1 明けましておめでとうございます。昨年は晦日前の30日のカルロス・ゴーン氏の海外への逃亡、その後は正月にかけて、米国トランプ大統領による「イラン革命防衛隊・コッズ部隊ソレイマニ司令官の殺害」、これに対するイランのイラク駐留米軍基地への報復攻撃、イラク軍のミサイル誤射によるウクライナ航空機撃墜事件と、世界を揺るがす事件が立て続けに起きました。一言触れておきますと上記イランの司令官殺害はトランプ大統領によれば「正当防衛」らしいですが、日中戦争も日米開戦の宣戦布告のない真珠湾攻撃も、我が国は「自存自衛の正当防衛」として戦争を始めています。明白な侵略行為・国際法違反の違法な武力行使であるにも拘わらず、安倍首相は何のコメントもせず、年頭記者会見において居並ぶ大手マスコミの記者の誰1人として質問もしない我が国の現状に空恐ろしさを感じます。
1964年以来、56年を経て2回目のオリンピックがその我が国で開催される予定ですが、どの事件も、行く末が案じられる事件と言えなくもないでしょう。
2 そんなこんなの世相ではありますが、今年も懲りずに「労働者の現状と課題」です。総務省統計局2018年労働力調査年報によれば、2018(平成30)年の正規の職員・従業員は3485万人(前年比較53万人増、男性2347万・女性1138万)、非正規の職員・従業員は2120万人(同84万人増、男性669万・女性1451万)。年間の平均給与は432万円ですが、男女別では、男性532万円、女性は287万円で格差は1.85倍、正規・非正規別では、正規労働者が494万円、非正規労働者が175万円で、格差は2.82倍です(昨年とほぼ同じ)。世界的に格差社会が一層深刻になり、我が国でも子どもの貧困をはじめ、男女格差、正規と非正規間の格差社会をこのままにしていていいはずがないのに、我が国の人々は余ほど、我慢強いのかストライキも、デモも起こる気配がありません。
3 私たちが暮らし、生きている地球が気候変動で大変なことになりつつあります。我が国でも台風の大型化、風速45㍍を超える台風、ピンポイントで集中する激甚な豪雨は珍しくなくなっています。毎年我が国を直撃して大きな災禍を与える台風は二つ程度は間違いなく襲来します。昨年は農業被害だけで2700億円を超え、これらに対する社会的インフラは殆ど整備されないで放置されたままです。それどころか国有林を民間に売り渡し、山林の皆伐を進める法案が成立するなど国土の破壊が進行しています。
「2019年9月20日、世界中の若者が、『地球規模の気候変動危機』への対策を各国の政府に求める世界一斉デモが163カ国・地域で行われました。我が国の主要都市でもデモンストレーションが行われましたが、若者(高校生や大学生)の参加は少なかったようです。大学生や高校生の授業ボイコットや「学校ストライキ」の行動もあり、100万人以上の若者が参加しているが、我が国にはこうした動きは全く拡がっていないし、学生には響いていない。」
「一方で、労働(組合)運動はどうだろうか?米国の西海岸を中心とした全米各都市では公教育の崩壊に抵抗して、公の教職員組合が地域社会や親たちと共闘してストライキを打ち政策を変えさせることに成功している。世界中のウーバーで働くドライバーが世界一斉のストライキを実行してプラットフォームビジネスの経営者たちに対抗している。日本は無風である。この彼我の格差は何だろうか?」
4 以上は日本労働弁護団幹事長である棗一郎弁護士の指摘です(2019年版「労働者の権利白書」巻頭言・「日本の民主主義と労働運動はどこに?」)。この指摘と二つの格差を克服することを考え、行動することが求められています。
このページのトップへ新年あけまして、おめでとうございます。
昨年はILO創設100周年にあたり、6月の総会では「仕事の世界における暴力とハラスメントの除去に関する条約」が採択されました。
条約では「暴力とハラスメント」は「人権侵害であり」「ディーセントワークと相容れない」「身体的、精神的、性的、経済的害悪」と幅広く定義し、「仕事の世界に対するすべての人々」を対象とし「就活生」や「フリーランス」など直接雇用関係のない人も含まれています。また「被害者が救済と支援」を受け、加害者や事業主への「制裁を規定」することを求めています。
日本でも昨年5月、女性の活躍推進法・男女雇用機会均等法・育児介護休業法・労働施策総合推進法の改正として、ハラスメント対策について一定の改善がされました。
しかし、ILO条約とは雲泥の差があります。「指導の範囲はハラスメントにあたらない」と抜け道を設け、対象は職場内に限定し、事業主に対しては努力義務にとどめ、罰則規定はありません。
例えば、リストラ部屋(他の職員からの隔離)も指導の範囲では認められます。就活生やフリーランスに対するセクハラの実態は、週刊誌等で告発されていますが、法律の対象外です。
麻生副総理が“日本にはセクハラという罪はない”と言い放った範囲での法改正です。
しかしハラスメントが社会問題となり、世論の高まりを受けての法改正です。国に対してILO条約の批准を求めることはもちろんですが、私たちの職場で具体的な対策を進めることも大切です。
ハラスメントの予防や定義を検討する労使委員会の設置、事業主によるハラスメント根絶宣言、就業規則に基づく懲戒規定の整備など、ILO条約の精神を活かすことは可能です。
安心して働ける職場づくりに向け、今年もがんばりましょう!
このページのトップへ神戸の港で検数作業員として働いていた元労働者3名が、就業中にアスベストを吸引して肺がんを発症したとして、就労先であった全日検(社団法人全日本検数協会、3名の就労当時は全日本検数協会神戸支部)に対して損害賠償を求める訴えを神戸地裁へ提起したので報告する。
検数作業員とは、神戸港で貨物船から陸揚げされる又は貨物船に積み込まれる貨物の銘柄・種類・数を確認する作業員のことで、全日検は神戸港の陸揚げ貨物のほぼシェア100%を誇る企業であった。
アスベストは、繊維性の鉱物で耐熱性・耐酸性・抗張力に優れ、魔法の鉱物として約3000種類もの製品に使われていたこともあったが、日本ではほとんど産出されず、1960年代以降はすべて海外からの輸入に頼っていた。
このうち神戸港は全国のアスベスト輸入量の約30%を占めており、ピーク時の1970年代には例年10万トンを超えるアスベストを輸入し続け、神戸港は我が国のアスベスト受け入れの玄関口の役割を果たしていた(日本貿易年表)。
アスベストの陸揚げは、貨物船の船倉内に積まれたドンゴロス(麻袋)入りアスベストの検数作業から始まる。
大型貨物船は通常多くの港を回って、その都度貨物を降ろしていくことになるため、神戸港で降ろすべき貨物を仕分けし、数を間違うことなく陸揚げすることが不可欠となる。
そこで検数作業員が、船倉内に積まれた多種多様な貨物のうちから、荷主が指定した銘柄・種類のアスベスト入りドンゴロスを、荷主が指定した個数分だけ仕分けをし、船内荷役(貨物の運搬係)を使って、まずは艀(はしけ)と呼ばれる接岸可能な小型運搬船へ積み込む仕事が必要となるのである。
以上のような船内での検数作業に原告となった労働者3名は1960年代~1990年代まであたっていた。
当時、検数作業員らはアスベストの危険性を全く知らされておらず、使い捨てのカーゼマスクが事務所に備え置かれているのみで、カーゼマスクの着用すら労働者の任意に委ねられていた。
ところで船内荷役は、一つ60㌔~70㌔にもなるアスベスト入りドンゴロスを「手鉤(てかぎ)」とよばれる先が爪状になった鉄製の道具で運んでおり、使い回されて薄くなったドンゴロス(麻袋)が「手鉤」の爪で引っ掛けられることで破れ、そこからアスベストが漏れ出していた。
船倉内から運び出されたドンゴロスは、モッコと呼ばれる巨大な網状のかごに乗せてデッキ上へつり上げられたが、ドンゴロスとワイヤーがこすれて破れ、アスベストが船倉内へ雪が降るように落ちてきて前が見えなくなることもあった。
夏場には水分補給をするために船内には水桶があったが、その中にもアスベストが混入しており、作業員は、アスベスト入りの水を大量に飲んでいた。
デッキ上にはアスベストが降り積もり、風が吹くと吹雪のようにアスベストが飛散した。
原告ら労働者は、以上のようなアスベストが充満した船内での検数作業にあたっており、アスベストを大量に吸引し、肺に大量のアスベストが蓄積された。
原告労働者の1名の肺内には乾燥肺1mgあたり11,077本のアスベスト小体がみつかっており、他の2名も含め、原告らは労働基準監督署でアスベストに起因した肺がんであることが認定されている。
アスベスト被害に対する企業責任については、かなりの数の判例が集積されてきており、おそくともじん肺法が制定された昭和35年ころまでには、石綿を取扱う業界においては、従業員が重大な健康被害を被る危険性があることの知見が確立されていたとされている。
したがって、全日検はおそくとも昭和35年以降はアスベストの有害性を検数作業員に対して徹底教育したうえで、防じんマスクや保護衣・保護手袋を支給するなどして、検数作業員がアスベストに曝露する危険性を除去する義務を負っていたはずであった。
しかしながら前記のとおり、全日検は事務所にガーゼマスクを備え置くだけで、ガーゼマスクすら労働者の任意で付けさせていたにとどまり、アスベストの危険性を全く知らせず、その他の実効性ある対策を何一つしていなかった。
したがって、全日検は原告ら労働者3名に対し、安全配慮義務違反の責任があることは明らかであると考えている。
なお、本訴訟は中神戸法律事務所所属の野上弁護士と八木で担当する。
このページのトップへ2019年12月12日、あすてっぷKOBEで、武井寛・龍谷大学教授を講師として、実務研修会「働き方改革」の具体的対策、が開かれた。
その要旨は以下のとおりである。
(1) 2018年7月6日(第196回国会)で成立した「働き方改革」関連法は、正式には「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」であり、24の法律の一部改正というかたちをとっている。
そのうち、重要と思われるものは、
①労働基準法の一部改正
②雇用対策法の一部改正
→労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(法律の名称変更)
③労働安全衛生法の一部改正
④労働者派遣法(略称)の一部改正
⑤労働時間等の設定の改善に関する特別措置法の一部改正
⑥短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部改正
→短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(法律の名称変更)(パート・有期法)
⑦労働契約法の一部改正
である。
(2) 働き方改革関連法は、基本的には、労働時間関係(①③⑤)の変更と、「同一労働同一賃金」関係(②④⑥⑦)の変更の2分野にわたるものである。
ただし、ここで注意すべきは、「同一労働同一賃金」とは安倍政権の命名でしかない。「同一労働同一賃金」の本来の意味は、ヨーロッパなどで言われているような同じ仕事であれば同じ賃金であるべきという原則である。しかし、日本の安倍政権は、この同一労働同一賃金について、正確には(雇用形態の異別を超えた基本的には同一企業内の)「均等待遇」「均衡処遇」を指しているにすぎない。
労働時間関係の内容は、
ⅰ)時間外労働の上限設定
ⅱ)時間規制適用除外の新たな制度(高度プロフェッショナル制度)
ⅲ)使用者への年休付与義務規制
ⅳ)フレックスタイム制の精算期間拡張
の4つに分けられる。
ⅰ)時間外労働の上限設定
時間外労働の上限については、これまで、労働基準法施行規則に委ねられてきたが、今回の改正で初めて、法律の本文となった。
(a) 36協定
(労基法36条3~2項)
時間外労働をさせるためには労使協定(36協定)を締結する必要があるが、この36協定で定めるべき事柄については、労働基準法施行規則から、法律で定めるべき事項に格上げされた。
その労基法36条2項(改正後)の定め、
36条②項 前項の協定においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 この条の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させることができることとされる労働者の範囲
二 対象期間(この条の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる期間をいい、一年間に限るものとする。第四号及び第六項第三号において同じ。)
三 労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる場合
四 対象期間における一日、一箇月及び一年のそれぞれの期間について労働時間を延長して労働させることができる時間又は労働させることができる休日の日数
五 労働時間の延長及び休日の労働を適正なものとするために必要な事項として厚生労働省令で定める事項
となっている。
ここで、36協定の有効期間は、二号にあるとおり、1年間に限られる。これは労働基準法施行規則にはなかった規定であり、残業をさせるための三六協定の有効期間は短くなければならないという趣旨で定められたものである。労基法の趣旨・建前からすれば、1年より短い協定期間も有効であると考えられる。
また、残業を命じることができる場合を明記するように求めている(三号)が、これが、日立事件最高裁判決のように概括的・抽象的な業務の必要性から残業を命じる、程度の規定でよいかは判断が分かれるところである。
法律によって残業時間の絶対的上限が定められたことは前進であり、これは活用すべき点である。また、残業上限については毎年、労使協定での見直し再検討が必要になったので、36協定がきちんと守られているか、残業時間は長くないかなど、具体的に監視するための手がかりとして活用することができるようになった。
(b) 時間外・休日労働の上限規制
(労基法36条3~6項)
36協定で定めることができる残業時間の上限は、③項から⑥項で詳しく定めている。
③ 前項第四号の労働時間を延長して労働させることができる時間は、当該事業場の業務量、時間外労働の動向その他の事情を考慮して通常予見される時間外労働の範囲内において、限度時間を超えない時間に限る。
④ 前項の限度時間は、一箇月について四十五時間及び一年について三百六十時間(第三十二条の四第一項第二号の対象期間として三箇月を超える期間を定めて同条の規定により労働させる場合にあつては、一箇月について四十二時間及び一年について三百二十時間)とする。
⑤ 第一項の協定においては、第二項各号に掲げるもののほか、当該事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に第三項の限度時間を超えて労働させる必要がある場合において、一箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させることができる時間(第二項第四号に関して協定した時間を含め百時間未満の範囲内に限る。)並びに一年について労働時間を延長して労働させることができる時間(同号に関して協定した時間を含め七百二十時間を超えない範囲内に限る。)を定めることができる。この場合において、第一項の協定に、併せて第二項第二号の対象期間において労働時間を延長して労働させる時間が一箇月について四十五時間(第三十二条の四第一項第二号の対象期間として三箇月を超える期間を定めて同条の規定により労働させる場合にあつては、一箇月について四十二時間)を超えることができる月数(一年について六箇月以内に限る。)を定めなければならない。
⑥ 使用者は、第一項の協定で定めるところによつて労働時間を延長して労働させ、又は休日において労働させる場合であつても、次の各号に掲げる時間について、当該各号に定める要件を満たすものとしなければならない。
一 坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務について、一日について労働時間を延長して労働させた時間 二時間を超えないこと。
二 一箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間 百時間未満であること。
三 対象期間の初日から一箇月ごとに区分した各期間に当該各期間の直前の一箇月、二箇月、三箇月、四箇月及び五箇月の期間を加えたそれぞれの期間における労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間の一箇月当たりの平均時間 八十時間を超えないこと。
このうち、特別に残業を延長できる場合を定めた特別条項が⑤項の「当該事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に第三項の限度時間を超えて労働させる必要がある場合」である。通常予見できない業務量の大幅な増加というのが、ゆるやかに解釈されるようであってはならない。
(c) 行政官庁の指導等における健康確保への配慮
(労基法36条10項)
⑩ 前項の助言及び指導を行うに当たつては、労働者の健康が確保されるよう特に配慮しなければならない。
ここで、健康に「特に」配慮しなければならない、というように「特に」を入れた意味は重大であり、行政官庁の指導を積極的に求める根拠ともなろう。
(d) 具体的な労働時間把握の方法について
ところで、残業規制は、具体的に労働時間を把握していなければ意味がない。その点で留意すべきは以下の3点である。
・労働時間の把握は、「タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法」による(労安衛法66条の8の3[医師による面接指導]→労安衛規則52 条の7の3第1項)べきであること
・勤務間インターバル制度の創設をする努力義務(→労働時間等設定改善法2条1項)
・他の事業主との取引における配慮
「他の事業主の講ずる労働時間等の設定の改善に関する措置の円滑な実施を阻害することとなる取引条件を付けないこと等取引上必要な配慮をするように努めなければならない」(労働時間等設定改善法2条4項)→「著しく短い期限の設定及び発注の内容の頻繁な変更を行わないこと」が加わる
勤務間のインターバル制度は、労働者・労働組合から要求することが大切である。また、下請け業者などが、発注者から納期をせかされそのため残業せざるを得なくなるような状況をなくすためには労働時間等設定改善法2条4項が活用できる。
ⅱ)新たな適用除外制度(高度プロフェッショナル制度)
(労基法41 条の2)
賃金、労働時間その他の当該事業場における労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に対し当該事項について意見を述べることを目的とする委員会(使用者及び当該事業場の労働者を代表する者を構成員とするものに限る。)が設置された事業場において、当該委員会がその委員の五分の四以上の多数による議決により次に掲げる事項に関する決議をし、かつ、使用者が、厚生労働省令で定めるところにより当該決議を行政官庁に届け出た場合において、第二号に掲げる労働者の範囲に属する労働者(以下この項において「対象労働者」という。)であつて書面その他の厚生労働省令で定める方法によりその同意を得たものを当該事業場における第一号に掲げる業務に就かせたときは、この章で定める労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定は、対象労働者については適用しない。ただし、第三号から第五号までに規定する措置のいずれかを使用者が講じていない場合は、この限りでない。
一 高度の専門的知識等を必要とし、その性質上従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くないと認められるものとして厚生労働省令で定める業務のうち、労働者に就かせることとする業務(以下この項において「対象業務」という。)
二 この項の規定により労働する期間において次のいずれにも該当する労働者であつて、対象業務に就かせようとするものの範囲
イ 使用者との間の書面その他の厚生労働省令で定める方法による合意に基づき職務が明確に定められていること。
ロ 労働契約により使用者から支払われると見込まれる賃金の額を一年間当たりの賃金の額に換算した額が基準年間平均給与額(厚生労働省において作成する毎月勤労統計における毎月きまつて支給する給与の額を基礎として厚生労働省令で定めるところにより算定した労働者一人当たりの給与の平均額をいう。)の三倍の額を相当程度上回る水準として厚生労働省令で定める額以上であること。
三 対象業務に従事する対象労働者の健康管理を行うために当該対象労働者が事業場内にいた時間(この項の委員会が厚生労働省令で定める労働時間以外の時間を除くことを決議したときは、当該決議に係る時間を除いた時間)と事業場外において労働した時間との合計の時間(第五号ロ及びニ並びに第六号において「健康管理時間」という。)を把握する措置(厚生労働省令で定める方法に限る。)を当該決議で定めるところにより使用者が講ずること。
四 対象業務に従事する対象労働者に対し、一年間を通じ百四日以上、かつ、四週間を通じ四日以上の休日を当該決議及び就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより使用者が与えること。
五 対象業務に従事する対象労働者に対し、次のいずれかに該当する措置を当該決議及び就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより使用者が講ずること。
イ 労働者ごとに始業から二十四時間を経過するまでに厚生労働省令で定める時間以上の継続した休息時間を確保し、かつ、第三十七条第四項に規定する時刻の間において労働させる回数を一箇月について厚生労働省令で定める回数以内とすること。
ロ 健康管理時間を一箇月又は三箇月についてそれぞれ厚生労働省令で定める時間を超えない範囲内とすること。
ハ 一年に一回以上の継続した二週間(労働者が請求した場合においては、一年に二回以上の継続した一週間)(使用者が当該期間において、第三十九条の規定による有給休暇を与えたときは、当該有給休暇を与えた日を除く。)について、休日を与えること。
ニ 健康管理時間の状況その他の事項が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当する労働者に健康診断(厚生労働省令で定める項目を含むものに限る。)を実施すること。
六 対象業務に従事する対象労働者の健康管理時間の状況に応じた当該対象労働者の健康及び福祉を確保するための措置であつて、当該対象労働者に対する有給休暇(第三十九条の規定による有給休暇を除く。)の付与、健康診断の実施その他の厚生労働省令で定める措置のうち当該決議で定めるものを使用者が講ずること。
七 対象労働者のこの項の規定による同意の撤回に関する手続
八 対象業務に従事する対象労働者からの苦情の処理に関する措置を当該決議で定めるところにより使用者が講ずること。
九 使用者は、この項の規定による同意をしなかつた対象労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこと。
十 前各号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項
② 前項の規定による届出をした使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、同項第四号から第六号までに規定する措置の実施状況を行政官庁に報告しなければならない。
(3 項~5 項略)
「高度プロフェッショナル」は、深夜割増賃金すら支払われないという最悪の残業上限なし・賃金不払いの制度である。ただし、その要件は厳しく(本人の同意も必要)、導入を許さない方向で監視・点検する取り組みが重要である。
また、今回は見送られたが、経済界や政府は、裁量労働のみなし制の導入を虎視眈々と狙って、労働者アンケートなど着々と準備を進めており、注意が必要である。
ⅲ)使用者への年休付与義務規制
(労基法39条7~8 項)
⑦ 使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇(これらの規定により使用者が与えなければならない有給休暇の日数が十労働日以上である労働者に係るものに限る。以下この項及び次項において同じ。)の日数のうち五日については、基準日(継続勤務した期間を六箇月経過日から一年ごとに区分した各期間(最後に一年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日をいう。以下この項において同じ。)から一年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。ただし、第一項から第三項までの規定による有給休暇を当該有給休暇に係る基準日より前の日から与えることとしたときは、厚生労働省令で定めるところにより、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない。
⑧ 前項の規定にかかわらず、第五項又は第六項の規定により第一項から第三項までの規定による有給休暇を与えた場合においては、当該与えた有給休暇の日数(当該日数が五日を超える場合には、五日とする。)分については、時季を定めることにより与えることを要しない。
日本の労働者が有給休暇を消化できないのは世界的にも異様であり、その解消策として導入されたものである。有給休暇はまとめてとることこそ本来の趣旨であり、労働者・労働組合は、まとめてとれるように要求することが大事である。
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