《第599号あらまし》
 「働き方改革」学習会報告
     「働き方改革関連法案の問題点と真に求められる労働法制」
 4月から本格化する「無期転換申込み制度」の概要と活用方法(その2)
 (転載)堺市における派遣先労組の取り組み

「働き方改革」学習会報告
「働き方改革関連法案の問題点と真に求められる労働法制」

弁護士 増田 正幸


第1 はじめに

本年4月6日に政府は「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案」が,提出しました。

民法協ではこれまでも「働き方改革」については学習会を重ねてきましたが,法案が提出され国会審議が始まった局面で,改めて法案の問題点についての認識を深め,反対の声を上げるために,日弁連でもこの問題の担当し海外の事情などにも精通しておられる中村和雄弁護士を講師にお招きして学習会を開催しました。以下に,その内容を報告します。

6月の国会会期末まであまり時間がない中で,安倍首相は強行採決も辞さない構えです。


第2 「働かせ改革」の問題点

安倍首相は,「労働時間の上限規制」「同一労働同一賃金」等,いかにも労働者には耳障りのよい言葉を並べて,労働者のための「改革」であるかのように喧伝していますが,その実体は生産性向上という財界の要求を実現するための「働かせ改革」にほかなりません。

働き方改革一括法案は,以下の8本の法律の「改正」案を一括した法案です。

① 労働基準法の一部改正

② じん肺法の一部改正

③ 雇用対策法の一部改正

④ 労働安全衛生法の一部改正

⑤ 労働者派遣法の一部改正

⑥ 労働時間等の設定の改善等に関する一部改正

⑦ 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部改正

⑧ 労働契約法の一部改正

しかし,性格の異なるこれらの法律の改正を一緒にまとめて審理することによって,個別の法律改正の問題点の追求を避けようとしていること自体が大問題です。


第3 個別の法案の問題点

1 雇用対策法の改正

「雇用対策法」という名称を「労働政策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実などに関する法律」へ変更します。また,同法1条1項は,法律の目的を定めていますが,その法文から「労働力の需給の均衡」という文言を削除し,「労働生産性の向上等を促進して」という文言を追加します。そして,国の施策として「多様な就業形態の普及」を追加して掲げています。すなわち,生産性向上や多様な働き方が労働政策の目的として強調されることになります。

2 労働時間の規制緩和

(1)裁量労働制の拡大(撤回)

裁量労働制の拡大については,国会審議の中で,裁量労働の方が実労働時間が短いという改正案の根拠としてきたデータが全く根拠のないものであることが判明し,裁量労働制の拡大は一括法案から削除されることになりました。

雇用政策に必要な調査研究を行ってきた厚労省所管の独立行政法人労働政策研修・機構のデータでは裁量労働制の方が実労働時間が長いという調査結果が出たため,これが使えないとわかり,急遽,各種調査をつぎはぎして裁量労働制の方が労働時間が短いというデータを作って提出したところ,それがデタラメであることがばれたという全くお粗末な話ですが,国民を欺瞞してまで財界の要求に応えようとする姿勢は異常です。

ただし,政府はあらためてデータを整理して法案を提出することを検討するとのことなので油断は禁物です。

(2)高度プロフェッショナル制度

財界は,生産性を上げるためには,働いた時間ではなく,仕事の成果に応じて賃金を決定すべきであるとして,「特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)」を創設しようとしています。この制度が適用されると労働基準法が定める労働時間規制の適用がなくなります。

高度の専門性と年収が一定額以上(平均給与額の3倍を相当程度上回るもの)(1075万円)であることの2つの要件が設定されていますが,「高度の専門性」の認定を客観化するのは大変難しく,どのような基準を設定するかが大きな問題です。また,一度導入を許してしまえば,年収要件などは財界の要求によってどんどん緩和されていくことは明白です。財界がこの制度を提案した当初は年収400万円以上を対象としていました。また,アメリカでは一時300万円以下まで下げられました。しかも非常に重要なことは,1075万円という数字は残業代を含む金額なので,基本給が低くても残業をさせることによって高プロ制度対象にすることができるのです。

高度プロフェッショナル制度が適用されると,労働時間が果てしなく延長され,それが労働者の自己責任に帰せられることになります。

(3)労働時間の上限規制

あいつぐ過労死事件により,長時間労働は喫緊の課題となっています。わが国の労働時間は1日8時間週40時間が限度とされているのですが,36協定で特別条項を定めれば,青天井に残業させることが認められています。

東証一部上場企業(255社)の内,特別条項で月80時間以上の残業を可能にしているのは実に157社,100時間以上できると規定している企業は68社もあり,88%の企業が月80時間以上の残業を容認しています。中にはJT165時間,関西電力200時間といった常軌を逸した協定もあります。

今回の法案は,労使協定による時間外労働の上限時間を単月で100時間,2~6月平均で月80時間までは許容しているので,休日労働も含めると年間960時間まで残業をさせることが可能となります。しかし,これはまさに過労死認定基準のラインまで働かせることを容認するという上限規制でしかありません。しかも,このような不十分な規制でさえ,新たな技術,商品又は役務の研究開発業務は適用対象外とされ,自動車運転業務・建設業務・医師については5年間猶予とされています。

さらに,月60時間を超える割増賃金率5割の中小企業への適用猶予を2022年まで延期することも規定されています。これでは,長時間労働の是正には何の役にも立ちません。

忘れてならないことは,労使協定がないと残業はさせられないことと労使協定は過半数代表者が締結することである。かりに法案が通っても,過半数代表になれば36協定の内容について自分の意見を反映させることができるし,過半数代表者は選挙など民主的手続を経て選任されることを要するので,過半数代表をとることが重要であるし,かりに過半数代表の選出手続に問題があれば36協定の効力について争う余地があるので,36協定の締結手続についても軽視してはいけません。

(4)インターバル規制

労働者が健康を確保するためには業務による疲労を蓄積させないことが重要です。そのためには長時間労働を規制するだけでなく,疲労回復のための時間が確保できること,すなわち,労働終了後次の労働開始までに充分な休憩時間を確保させるインターバル規制の導入が不可欠ですが,今回の法案はインターバル規制については法律で規制することなく,努力義務にとどめています。

(5)「同一労働同一賃金」のごまかし

安倍首相は「非正規という言葉をなくす」とか「同一労働同一賃金の実現」など若い労働者の期待を煽っていますが,安倍首相は,財界の意向を受けて,現状の固定にとどめることにしている。法案としては,労働契約法から20条を削除し,パート労働法を改正して有期契約労働者も対象とすることにし,賃金については「職務の内容,職務の成果,意欲,能力,経験など」を考慮要素として賃金決定することを使用者の努力義務としているにすぎません。

また,派遣労働者については,①「派遣先の労働者との均等・均衡による待遇改善」を図ることだけではなく,(そうでないと派遣先が変わるごとに派遣労働者の待遇が良くなったり悪くなったりすることになってしまうので),②「労使協定による一定水準を充たす待遇決定による待遇改善」を図ることとの選択制を採用していますが,前記のとおり,それは決して同一労働同一賃金を目指すものではありません。


第4 最後に

まず,わが国では世界的に見て異常な長時間労働であるという認識の共通化が必要です。他方,残業手当がないと生活できないため残業時間の規制には消極的な労働者も少なからずいます。20歳代の独身の青年労働者が生活できる最低賃金は都会,地方を問わず1時間1500円以上です。都会では物価が高いですが,公共交通機関があるので交通費の負担は少なくて済むのに対し,地方では物価は安いものの,通勤等に車が必要で,交通費の負担が避けられません。

したがって,残業規制は,最低賃金の引き上げ,あるいは賃金が少なくとも安心して暮らせる社会保障制度の充実を図るための運動と連動しないと進展しません。また,残業をした場合に割増賃金を支払うのではなく,残業した分の労働時間を減らすという方法(ドイツでは残業した時間を金曜日の労働時間から控除する)も検討すべきです。

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4月から本格化する「無期転換申込み制度」の概要と活用方法(その2)

弁護士 萩田  満


第4 無期転換権を行使させないための企業のすさまじい脱法行為の「取り組み」

前回は、厚生労働省も無期転換を企業に働きかけていることを説明しました。

ところが、企業側は、この無期転換権の行使を嫌がり、いろいろな方法で、妨害策を講じようと脱法行為を日々考えています。それについて説明し、法律的解決を考えてみたいと思います。

(1) 無期転換権を予め放棄させる方法

企業が労働者に対して、無期転換権を放棄するように念書や放棄書などを書かせる方法です。

これを契約更新の条件にすれば、労働者は断りづらいからです。

しかし、これについては、厚生労働省も違法無効であるとしています。

厚労省通達(平成24年8月10日付け基発0810第2号「労働契約法の施行について」)によれば、「無期転換申込権が発生する有期労働契約の締結以前に、転換権の行使をしないことを契約更新の条件とするなど無期転換申込権を予め放棄させることは労契法18条の脱法で公序良俗違反なので、その放棄の意思表示部分は無効と解される。」のです。

(2) クーリング期間の設定

クーリング期間を設定して、5年間の雇用継続という要件をリセットする方法です。

クーリング期間後の再雇用が保証されている場合には、無期転換できないということだけを理由に裁判などで係争するかは判断に悩ましい。こういうときこそ、クーリング期間を撤廃するよう労働組合などが闘わなければなりません。

なお、これまでに不必要にクーリング期間が設けられていた場合は、労契法18条の脱法で公序良俗違反になる可能性があります。

その反対に、クーリング期間後の再雇用が保証されているか不安定な場合には、クーリング期間に入る前の雇止めを労契法19条に基づいて争った方がよい場合もあると思われます。

(3) 5年間が経過する前に「雇止め」

企業がとくに何も考えず、契約を更新しない方法です。

このときは、前回説明した、労働契約法19条で対抗することになります。雇用継続の合理的な期待が生じていた場合は、雇止めを正当化できる積極的な事情がない限り、雇用は更新したことになります。

(4) 労働契約書に「不更新」条項を入れたうえで「雇止め」

(3)のような雇止めでは、争われると企業が負ける可能性が高い。そこで、もう少し知恵を付け加えて、最終の雇用契約書に「不更新」条項を入れたうえで労働者の承諾・サインを求めておく企業が実は多い。

この場合は、不更新条項の有効性が問題になります。

これについては、本田技研工業事件(東京高判平成24年9月20日労経速2162-3)などの裁判例があります。

本田技研工業事件判決は、「雇用契約締結時に、労働者が次回は更新されないことを真に理解して契約を締結した場合には、雇用継続に対する合理的期待を放棄したもので、不更新条項の効力を否定すべき理由はない」等とし、原告の請求を棄却しています。また、東芝ライテック事件(横浜地判平成25年4月25日労判1075-14)判決も、「原告には更新の合理的期待は認められるが、期待の程度は高くなく、他方で被告には雇止めを正当化する客観的理由が認められるので、雇止めは有効。」としています。

他方、最近、労働条件の不利益変更に対する労働者の同意の有効性について、「労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否かという観点からも判断すべき」とした山梨県民信用組合事件・最判平成28年2月19日が出されており、この判旨からすれば、転換権発生を回避するために新たに不更新特約を加えた場合は、脱法目的であり、不更新特約部分は無効と解される余地があります。

(5) 「選別試験」を実施して合格者を無期契約に転換する方法

大学などでは、選別試験を実施して合格者のみを無期契約に転換する制度を設けるところがあります。

しかし、これは、無期転換申込権とは全く別の制度であり、合格しなくても無期転換権の申込みは可能です。

以上のように、企業は、あの手この手で、無期転換権を行使させないような手立てを取ってきます。その方法をきちんと見破った上で適切に、対処する必要があります。


第5 無期転換後の労働条件の問題

無期契約に転換できた場合の労働条件はどうなるのでしょうか。

これについては、法律は、原則として、これまでどおりの労働条件(雇用期間以外)としています。

これに関する企業の対応について、JILPTの調査では、

既存の正社員区分に転換   26.4.%

正社員以外の無期区分に転換 7.5%

労働条件は変わらず     43.3%

その他・分からない

という傾向になっています。

ところで、労働契約法20条は、有期契約であることを理由に正社員と不合理な労働条件を定めることを禁止しています。したがって、有期契約であるうちは、労働契約法20条に基づいて、待遇是正を求める法的権利があります。

しかし、労働契約法18条は、無期契約に転換した後の労働条件について、不合理な格差があることを禁じていません。この点は、極めて深刻な問題になることです。

また、企業は、正社員と有期雇用労働者との労働条件格差だけでなく、正社員の中にも労働条件格差を広げ、また有期雇用労働者のかでも労働条件格差を広げ、いわば、労働条件の個別化と労働者の分断を進めています。

無期雇用に転換されただけでは解決できない問題が、これから多発してくるはずであり、そのときの労働組合運動、労働運動の奮起が求められます。

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(転載)堺市における派遣先労組の取り組み


みなさま

堺市では、3年の事業所単位の派遣受けいれ制限がこの9月になる前に3月に1年契約を開始するからということで、2月から派遣先の労働者代表の意見聴取をするため代表選挙を実施し、代表が各職場でアンケートをとり、派遣労働者の時給やキャリアアップの実施状況、厚生施設利用の実情などを調査したうえで、意見を述べました。

乗用代替職場の派遣受け入れ継続に対してこれをやめるよう意見を上げており大事な取り組みだと思われますので、事業所単位の派遣先労組の取り組みとして参考にしていただきたく、正規労働者組合の取り組みの参考にしていただきたく添付します。

これまで公表されてこなかったのですが、今般意見書も公開されたとのことで、自由に閲覧してください。

内容面でのご意見もいただければ幸いです。

堺総合法律事務所 弁護士 村田浩治


     平成30年2月28日

堺 市 長 竹山 修身 様

堺市教育長 石井 雅彦 様

過半数労働者代表 荻野 豪

意  見  書

平成30年1月30日付け、「派遣可能期間の延長についての意見聴取に係る通知書」により求められた意見については、以下のとおりです。

 派遣可能期間の延長については異議がありません。

●派遣可能期間の延長については異議があります。

理由 別紙のとおり

(注)派遣先は、意見を聴いた過半数労働組合等が異議を述べたときは、延長しようする派遣可能期間の終了日までに、次の事項につて説明しなければなりません。

・派遣可能期間の延長の理由及び延長の期間

・異議への対応方針

また、派遣先は十分その意見を尊重するように努めなければなりません。

当該意見への対応方針等を説明するに当たっては、当該意見を勘案して労働者派遣の役務の提供の受入れについて再検討を加えること等により、過半数労働組合等の意見を十分に尊重するよう努めなければなりません。

なお、派遣先は、説明した日及び内容を書面に記載し、延長しようとする派遣可能期間の終了後3年間保存し、また事業所の労働者に周知しなければなりません。

(注)派遣可能期間を延長した場合、参考例参考例13にて延長後の抵触日を派遣元に通知する必要があります。


別紙

1.派遣可能期間の延長について異議がある業務

派遣可能期間の延長について、異議がある業務は、別表において意見を記載した業務です。「延長は認められない」については、平成30年10月1日から、是正を求めます。また、「延長後の再延長は認められない」については、平成33年9月30日までに是正するよう求めます。

2.異議を述べるにあたっての考え方

(1)労働者派遣法の成立経緯

日本では、戦前、間接労働(労働者供給事業)が横行していました。

間接労働では、雇用関係や責任の所在が曖昧となり、その結果、人材供給業者(人貸し)による中間搾取、労働者を「タコ部屋」に押し込めての強制労働が広がり、人権侵害がはびこったため、戦後に労働者供給事業は禁止されました。

労働者派遣制度は、1985年、職業安定法44条において禁止されている労働者供給事業から、派遣元事業主が労働者を雇用する形態のものを分離し、業務の専門性、雇用管理の特殊性等から常用労働者との代替のおそれが少ない業務のみを派遣対象業務とする方法により制度化されました。

この常用代替防止という考え方は、数次の改正を経て、2015年改正労働者派遣法(現行法)にも引き継がれ、事業所単位での期間制限(3年)、個人単位での期間制限(3年)が設けられています。

(2)事業所としての期間制限基準日

現行法では、この期間制限については、「施行日以後に締結される労働者派遣契約に基づき行われる労働者派遣契約について適用する。」とあり、現行法施行日以降に締結された労働者派遣契約が起算日となります。

施行後に初めて締結された労働者派遣契約は、平成27年10月1日であり、その3年後の平成30年9月30日が期間制限にかかる日となります。

堺市当局は、平成30年3月1日に、上記期間制限日を超える契約を予定していたため、平成30年2月28日までに意見聴取手続を行い、派遣労働者受入期間の延長を行う必要がありました。そのため、今般、労働者の過半数を代表する者の選出手続が行われたものです。

今回、意見書の作成にあたり、私から、労働者派遣の役務の提供を受けている部署へアンケート調査による意見集約を行いました。

このうち、堺市職員の方からは、58職場206人の方からご回答をいただきました。

また、派遣労働者の方からは、41職場104人の方からご回答をいただきました。

(3)各職場からの意見について考察

各職場からの意見で多かった回答について、いくつか考察します。

①現在、派遣労働者が担っている業務の今後の継続期間が、アンケート結果において、「3年超」「終期なし」となっていることについて

労働者派遣法の趣旨に照らすと、派遣労働者の受入は「臨時的・一時的」なものに限られ、原則3年以内とする事業所単位の期間制限が設けられています。この期間を超えるものについては、「臨時的・一時的」なものとは言えず、常用代替の懸念があるため、以下のとおり考えます。

ア 業務の見通しが「3年超」や「終期なし」となる業務については、派遣可能期間の延長後さらに延長すべきではなく、任期の定めのない常勤職員等直接雇用の職員を充てるべきであること。

イ 労働者派遣法は、派遣労働者のキャリアアップ支援として、派遣先(堺市役所)に、以下の場合には、雇入れ努力義務を課しています。

ⅰ  派遣先の組織単位ごとの同一の業務に、継続して1年以上の期間同一の有期雇用派遣労働者が従事し、

ⅱ  派遣先が、派遣受入れ期間終了後に、引き続き当該同一の業務に労働者を従事させ、労働者を雇い入れようとし、

ⅲ 派遣労働者が継続して就業することを希望し、派遣元事業主から直接雇用の依頼があった場合

このことから、派遣労働者が継続して就業することを希望し、派遣元事業主から直接雇用の依頼があった場合、堺市は、適正な手続を経たうえで、当該派遣労働者を直接雇用すべきであること。

②派遣労働者でなければならない主な理由について、アンケート結果において、「専門的業務であるため」となっていることについて

アンケート調査では、派遣労働者でなければならない主な理由について、派遣先の労働者から、「専門的業務であるため」との回答が多数みられました。アンケート調査では、「専門的業務」の概念が明確ではなかったため、このことについて考察します。

現在、派遣労働者が従事している業務の大多数は、「資格」が必要とされる業務ではありません。そのため、多くの業務については、

・当該業務に特化して行う場合には、職員が実施するよりも、一定のスキル等を有する派遣労働者で実施する方が効率的かつ効果的である、という趣旨と考えられます。

    

したがって、その「専門性」については、あくまで一定の業務について特化することによって生み出されるものであり、それ以外の業務を担っている場合、実質的に「常用代替」となってしまうため、派遣可能期間の延長後さらに延長すべきではなく、任期の定めのない常勤職員等直接雇用の職員を充てるべきであると考えます。

③ ①及び②の双方に該当するとの回答について

この場合、専門的業務を3年以内の期間制限を超えて、派遣労働者を利用するということになります。「臨時的・一時的」とされる期間制限を超えて、専門的業務を派遣労働者に担わせ続け ることは、「常用代替」であると言わざるを得ず、堺市は、派遣可能期間の延長後さらに延長す べきではなく、任期の定めのない常勤職員等直接雇用の職員を充てるべきです。 

(4)平成30年10月以降、引き続き派遣労働者として雇用される者の配属される職場について

現行法では、派遣労働者の派遣就業への望まない固定化防止の観点から、個人単位の期間制限(3年)も設けられています。この点について、現行法施行後の労働者派遣契約に基づき、起算日が定められます。年度当初の4月1日に契約している労働者派遣契約については、起算日が平成28年4月1日となります。

このことについては、以下の通り考えるべきです。

(ケース1)

現行法施行後の派遣契約締結日が平成28年4月1日である場合、同一の者が同一業務に就業できる期間は平成31年3月末となります。

この場合、これまでの所属(課など)に引き続き派遣されることはできません。

(ケース2)

「同一業務」という考え方ですが、本庁課・各区役所で職場が替わったとしても、従事する業務内容が変わらなければ、その期間は通算されます。そのため、1年目はA区、2・3年目はB区で同一業務に従事したとしても、3年間就業したと考えます。

3.派遣労働者の就業状況について

堺市で受け入れられている派遣労働者は、1年を通じて働く方に限っても、67職場126ポストにのぼっています。

派遣労働者の方のアンケートの回答概要は以下のとおりです。

・堺市での派遣期間

派遣期間 人数
平成28年10月及びそれ以前から 25
平成28年3月 2
平成28年度当初から 35
平成28年度中から 6
平成29年度から 34
未回答 2

・均衡待遇について

派遣先(堺市役所)は、均衡待遇について、以下の配慮を行う必要があるため、アンケートでお聞きしました。

①派遣先の労働者に業務に密接に関連した教育訓練を実施する場合に、派遣労働者にも実施すること。

②派遣労働者に対し、派遣先の労働者が利用する福利厚生施設(給食施設、休憩室、更衣室)の利用の機会を与えること。

【教育訓練の内容】

教育訓練の内容 人数
十分だった 72
十分でなかった 28
未回答 4

なお、受講したかった研修については、下記のとおりでした。業務に密接に関連する研修については、派遣労働者へも周知する必要があります。

(全般的な内容)

・現在の業務内容について詳細に知りたかった

・業務内容独自のパソコンについて

・堺市の組織について

・研修期間が短かった

・スキルアップの研修を受けたい

(学校施設管理業務について)

・溶接や各種補修作業について

・樹木剪定について

・刈払機の取扱い

【給食施設について】

堺市役所には、いわゆる「社員食堂」はないため、「施設が利用できた」47人のほか、「施設が無かった」31人の回答がありました。

【休憩室について】

73人が「利用できた」と回答しましたが、一部には「与えられていない」「場所が分からない」「昼休みがずれると休憩場所が打合せ場所となり、使えない」といった回答がありました。昼休みがずれる場合にどこで休憩できるのか等、より丁寧な休憩室の周知が必要と考えます。

【更衣室について】

86人が「確保されている」と回答しましたが、「確保されていない」との回答が7人ありました。更衣室は、更衣のほかにも私物の保管にも使われるため、確実に確保することが必要と考えます。

【契約派遣単価について】

また、契約派遣単価について照会したところ、下記の回答がありました。

業務名 契約派遣単価
(税抜:円)
契約業者 公表マージン率(%)
堺市人材派遣業務 1,548 (株)パソナ パソナ大阪 29.3
医療的ケア看護師配置業務 2,300 (株)メデイカル・コンシェルジュ大阪支社 29.2
堺市人材派遣
(堺市平和と人権資料館事務)業務
1,480 テルウェル西日本(株) 28.3
平成29年度堺市立学校
施設管理労働者派遣業務
その1 1,037 (株)アウトソーシングトータルサポート 32.1
その2 970 (株)ラヴェリオリンクスタット 29.6
その3 1,040 (株)ワークポロジェクト 12.5
その4 972 (株)ラヴェリオリンクスタット 29.6

※ 堺市立学校施設管理労働者派遣業務は総価契約であるため、派遣単価は当方において算出した。

※ マージン率(堺市との契約による率ではなく、一般的な率)

=1-(派遣労働者への賃金/派遣料金)

4.まとめ

今回、意見を述べるにあたり、現場の実状を把握するために、堺市職員及び派遣労働者の多数の方々からアンケート調査への協力をいただきました。お忙しい中、ご協力いただき、誠にありがとうございました。

堺市におかれましては、本意見を十分尊重し、必要な対応を採られるよう求めます。

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