざす議員連盟ができてからちょうど1年で、超党派の議員立法として成立したことになります。
私たち遺族にとっては決して楽な活動ではなく、かけがえのない家族を失った心の傷や、生活を支える重圧に押しつぶされそうになりながら、いつまで頑張ればできるのだろうか、過労死なくせの運動で過労死してはいけないと思った時もあります。でも、議員さん達によれば、こんなに早く議員立法が成立するのは奇跡的で、議員立法制定のお手本のような活動だったとのことでした。
このように、兵庫実行委員会は、全国実行委員会の活動を支える牽引車の役割を果たせたと自負しておりますが、さらに、この法律を実効性あるものにし、過労死のない社会を実現するためには、法律成立が新たな本当のスタートになります。
6月27日公布されましたので、11月1日施行見込みです。今年の11月から、「過労死等防止啓発月間」は実施されるでしょう。推進協議会で遺族等の意見を取り入れた「大綱」によって国の対策・計画が定まれば、具体的実施は、地方自治体毎に行われることになります。
また、3年後の見直しという課題もあります。
今後は自治体の方々と協力関係を持ちながら、防止法成立にご協力くださった各団体や皆様とのつながりを生かした、防止法の実施を支える新たな組織(仮称・全国過労死防止対策推進センター)を兵庫にも作りたいと思います。
そして、成立への活動と同じく、施行の兵庫モデルを、また、新たに全国へ発信することができればと考えております。
その為には、防止法成立へご協力くださった皆様方のお力が今後も必要です。また、今まで以上の新しい力も必要と考えます。もちろん、私たち家族の会も引き続き努力してまいります。
前途ある若者が過労死する社会に未来はありません。明日にでも働きすぎで過労死するかもしれない人々の命は救われねばなりません。
働くことで若者の命までがなくなるこの貧しい日本から脱却し、過労死のない社会を実現するために、何よりもこの国を働きやすい未来ある国にするために、さらに新しい一歩をみんなで踏み出しましょう。
このページのトップへ(1)労災申請・認定は「氷山の一角」
(2)それでも深刻な状況の一端を示す
H 25 年度の労災補償状況(H 26・6・27 公表)
脳・心臓請求784 件、認定306 件‥‥高止まり40 代、50 代が55 %
精神疾患請求1409 件、認定436 件‥‥全体として引き続き増加20 代、30 代が54%
(3)「過労死110 番」初期のころとの違い
3 日常的な相談から窺える現状歯止めのない長時間労働、パワハラとの結合、若者・新入社員の悲惨な状況就職難・雇用不安定の中での過重労働意図的に使いつぶすブラック企業の跳梁跋扈
1981・7 『急性死』等労災認定連絡会(大阪過労死問題連絡会の前身)結成
1988・4 大阪で初めて「過労死110 番」電話相談6 全国7 ヶ所(札幌、仙台、東京、京都、大阪、神戸、福岡)で初の「過労死110番」を実施(相談件数は全国135 件、大阪29件)
1988・10 過労死弁護団全国連絡会議結成
1988・11・13 シカゴトリビューン紙が" JAPANESE LIVE AND DIE FOR THEIR WORK"の見出しで、平岡事件を紹介しながら日本の過労死問題を一面トップで報道。
1991・11・12 全国過労死家族の会結成
1995・2・1 過労死の認定基準改正(基発第38号)
2 第2期(1996 年~ 2000 年) 過労自殺の登場と企業責任1997・10・18 「自殺過労死110 番全国電話相談」(相談件数全国141 件、大阪42件)
1999・9・14 過労自殺の認定基準「心理的負荷による精神障害等にかかる業務上外の判断基準」
2000・3・24 電通事件最高裁判決
3 第3期(2001 年~) 過労死・過労自殺の全般的増加と過労死予防の取り組み2001・6・12 大阪で「労働基準オンブズマン」結成
2001・12・12 過労死の新認定基準(基発1063号)
2003・7 大阪で、36協定情報不開示に対して行政訴訟を提起(2005・3・17 大阪地裁勝訴・確定)
2009・11・18 過労死を出した企業名の公開を求める行政訴訟提訴(2011・11・10 大阪地裁勝訴、2012・11・29 大阪高裁敗訴、2013・10・1最高裁不受理)
2011・12・26 過労自殺の新認定基準(基発1226 第1号)
2008・9・26 過労死弁護団全国連絡会議が総会で防止法制定を求める決議
2008・11・15 日本労働弁護団が総会で同様の決議
2010・10・13 「ストップ!過労死」第1回院内集会(約170名)
2011・11・18 第2回院内集会(実行委員会発足)(250 名以上)。100万人署名、超党派による議員立法をめざす。
2012・3・7 第3回(190名)
2012・6・6 第4回(270 名以上)齊藤友紀雄氏(日本いのちの電話連盟理事)
※院内集会と並行して、小宮山洋子厚労大臣と面談
2012・11・20 第5回(202 名) 暉峻淑子さん(埼玉大学名誉教授)、桂福車さん(落語「エンマの怒り」)
2013・3・7 第6回(274 名) 吉越浩一郎さん(元トリンプ・インターナショナル)ほか
2013・6・6 第7回(約268名) 山田昭男さん(未来工業)、今野晴貴さん(NPO法人POSSE)
2013・10・13 緊急のつどい(約130名)
2013・11・19 第8回(234名) 小室淑恵さん
2014・2・4 第9回(206 名) 河口真理子さん、反町吉秀さん
2014・5・22 第10回(236 名) 清水康之さん
2 2回の国政選挙での取り組み2012・12 衆議院選挙(民主党政権から自民・公明党政権へ政権交代)
政党アンケート、候補者賛同書の結果を公表。最終的に10 党から回答書、287 人から賛同書が届いた。
賛同回答者のうち34 人が当選(自民16/18、公明2/2、民主2/26、維新1/5、未来1/10、みんな2/5、共産8/210、社民1/9、国民0/0、大地1/2)
2013・7 参院選
参院選公示に際して立候補予定者386 人に賛同要請書を送付したところ、97人から賛同書が届く(民主9、自民1、公明7、みんな4、生活1、社民5、みどり2、維新1、大地1、幸福7、緑の党5、共産51、無所属3)
賛同回答者のうち14 人が当選(民主2/9、自民1/1、公明2/7、みんな2/4、生活0/1、社民1/5、みどり0/2、維新0/1、大地0/1、幸福0/7、緑の党0/5、共産5/51、無所属1/3)
3 取り組みの到達点(1)「ストップ!過労死100万人署名」550,137筆
(2)インターネット署名5000 以上、コメント550以上
(3)地方自治体の意見書121自治体(10道府県を含む)
(4)国連の勧告
2013・4・29 過労死家族の会有志が、国連(ジュネーブ)を訪問し「過労死は国際人権規約違反」を訴え
2013・5・17 国連社会権規約委員会が日本政府に過労死防止を勧告
(5)マスコミの精力的な報道(いくつかの社説を含む) 過労死防止の世論が全国に広がる
4 国会でのロビー活動2013・6・18 超党派議員連盟発足
現時点での会員議員数約130名
2013・12・4 野党6党で法案提出を先行しつつ、全政党で法案を練り上げる方針を確認
2014・4・1 自民党WTが最終素案を確定
その後、各党が党内手続きを完了
2014・5・23 衆院厚労委で採択。寺西さんが参考人意見陳述
2014・5・27 衆議院本会議で可決
2014・6・19 参院厚労委で採択。寺西さんが参考人意見陳述
2014・6・20 参議院本会議で可決、「過労死等防止対策推進法」(過労死防止法)が成立。
総則 目的(第1条)
定義(第2条)
基本理念(第3条)
関係者の責務(第4条)
啓発月間(第5条)
年次報告(第6条)
大綱(第7条)
対策 調査研究(第8条) ※2項の「関連する」の意味
啓発(第9条)
相談体制の整備(第10条)
民間団体の活動支援(第11条)
協議会(第12条~第13条)
法制上の措置(第14条)
3年後の検討(附則2項)
国が、過労死等がなく、仕事と生活を調和させ、健康で充実して働き続けることのでき る社会の実現に向けて、過労死等防止対策を効果的に推進する「責務」を有することを明示した。
→今後、この法律の存在を、様々な分野で効果的に活用していくことが可能となる。
2 本格的な調査・研究の開始の可能性(過労死問題の科学的な解明と対策)日本では、これまで、働く者のいのちと健康をめぐる問題について、調査・統計が大変 不十分であった。在職中死亡者の数やおおまかな原因分類すら、これまで5年に一度しか調査がおこなわれていない。世界的にも有名な過労死の実態を調査しようとしても、基本 的なデータ自体が極めて不足している。
この法律ができたことによって、従来には実施されていなかった様々な調査を今後おこなう可能性が生まれた。
特に、調査の対象には,この法律の「過労死等」の定義にかかわらず、様々な疾病(呼 吸器疾患、消化器疾患等)や事故(過労運転による事故等)も含めることが可能であり、また、労働者以外の自営業者や役員に関しても調査対象となっているので、速やかに適切 な調査を実現していくことが重要である。
自殺対策基本法(2006年成立)を例に挙げると,同基本法成立以降、自殺統計のスピードが格段に早くなり、また、自殺対策白書が報告されるようになった。従来の自殺統 計発表は、翌年の6月頃だったものが,現在は、速報値が1~2月に発表されるなど,スピードが格段に早くなり,調査内容も詳しくなっている。
過労死に関しては、疾病名も様々で、死亡原因に対する評価が分かれるなど、自殺統計 に比べて、一段と工夫が必要となるが、従来、厚生労働省や内閣府が実施してきた調査・統計を活用しつつも、どのように調査内容を追加・修正していくかについて検討が求めら れている。
3 国民全体レベルでの広報・教育による啓発(過労死をなくす国民運動の開始)国や地方公共団体による広報・教育活動、11月の啓発月間の設定は、過労死問題を国 民的課題として取り組んでいくうえで、重要なステップとなり得る。
これまでも、過労死家族の会や過労死弁護団など民間団体のレベルでは、様々な場で、 過労死の実態を訴えてきたが、今後、従来に比べて、規模・内容とも拡大・充実した社会的なアピールが可能となる。
また、学校で過労死問題をきちっと教育していくことの条件がひろがったと言え、若者 の過労死防止にとって貴重な前進である。
4 被災者・遺族の声を取り入れた過労死防止対策(当事者・遺族の声の制度的反映)大綱作成のための協議会の委員に過労死遺族も入ることが明記されるなど、過労死の防止に向けて被災者・遺族の声をよく聞いて政府が方針を決めていくことが体制面で確保された。
公害・薬害・労災いずれの分野でも、被害者の声に耳を傾けることが問題解決の第一歩となってきた歴史がある。
5 「過労死防止対策大綱」の策定・変更と国会への年次報告(過労死白書)は、過労死防止 対策の大きな推進力となり得ること(過労死防止のエンジンの起動)過労死防止対策大綱は、法律制定と同時に直ちに策定されるものであり、4つの過労死 防止対策のほか、法制上の措置を待たずに行い得る方策(例えばサービス残業をなくすなど現行法規の遵守、時間外労働のガイドラインなど通達の徹底など)を取り入れさせるこ とは可能である。
また、毎年政府が作成して発表する年次報告(過労死白書)は、1年間の過労死防止対策の実施状況(到達点)と課題を明らかにすることになる。
これらは、過労死防止対策全体を推進するエンジンの役割を果たし得るものである。
6 将来、過労死をなくすための様々な実効性ある政府の措置(労働法令の改正等)につなげていくための条件が設定されたこと(2段階ロケット)政府は、過労死等に関する調査研究等の結果を踏まえ、必要があると認めるときは、過 労死等の防止のために必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講ずるとされていることから、労基法や労安法などの法律改正も、必要性が明らかになれば行うことが予定さ れている。
・あるべき調査・研究についての積極的な提案
・私たち自身が調査・研究に関わっていく
2 啓発活動への積極的関与・国や自治体と共催して講演会・シンポジウムなどを行う
・各種の労働研修のテーマに過労死問題を取り入れてもらう
・学校での職業教育に過労死問題を取り入れてもらう
3 大綱の作成・変更への積極的関与・大綱について私たちの私案を作成する
・その実施について日常的に検証し、変更に際して積極的に意見を述べる
4 協議会における積極的活動・協議会に積極的に参加し、発言する
・大綱の作成・変更にとどまらず、日常的に関係機関と意思疎通・意見交換を行う
・協議会内の他の委員や選出母体とも日常的に意思疎通・意見交換を行う
5 地方自治体との連携・地方自治体内での過労死防止対策事業の働きかけと積極的参加
・地方自治体職員の長時間労働やサービス残業について、自治体総務課や職員組合との懇談会の開催など
【参考資料】
① 「過労死等防止対策推進法案について」(衆議院法制局作成)
② 過労死等防止対策推進法(平成26 年法律第100号)
このページのトップへ・2006年1月 息子和哉(27歳・大手電機メーカーシステム開発関連子会社)過労死
・2006年4月 労基署へ労災申請
・2007年12月 労基署不支給決定。以降、審査請求、再審査請求も棄却
・2009年2月 行政訴訟(労災認定を求める)を提訴
・2011年3月 東京地裁にて勝訴→厚労省控訴せず勝訴確定(労災認定)
・2012年6月 会社と労働条件の改善を含む和解成立
☆定年間際に、一人っ子を長時間過重労働で喪い、生きていく望みを失いかけたが、懸命に働いた息子が何故死ななければならなかったのか納得できず、その真相を知らなければ、親として死んでも死にきれないと、多くの方に助けられながら、裁 判等で、人間扱いされていなかった息子の壮絶な働き方を知ることになった。
☆息子が遺したブログから「もっと健康的に生きたい。」「ふつうに働いて、ふつうに生活をしたいものだ。」「日本人ってなんでこんなに働くのでしょうかね。」「このまま生きていくのは死ぬより辛い」などの想いを知った。
☆若い貴重な働き手を死に追いやることは如何なる理由があろうとも許されない、家族の未来のみならず、この国の未来も失われると、「過労死防 止法制定」の活動を始める。(息子の遺した私への宿題)
☆2009年 国会議員へ「この国の過労死を何とかすることができないか」相談する。
2012年4月~ 全国過労死を考える家族の会・兵庫代表
2012年5月~ 過労死防止基本法制定兵庫実行委員会・事務局長(2月~準備)
2012年9月 神戸新聞<見る思う>に「過労死防止法で若者守れ」意見文掲載
2012年10月 日本弁護士連合会人権大会で「過労死と防止法制定」特別報告
2. 「全国過労死を考える家族の会」の取り組み・1989年各地「家族の会」で結成。1991年11月「全国家族の会」結成。
毎年11月、中央行動(国へ要請行動・宣伝行動・会員交流)励まし合い支え合う。
・全国、11ヶ所で活動
(北海道・宮城県・東京・長野県・山梨県・静岡県・名古屋・京都・大阪・兵庫県・岡山県)
3.「過労死防止基本法」制定全国活動の経過・2008年9月 過労死弁護団全国連絡会議総会。同年10月労働弁護団総会で決議。
・2009年8月 (民主党)政権交代、マニュフェストに「ワークライフバランス」明記。
・各地の3遺族が手探りで動き出す→「防止法」制定に立ち上がった遺族たち。
・2010年10月 「過労死防止基本法」制定を願う、第1回ストップ過労死院内集会開催。
・2011年11月 「過労死防止基本法」全国実行委員会が結成。
運動の柱 ①100万人署名による世論喚起。
②超党派の国会議員へ働きかけ議員立法で制定を。
③自治体の意見書採択で国への働きかけを。
・2012年12月 民主党政権→自民党政権へ
・2013年4月 ジュネーブ開催国連「社会権規約」審査委員会へ訴え、5月、日本政府へ勧告。
・2013年6月 超党派議員連盟設立→事務局長 泉健太(衆)議員。
・ →各党世話人代表 1福岡資麿(参)2丸川珠代(参)3馳浩(衆)議員。
・2013年10月 秋の臨時国会で成立を!議連決議→緊急集会開催→各党内手続きへ。
4. 兵庫実行委員会の活動・2009年 国会議員へ「過労死をなくす対策を要望」西垣(寺西→森岡先生)
→「個別事件の労災認定の為には動けないが、国全体のことなら、自分たちの仕事だ」「過労死防止基本法が必要。但し、超党派でなければ実現しない。」
・2010年10月 第1回院内集会(全国実行委員会準備会)にて、西垣・発言
・2012年1月 2011年11月、全国実行委員会結成を受け、全国一斉署名活動に参加。
JR三宮駅頭で100万人署名活動開始。以降、JR神戸・元町駅頭で署名活動。
・2012年2月 兵庫実行委員会準備会・事務局会議(以後、毎月家族会例会と合わせて)
・2012年3月 神戸市議会全党全会派の皆さまへ。防止法成立ご協力のお願い・アポ。
・2012年5月12日 過労死防止基本法制定兵庫実行委員会・立ち上げ。約60名参加。
弁護士・遺族・神戸市会議員・県会議員・複数の労組・労災支援団体等が、実行委員長・副委員長・世話人へ。事務局・家族の会。
→「法律を作るには、議員への働きかけ、署名活動と共に、世論を起こすことを重視するべき。意見書採択が有効・マス コミへの報道依頼を・記者会見の重視」・以降2014年5月まで約2年間、毎月の事務局会議25回
・2012年6月 小宮山厚労大臣(当時)と実行委員会面談・要望書。神戸市議・国会議員紹介
・2014年5月 公明党山口代表と実行委員会面談。兵庫県議の紹介
・到達点 ①署名数(全国55万筆)
76,714筆(全国2位・達成率も2位)←当初目標45000筆
②意見書採択(全国10道府県を含む121自治体)
8自治体 神戸市議会(2012年10月・政令指定都市1番目)
兵庫県議会(2013年6月・県段階1番目)
篠山市議会(2013年10月)
姫路市議会・西宮市議会・芦屋市議会・三田市議会(2013年12月)
豊岡市議会(2014年6月)
③超党派の地元国会議員さんへの訴え→議員連盟にご参加。
→防止法成立へ重要かつ決定的な役割を果たしてくださった。
(全国過労死防止基本法制定をめざす議員連盟130人)
・兵庫実行委員会は多くのご支援をいただき、全国の牽引車としての役割を果たしたと自負している。
その特徴は、→①超党派の市会・県会・国会議員のご支援
②幅広い傘下の労組の署名活動ご協力
③弁護士・遺族・他団体の活動
④神戸新聞始め各新聞社・関西テレビ・サンテレビ・NHK等の報道ご協力
5.国会議員要請活動・2013年10月 『議員を動かすのは遺族』→「寺西垣」東京へ常駐の取り組み。東京の応援。
議員連盟入会のお願い→入ってくださるまで何度でも通うこと。
議員数から中枢以上の議員への申し入れへ。弁護士と遺族セットで。
地方(地元)との連携。報道記者との連携。
議員連盟世話人代表(自民党)馳浩議員へぶらさがり。
・2013年11月 自民党雇用問題調査会、過労死防止に関するW・T 第1回会議開催。
ヒアリング→経団連・厚労省・過労死家族の会(実行委員会)
・2013年12月 「過労死防止等基本法」野党6党共同提出→継続審議
・2013年12月 自民党W・T第2回会議開催。ヒアリング→中小企業連合会など。
・2014年2/4 自民党W・T第3回会議開催。ヒアリング→連合、全国知事会など。
・2014年2/20 自民党W・T第4回会議開催→第1次W・T案
「過労死等の防止のための調査研究の推進等に関する法律」原案出される。
議員連盟世話人代表(自民党)馳浩議員へぶらさがり。
第1次素案は大きく後退したもの→実行員会要望案提出→最終案は実行委員会の要望案が相当程度盛り込まれた。(3/19)
・2014年3/4 自民党W・T 第5回会議開催→実行委員会要望書・補足説明を提出。
家族の会・プレゼン(寺西垣のり子)。
・2014年3/19 自民党W・T 第6回会議開催→第2次W・T案→要望訴え。
「過労死等防止対策推進法」→過労死の定義について異論がでた。
・2014年4/1 自民党W・T第7回会議開催。「過労死等防止対策推進法」最終素案。
・2014年4/16 自民党W・T第8回会議開催→条文化作成→最終確認へ。
(8回とも異例の陪席・発言の機会)
・2014年4/23 議員連盟各党世話人会・総会→自民W・T案を議連案への承諾・各党手続きへ
・2014年4/25 自民党政調・厚労部会通過。
・2014年5/15 公明党山口奈津男代表と面談・意見交換
・2014年5/20 自民総務会→ 与党協議→与党案へ。
・2014年5/23 (衆)厚労委員会委員長提案へ←与野党・国対委員長了承のもと。
(異例のできごと。家族会代表・参考人意見陳述。
→委員長提案→全会派一致→審議なし(議事録に残らない)
厚労委員以外(議員連盟)議員傍聴 参加。厚労委員の拍手。
・2014年5/27 (衆)本会議通過。
・2014年6/19 (参)厚労委員会・衆厚労委員長提案→家族会・参考人意見陳述→各党質疑(衆・各党世話人=厚労委員長代理・厚労大臣が答弁)
・2014年6/20 (参)本会議可決・成立。(午後8時半頃)―第186国会最終日―
6.到達点と課題・100万人署名→550,137筆、地方自治体意見書採択→121ヶ所
・「ストップ!過労死」院内集会10回開催。
・超党派議員連盟130人入会。(与党議員73名)
・異例の出来事→①国連勧告 ②自民党内会議に毎回出席③(衆参)厚労委員会で意見陳述。
・(衆)厚労委員会委員長提案で全会一致、可決→(衆)本会議通過。
・(参)厚労委員会全会一致、可決→(参)本会議成立。
・重要法案が立て込んでいて「政局の一歩先は闇」→ぎりぎりセーフ、最終法案。
7.成立後の課題・法案成立後→協議会への参加準備。
・成立後(公布6/27)から6ヵ月で施行、11月「過労死防止月間」実行へ補正予算の獲得。
11月1日施行見込み→今年の11月「過労死防止啓発月間」実施へ。
・大綱作成へ積極的関与・各自治体での取り組みの促進と関与→実効性ある法案へ
8.高まる期待・「過労死」の文言が盛り込まれた初の法律→歴史的で画期的なできごと。
・国の責務で過労死防止対策に取り組む→事業主、国民の意識が変わる。
・開かずの扉といわれた厚生労働省が、過労死防止対策に動き出す。
・協議会メンバーに、遺族・当事者・有識者を入れることに期待。
・年次報告(白書)を行なわれ、3年後に見直される。
・私たちの悲願「過労死のない社会」に向けて「過労死防止法」は必ず歯止めになる。
☆みんなで力を合わせ成立させた「過労死防止法」を、実効性のある法律にし、過労死のない社会を実現するために、兵庫モデルを全国へ発信しましょう!
☆全国の動きを受けて、防止法の実効的実施を推進する兵庫の新しい組織体制を確立し、自治体の活動を支えましょう!
このページのトップへ○平成25年12月4日
「過労死等防止対策基本法」が第185回臨時国会に提出
(野党6会派による共同提案。同国会閉会に伴い継続審議)
○平成25年11月29日~平成26年4月16日
自民党 雇用問題調査会「過労死等防止に関するワーキング・チーム」
関係団体等からのヒアリング・検討
「過労死等防止対策推進法案」取りまとめ
○平成26年4月・5月
超党派議員連盟での調整・各党における党内手続
○平成26年5月23日
衆議院厚生労働委員会において提案の上審議され、採決(可決)
(「過労死等防止基本法」は同日撤回)
○平成26年5月27日
衆議院本会議 採決(可決)
○平成26年6月19日
参議院厚生労働委員会において提案の上審議され、採決(可決)
○平成26年6月20日
参議院本会議 採決(可決)
○平成26年6月27日
公布(平成26年法律第100号)
過労死等防止対策推進法について | |
総 則 | |
目 的 | 近年、我が国において過労死等が多発し大きな社会問題となっていること及び過労死等が、本人はもとより、その遺族又は家族のみならず社会にとっても大きな損失であることに鑑み、過労死等に関する調査研究等について定めることにより、過労死等の防止のための対策を推進し、もって過労死等がなく、仕事と生活を調和させ、健康で充実して働き続けることのできる社会の実現に寄与することを目的とすること。 |
定 義 | 過労死等: 業務における過重な負荷による脳血管疾患若しくは心臓疾患を原因とする死亡若しくは業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡又はこれらの脳血管疾患若しくは心臓疾患若しくは精神障害 |
基本理念 | 過労死等の防止のための対策は、 1. 過労死等に関する実態が必ずしも十分に把握されていない現状を踏まえ、過労死等に関する調査研究を行うことにより過労死等に関する実態を明らかにし、その成果を過労死等の効果的な防止のための取組に生かすことができるようにするとともに、過労死等を防止することの重要性について国民の自覚を促し、これに対する国民の関心と理解を深めること等により、行われなければならないこと。 2. 国、地方公共団体、事業主その他の関係する者の相互の密接な連携の下に行われなければならないこと。 |
国の責務等 | 国、地方公共団体、事業主及び国民の責務を規定 |
過労死等防止啓発月間 | 国民の間に広く過労死等を防止することの重要性について自覚を促し、これに対する関心と理解を深めるため、過労死等防止啓発月間(11 月)を規定 |
年次報告 | 政府は、毎年、国会に、我が国における過労死等の概要及び政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況に関する報告書を提出しなければならないことを規定 |
過労死等の防止のための対策に関する大綱 | 政府は、過労死等の防止のための対策に関する大綱を定めなければならないことを規定 |
過労死等の防止のための対策 | ①調査研究等(※)、②啓発、③相談体制の整備等、④民間団体の活動に対する支援を規定 ※ 国は、過労死等に関する調査研究等を行うに当たっては、過労死等が生ずる背景等を総合的に把握する観点から、業務において過重な負荷又は強い心理的負荷を受けたことに関連する死亡又は傷病について、事業を営む個人や法人の役員等に係るものを含め、広く当該過労死等に関する調査研究等の対象とするものとすることを規定 |
過労死等防止対策推進協議会 | 厚生労働省に、過労死等の防止のための対策に関する大綱を定めるに際して意見を聴く、当事者等、労働者代表者、使用者代表者及び専門的知識を有する者をもって構成される過労死等防止対策推進協議会を設置 |
過労死等に関する調査研究等を踏まえた法制上の措置等 | 政府は、過労死等に関する調査研究等の結果を踏まえ、必要があると認めるときは、過労死等の防止のために必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講ずるものとすることを規定 |
(公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行) |
過労死等防止対策推進法 |
第一章 総則(第一条―第六条)
第二章 過労死等の防止のための対策に関する大綱(第七条)
第三章 過労死等の防止のための対策(第八条―第十一条)
第四章 過労死等防止対策推進協議会(第十二条・第十三条)
第五章 過労死等に関する調査研究等を踏まえた法制上の措置等(第十四条)
附則
(目的)
第一条 この法律は、近年、我が国において過労死等が多発し大きな社会問題となっていること及び過労死等が、本人はもとより、その遺族又は家族のみならず社会にとっても大きな損失であることに鑑み、過労等に関する調査研究等について定めることにより、過労死等の防止のための対策を推進し、もって過労死等がなく、仕事と生活を調和させ、健康で充実して働き続けることのできる社会の実現に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「過労死等」とは、業務における過重な負荷による脳血管疾患若しくは心臓疾患を原因とする死亡若しくは業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡又はこれらの脳血管疾患若しくは心臓疾患若しくは精神障害をいう。
(基本理念)
第三条 過労死等の防止のための対策は、過労死等に関する実態が必ずしも十分に把握されていない現状を踏まえ、過労死等に関する調査研究を行うことにより過労死等に関する実態を明らかにし、その成果を過労死等の効果的な防止のための取組に生かすことができるようにするとともに、過労死等を防止することの重要性について国民の自覚を促し、これに対する国民の関心と理解を深めること等により、行われなければならない。
2 過労死等の防止のための対策は、国、地方公共団体、事業主その他の関係する者の相互の密接な連携の下に行われなければならない。
(国の責務等)
第四条 国は、前条の基本理念にのっとり、過労死等の防止のための対策を効果的に推進する責務を有する。
2 地方公共団体は、前条の基本理念にのっとり、国と協力しつつ、過労死等の防止のための対策を効果的に推進するよう努めなければならない。
3 事業主は、国及び地方公共団体が実施する過労死等の防止のための対策に協力するよう努めるものとする。
4 国民は、過労死等を防止することの重要性を自覚し、これに対する関心と理解を深めるよう努めるものとする。
(過労死等防止啓発月間)
第五条 国民の間に広く過労死等を防止することの重要性について自覚を促し、これに対する関心と理解を深めるため、過労死等防止啓発月間を設ける。
2 過労死等防止啓発月間は、十一月とする。
3 国及び地方公共団体は、過労死等防止啓発月間の趣旨にふさわしい事業が実施されるよう努めなければならない。
(年次報告)
第六条 政府は、毎年、国会に、我が国における過労死等の概要及び政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況に関する報告書を提出しなければならない。
第七条 政府は、過労死等の防止のための対策を効果的に推進するため、過労死等の防止のための対策に関する大綱(以下この条において単に「大綱」という。)を定めなければならない。
2 厚生労働大臣は、大綱の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
3 厚生労働大臣は、大綱の案を作成しようとするときは、関係行政機関の長と協議するとともに、過労死等防止対策推進協議会の意見を聴くものとする。
4 政府は、大綱を定めたときは、遅滞なく、これを国会に報告するとともに、インターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならない。
5 前三項の規定は、大綱の変更について準用する。
(調査研究等)
第八条 国は、過労死等に関する実態の調査、過労死等の効果的な防止に関する研究その他の過労死等に関する調査研究並びに過労死等に関する情報の収集、整理、分析及び提供(以下「過労死等に関する調査 研究等」という。)を行うものとする。
2 国は、過労死等に関する調査研究等を行うに当たっては、過労死等が生ずる背景等を総合的に把握する観点から、業務において過重な負荷又は強い心理的負荷を受けたことに関連する死亡又は傷病について、事業を営む個人や法人の役員等に係るものを含め、広く当該過労死等に関する調査研究等の対象とするものとする。
(啓発)
第九条 国及び地方公共団体は、教育活動、広報活動等を通じて、過労死等を防止することの重要性について国民の自覚を促し、これに対する国民の関心と理解を深めるよう必要な施策を講ずるものとする。
(相談体制の整備等)
第十条 国及び地方公共団体は、過労死等のおそれがある者及びその親族等が過労死等に関し相談することができる機会の確保、産業医その他の過労死等に関する相談に応じる者に対する研修の機会の確保等、過労死等のおそれがある者に早期に対応し、過労死等を防止するための適切な対処を行う体制の整備及び充実に必要な施策を講ずるものとする。
(民間団体の活動に対する支援)
第十一条 国及び地方公共団体は、民間の団体が行う過労死等の防止に関する活動を支援するために必要な施策を講ずるものとする。
第十二条 厚生労働省に、第七条第三項(同条第五項において準用する場合を含む。)に規定する事項を処理するため、過労死等防止対策推進協議会(次条において「協議会」という。)を置く。
第十三条 協議会は、委員二十人以内で組織する。
2 協議会の委員は、業務における過重な負荷により脳血管疾患若しくは心臓疾患にかかった者又は業務における強い心理的負荷による精神障害を有するに至った者及びこれらの者の家族又はこれらの脳血管疾患若しくは心臓疾患を原因として死亡した者若しくは当該精神障害を原因とする自殺により死亡した者の遺族を代表する者、労働者を代表する者、使用者を代表する者並びに過労死等に関する専門的知識を有する者のうちから、厚生労働大臣が任命する。
3 協議会の委員は、非常勤とする。
4 前三項に定めるもののほか、協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。
第十四条 政府は、過労死等に関する調査研究等の結果を踏まえ、必要があると認めるときは、過労死等の防止のために必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講ずるものとする。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(検討)
2 この法律の規定については、この法律の施行後三年を目途として、この法律の施行状況等を勘案し、検討が加えられ、必要があると認められるときは、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする。
(厚生労働省設置法の一部改正)
3 厚生労働省設置法(平成十一年法律第九十七号)の一部を次のように改正する。
第四条第一項第四十七号の次に次の一号を加える。
四十七の二 過労死等防止対策推進法(平成二十六年 法律第号)第七条第一項に規定する大綱の作成及び推進に関すること。
第六条第二項中「労働保険審査会」を「労働保険審査会過労死等防止対策推進協議会」に改める。
第十三条の次に次の一条を加える。
(過労死等防止対策推進協議会)
第十三条の二 過労死等防止対策推進協議会については、過労死等防止対策推進法(これに基づく命令を含む。)の定めるところによる。
(アルコール健康障害対策基本法の一部改正)
4 アルコール健康障害対策基本法(平成二十五年法 律第百九号)の一部を次のように改正する。
附則第七条のうち厚生労働省設置法第六条第二項の改正規定中「労働保険審査会」を「過労死等防止対策推進協議会」に改める。
附則第七条のうち厚生労働省設置法第十三条の次に一条を加える改正規定中「第十三条の次」を「第十三条の二の次」に改め、第十三条の二を第十三条の三とする。
近年、我が国において過労死等が多発し大きな社会問題となっていること及び過労死等が、本人はもとより、その遺族又は家族のみならず社会にとっても大きな損失であることに鑑み、過労死等に関する調査研究等について定めることにより、過労死等の防止のための対策を推進する必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。
過労死等防止対策推進法案に対する附帯決議
平成二十六年六月十九日
参議院厚生労働委員会
政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。
一、過労死等の防止に当たっては、その対策が国の責務であることを踏まえ、地方公共団体、事業主その他の関係者の協力、連携の下にその推進を着実に図ること。
二、過労死等の防止のための対策に関する大綱の策定に当たっては、過労死等防止対策推進協議会の意見を尊重し、当事者等の意見を十分反映したものとなるよう努めること。
三、過労死等に関する調査研究等に当たっては、国民に対する啓発と正しい理解の普及を促すため、調査研究結果等について積極的な公表に努めること。
右決議する。
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