《第567号あらまし》
 姫路市が駅前広場での「政権批判」行事に中止命令
     もはや謝罪ではすまないと国賠訴訟を提起
 転載:民主法律時報(2015年7・8月合併号) 大阪市労組・組合事務所事件
     大阪高裁で事務所明渡しを命ずる許しがたい不当判決
 「8・29 安保関連法案・特定秘密保護法反対 県内4か所同時一斉兵庫パレード」へのご協力ありがとうございました


姫路市が駅前広場での「政権批判」行事に中止命令
もはや謝罪ではすまないと国賠訴訟を提起

弁護士 吉田 竜一


1 兵庫労連傘下の西播労連は、JR姫路駅前 にある姫路市が管理する姫路駅北にぎわい交流広場で姫路駅前文化祭と銘打った西播地域の文化団体の活動発表会を行うことについての使用許可を得て、7月24日、予定通りに駅前文化祭が開始された。

当日のプログラムは午後5時から午後8時までの3時間にわたって11の団体、個人が演奏、合唱、絵本の朗読、踊り等を披露するというもので、途中、姫路市から広場の管理を委託された三セクの職員が、「アベ政治を許さない」のポスターを出演者が掲げようとするのを止めさせたりしながらも、予定された演目はプログラムどおりに進められていったのであるが、民族歌舞団「花こま」が演じた「面踊り/『沖縄』 辺野古の新基地反対! 戦争法案絶対反対!の巻」を見た三セクの職員は、「これは認められない。やめてくれ」と西播労連の責任者に迫り、責任者が、「演ずる内容に介入することは表現の自由にかかわるものでできない」と答えると、姫路市の担当者と連絡を取った末、広場の使用規約が申請の不許可事由として定めている「公序良俗に反すると認められる場合」に抵触することを理由に「使用許可が取り消された」旨を通告してきた。

そのため、西播労連は、午後7時頃、まだ約1時間のプログラムが残っている段階で、やむなく文化祭を打ち切った。

2 中止命令に対しては、西播労連が、「混乱を避けるため打ち切るが、表現の自由を侵すもので断固抗議する」と告げるとともに、文化祭を見ていた少なからぬ市民からも、「こんなやり方は戦争中と同じではないか」との抗議の声が上がり、周囲は騒然となる中、姫路市の参事らがにぎわい広場にやってきたが、参事らは抗議の声に対し「条例、規則に基づく判断。理由は面踊り。安倍批判があったこと。個人を批判している」として中止命令を容認する発言に終始するだけであった。

3 この事件は、朝日新聞、毎日新聞、産経新聞だけでなく、共同通信の配信を通じて南は九州、沖縄から北は北海道まで多数の全国の地方紙にも報じられ、地域版ではあるがNHKや朝日放送のニュースでも報じられるところとなったが、朝日放送のニュースでは、姫路市の参事が、「批判的なことは全てだめ?」とのインタービューに、「そうです。好ましくないと判断します」と堂々と答える姿が映し出された。

4 広場等のパブリック・フォーラムにおける集会の自由を制約する基準については、既に泉佐野市民会館事件・最高裁判決で詳細な基準が示されているところ、条例、規則がこの最高裁判決の判示に照らして解釈されなければならないことはいうまでもないが、この判決を引用するまでもなく、本件中止命令が正当な理由もなく集会の自由を不当に侵害するものであることは明々白々である。

付言すれば、「花こま」の演じた面踊りの最後は、安倍首相の面をつけた主演者が辺野古基地新設と戦争法案の法制化を進めるために国民の声を封殺しようと、「え~い! だまれ、だまれ!」と叫ぶのに対し、青年の面をつけなおした主演者が、「だまるもんか! 僕たちは戦争を絶対許さない! 戦争法案を廃案にするまで絶対あきらめない! 沖縄と一緒にオール日本の闘いをしよう! 辺野古の新基地建設、絶対反対! 戦争法案、絶対反対、安倍政権はNOだ!」と訴える、まさに権力を風刺する踊り、文化であり、また、金子兜太さんの書いたポスター「アベ政治を許さない」も戦争法案反対を訴えるスローガンである。安倍首相個人を非難するものでないことはいうまでもなく、これを「好ましくない」などといって集会途中でやめさせる姫路市の行為は、まさに戦前の治安維持法下の「弁士中止」のやり方と異なるところがない。

5 西播労連は、直ちに国家賠償訴訟を提起する準備に取りかかったが、市民からの抗議の声が姫路市に殺到したからであろう。中止命令直後、市の担当者はマスコミに対し「安倍政権はノーだとの発言が認められたから中止させた」旨を述べていたのに、8月4日、突然、市長は定例会見で「中止になったことは申し訳なかった」として、西播労連に経緯を説明し、謝罪する方針を明らかにした。

しかし、新聞記事を読む限り、そこでは原因究明も不十分で、姫路市が憲法の保障する集会の自由、表現の自由を侵害するという違憲の行為を行ったという認識はまったく示されていない。市長は「申請目的にない行為だったが、きつい言葉遣いで注意したことや説明が不十分だったことを陳謝する」と述べているようであるが、許可申請書には「集会で『アベ政治を許さない』とのポスターを掲げる」ことまで記載させなければ許可不許可の判断はできない、だから記載させてもよいと思っているのであろうか。また、優しい言葉で十分説明していれば本件の集会は中止させてよかったのだと思っているのであろうか。

6 西播労連は、本件中止命令が違憲・違法の中止命令であったことを棚上げした形だけの謝罪はいらない、戦争法案が国民の世論によって廃案にできるか否か極めて緊迫した情勢の中で、責任の所在をおざなりにした解決をすることで、戦争法案反対の世論に萎縮効果を残したままにしておくことは、全国各地で戦争法案反対の声を上げている人たちに申し開きができないとの思いから、8月11日、予定通りに姫路市に慰謝料等、総額220万4000円の賠償を求める訴訟を神戸地裁姫路支部に提起した(4000円は姫路市に納めて無駄になった広場の使用料である)。

そして、提訴と合わせて、姫路市に対し、①本件中止命令が憲法違反であることを認めた上での謝罪、②姫路市及び三セクの職員らに対して憲法教育の実施等の再発防止策を講じること、③姫路駅前文化祭をやり直す機会を与えること等を骨子とした申入れを行い、こうした要求に真摯に応えてもらえるのであれば、訴訟を取り下げ、金銭請求も放棄する旨の申入書を送付した。

姫路市からの回答があれば、追ってご報告したい。

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転載:民主法律時報(2015年7・8月合併号)
大阪市労組・組合事務所事件

大阪高裁で事務所明渡しを命ずる許しがたい不当判決

北大阪総合法律事務所 弁護士 谷  真介


1 はじめに

大阪市役所労働組合(市労組)・大阪市労働組合総連合(市労組連)が平成18年以来使用を継続してきた大阪市役所本庁舎地下1階の組合事務所について、平成24年度以降も引き続き使用許可申請をしたことに対し、大阪市がこれを不許可としたことは違法とし、不許可処分の取消し・使用許可の義務付け及び損害賠償を求めていた訴訟(なお大阪市側も明け渡し訴訟を提起。市労組は権利の濫用としてこれを争っていた)で、平成27年6月26日、大阪高裁(第1民事部・志田博文裁判長)は、組合側全面勝訴であった大阪地裁判決を変更し、大阪市の不許可処分について平成24年度のみの違法に留め、平成25年度・平成26年度について適法とし、市労組らに組合事務所の明け渡しを命ずる不当判決を言い渡した。


2 大阪地裁判決と高裁の審理

昨年9月10日の大阪地裁判決では、自治体労働組合が組合活動の拠点として組合事務所を庁舎内に設置する必要性があることを出発点とした判断枠組みを採用した上で、本件組合事務所の明け渡しにおける橋下市長の団結権侵害の意図の存在及びこれがその後も一貫して継続していたことを認定し、一連の使用不許可処分を全て違法と判断した。そして、明け渡し通告の後に市議会で成立した労使関係条例12条(労働組合に対する便宜供与の全面禁止)については、同条例が適用されなければ違法とされる大阪市の行為を適法化するために適用される限りにおいて、憲法28条又は労組法7条に違反して無効であるとして適用違憲の判断をし、組合を勝訴させた。

この地裁判決に対し、「地裁ごときの判断で市長の判断が覆されるべきではない」として、橋下市長は控訴。高裁で、大阪市側は、橋下市長は「健全かつ適正な労使関係」を志向しただけで団結権侵害意図はないという独自の主張に終始し、労使関係条例の違憲・違法性については、主張らしい主張はしなかった。目的外使用許可の違法性の判断枠組みの一般論に関して大阪大学の小嶌典明教授の意見書が提出されたが、組合側はがっぷり四つで論争を行い、3回の弁論で平成27年3月に高裁での審理が終結した。

判決直前の6月2日、同じく橋下市長から組合事務所の退去を求められ、退去しながら争っていた自治労・大阪市労連の事件で、大阪高裁14部(森義之裁判長)が地裁判決を変更し、平成24年度の違法に留める逆転判決を言い渡し、市労連・大阪市ともに上告せず確定していた。なりふり構わない大阪市は、同判決とその確定証明書を結審している市労組の事件に「上申書」に添付して提出するという暴挙に出た。組合側は、かかる大阪市の行為は裁判官の独立を侵害し、また民訴法上も違法である旨の意見書を提出し裁判官に面談を迫ったが、裁判官は判決言い渡しまでこれを無視するという、不穏な空気の下で高裁判決の日を迎えた。


3 大阪高裁判決

大阪高裁判決は、自治労・市労連の高裁判決と全く同じ結論(平成24年度のみ違法、25年度・26年度は適法)であり、言い渡し後の法廷には「不当判決!」の声が上がった。というのも、市労連と異なり、市労組らは組合事務所を明け渡さずに闘っていたのであるが、その組合事務所の明け渡しを命じるという、許し難い判決であったからである。またその判決理由も、大阪市の主張を丸呑みする(あるいはそれ以上の)酷い内容であった。

高裁判決は、①行政財産の目的外使用許可の裁量権行使の判断枠組みについて、市長に極めて広範な裁量権を認め、(違法行為であるはずの)不当労働行為が認められたとしても、それだけでは不許可の違法性は認められないとまで言い切った。また、②橋下市長の団結権侵害(支配介入)について、橋下市長は労働組合の活動を市民感覚に合うように是正改善していく方針であったことから、組合に対する支配介入の意思を有しているとまでは認められないとした。そして、③労使関係条例12条(便宜供与の一律全面禁止)の違憲・違法性について、憲法28条や労組法7条には違反せず適法であるとし、一方で同条例を前提にしても市長が議会から責任追及されることを覚悟で使用許可することも理論上は可能であるとしつつ、本件では市庁舎に行政スペースが不足していたという誤った事実認定を下に、平成25年度・26年度の各使用不許可処分を適法とした。なお、条例施行前の平成24年度の使用不許可処分に関しては、明け渡し通告が性急すぎたことのみを理由に違法とし、市労組らへ各11万円の損害賠償を命じている。

しかし上記判断のうち、①は、憲法28条の労働組合の団結権保障に基づいて庁舎内に継続的に組合事務所を使用してきたことの実態を全くみず、その重要性を市長の裁量権行使の考慮要素として著しく軽視するものである。また②は、団結権侵害(支配加入)は、使用者の行為が労働組合の活動に与える影響やその影響についての使用者の認識・意図、使用者の行為の必要性・相当性、労使関係の経緯などの事情から客観的に判断されるべきものであるにもかかわらず、橋下市長の言説の一言隻句をとらえて不当労働行為性を否定するという極めて非常識な判断である。また、仮に橋下市長の言説を前提にしたとしても、一方当事者である使用者が他方当事者を不適正と一方的に判断してその組織・活動に影響力を行使する行為は、自主性・独立性を奪う支配介入行為そのものであることを看過している。さらに、③は、労働組合の団結権保障に基づく組合事務所の使用を軽視するものであり、少なくとも継続的に供与をしてきた組合事務所を廃止する際に、便宜供与を一律全面禁止をしている同条例を理由に不許可処分を下すことは、団結権を保障した憲法28条や労組法7条3号に違反する結果となるはずである。

結局のところ、高裁判決には、「行政は悪をなさない」という強固な意思が貫徹されており、平成24年当初の橋下市長就任下での大阪市役所の異常な労働組合攻撃の実態を無視した、全く世間離れした判断といわざるをえない。

なお、この判決を言い渡した志田裁判長(修習34期)は、前週にも公務災害の遺族年金に関する男女格差の違憲性を問う裁判で、逆転合憲判決を言い渡していた。2週連続、大阪地裁第5民事部の違憲判決を覆して行政側を勝たせたわけであるが、何と本判決の5日後、定年まで数年を残したまま、突然依願退官している。


4 最高裁での逆転勝利に向けて

7月2日、市労組らは最高裁闘争でこの不当判決を絶対に覆す決意のもとで最高裁に上告した。すでに平成27年度の使用不許可処分を受けている苦しい状況下であるが、この点に関してももう一度何としても地裁でも勝利し、最高裁で上告を受理させるために弾みをつけなければならない。大阪市庁舎の組合事務所を守り抜く決意である。是非とも、皆様の知恵とお力をお貸しいただきたい。

この橋下維新による議会とも一体となった組合事務所攻撃は、すべての労働組合に向けられた攻撃である。市労組と大阪自治労連、弁護団は、さらに団結を強固にし、全国の労働者・労働組合と連帯を深め、この不当判決に屈さず、

(常任弁護団は、豊川義明、大江洋一、城塚健之、河村学、増田尚、中西基、谷真介、喜田崇之、宮本亜紀)


上告審代理人就任のお願い

本年7月2日、市労組らは最高裁闘争でこの不当判決を絶対に覆す強い決意のもと、最高裁に上告しました。すでに平成27年度の使用不許可処分を受けている苦しい状況下ですが、何としても、最高裁で勝訴し、橋下市長の不当労働行為から組合事務所を守らなければなりません。そのためにも、全国の労働弁護士の皆様には、ぜひとも本事件の代理人に就任していただきたく、本投稿にて広くお願いをさせていただきます。

代理人の就任にご了解いただける方は、当該弁護団事務局の谷真介(北大阪総合法律事務所)まで、FAX(06-6365-1256)かメール(tani@kitaosaka-law.gr.jp)で、「大阪市労組組合事務所裁判・上告審代理人就任」等記載の上、お名前と事務所名、修習期とメールアドレスをご連絡くださいますと幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

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「8・29 安保関連法案・特定秘密保護法反対 県内4か所同時一斉兵庫パレード」へのご協力ありがとうございました

弁護士 吉田 維一


6月21日(日)に三宮・東遊園地に約9000名を集め、全国の弁護士会などから驚きの声が上がった「6・21 兵庫大集会・パレード」の興奮も冷めやらぬ間に、8月29日(土)に神戸だけではなく、尼崎、姫路、豊岡の兵庫県内4か所で、同時にパレードを行うこととなりました。「6・21パレード」と異なり、準備の分担が減少するのかと思いきや、実際には、他の会場と連携をしながら進めていくために、前回よりも準備する側にとっては多くの方々の協力を必要とするハードルの上がった取組でした。

しかし、そのピンチを救ってくれたのは、「6・21パレード」でスタッフとして支えてくれた若手弁護士たちでした。前回は、会員への電話かけや当日のスタッフとして支えてくれていた人たちが、今度は、自分たちがそれぞれの会場での中心的なスタッフとして、まさに「主役」として大活躍してくれたのです(神戸会場では、若手弁護士が司会を行い、若手弁護士を中心にリレートークが行われ、若手弁護士がコールを考えてくれました)。そのおかげで、「8・29 県内4カ所同時一斉兵庫パレード」は、「6・21パレード」とは異なって、県内各地で、それぞれの地域に合わせた準備を進め、前回以上の盛り上がりを見せました。

当日は、神戸会場で約4000名、尼崎会場で約1000名、姫路会場で約800名、豊岡会場で約250名、また、同様の取り組みを行っていた西宮、淡路においてもそれぞれ100名以上と、それぞれの会場では、いずれもこれまでの同様の集会などに比べ2~3倍近くの参加者が集まったのでした(まさに、兵庫県中で同時に、安保関連法案への反対の声が上がった瞬間でした。翌日に、東京で大規模な集会が予定されていて、交通事情などから前日から上京されていた方もおられたことを考えれば、大変な人数が集まったのだと思います。)。

尼崎会場では、国道2号線の車道や三和本通商店街・中央商店街を1時間以上歩くという大変熱心なものでした。また、弁護士会阪神支部では、独自にのぼりを10作成し、4割以上の会員が参加し、当日のスタッフも担当されるなどこれまでにない大変な盛り上がりでした。

姫路会場では、大手前公園から3つに分かれてパレードを展開するなど、姫路市街へアピールすることに成功しました。

豊岡会場では駅前広場から商店が立ち並ぶ中心街の通りを50分も歩き、たくさんの商店主が珍しそうにお店から出てきて手を振ってくれ、飛び入り参加もあったそうで、こちらも豊岡市街へアピールに成功しました。

神戸会場では、用意したプラカードが早々に「売り切れ」となり、東遊園地噴水広場からフラワーロードを三ノ宮駅に向かうコースと大丸神戸店に向かうコースに分かれ、神戸会場独自のテンポに乗って前回以上に三宮・元町に参加者の声が響き渡りました。弁護士会会長が「ものすごく目立っていた」と報告をされるほど、抜群の注目度でアピールに成功しました。

「これまでの枠を超えてとにかく神戸会場に集まろう!」という「6・21パレード」から、みんなの気持ちが進化し「それぞれの地域でもこれまでの常識を覆すほど成功できた!」という「8・29パレード」につながったのだと思っています。 ご協力ありがとうございました。

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