《第625号あらまし》
 民法協第58回総会報告
     「仕事と介護の両立支援~これからの時代の介護を考える」
 幹事団体のコロナ禍による職場の状況報告(その1)
     全日本港湾労働組合関西地方阪神支部
     阪神タクシー労働組合
     東熱労働組合
 映画「時の行路」9・19新長田ピフレホールで上映



民法協第58回総会報告
「仕事と介護の両立支援~これからの時代の介護を考える」

弁護士 萩田 満


1 2020年6月27日、あすてっぷKobeにおいて、民法協第58回定期総会が開催された。

当日は、コロナウイルス騒動の余波で、名簿・連絡先や会場の大きさや人数などの指定が行われたが、特に問題なく開催された。懇親会は開催しなかった。


2 記念講演

記念講演は、立命館大学産業社会学部の津止正敏教授をお招きして「仕事と介護の両立支援」について講演をいただいた。講演要旨を紹介する。

・ 現在、介護は経済問題になっており、経済誌で繰り返し話題になっている。

前提として、現在、長寿化が進んで、老老介護の比率が高まっている。すでに介護する人と介護される人の両方が60歳以上という世帯が7割、75歳以上の世帯が3割を超えている。このような老老介護の現実が、その下の現役世代の不安を蓄積している、どんな不安かというと、自分の親が認知症となり誰かに迷惑を掛けるのではないか、自分に介護の負担がかかるのではないかなどである。実際、つい最近、別居する認知症の親が鉄道事故を起こしたとして鉄道会社から訴えられたというJR東海事件もあり、団塊ジュニア世代の不安は現実化している。

また、これまで介護は女性が担うべきという考え方が横行していたが、介護保険の発足や 老老介護の現実が、そのような古い規範の見直しを促し、働いている男性が介護に関わりだしているが、会社の中で言い出せず、孤立して、四苦八苦しているのが現状である。そうすると、会社ではバリバリ働いているサラリーマンが、実は家庭では介護で疲弊しているという隠れ介護の現実もあり、それが現在の日本で1300万人くらいいるとの週刊誌記事もある。そうすると、昨日まで働いていた社員が、ある日突然、介護のために休職したり退職することなども現実に起こってきており、会社にとっても見逃せない経営問題となってきている。介護離職や貧困の問題もある。

さらに、これまで介護に関わってこなかった不慣れな男性が介護に従事するようになると介護事件(虐待、心中、殺人)などの問題にもつながる。

・ このような男性介護の現実から、なんとかしなければという機運が生まれてきた。

そこで、津止先生らが中心となって、介護者のネットワークを構築するため、2009年に「男性介護者と支援者の全国ネットワーク」を発足させ、介護体験記「男性介護者100万人へのメッセージ」を発行したところ反響は大きく、苦労の共有とともに、介護ノウハウの紹介の役割も果たした。その後も、全国的に「ケアメン」すなわち男性介護者の会や集いが盛況である。

・ 男性介護ならではの苦悩として、仕事では弱音を吐かない・責任感・合理性・効率・標準化が追求されてきたのに、介護は人間関係が中心で曖昧・不確定要素・個別化が要求されるので、そこに戸惑い、失敗がおこる。

また、被介護者からみると、これまでは若くて体力があって介護に専念できる人(たとえば、伝統的な長男の嫁スタイル、介護者)から、若さも体力もない上に家事も介護にも専念できる時間もない人による介護が増えている。

このような「想定外の介護」という事態は、介護サービスを利用しながらの介護、通いながらの介護、子育てしながらの介護、働きながらの介護、就学しながらの介護、みずからも通院しながらの介護、というように「ながら介護」ということができる。

仕事と介護についていうと、会社からすると人事担当者は介護の実態がつかめないし、介護に従事する中高年齢層は労働組合にも属さない管理職が多いので、本当に実態が分からない。

・ 他面では、「ながら介護」の二面性を意識した対処も必要である。すなわち、仕事しながらの介護は、一方で仕事も介護もしなければならないという困難につながるが、他方では24時間介護漬けになる必要はなく仕事が介護から離れることの正当化根拠にもなる。また、介護は、一方でつらくて大変だが、他方で家族との接触によって人間的なつながりができる面もある。

そこで、介護が肯定される場をもっと作り、介護者が孤立しない取り組みが求められている。社会や会社には、こうした課題に取り組んでもらいたい。


3 議案討議

その後、総会議案の討議を行った。時間短縮のために大幅に短縮した議事であるが、今後の方向性として、活動方針としてはコロナウイルス問題をきっかけに広がりを見せているテレワークやギグワークの課題を抽出すること、事務的には民法協ニュースの内製化(事務局で原稿を作る)ことによって経費を削減すること、が承認された。

兵庫県高等学校教職員組合からのメッセージが紹介され、今年度限りで幹事役員を交替する全港湾阪神支部の井ノ元宏樹さんから退任挨拶をいただいた。

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幹事団体のコロナ禍による職場の状況報告(その1)
全日本港湾労働組合関西地方阪神支部

全日本港湾労働組合関西地方阪神支部 竹内政行


全日本港湾労働組合 関西地方 阪神支部(略称 全港湾 阪神支部)での、今回のコロナウィルス騒動は春闘団体交渉の時期と重なり、労働組合としてはこの時期1年を通して最も精力的に運動を行い学習する機会の多い時期です。

しかし、収束の目途が立たない中、新型コロナウィルス対策特措法に基づく、「緊急事態宣言」が全国的に発令されたため、組合員とその家族を守るためにも健康と感染防止を第一に考え、三密(集団・換気の悪い場所・密接会話)を避ける指示を出し、地本春闘集団交渉、各部会・委員会、民主団体・共闘関係の宣伝行動等を中止にしました。企業側への交渉は、要求等の文書通知や協定書の郵送にて対応を行いました。

さらに関西地方本部の委員長名にて企業側に対し、「新型コロナウィルス問題への対応ついて」の協定書を要求として提出しました。

内容は、

①組合員または、組合員の働く職場に於いて、発症したとしても企業責任のもと特別有給休暇制度の活用若しくは同制度の新設に於いて、現状の賃金と生活が維持出来るよう緊急措置を講ずること。

②新型コロナウィルスの影響に関連して、解雇の問題が生じないよう企業が責任を持って組合員の雇用確保に万全を期す。

の2点を要求。

阪神支部は春闘・夏季一時金集団交渉を密にならないように細心の注意を図り、衛生面・換気・アルコール消毒を行い、マスク着用で出来るだけ短時間で終了しました。春闘・夏季一時金交渉については、昨年実績を重視して合理化を許さず、対角線交渉を行い終えることができましたが、冬季一時金での交渉が難航することが懸念されています。

新型コロナウィルス感染者に関しては、企業・分会関係で3人が発症しましたが、幸いなことに現在は無事復帰しております。

2月下旬頃から感染に注意しながら活動自粛をしてきましたが、「緊急事態宣言」の解除、「都道府県をまたぐ移動の自粛」が全国的に緩和されましたので、徐々に活動自粛を解除していますが、第2波への感染予防として、密を避けながらマスク着用・アルコール消毒は継続し行っています。

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幹事団体のコロナ禍による職場の状況報告(その1)
阪神タクシー労働組合

阪神タクシー労働組合 宮武良夫


タクシー会社は、3月から5月まで、売上高前年比80%減と苦戦を強いられています。

緊急事態宣言が解除されてからは、やや持ち直しておりますが、まだ30%減となっております。失業手当を貰う方が良いと全員解雇する会社も現れました。

そんな中、当労組としましては、2点に注力して闘っています。

一つ目は、職場環境の改善です。コロナ対策としてタクシー車内の消毒や、消毒液の常備、運転席と後部座席の遮断カーテン等の要求、また無線配車の場合のPCR検査に行くお客様のお断りや、万が一感染した場合の処遇等の要求を行いました。

保健所は、疑いの有る患者に電車・バス・タクシーでは行かないで下さいと指示を出すが、結局、マイカーが無ければ歩いて行く訳にもいかず、タクシーを利用するのが現状で、与党の某国会議員は、「感染しやすいのは、タクシーが一番危ない」と発言して、問題になっていた。高齢運転手が多いタクシーにおいては、感染防止意識が非常に高いので逆に、意識の低い乗客が多い電車・バスより安全ではないかと考える。

二つ目は、休業補償の問題です。法律に沿って60%の補償では、元から低い賃金のため生活が出来ません。会社側に対しては100%の支給を強く求めて、ピーク時は、4割~5割の雇用調整による休業に対して特別休暇として100%の支給を得ました。

但し、賞与については歩合的な部分の比重が高く、特別休暇では実水揚げにならないため、通常年の夏季賞与では平均約30万円のところ今期は約10万円に落ち込むので会社の経営状況を精査しながら要求を続けています。

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幹事団体のコロナ禍による職場の状況報告(その1)
東熱労働組合

東熱労働組合 西田欣秀

3月10日に株式会社TONEZ社長の大山の黄綬褒章受賞記念・創業110年の記念式典が行われる予定でした。立派なホテルに来賓・顧客等に招待状を出し、去年より準備してきた。創業100年の年はリーマンショックでもあったためとても開催できる余裕はなく今回にかける意気込みは並々ならぬものがあった。

しかしながら年を明けてから、中国、横浜港でのクルーズ船、ライブハウスのクラスターとウイルスが近づいてくるのが目に見えてわかり、会社としての一大イベントは涙を飲んで中止に。有名人などの感染、死去。爆発的に増える感染者、マスク・アルコール不足、緊急事態宣言と春先はものすごい勢いで当たり前の生活が飲み込まれた。

あまりにもの勢いで、労使とも仕事をこなしながらの対策で少し後手気味に見えたが世間での予防対策を取り入れながら現在まで国内5工場、中国工場とも感染者が出ずに済んでいる。

・発熱者は3日間自宅待機(特別休暇)その後は総務部との相談により病院や保健所と相談の上出社の可否を決定。

・公共交通機関で通勤している従業員は可能な限り時差出勤。

・自家用車・バイク・自転車通勤が可能な人は出来る限り駐車場も準備するので公共交通機関を使わないようにしてもらう。

・更衣室も固まらないように分散のため異動をしてもらった。

・食事は同一方向で、席を1つ飛ばしで着席。時差での食事。

・仕事中は常時マスク着用(会社からは2日に1枚の割合で支給)。

・出社時の検温・アルコール消毒。

・会議も少ない人数で交渉。一部テレビ会議も行っている。

・受付などはアクリル板やビニールなどで飛沫感染予防。

・営業活動などの出張は自粛。

などの対策を行っている。

緊急事態宣言発布からは個々に違う出勤時間、客先は週3日稼働など、みるみる減っていく仕事。親睦会や歓送迎会など行事ごとはすべて延期もしくは中止。

株式会社TONEZは熱処理を行う会社で、読んで字の如く金属に熱を加えて金属の改質を行う会社である。当然夏は熱く(G.W明けから暑い)水などに焼けた鉄などを漬けるので湿度も高い。マスクを付けての仕事はものすごく体に負担を与えることになるが、ファン付きの作業着の試験運用やスポットクーラーや大型ファンの大量投入でなんとか踏ん張っている。

仕事量は4月から右肩下がりだったが現在は横ばい。帰休は個々に取っており(間引き操業)会社自体を休むことはしていない。

緊急事態宣言解除後は少し落ち着きを取り戻し昨年比の5月、6月は30%減の受注で赤字ではあるが現在は限定的ではあるが営業活動も再開。コロナ対策は続いているが終息宣言が出るまでは続くとみんな覚悟はしている。

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映画「時の行路」9・19新長田ピフレホールで上映

JMITU兵庫地方本部 岩佐 久夫


2008年のリーマンショックで多数の非正規切りが行われ、その年末に「年越し派遣村」が開設されたことを覚えておられる方も多いと思います。今年に入ってからのコロナ禍ですでに2万人を超える解雇が行われていると報道されています。この動きは観光業をはじめとするサービス業から製造業にも広がってくると思います。事実JMITU兵庫の中でも月9日の休業を余儀なくされている職場もありますし、取引先から毎週月・金の休業や金曜日の休業を9月まで続けるという通知も届いています。この映画は10年前のいすゞ自動車で行われた非正規雇用労働者の契約期間内の解雇を不当だと労働組合(当時のJMIU)に参加して、職場復帰・正社員登用を求めて闘った争議を「家族愛をたて糸に労働者・労働組合の連帯をよこ糸」に映画化したものです。兵庫での上映運動を9月19日の新長田ピフレホールをスタートに県下で上映しようと実行委員会で取り組んでいます。ぜひご参加ください。

神山征二郎監督、出演は石黒賢、中山忍ほか。

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